5 / 30
EP 5
しおりを挟む
爆誕! 天然Vtuberルナちゃん
「あ、あ、ああ……俺のボーナス……」
リビングの床で、春太は抜け殻のように天井を見上げていた。
50万円のPCローン。8万円のすき焼き。
この二日間で、彼の資産はマイナス域へとマッハで突入していた。
しかし、そんな家主の絶望などどこ吹く風。
ネギオはゲーミングPCの前で腕組みをし、満足げに頷いていた。
「準備完了だ。配信タイトルは『愚民どもへ告ぐ、ひれ伏せ』……いや、これでは直球すぎるか。現地の文化に合わせて『初配信! おにぎり食べます!』にしておこう」
「ネギオ、私は何をすればいいの?」
「ただそこに座り、コンビニで買ってきた『鮭おにぎり』を食べるだけでいいのです。姫様の尊顔(そんがん)だけで、愚民どもの脳は溶けます」
ネギオがエンターキーを叩く。
【LIVE】 の文字が点灯した。
「皆様、ごきげんよう! ルナ・シンフォニアですわ!」
画面に、ルナの輝くような笑顔が映し出される。
4K画質のウェブカメラですら捉えきれない、異次元の美貌。
背景は春太の汚いアパートだが、ルナの周りだけキラキラとしたオーラが見えるようだ。
視聴者数:5人……100人……1000人……。
数字が異常な速度で跳ね上がっていく。
《コメント欄》
『え、なにこの美少女』
『CG? Vtuberの新型モデル?』
『いや実写だろ、背景の生活感エグいけど顔面偏差値どうなってんだ』
『天使か?』
「あら、文字がたくさん流れてますわ! 『天使か?』……ふふ、私はエルフですけれど、褒めてくださってありがとうございます!」
ルナがおにぎりのフィルムを不器用に剥がし、パクリと食べる。
ただそれだけ。
しかし、頬についた米粒を取って舐める仕草が、あまりにも破壊力抜群だった。
同時接続数:50,000人突破。
「す、すげえ……」
死んでいた春太も、思わず起き上がって画面を覗き込んだ。
たった数分で、有名インフルエンサー並みの数字を叩き出している。
だが、有名になれば当然、招かれざる客もやってくる。
《コメント欄》
『キャラ作り乙www』
『整形モンスター乙』
『後ろの植物のコスプレ男、キモいんだけどw』
『住所特定してやろうか?』
心ないアンチコメントが流れ始めた。
春太が青ざめる。
「まずい! 炎上しちゃう! ネギオさん、コメント欄を閉じ……」
「――ほう」
ネギオの目が、怪しく光った。
「私の主を侮辱し、あまつさえ私を『キモい』だと? ……いい度胸だ、雑草ども」
タタタタタタタタッ!!
ネギオの指(樹皮)が、残像が見えるほどの速度でキーボードを叩き始めた。
物理的なタイピング音が、機関銃の射撃音のように響く。
「解析完了。プロバイダ特定。住所座標ロックオン」
ネギオはマイクに向かって、低く、地を這うような声で囁いた。
「おい、ユーザー名『あばれんぼう将軍』。貴様、東京都〇〇区△△アパート201号室で、母親に買ってもらったパソコンで書き込んでいるな? 晩飯のハンバーグが冷めているぞ」
《コメント欄》
『えっ』
『!?』
『あばれんぼう将軍:なんでそれを……ごめんなさいもうしません』
「ユーザー名『破壊神』。貴様は会社のトイレでサボり中か。上司が探しているぞ。……IPアドレスから社内ネットワークに侵入し、貴様のブラウザ履歴を全社員に送信しておいた。明日から会社に行けるといいな」
《コメント欄》
『ヒエッ……』
『ガチのハッカーじゃねーか!』
『執事さんカッコよすぎ濡れた』
『申し訳ありませんでしたァァァ!』
アンチコメントが一瞬で消滅し、画面は謝罪と称賛の嵐に変わった。
そして。
チャリン♪ チャリンチャリン♪
スパチャ(投げ銭)の嵐が始まった。
赤スパ(高額投げ銭)が滝のように流れてくる。
『お詫びの印です』 ¥10,000
『姫様の米粒になりたい』 ¥50,000
『執事さんに踏まれたい』 ¥30,000
「す、すげえ……! 一瞬で数十万……!?」
春太は震えた。
これなら、PCのローンも、すき焼き代も払える。いや、お釣りがくる!
