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EP 6
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深夜の暴走と、伝説の総長
深夜2時。
春太がPCローンの悪夢にうなされながら眠っている頃。
「小腹が空きましたわ……」
ふと目を覚ましたルナは、リビングでむくりと起き上がった。
配信で稼いだスパチャはすべてネギオ管理の口座(※春太名義で勝手に開設)に入っているが、手元には春太が「非常用」と渡してくれた千円札が一枚ある。
「そうだわ、『こんびに』に行きましょう。あそこなら『ぷりん』という宝石が売っていると聞きました」
ルナは千円札を握りしめ、静かに玄関を出た。
春太の家から最寄りのコンビニまでは、徒歩5分。一本道だ。
しかし、彼女はルナ・シンフォニア。
「ええと、北はあっちね」
彼女は迷いなく、コンビニとは真逆の方向へ、しかもなぜか高速道路の入り口(徒歩禁止)に向かって歩き出した。
その足取りは、時空さえも歪める。
気がつけば彼女は、世田谷区から数十キロ離れた、神奈川県のとある峠道に立っていた。
ブォン! ブォォォォン!!
パラリラパラリラ~♪
静寂な山道に、爆音とミュージックホーンが響き渡る。
北関東最大の暴走族『夜露死苦(ヨロシク)連合』。
総勢50台の改造バイクが、集会を行っている最中だった。
「ああん? なんだあの姉ちゃん」
ヘッドライトの光の中に、ポツンと立つ金髪の美女。
総長の『ウルフ健(ケン)』が、族車(改造バイク)を停めて凄んだ。
「おいコラ! こんなトコで何してんだ? 俺達の集会にカチコミかぁ?」
「こんばんは。……あの、ここは『せぶんいれぶん』でしょうか?」
ルナは首をかしげた。
特攻服を着た男たちを見て、彼女は目を輝かせる。
「まあ! その刺繍が入った長い外套……あなた達、この国の騎士団の方ですね! 夜警ご苦労様です!」
「あ? 騎士団? ……なんだコイツ、電波か?」
ザッ、と手下たちがバイクから降りて囲む。
男たちの視線が、ルナの美しい肢体を舐め回すように動いた。
「へへ、よく見りゃ上玉じゃねえか。なあ、俺の後ろ(シート)に乗らないか? 『天国』まで連れてってやるよ」
ウルフ健がニヤリと笑い、ルナの腕を掴もうとした。
その時。
ドゴォォォォォン!!
アスファルトを突き破り、巨大な影が降ってきた。
「――私の主の肌に、その汚い油汚れの手で触れるな。排気ガス臭い猿どもめ」
粉塵の中から現れたのは、ネギオだった。
ただし、普段の執事姿ではない。
【機動形態:ナイト(騎士)】
下半身が、巨大な二輪のバイク――いや、植物の根と蔦が複雑に絡み合い、タイヤを形成した『生体バイク』となっていた。
エンジン音の代わりに、地響きのような唸り声を上げている。
「な、なんだコリャアアア!?」
「バ、バイク人間!?」
「ネギオ! 迎えに来てくれたのね!」
ネギオはルナを優雅に抱え上げ、自身の背中(シート部分)に乗せた。
「姫様、コンビニに行くと言って、なぜ県境を越えるのですか。……まあいい。ついでにゴミ掃除と行きましょう」
ネギオは冷徹な緑色の瞳で、暴走族たちを見下した。
「おい、猿。貴様らが誇るその鉄屑(バイク)で、私より『速い』と言うなら見逃してやる。……かかってこい」
「あ、ああん!? ナメんじゃねえぞオラァ! 俺のマシンは直管マフラーの怪物だ!!」
ウルフ健がブチ切れ、アクセルを全開にした。
深夜の峠バトル、勃発。
「行くぞオラァァァ!!」
族車がロケットスタートを切る。
しかし。
「遅い。カタツムリの方がマシだ」
ネギオのタイヤから、無数の蔦がスパイクのように飛び出した。
ズダダダダダッ!!
ガードレールを蹴り、垂直な崖を走り、物理法則を無視したショートカット。
「は!? 崖を走って……!?」
「終わりだ」
ネギオは一瞬でウルフ健の横に並ぶと、右腕をランス(槍)に変形させた。
「『除草(クラッシュ)』」
ガシャアアアアン!!
