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第六章 邪神デュアダロス
EP 6
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最強の竜王は、湯切りでリズムを刻む
【太郎国・中央大通り(深夜)】
「……おいルチアナ。てめぇ、この袋を持て。俺は両手が塞がっている」
深夜の大通りを歩きながら、デュアダロスが苦虫を噛み潰したような顔で言った。
最強の邪神である彼の両手には、コンビニのロゴが入った白いレジ袋が4つもぶら下がっている。中身はリアナが買い込んだ大量のスナック菓子と、ルチアナのストロング系チューハイだ。
「あぁん? アンタ私のパシリでしょ? 黙って持ってなさいよ元カレ」
前を歩くルチアナは、リアナから貰った『肉椎茸クッキー』をサクサクと齧りながら振り返りもせずに答えた。
ジャージ姿の創造神にアゴで使われる、スーツ姿の邪神。完全にヒモの構図である。
「くっ……! この屈辱、いつか必ず……!」
「ふふっ、デュアダロスさん。その『からあげクン』、冷めないうちに食べてくださいね! レッド味はピリ辛で美味しいらしいですよ!」
隣を歩くリアナは、そんな険悪な空気などどこ吹く風。自分の分の『からあげクン(レギュラー)』をハフハフと頬張りながら上機嫌だ。
デュアダロスは頭上の『服従の輪』をチラリと見て、深く溜息をついた。逆らえば激痛、従えば屈辱。インテリヤクザの明日はどっちだ。
しばらく歩くと、前方に赤提灯がぶら下がった、屋台のような一角が見えてきた。
そこから漂ってくるのは、とてつもなく暴力的な――豚骨とニンニクの香り。
「ん? なんだこの匂いは。……獣の脂を煮込んだような、強烈な……」
デュアダロスが鼻をひくつかせる。
「あー、ちょうどいいとこに来たわね。ちょっと寄ってかない? ここの大将、アンタの知り合いだし」
ルチアナが暖簾を指差した。
「俺の知り合いだァ? 下界にそんな奴は……」
デュアダロスが訝しげに暖簾をくぐった、その瞬間。
「へいらっしゃいッ!!! 豚骨一丁入りましたァッ!!」
鼓膜を破らんばかりの野太い怒号が響き渡った。
「……は?」
デュアダロスは我が目を疑った。
湯気が立ち込める厨房の中。頭にタオルを巻き、油で汚れたTシャツとエプロン姿で、巨大な寸胴鍋の前に立っている巨漢。
その全身から溢れ出る、隠しきれない最強種の覇気。
「て、てめぇ……まさか……」
デュアダロスが絶句する中、その男は茹で上がった麺をザルに入れ、天井に向かって突き上げた。
「せぇぇぇいッ!!(チャッ! チャッ! チャチャッ!)」
目にも止まらぬ高速の湯切り。飛び散るお湯が、まるで龍の鱗のように舞い散る。
「りゅ、竜王……デューク……か!?」
そう。かつて天空を支配し、最強の名をほしいままにした伝説の竜王デューク。
彼が今、太郎国でラーメン屋の大将として、魂の湯切りをしていたのである。
「ん? おう、誰かと思えば邪神の引きこもりじゃねぇか。なんだその大量のレジ袋は。万引きGメンにでも転職したか?」
デュークは麺をどんぶりに放り込みながら、ニヤリと笑った。
「なっ……! バカにしやがって! 俺は今、この国の視察をだな……!」
デュアダロスが顔を真っ赤にして反論しようとする。
しかし、彼の横からスルリとリアナが前に出た。
「わぁぁ! すごい良い匂いです! 大将さん、これ何ていうお料理ですか!?」
リアナが目を輝かせて寸胴鍋を覗き込む。