「ルナちゃん! ネギオさん! やったよ! これで借金が返せる!」
「借金?」
ネギオが不思議そうに振り返る。
「何を言っているのです、虫。この浄財は、全て姫様の新しいドレスと、最高級の美容液(肥料)に使います」
「は?」
「貴様の借金など知らん。自分で働いて返せ」
「鬼か貴様はああああああ!!」
画面の向こうでは、視聴者たちが「後ろで叫んでる人、面白いw」「新しいマスコットか?」と盛り上がっている。
春太の絶叫は、今日もまた、ルナの笑顔の引き立て役として消費されるのであった。
「あ、あ、ああ……俺のボーナス……」
リビングの床で、春太は抜け殻のように天井を見上げていた。
50万円のPCローン。8万円のすき焼き。
この二日間で、彼の資産はマイナス域へとマッハで突入していた。
しかし、そんな家主の絶望などどこ吹く風。
ネギオはゲーミングPCの前で腕組みをし、満足げに頷いていた。
「準備完了だ。配信タイトルは『愚民どもへ告ぐ、ひれ伏せ』……いや、これでは直球すぎるか。現地の文化に合わせて『初配信! おにぎり食べます!』にしておこう」
「ネギオ、私は何をすればいいの?」
「ただそこに座り、コンビニで買ってきた『鮭おにぎり』を食べるだけでいいのです。姫様の尊顔(そんがん)だけで、愚民どもの脳は溶けます」
ネギオがエンターキーを叩く。
【LIVE】 の文字が点灯した。
「皆様、ごきげんよう! ルナ・シンフォニアですわ!」
画面に、ルナの輝くような笑顔が映し出される。
4K画質のウェブカメラですら捉えきれない、異次元の美貌。
背景は春太の汚いアパートだが、ルナの周りだけキラキラとしたオーラが見えるようだ。
視聴者数:5人……100人……1000人……。
数字が異常な速度で跳ね上がっていく。
《コメント欄》
『え、なにこの美少女』
『CG? Vtuberの新型モデル?』
『いや実写だろ、背景の生活感エグいけど顔面偏差値どうなってんだ』
『天使か?』
「あら、文字がたくさん流れてますわ! 『天使か?』……ふふ、私はエルフですけれど、褒めてくださってありがとうございます!」
ルナがおにぎりのフィルムを不器用に剥がし、パクリと食べる。
ただそれだけ。
しかし、頬についた米粒を取って舐める仕草が、あまりにも破壊力抜群だった。
同時接続数:50,000人突破。
「す、すげえ……」
死んでいた春太も、思わず起き上がって画面を覗き込んだ。
たった数分で、有名インフルエンサー並みの数字を叩き出している。
だが、有名になれば当然、招かれざる客もやってくる。
《コメント欄》
『キャラ作り乙www』
『整形モンスター乙』
『後ろの植物のコスプレ男、キモいんだけどw』
『住所特定してやろうか?』
心ないアンチコメントが流れ始めた。
春太が青ざめる。
「まずい! 炎上しちゃう! ネギオさん、コメント欄を閉じ……」
「――ほう」
ネギオの目が、怪しく光った。
「私の主を侮辱し、あまつさえ私を『キモい』だと? ……いい度胸だ、雑草ども」
タタタタタタタタッ!!