ただの一撃。
ウルフ健の自慢のバイクは、前輪を粉砕され、火花を散らして回転しながら吹き飛んだ。
(※健本人は、ネギオの慈悲で襟首を掴まれ、無傷で地面に転がされた)
「ひ、ひいい……! ば、バケモンだ……!」
地面に尻餅をついた総長と、凍りつく手下たち。
月光を背に、ネギオ(バイク形態)に跨るルナは、慈愛に満ちた笑顔で言った。
「皆さん、怪我はありませんか? 元気があってよろしいですけど、夜更かしはお肌に毒ですよ?」
その圧倒的な強者(ネギオ)を従え、あくまで余裕の微笑みを崩さないルナ。
不良たちの目には、彼女が『魔王』にも『女神』にも見えた。
「あ……あねご……」
「へ?」
「俺達の負けだ……! いや、あんたこそが真の『走り屋』だ!!」
ウルフ健は震える手で、自分の着ていた『総長』の文字が入った特攻服を脱ぎ、ルナに差し出した。
「これを着てくれ! 今日からあんたが『夜露死苦連合』の総長だ!!」
「総長! 総長! 総長!」
50人のヤンキーが一斉に頭を下げる。
ルナはきょとんとしながら、渡された特攻服(サイズぶかぶか)を羽織った。
「まあ、素敵な外套! 『夜露死苦』……夜露が死ぬほど苦い? 詩的ですわね!」
「(……姫様、それは詩ではなく当て字という底辺の文化です)」
ネギオは呆れたが、まあ姫様が喜んでいるならいいかと黙認した。
「じゃあ、私達は帰りますね。ハルタ様が心配しますから」
「へい! 姐御! 俺達が家まで護衛(パレード)します!!」
こうして。
コンビニに行こうとしただけのルナは、なぜか北関東最強の暴走族を傘下に収め、深夜の国道を大爆走して帰宅することになったのである。
目的地は――内閣府職員、青田春太の自宅(アパート)。
近所迷惑などという言葉では生ぬるい、騒音のパレードが迫っていた。
深夜2時。
春太がPCローンの悪夢にうなされながら眠っている頃。
「小腹が空きましたわ……」
ふと目を覚ましたルナは、リビングでむくりと起き上がった。
配信で稼いだスパチャはすべてネギオ管理の口座(※春太名義で勝手に開設)に入っているが、手元には春太が「非常用」と渡してくれた千円札が一枚ある。
「そうだわ、『こんびに』に行きましょう。あそこなら『ぷりん』という宝石が売っていると聞きました」
ルナは千円札を握りしめ、静かに玄関を出た。
春太の家から最寄りのコンビニまでは、徒歩5分。一本道だ。
しかし、彼女はルナ・シンフォニア。
「ええと、北はあっちね」
彼女は迷いなく、コンビニとは真逆の方向へ、しかもなぜか高速道路の入り口(徒歩禁止)に向かって歩き出した。
その足取りは、時空さえも歪める。
気がつけば彼女は、世田谷区から数十キロ離れた、神奈川県のとある峠道に立っていた。
ブォン! ブォォォォン!!
パラリラパラリラ~♪
静寂な山道に、爆音とミュージックホーンが響き渡る。
北関東最大の暴走族『夜露死苦(ヨロシク)連合』。
総勢50台の改造バイクが、集会を行っている最中だった。
「ああん? なんだあの姉ちゃん」
ヘッドライトの光の中に、ポツンと立つ金髪の美女。
総長の『ウルフ健(ケン)』が、族車(改造バイク)を停めて凄んだ。
「おいコラ! こんなトコで何してんだ? 俺達の集会にカチコミかぁ?」
「こんばんは。……あの、ここは『せぶんいれぶん』でしょうか?」
ルナは首をかしげた。
特攻服を着た男たちを見て、彼女は目を輝かせる。
「まあ! その刺繍が入った長い外套……あなた達、この国の騎士団の方ですね! 夜警ご苦労様です!」
「あ? 騎士団? ……なんだコイツ、電波か?」
ザッ、と手下たちがバイクから降りて囲む。
男たちの視線が、ルナの美しい肢体を舐め回すように動いた。
「へへ、よく見りゃ上玉じゃねえか。なあ、俺の後ろ(シート)に乗らないか? 『天国』まで連れてってやるよ」
ウルフ健がニヤリと笑い、ルナの腕を掴もうとした。
その時。
ドゴォォォォォン!!
