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第二章 春太マグロ漁船に乗せられる
EP 2
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地獄の労働と、極上の大トロ
ザパァァァン!!
インド洋の荒波が、容赦なく甲板を洗う。
船体はジェットコースターのように揺れ、立っているだけでもやっとの状態だ。
「オラァ新入り! 手が止まってんぞ! 網引けぇぇぇ!!」
「は、はいぃぃぃ!! うっ、気持ち悪……オェェェ……」
春太は、カッパ姿で波しぶきとマグロの血を浴びながら、必死にロープを引いていた。
船酔いはとっくに限界を超え、今はただ生存本能だけで動いている。
指の皮はめくれ、全身の筋肉が悲鳴を上げている。
(なんで……なんで俺、公務員なのにマグロと格闘してるんだ……)
これが、国の決めた更生プログラム(強制労働)。
逃げ場のない海の上で、春太は絶望を噛み締めていた。
その数メートル横。
そこには、同じ船の上とは思えない**「別世界」**が広がっていた。
「まあ! 今日のアトラクション(時化)は激しいですわね!」
ルナが優雅にパラソル(魔法障壁付き)の下で、デッキチェアに座っている。
どんな大波が来ても、彼女の周りだけは無風。
手にはトロピカルジュース(ネギオ特製)が握られている。
「姫様。本日の収穫が上がりましたよ」
ネギオが、巨大なマグロを引きずって現れた。
彼はカッパなど着ていない。執事服のままだ。
しかも、釣り竿も網も使っていない。自身の腕から伸ばした無数の「蔦」を海中に放ち、泳いでいるマグロを直接捕縛して引き上げたのだ。
「フン……。人間どもの漁法は非効率極まりない。一本釣り? 笑わせますね。根こそぎ毟(むし)り取るのが『収穫』というものです」
周囲の漁師たちが、ドン引きしながらも喝采を送る。
「すげえぞ緑の兄ちゃん! また大漁だ!」
「兄ちゃんがいりゃあ、俺達寝ててもいいんじゃねえか!?」
ネギオはマグロ漁船の英雄(エース)となっていた。
「さあ、姫様。獲れたてをどうぞ」
スパァン!
ネギオが指先を鋭利な葉に変形させ、一閃。
200キロ近いマグロが、空中で瞬時に解体された。
骨、皮、赤身、トロが美しく分離し、最も脂の乗った「カマトロ」の部分が、氷を敷いた銀の皿に盛り付けられる。
「はい。わさび醤油で召し上がれ」
「わぁ! 美味しそう! いただきます!」
ルナがピンク色の刺身を口に運ぶ。
口の中で脂が溶け出し、濃厚な旨味が広がる。
「ん~~っ! 美味しい! ほっぺたが落ちそうですわ!」
「鮮度が違いますからね。死後硬直が始まる前の、生命の味です」
その光景を、春太は亡霊のような顔で見ていた。
「……うまそう……」
「おや、虫。見ていたのですか」
ネギオが蔑むような目を向ける。
「貴様の食事は、後で出る『マグロの目玉の煮付け(残り物)』ですよ。働かざる者食うべからずです」
「そんなぁ……」
春太が膝から崩れ落ちそうになった時、ルナが気づいて手を振った。
「あら、ハルタ様! そんなところに立っていないで、ご一緒しましょうよ!」
「えっ、いいの!?」
「もちろんです! はい、あーん!」
ルナが箸で大トロを摘み、春太の方へ差し出す。
女神だ。やはり彼女は女神だったのだ。
春太は涙を流しながら、這うように近づく。
「ルナちゃん……ありがとう……いただくよ……」
口を開け、至高の大トロまであと数センチ――。
バチィィィン!!
背後から飛んできた太いロープが、春太の背中を叩いた。
「オラァァァ!! サボってんじゃねえ新入り!! 網が絡まってんだよ! 潜って解いてこい!!」
鬼船長の怒号。
春太は首根っこを掴まれ、大トロから引き剥がされた。
「あ、ああっ! 俺のトロ! 俺の癒やしがぁぁぁ!!」
「ハルタ様ー? お仕事熱心ですわねぇ……」
遠ざかるルナと大トロ。
春太は再び冷たい雨と波の中に放り込まれた。
口に入ったのは、極上の脂ではなく、しょっぱい海水だけだった。
ザパァァァン!!