ネギオの指(樹皮)が、残像が見えるほどの速度でキーボードを叩き始めた。
物理的なタイピング音が、機関銃の射撃音のように響く。
「解析完了。プロバイダ特定。住所座標ロックオン」
ネギオはマイクに向かって、低く、地を這うような声で囁いた。
「おい、ユーザー名『あばれんぼう将軍』。貴様、東京都〇〇区△△アパート201号室で、母親に買ってもらったパソコンで書き込んでいるな? 晩飯のハンバーグが冷めているぞ」
《コメント欄》
『えっ』
『!?』
『あばれんぼう将軍:なんでそれを……ごめんなさいもうしません』
「ユーザー名『破壊神』。貴様は会社のトイレでサボり中か。上司が探しているぞ。……IPアドレスから社内ネットワークに侵入し、貴様のブラウザ履歴を全社員に送信しておいた。明日から会社に行けるといいな」
《コメント欄》
『ヒエッ……』
『ガチのハッカーじゃねーか!』
『執事さんカッコよすぎ濡れた』
『申し訳ありませんでしたァァァ!』
アンチコメントが一瞬で消滅し、画面は謝罪と称賛の嵐に変わった。
そして。
チャリン♪ チャリンチャリン♪
スパチャ(投げ銭)の嵐が始まった。
赤スパ(高額投げ銭)が滝のように流れてくる。
『お詫びの印です』 ¥10,000
『姫様の米粒になりたい』 ¥50,000
『執事さんに踏まれたい』 ¥30,000
「す、すげえ……! 一瞬で数十万……!?」
春太は震えた。
これなら、PCのローンも、すき焼き代も払える。いや、お釣りがくる!
「ルナちゃん! ネギオさん! やったよ! これで借金が返せる!」
「借金?」
ネギオが不思議そうに振り返る。
「何を言っているのです、虫。この浄財は、全て姫様の新しいドレスと、最高級の美容液(肥料)に使います」
「は?」
「貴様の借金など知らん。自分で働いて返せ」
「鬼か貴様はああああああ!!」
画面の向こうでは、視聴者たちが「後ろで叫んでる人、面白いw」「新しいマスコットか?」と盛り上がっている。
春太の絶叫は、今日もまた、ルナの笑顔の引き立て役として消費されるのであった。
0
あなたにおすすめの小説
春の雨はあたたかいー家出JKがオッサンの嫁になって女子大生になるまでのお話
登夢
恋愛
春の雨の夜に出会った訳あり家出JKと真面目な独身サラリーマンの1年間の同居生活を綴ったラブストーリーです。私は家出JKで春の雨の日の夜に駅前にいたところオッサンに拾われて家に連れ帰ってもらった。家出の訳を聞いたオッサンは、自分と同じに境遇に同情して私を同居させてくれた。同居の代わりに私は家事を引き受けることにしたが、真面目なオッサンは私を抱こうとしなかった。18歳になったときオッサンにプロポーズされる。
敵に貞操を奪われて癒しの力を失うはずだった聖女ですが、なぜか前より漲っています
藤谷 要
恋愛
サルサン国の聖女たちは、隣国に征服される際に自国の王の命で殺されそうになった。ところが、侵略軍将帥のマトルヘル侯爵に助けられた。それから聖女たちは侵略国に仕えるようになったが、一か月後に筆頭聖女だったルミネラは命の恩人の侯爵へ嫁ぐように国王から命じられる。
結婚披露宴では、陛下に側妃として嫁いだ旧サルサン国王女が出席していたが、彼女は侯爵に腕を絡めて「陛下の手がつかなかったら一年後に妻にしてほしい」と頼んでいた。しかも、侯爵はその手を振り払いもしない。
聖女は愛のない交わりで神の加護を失うとされているので、当然白い結婚だと思っていたが、初夜に侯爵のメイアスから体の関係を迫られる。彼は命の恩人だったので、ルミネラはそのまま彼を受け入れた。
侯爵がかつての恋人に似ていたとはいえ、侯爵と孤児だった彼は全く別人。愛のない交わりだったので、当然力を失うと思っていたが、なぜか以前よりも力が漲っていた。
※全11話 2万字程度の話です。
ゲーム未登場の性格最悪な悪役令嬢に転生したら推しの妻だったので、人生の恩人である推しには離婚して私以外と結婚してもらいます!