アスファルトを突き破り、巨大な影が降ってきた。
「――私の主の肌に、その汚い油汚れの手で触れるな。排気ガス臭い猿どもめ」
粉塵の中から現れたのは、ネギオだった。
ただし、普段の執事姿ではない。
【機動形態:ナイト(騎士)】
下半身が、巨大な二輪のバイク――いや、植物の根と蔦が複雑に絡み合い、タイヤを形成した『生体バイク』となっていた。
エンジン音の代わりに、地響きのような唸り声を上げている。
「な、なんだコリャアアア!?」
「バ、バイク人間!?」
「ネギオ! 迎えに来てくれたのね!」
ネギオはルナを優雅に抱え上げ、自身の背中(シート部分)に乗せた。
「姫様、コンビニに行くと言って、なぜ県境を越えるのですか。……まあいい。ついでにゴミ掃除と行きましょう」
ネギオは冷徹な緑色の瞳で、暴走族たちを見下した。
「おい、猿。貴様らが誇るその鉄屑(バイク)で、私より『速い』と言うなら見逃してやる。……かかってこい」
「あ、ああん!? ナメんじゃねえぞオラァ! 俺のマシンは直管マフラーの怪物だ!!」
ウルフ健がブチ切れ、アクセルを全開にした。
深夜の峠バトル、勃発。
「行くぞオラァァァ!!」
族車がロケットスタートを切る。
しかし。
「遅い。カタツムリの方がマシだ」
ネギオのタイヤから、無数の蔦がスパイクのように飛び出した。
ズダダダダダッ!!
ガードレールを蹴り、垂直な崖を走り、物理法則を無視したショートカット。
「は!? 崖を走って……!?」
「終わりだ」
ネギオは一瞬でウルフ健の横に並ぶと、右腕をランス(槍)に変形させた。
「『除草(クラッシュ)』」
ガシャアアアアン!!
ただの一撃。
ウルフ健の自慢のバイクは、前輪を粉砕され、火花を散らして回転しながら吹き飛んだ。
(※健本人は、ネギオの慈悲で襟首を掴まれ、無傷で地面に転がされた)
「ひ、ひいい……! ば、バケモンだ……!」
地面に尻餅をついた総長と、凍りつく手下たち。
月光を背に、ネギオ(バイク形態)に跨るルナは、慈愛に満ちた笑顔で言った。
「皆さん、怪我はありませんか? 元気があってよろしいですけど、夜更かしはお肌に毒ですよ?」
その圧倒的な強者(ネギオ)を従え、あくまで余裕の微笑みを崩さないルナ。
不良たちの目には、彼女が『魔王』にも『女神』にも見えた。
「あ……あねご……」
「へ?」
「俺達の負けだ……! いや、あんたこそが真の『走り屋』だ!!」
ウルフ健は震える手で、自分の着ていた『総長』の文字が入った特攻服を脱ぎ、ルナに差し出した。
「これを着てくれ! 今日からあんたが『夜露死苦連合』の総長だ!!」
「総長! 総長! 総長!」
50人のヤンキーが一斉に頭を下げる。
ルナはきょとんとしながら、渡された特攻服(サイズぶかぶか)を羽織った。
「まあ、素敵な外套! 『夜露死苦』……夜露が死ぬほど苦い? 詩的ですわね!」
「(……姫様、それは詩ではなく当て字という底辺の文化です)」
ネギオは呆れたが、まあ姫様が喜んでいるならいいかと黙認した。
「じゃあ、私達は帰りますね。ハルタ様が心配しますから」
「へい! 姐御! 俺達が家まで護衛(パレード)します!!」
こうして。
コンビニに行こうとしただけのルナは、なぜか北関東最強の暴走族を傘下に収め、深夜の国道を大爆走して帰宅することになったのである。
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