インド洋の荒波が、容赦なく甲板を洗う。
船体はジェットコースターのように揺れ、立っているだけでもやっとの状態だ。
「オラァ新入り! 手が止まってんぞ! 網引けぇぇぇ!!」
「は、はいぃぃぃ!! うっ、気持ち悪……オェェェ……」
春太は、カッパ姿で波しぶきとマグロの血を浴びながら、必死にロープを引いていた。
船酔いはとっくに限界を超え、今はただ生存本能だけで動いている。
指の皮はめくれ、全身の筋肉が悲鳴を上げている。
(なんで……なんで俺、公務員なのにマグロと格闘してるんだ……)
これが、国の決めた更生プログラム(強制労働)。
逃げ場のない海の上で、春太は絶望を噛み締めていた。
その数メートル横。
そこには、同じ船の上とは思えない**「別世界」**が広がっていた。
「まあ! 今日のアトラクション(時化)は激しいですわね!」
ルナが優雅にパラソル(魔法障壁付き)の下で、デッキチェアに座っている。
どんな大波が来ても、彼女の周りだけは無風。
手にはトロピカルジュース(ネギオ特製)が握られている。
「姫様。本日の収穫が上がりましたよ」
ネギオが、巨大なマグロを引きずって現れた。
彼はカッパなど着ていない。執事服のままだ。
しかも、釣り竿も網も使っていない。自身の腕から伸ばした無数の「蔦」を海中に放ち、泳いでいるマグロを直接捕縛して引き上げたのだ。
「フン……。人間どもの漁法は非効率極まりない。一本釣り? 笑わせますね。根こそぎ毟(むし)り取るのが『収穫』というものです」
周囲の漁師たちが、ドン引きしながらも喝采を送る。
「すげえぞ緑の兄ちゃん! また大漁だ!」
「兄ちゃんがいりゃあ、俺達寝ててもいいんじゃねえか!?」
ネギオはマグロ漁船の英雄(エース)となっていた。
「さあ、姫様。獲れたてをどうぞ」
スパァン!
ネギオが指先を鋭利な葉に変形させ、一閃。
200キロ近いマグロが、空中で瞬時に解体された。
骨、皮、赤身、トロが美しく分離し、最も脂の乗った「カマトロ」の部分が、氷を敷いた銀の皿に盛り付けられる。
「はい。わさび醤油で召し上がれ」
「わぁ! 美味しそう! いただきます!」
ルナがピンク色の刺身を口に運ぶ。
口の中で脂が溶け出し、濃厚な旨味が広がる。
「ん~~っ! 美味しい! ほっぺたが落ちそうですわ!」
「鮮度が違いますからね。死後硬直が始まる前の、生命の味です」
その光景を、春太は亡霊のような顔で見ていた。
「……うまそう……」
「おや、虫。見ていたのですか」
ネギオが蔑むような目を向ける。
「貴様の食事は、後で出る『マグロの目玉の煮付け(残り物)』ですよ。働かざる者食うべからずです」
「そんなぁ……」
春太が膝から崩れ落ちそうになった時、ルナが気づいて手を振った。
「あら、ハルタ様! そんなところに立っていないで、ご一緒しましょうよ!」
「えっ、いいの!?」
「もちろんです! はい、あーん!」
ルナが箸で大トロを摘み、春太の方へ差し出す。
女神だ。やはり彼女は女神だったのだ。
春太は涙を流しながら、這うように近づく。
「ルナちゃん……ありがとう……いただくよ……」
口を開け、至高の大トロまであと数センチ――。
バチィィィン!!
背後から飛んできた太いロープが、春太の背中を叩いた。
「オラァァァ!! サボってんじゃねえ新入り!! 網が絡まってんだよ! 潜って解いてこい!!」
鬼船長の怒号。
春太は首根っこを掴まれ、大トロから引き剥がされた。
「あ、ああっ! 俺のトロ! 俺の癒やしがぁぁぁ!!」
「ハルタ様ー? お仕事熱心ですわねぇ……」
遠ざかるルナと大トロ。
春太は再び冷たい雨と波の中に放り込まれた。
口に入ったのは、極上の脂ではなく、しょっぱい海水だけだった。
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