方向音痴の姫様を拾ったら、俺のクレジットカードで勝手に和牛を買われた件 〜植物執事が特攻服で内閣府へ迎えに来る、胃痛MAXの同居生活〜

月神世一

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EP 5

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爆誕! 天然Vtuberルナちゃん
「あ、あ、ああ……俺のボーナス……」
 リビングの床で、春太は抜け殻のように天井を見上げていた。
 50万円のPCローン。8万円のすき焼き。
 この二日間で、彼の資産はマイナス域へとマッハで突入していた。
 しかし、そんな家主の絶望などどこ吹く風。
 ネギオはゲーミングPCの前で腕組みをし、満足げに頷いていた。
「準備完了だ。配信タイトルは『愚民どもへ告ぐ、ひれ伏せ』……いや、これでは直球すぎるか。現地の文化に合わせて『初配信! おにぎり食べます!』にしておこう」
「ネギオ、私は何をすればいいの?」
「ただそこに座り、コンビニで買ってきた『鮭おにぎり』を食べるだけでいいのです。姫様の尊顔(そんがん)だけで、愚民どもの脳は溶けます」
 ネギオがエンターキーを叩く。
 
 【LIVE】 の文字が点灯した。
「皆様、ごきげんよう! ルナ・シンフォニアですわ!」
 画面に、ルナの輝くような笑顔が映し出される。
 4K画質のウェブカメラですら捉えきれない、異次元の美貌。
 背景は春太の汚いアパートだが、ルナの周りだけキラキラとしたオーラが見えるようだ。
 視聴者数:5人……100人……1000人……。
 数字が異常な速度で跳ね上がっていく。
 《コメント欄》
 『え、なにこの美少女』
 『CG? Vtuberの新型モデル?』
 『いや実写だろ、背景の生活感エグいけど顔面偏差値どうなってんだ』
 『天使か?』
「あら、文字がたくさん流れてますわ! 『天使か?』……ふふ、私はエルフですけれど、褒めてくださってありがとうございます!」
 ルナがおにぎりのフィルムを不器用に剥がし、パクリと食べる。
 ただそれだけ。
 しかし、頬についた米粒を取って舐める仕草が、あまりにも破壊力抜群だった。
 同時接続数:50,000人突破。
「す、すげえ……」
 死んでいた春太も、思わず起き上がって画面を覗き込んだ。
 たった数分で、有名インフルエンサー並みの数字を叩き出している。
 だが、有名になれば当然、招かれざる客もやってくる。
 《コメント欄》
 『キャラ作り乙www』
 『整形モンスター乙』
 『後ろの植物のコスプレ男、キモいんだけどw』
 『住所特定してやろうか?』
 心ないアンチコメントが流れ始めた。
 春太が青ざめる。
「まずい! 炎上しちゃう! ネギオさん、コメント欄を閉じ……」
「――ほう」
 ネギオの目が、怪しく光った。
 
「私の主を侮辱し、あまつさえ私を『キモい』だと? ……いい度胸だ、雑草ども」
 タタタタタタタタッ!!
 ネギオの指(樹皮)が、残像が見えるほどの速度でキーボードを叩き始めた。
 物理的なタイピング音が、機関銃の射撃音のように響く。
「解析完了。プロバイダ特定。住所座標ロックオン」
 ネギオはマイクに向かって、低く、地を這うような声で囁いた。
「おい、ユーザー名『あばれんぼう将軍』。貴様、東京都〇〇区△△アパート201号室で、母親に買ってもらったパソコンで書き込んでいるな? 晩飯のハンバーグが冷めているぞ」
 《コメント欄》
 『えっ』
 『!?』
 『あばれんぼう将軍:なんでそれを……ごめんなさいもうしません』
「ユーザー名『破壊神』。貴様は会社のトイレでサボり中か。上司が探しているぞ。……IPアドレスから社内ネットワークに侵入し、貴様のブラウザ履歴を全社員に送信しておいた。明日から会社に行けるといいな」
 《コメント欄》
 『ヒエッ……』
 『ガチのハッカーじゃねーか!』
 『執事さんカッコよすぎ濡れた』
 『申し訳ありませんでしたァァァ!』
 アンチコメントが一瞬で消滅し、画面は謝罪と称賛の嵐に変わった。
 そして。
 チャリン♪ チャリンチャリン♪
 スパチャ(投げ銭)の嵐が始まった。
 赤スパ(高額投げ銭)が滝のように流れてくる。
 『お詫びの印です』 ¥10,000
 『姫様の米粒になりたい』 ¥50,000
 『執事さんに踏まれたい』 ¥30,000
「す、すげえ……! 一瞬で数十万……!?」
 春太は震えた。
 これなら、PCのローンも、すき焼き代も払える。いや、お釣りがくる!
「ルナちゃん! ネギオさん! やったよ! これで借金が返せる!」
「借金?」
 ネギオが不思議そうに振り返る。
「何を言っているのです、虫。この浄財は、全て姫様の新しいドレスと、最高級の美容液(肥料)に使います」
「は?」
「貴様の借金など知らん。自分で働いて返せ」
「鬼か貴様はああああああ!!」
 画面の向こうでは、視聴者たちが「後ろで叫んでる人、面白いw」「新しいマスコットか?」と盛り上がっている。
 春太の絶叫は、今日もまた、ルナの笑顔の引き立て役として消費されるのであった。
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