「おう嬢ちゃん、これは『超濃厚ド豚骨ラーメン・全部乗せ』だ! 食ってくか!?」
「はい! ぜひ勉強させてください!」
「……おい小娘。さっきコンビニでプリンだのチキンだの食ったばかりだろうが」
デュアダロスが呆れる。
「別腹です! それに……デュアダロスさん、そのチャーシュー見てください。トロトロですよ? 絶対に美味しいです!」
「…………」
デュアダロスは、デュークが盛り付けたどんぶりを見た。
白濁した濃厚スープに浮かぶ、分厚い炙りチャーシュー。山盛りのネギと、テラテラと光る背脂。
ゴクリ。
邪神の喉が鳴った。
「……フン。まあいい。竜王がそこまで堕落して作ったエサだ。味見くらいはしてやろう」
デュアダロスはインテリヤクザのプライドを保ちつつ、カウンター席にドカッと座った。
(レジ袋を膝の上に抱えたまま)
「へいお待ちッ!!」
ドンッ! と置かれたラーメン。
デュアダロスはレンゲでスープを一口すすった。
ズズッ……。
「……ッ!!」
衝撃が走った。
脳髄を直接揺さぶるような、強烈な豚の旨味と、ガツンとくる塩分。三百年の絶食(とコンビニチキン)で敏感になった胃袋に、それはあまりにも刺激的すぎた。
「くっ……! なんだこの中毒性のあるスープは……! 貴様、中に何を入れた!? 違法な魔法薬か!?」
「ガハハハ! 豚骨と気合だけだぜ!」
「うわぁぁ美味しいですぅぅ! この麺、スープが絡んで最高です! 替え玉お願いしまーす!」
隣ではリアナが既に一杯目を完食し、エプロンを汚しながら二杯目を要求している。
ズルズルッ! ハフハフッ!
深夜のラーメン屋に、邪神と姫君のすする音が響き渡る。
「やれやれ……。アンタら、太郎に会う前に腹パンクするんじゃないわよ?」
ルチアナは呆れながら、冷蔵庫から勝手に取り出した瓶ビールを手酌で注いでいた。
最強の竜王が作り、最恐の邪神が夢中で食らう。
太郎国の夜は、今日もカオスと高カロリーに満ちて更けていくのであった。
【太郎国・中央大通り(深夜)】
「……おいルチアナ。てめぇ、この袋を持て。俺は両手が塞がっている」
深夜の大通りを歩きながら、デュアダロスが苦虫を噛み潰したような顔で言った。
最強の邪神である彼の両手には、コンビニのロゴが入った白いレジ袋が4つもぶら下がっている。中身はリアナが買い込んだ大量のスナック菓子と、ルチアナのストロング系チューハイだ。
「あぁん? アンタ私のパシリでしょ? 黙って持ってなさいよ元カレ」
前を歩くルチアナは、リアナから貰った『肉椎茸クッキー』をサクサクと齧りながら振り返りもせずに答えた。
ジャージ姿の創造神にアゴで使われる、スーツ姿の邪神。完全にヒモの構図である。
「くっ……! この屈辱、いつか必ず……!」
「ふふっ、デュアダロスさん。その『からあげクン』、冷めないうちに食べてくださいね! レッド味はピリ辛で美味しいらしいですよ!」
隣を歩くリアナは、そんな険悪な空気などどこ吹く風。自分の分の『からあげクン(レギュラー)』をハフハフと頬張りながら上機嫌だ。
デュアダロスは頭上の『服従の輪』をチラリと見て、深く溜息をついた。逆らえば激痛、従えば屈辱。インテリヤクザの明日はどっちだ。
しばらく歩くと、前方に赤提灯がぶら下がった、屋台のような一角が見えてきた。
そこから漂ってくるのは、とてつもなく暴力的な――豚骨とニンニクの香り。
「ん? なんだこの匂いは。……獣の脂を煮込んだような、強烈な……」
デュアダロスが鼻をひくつかせる。
「あー、ちょうどいいとこに来たわね。ちょっと寄ってかない? ここの大将、アンタの知り合いだし」