クナリ
ファンタジー
江藤樹里は、かつて画家になることを夢見ていた二十七歳の女性。
ある日気がつくと、彼女は大好きな乙女ゲームであるハイグランド・シンフォニーの世界へ転生していた。
しかし彼女が転生したのは、ヘビーユーザーであるはずの自分さえ知らない、ユーフィニアという女性。
ユーフィニアがどこの誰なのかが分からないまま戸惑う樹里の前に、ユーフィニアに仕えているメイドや、樹里がゲーム内で最も推しているキャラであり、どん底にいたときの自分の心を救ってくれたリルベオラスらが現れる。
そして樹里は、絶世の美貌を持ちながらもハイグラの世界では稀代の悪女とされているユーフィニアの実情を知っていく。
国政にまで影響をもたらすほどの悪名を持つユーフィニアを、最愛の恩人であるリルベオラスの妻でいさせるわけにはいかない。
樹里は、ゲーム未登場ながら圧倒的なアクの強さを持つユーフィニアをリルベオラスから引き離すべく、離婚を目指して動き始めた。
没落貴族は最果ての港で夢を見る〜政敵の公爵令嬢と手を組み、忘れられた航路を拓いて帝国の海を制覇する〜
namisan
ファンタジー
日本の海運会社に勤めていた男は、事故死し、異世界の没落貴族の三男ミナト・アークライトとして転生した。
かつては王国の海運業を牛耳ったアークライト家も、今や政争に敗れた見る影もない存在。ミナト自身も、厄介払い同然に、寂れた港町「アルトマール」へ名ばかりの代官として追いやられていた。
無気力な日々を過ごしていたある日、前世の海運知識と経験が完全に覚醒する。ミナトは気づいた。魔物が蔓延り、誰もが見捨てたこの港こそ、アークライト家再興の礎となる「宝の山」であると。
前世の知識と、この世界で得た風を読む魔法「風詠み」を武器に、家の再興を決意したミナト。しかし、その矢先、彼の前に最大の障害が現れる。
アークライト家を没落させた政敵、ルクスブルク公爵家の令嬢セラフィーナ。彼女は王命を受け、価値の失われた港を閉鎖するため、監察官としてアルトマールに乗り込んできたのだ。
「このような非効率な施設は、速やかに閉鎖すべきですわ」
家の再興を賭けて港を再生させたい没落貴族と、王国の未来のために港を閉鎖したいエリート令嬢。
立場も思想も水と油の二人が、互いの野望のために手を組むとき、帝国の経済、そして世界の物流は、歴史的な転換点を迎えることになる。
これは、一人の男が知識と魔法で巨大な船団を組織し、帝国の海を制覇するまでの物語。
落ちこぼれ村娘、拾った王子に溺愛される。
いっぺいちゃん
恋愛
辺境の村で育った元気娘 ミレイ。
ある日、森で倒れていた金髪の青年を助けるが、
実は彼は国一の人気者 完璧王子レオン だった。
だがレオンは外に出ると人格がゆるみ、
王宮で見せる完璧さは作ったキャラだった。
ミレイにだけ本音を見せるようになり、
彼は彼女に依存気味に溺愛してくる。
しかしレオンの完璧さには、
王宫の闇に関わる秘密があって——
ミレイはレオンの仮面を剥がしながら、
彼を救う本当の王子に導いていく。
※表紙のイラストは画像生成AIによって作られたものです。
※この作品は「小説家になろう」でも同時投稿しています。
バッドエンド予定の悪役令嬢が溺愛ルートを選んでみたら、お兄様に愛されすぎて脇役から主役になりました
美咲アリス
恋愛
目が覚めたら公爵令嬢だった!?貴族に生まれ変わったのはいいけれど、美形兄に殺されるバッドエンドの悪役令嬢なんて絶対困る!!死にたくないなら冷酷非道な兄のヴィクトルと仲良くしなきゃいけないのにヴィクトルは氷のように冷たい男で⋯⋯。「どうしたらいいの?」果たして私の運命は?
「お前みたいな卑しい闇属性の魔女など側室でもごめんだ」と言われましたが、私も殿下に嫁ぐ気はありません!
野生のイエネコ
恋愛
闇の精霊の加護を受けている私は、闇属性を差別する国で迫害されていた。いつか私を受け入れてくれる人を探そうと夢に見ていたデビュタントの舞踏会で、闇属性を差別する王太子に罵倒されて心が折れてしまう。
私が国を出奔すると、闇精霊の森という場所に住まう、不思議な男性と出会った。なぜかその男性が私の事情を聞くと、国に与えられた闇精霊の加護が消滅して、国は大混乱に。
そんな中、闇精霊の森での生活は穏やかに進んでいく。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる