転生したらドラゴンに拾われた

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最果ての森編

21. 魔法の練習②

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「マンティコアは···とりあえず、血抜きだけしておこうか」

「俺がやっておく」

「ありがとう、ジル」

「ああ」

 ジルが再び人面ライオンを抱えて家の裏へ。そこに血抜き出来る場所があるのだろうか。

 ライが僕の方へ向き直る。

「念の為に吸魔石を持っていて良かったよ。本当にもう何ともない?」

「あう」

 かなり心配をかけてしまったようだ。

「今は応急処置で吸魔石を使って体内の魔力を抜いたけど、また増えるから、体を慣らす必要があるんだ。魔法を使って魔力を消費しつつ、増えていく魔力に慣れようね」

「あう」

 体が慣れるまでは大変そうだな。でもこれでやっと魔法が使える!

「それにしても、さっきのアースショットは何だったんだい?すごい速さで飛んで行ったよ」

「あう~」

 言葉では説明出来ないので、地面に絵を描く。ドリル型弾丸だ。くるっと矢印も描いて、回転を表す。

「うーん、こんな形をイメージしたんだね?ネジの先端みたいだ。これは、回ってる?回転を加えたのかい?」

 おお、分かってくれた。

「あうあう!」

「なるほど···、こうなると···。ふむ···。こうなって···、なるほど···!」

 一人考え込んで何やら結論を得たようだ。

「ウィル君、すごいよ!これは貫通力を高めたものなんだね!形を工夫して回転を加えることで、普通のアースショットの何倍もの威力が出せる!弾の形や回転速度、魔力量などを変えて、色んなパターンで検証しなくては!」

 ライが興奮している。

「こんな発想、今まで無かった!ああ、なんてもったいない時間を過ごしたんだろう!きっと他の魔法も、工夫出来ることがたくさんあるはずだ!」

 ライの興奮が止まらない。

 興奮している人を見ると、冷静になれるな、と冷静に思った。
 そこでふと気がついた。
 そういえば、僕、さっきから一人で立てているな。レベルアップの恩恵かな?体が軽い気がする。走ってみたいけど、興奮状態のライを放っておけないので、とりあえずライの周りを歩いてみる。

 おお、歩ける!軽い。スキップ出来そうなくらい軽い。



 ジルが血抜きから戻り目にしたのは、興奮して一人で喋るライと、その周りを軽やかにスキップしている僕だった。



「ふふふ、少し取り乱してしまったよ。気にしないでもらえると嬉しいな」

 無表情で引いているジルを見て我に返ったライが、恥ずかしそうに言う。
 僕も冷静とか言いながら冷静ではなかったようだ。

「えっと、そうだ、魔力を消費しないといけなかったね」

 そうだった。

「それじゃあ、光属性の魔法を使ってみようか。今から教える魔法は、光属性の初級魔法でね、生活魔法に分類されているんだ。日常生活で使えるし、攻撃力はないから安心して使えるよ」

 ほうほう。それなら安心だ。

「暗闇を照らす魔法だよ。指先を見ててね。『ライト』」

 ライがそう唱えると、ライの人差し指の先に光が灯った。
 おお!白色のきれいな光だ。

「こうやって、指先に魔力を集めて光らせるのが一般的かな。イメージしやすいんだ。でも、自分がイメージ出来るなら、光らせる場所はどこでもいいんだよ」

 なるほど。これって、光の色は変えられないのかな?試しに、赤い光を想像する。

「『りゃいちょ』」

 か、噛むのは仕方がないんだ。
 でも成功した!右手の人差し指の先が赤く光っている。

「え?それ、火じゃないよね?え?赤い光?」

 ライが混乱している。

 左手でもやってみたい。今度は緑だ。

「『りゃいちょ』」

 灯った!

「え?緑?」

 ライの混乱が続く。

 今度は右手の中指にしようかな。

「『りゃいちょ』」

 やった!黄色に光った。

「···」 

 ライが現実を逃避した。

 今度は···肩とかもいけるんだろうか?

「『りゃいちょ』」

 両肩が青く光る。
 やった!出来た!

 それからも体のあちこちを色んな色で光らせ、全身でイルミネーションを楽しんだ。

「ふふ、ふふふふふ」

 ライが壊れた。

「綺麗だな」

 ジルのこの動じなさ、素敵。



 ふう、ちょっと疲れた。魔力をいきなり使い過ぎたからだろうか。

「ふふふ、魔力は十分消費できたみたいだね。今後もこまめに使っていくといいよ」

 ライが悟りを開いたような顔をして言う。



 家の中に戻り、しばし休憩。
 しばらくのんびりしていると、ジルがふと思い出したように言う。

「ライ、時間は大丈夫なのか?」

「ああ!もうこんな時間!すっかり忘れてたよ!急がなきゃ!」

 ライは何やら用事があるようだ。

「ジル、これ、吸魔石だよ。念の為に渡しておくから、万一ウィル君がさっきのような状態になったら、これを握らせてね」

「ああ、助かる」

「それから、ウィル君が倒したマンティコアは、私がギルドに持って行って買い取ってもらおうか?お金は次に来る時に持ってくるよ」

「いや、持っていてくれ。吸魔石の礼だ」

「えっ、それじゃあこっちが儲かっちゃうよ」

「それなら、ウィルのために色々してくれる礼だ」

「うーん、それは好きでしてるからいいんだけどね。それじゃあ今回だけは貰っておくよ。次からは、ちゃんと受け取ってもらうからね!」

「ああ、分かった」

「それじゃあ、私はこれから用事があるから、ウィル君、また今度ね。寝る前に多めに魔力を消費しておくといいよ」

 そう言って、ライは慌ただしく家を出た。


 ···『次からは』って、今後も僕が魔物を倒す前提なのか。
 これからはちゃんと目を開けて撃つようにしよう。




 種族:人族ヒューマン
 年齢:1
 レベル:27

 スキル:成長力促進、言語理解、魔力操作、魔力感知
 魔法:土弾アースショットライト
 耐性:

 加護:リインの加護
 称号:異世界からの転生者、黒龍帝の愛息子
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