ルチアナが暖簾を指差した。
「俺の知り合いだァ? 下界にそんな奴は……」
デュアダロスが訝しげに暖簾をくぐった、その瞬間。
「へいらっしゃいッ!!! 豚骨一丁入りましたァッ!!」
鼓膜を破らんばかりの野太い怒号が響き渡った。
「……は?」
デュアダロスは我が目を疑った。
湯気が立ち込める厨房の中。頭にタオルを巻き、油で汚れたTシャツとエプロン姿で、巨大な寸胴鍋の前に立っている巨漢。
その全身から溢れ出る、隠しきれない最強種の覇気。
「て、てめぇ……まさか……」
デュアダロスが絶句する中、その男は茹で上がった麺をザルに入れ、天井に向かって突き上げた。
「せぇぇぇいッ!!(チャッ! チャッ! チャチャッ!)」
目にも止まらぬ高速の湯切り。飛び散るお湯が、まるで龍の鱗のように舞い散る。
「りゅ、竜王……デューク……か!?」
そう。かつて天空を支配し、最強の名をほしいままにした伝説の竜王デューク。
彼が今、太郎国でラーメン屋の大将として、魂の湯切りをしていたのである。
「ん? おう、誰かと思えば邪神の引きこもりじゃねぇか。なんだその大量のレジ袋は。万引きGメンにでも転職したか?」
デュークは麺をどんぶりに放り込みながら、ニヤリと笑った。
「なっ……! バカにしやがって! 俺は今、この国の視察をだな……!」
デュアダロスが顔を真っ赤にして反論しようとする。
しかし、彼の横からスルリとリアナが前に出た。
「わぁぁ! すごい良い匂いです! 大将さん、これ何ていうお料理ですか!?」
リアナが目を輝かせて寸胴鍋を覗き込む。
「おう嬢ちゃん、これは『超濃厚ド豚骨ラーメン・全部乗せ』だ! 食ってくか!?」
「はい! ぜひ勉強させてください!」
「……おい小娘。さっきコンビニでプリンだのチキンだの食ったばかりだろうが」
デュアダロスが呆れる。
「別腹です! それに……デュアダロスさん、そのチャーシュー見てください。トロトロですよ? 絶対に美味しいです!」
「…………」
デュアダロスは、デュークが盛り付けたどんぶりを見た。
白濁した濃厚スープに浮かぶ、分厚い炙りチャーシュー。山盛りのネギと、テラテラと光る背脂。
ゴクリ。
邪神の喉が鳴った。
「……フン。まあいい。竜王がそこまで堕落して作ったエサだ。味見くらいはしてやろう」
デュアダロスはインテリヤクザのプライドを保ちつつ、カウンター席にドカッと座った。
(レジ袋を膝の上に抱えたまま)
「へいお待ちッ!!」
ドンッ! と置かれたラーメン。
デュアダロスはレンゲでスープを一口すすった。
ズズッ……。
「……ッ!!」
衝撃が走った。
脳髄を直接揺さぶるような、強烈な豚の旨味と、ガツンとくる塩分。三百年の絶食(とコンビニチキン)で敏感になった胃袋に、それはあまりにも刺激的すぎた。
「くっ……! なんだこの中毒性のあるスープは……! 貴様、中に何を入れた!? 違法な魔法薬か!?」
「ガハハハ! 豚骨と気合だけだぜ!」
「うわぁぁ美味しいですぅぅ! この麺、スープが絡んで最高です! 替え玉お願いしまーす!」
隣ではリアナが既に一杯目を完食し、エプロンを汚しながら二杯目を要求している。
ズルズルッ! ハフハフッ!
深夜のラーメン屋に、邪神と姫君のすする音が響き渡る。
「やれやれ……。アンタら、太郎に会う前に腹パンクするんじゃないわよ?」
ルチアナは呆れながら、冷蔵庫から勝手に取り出した瓶ビールを手酌で注いでいた。
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