41 / 115
最果ての森編
39. ライの努力
しおりを挟む
たくさんの壁に高速で跳ね返りながら笑い声をあげているファムを眺める。この遊び、スライムボディじゃないとできないよな。僕もふわふわボディの持ち主だが、さすがにあれは真似できない。別の遊びを楽しむことにしよう。
···はっ!そうだ!つい遊び心に誘われて、当初の予定を忘れるところだった。
「『土壁』」
少し離れたところに壁を作る。そしてそれに向けて、アースショットを放った。
「『土弾』」
ドスッという音がしたので見てみると、弾が壁に食い込んでいた。貫通してない!よし、もうちょっと多めに魔力を込めよう。
「『土弾』!」
今度はドスッと音がして、穴が空いた。弾は壁を抜けた後、ぽとりと落ちた。いい感じた!この壁には、これ以上アースショットに魔力を込める必要はないだろう。
「おお?ウィル、穴空けようとしてんのかー?オレもやってみたいぜ!」
テムが興味を持ったようだ。さっき、楽しく遊んでいるファムを見て、羨ましそうだったからな。君がソワソワしてたの、ちゃんと気づいてたよ。
どうぞ、と場所を譲る。
「うおお!『土弾』!」
テムが気合いを込めて魔法を放つ。ビュンッとものすごい速さで発射された弾は、壁を貫き地面にめり込んだ。
「ブハハ!よっしゃあ!穴空けてやったぜ!」
テムがイキイキしている。ぐぬぬ。ちょっと悔しいぞ。
「んん!『土壁』!」
今度はぎゅーーーっと念入りに固めて、厚さも増やした。ふはは、これならどうだ。
「うおー!やってやるぜ!『土弾』!」
今度はさらに速い!ドガッと音がして、土煙が舞う。じっと目を凝らして晴れるのを待つ。···やった!貫通してない!ふはははは!
「ブハハ!やるなーウィル!すげー堅さだぜ!」
「あうあう」
いや、君のアースショットもなかなか速かったよ、とお互いに讃え合う。
「ふふふ、君達、楽しそうだね」
あ、ライ···。
ライの近くには、壁がいくつもあった。ちょっとずつ色が濃くなっている。ライの頑張りを感じるとても綺麗なグラデーションだ、と思った。
「ふふふ、アースウォールも上出来だよ。むしろ私より、上手だよ。ふふふ、それじゃあ、次に進もうか」
なんだかライが暗黒面に落ちそうな雰囲気だ。ライが丁寧に教えてくれるから、僕はすぐに理解できるんだよ!ライがいないと、他に誰がちゃんとした言葉で教えてくれるんだ!
それを伝えたくて、思わずライの足にがしっとしがみつく。
「うん?どうしたんだい、ウィル君?」
どう伝えればいいんだ。
「おちえる、うりぇちい、あいあと」
教えてもらえるの、嬉しいよ、ありがとうって、言いたかったんだ。たどたどしいけど、分かってもらえたかな···?
「あ、···そうだね。教えることは、私が得意だからね。ふふ、ウィル君、ありがとう」
ライが頭を撫でてくれる。ああ、良かった。伝わった。ライの纏う空気がいつもの穏やかなものに戻って安心する。ほっとしていると、ジルがこちらへ来た。
「ライ、お前は俺やテム、ファムにはないものを持っている。···俺達は、お前を尊敬している」
「ジル···!」
おお。なんとも感動的なシーンだ。イケメン二人がこんなセリフを言うと、ドラマを観ているような気分になる。
「んん?ライ、落ち込んでたのか?お前、オレよりずっと頭いいのによー、なんでだ?」
「ライはすごいよー!頑張り屋さんで、とっても優しいよー!」
テムとファムも集まってきた。
「みんな···、ありがとう」
ライはみんなのことをすごいって思っているみたいだけど、みんなもライのいいところ、いっぱい知ってるんだ。こんなふうにお互いに尊敬し合える関係って、すごく素敵だ。僕もいつか、こんな友達ができたらいいな。そう思っていると、ライがしゃがんで目線を合わせ、頭を撫でてくれた。
「ふふ、ウィル君のおかげだね。本当に嬉しいよ、ありがとう」
嬉しいと思ってもらえて、嬉しい。でもこれは、今までライが頑張ってきたからこそなんだ。だから僕は背伸びをして、ライの頭を撫でた。
「ウィル君···!」
ライが一瞬目を見開いて驚き、がばっと僕を抱きしめた。
「ふふ、頑張って良かったなって、ウィル君に出会えて良かったなって、すごく思うよ」
僕も、ライに出会えて良かったよ。
「あのね、ぼくねー、みんなと友達になれて、とっても嬉しいよー!」
ファムがぽんぽん跳ねながら言う。
「オ、オレもだぜ!」
テムがちょっと顔を赤くしている。照れ屋さんかな?
「俺もだ」
エメラルドの瞳が優しい。ああ、みんな、最高だ。僕もこんなに素敵な人達と出会えて、本当に良かった。
「あう!」
だから僕も、ライにぎゅっと抱きついて元気良く同意した。
「ふふ、思いがけずみんなから元気をもらっちゃったよ」
スッキリした顔でライが立ち上がる。
「私は本当にいい仲間を持ったよ。ウィル君も、これからもよろしくね」
「あう!」
もちろんだよ!
「ふふ、ありがとう。ウィル君に魔法を教えるのはすごく楽しいよ。毎回面白いものを見せてくれるからね」
僕は、魔法そのものが面白い。前世にはなかったものだからね。
「魔法の練習ってね、最初は魔力が足りなくて不発に終わることも多いんだけどね。ウィル君はもともと魔力が多いし、魔力操作も出来るから、こんなに習得がスムーズなのかもしれないね」
最初に魔力操作を教えてくれたライに感謝だ。
「こんなに改良できるのは、豊富な魔力と前世の知識のおかげかな?ウィル君は、この世界の常識では思いつかないような発想をするからね。ふふ、ライトに色をつけたりとか」
そうなのか。まあ、そういうものなのかもしれない。僕は自分自身がクリエイティブだとは思わない。前世の記憶がなければ、投げライトなんて作らなかった可能性が高い。
「ふふ、それじゃあもう一つ、新しい魔法の練習をしようか」
おお!嬉しい!新しい魔法には、いつだってわくわくする。
···ところで、この世界にはドラマとか映画とかってないのだろうか。ジルとライがダブル主演する友情物語のDVDなんかあれば、何がなんでも絶対に手に入れるのに。
···はっ!そうだ!つい遊び心に誘われて、当初の予定を忘れるところだった。
「『土壁』」
少し離れたところに壁を作る。そしてそれに向けて、アースショットを放った。
「『土弾』」
ドスッという音がしたので見てみると、弾が壁に食い込んでいた。貫通してない!よし、もうちょっと多めに魔力を込めよう。
「『土弾』!」
今度はドスッと音がして、穴が空いた。弾は壁を抜けた後、ぽとりと落ちた。いい感じた!この壁には、これ以上アースショットに魔力を込める必要はないだろう。
「おお?ウィル、穴空けようとしてんのかー?オレもやってみたいぜ!」
テムが興味を持ったようだ。さっき、楽しく遊んでいるファムを見て、羨ましそうだったからな。君がソワソワしてたの、ちゃんと気づいてたよ。
どうぞ、と場所を譲る。
「うおお!『土弾』!」
テムが気合いを込めて魔法を放つ。ビュンッとものすごい速さで発射された弾は、壁を貫き地面にめり込んだ。
「ブハハ!よっしゃあ!穴空けてやったぜ!」
テムがイキイキしている。ぐぬぬ。ちょっと悔しいぞ。
「んん!『土壁』!」
今度はぎゅーーーっと念入りに固めて、厚さも増やした。ふはは、これならどうだ。
「うおー!やってやるぜ!『土弾』!」
今度はさらに速い!ドガッと音がして、土煙が舞う。じっと目を凝らして晴れるのを待つ。···やった!貫通してない!ふはははは!
「ブハハ!やるなーウィル!すげー堅さだぜ!」
「あうあう」
いや、君のアースショットもなかなか速かったよ、とお互いに讃え合う。
「ふふふ、君達、楽しそうだね」
あ、ライ···。
ライの近くには、壁がいくつもあった。ちょっとずつ色が濃くなっている。ライの頑張りを感じるとても綺麗なグラデーションだ、と思った。
「ふふふ、アースウォールも上出来だよ。むしろ私より、上手だよ。ふふふ、それじゃあ、次に進もうか」
なんだかライが暗黒面に落ちそうな雰囲気だ。ライが丁寧に教えてくれるから、僕はすぐに理解できるんだよ!ライがいないと、他に誰がちゃんとした言葉で教えてくれるんだ!
それを伝えたくて、思わずライの足にがしっとしがみつく。
「うん?どうしたんだい、ウィル君?」
どう伝えればいいんだ。
「おちえる、うりぇちい、あいあと」
教えてもらえるの、嬉しいよ、ありがとうって、言いたかったんだ。たどたどしいけど、分かってもらえたかな···?
「あ、···そうだね。教えることは、私が得意だからね。ふふ、ウィル君、ありがとう」
ライが頭を撫でてくれる。ああ、良かった。伝わった。ライの纏う空気がいつもの穏やかなものに戻って安心する。ほっとしていると、ジルがこちらへ来た。
「ライ、お前は俺やテム、ファムにはないものを持っている。···俺達は、お前を尊敬している」
「ジル···!」
おお。なんとも感動的なシーンだ。イケメン二人がこんなセリフを言うと、ドラマを観ているような気分になる。
「んん?ライ、落ち込んでたのか?お前、オレよりずっと頭いいのによー、なんでだ?」
「ライはすごいよー!頑張り屋さんで、とっても優しいよー!」
テムとファムも集まってきた。
「みんな···、ありがとう」
ライはみんなのことをすごいって思っているみたいだけど、みんなもライのいいところ、いっぱい知ってるんだ。こんなふうにお互いに尊敬し合える関係って、すごく素敵だ。僕もいつか、こんな友達ができたらいいな。そう思っていると、ライがしゃがんで目線を合わせ、頭を撫でてくれた。
「ふふ、ウィル君のおかげだね。本当に嬉しいよ、ありがとう」
嬉しいと思ってもらえて、嬉しい。でもこれは、今までライが頑張ってきたからこそなんだ。だから僕は背伸びをして、ライの頭を撫でた。
「ウィル君···!」
ライが一瞬目を見開いて驚き、がばっと僕を抱きしめた。
「ふふ、頑張って良かったなって、ウィル君に出会えて良かったなって、すごく思うよ」
僕も、ライに出会えて良かったよ。
「あのね、ぼくねー、みんなと友達になれて、とっても嬉しいよー!」
ファムがぽんぽん跳ねながら言う。
「オ、オレもだぜ!」
テムがちょっと顔を赤くしている。照れ屋さんかな?
「俺もだ」
エメラルドの瞳が優しい。ああ、みんな、最高だ。僕もこんなに素敵な人達と出会えて、本当に良かった。
「あう!」
だから僕も、ライにぎゅっと抱きついて元気良く同意した。
「ふふ、思いがけずみんなから元気をもらっちゃったよ」
スッキリした顔でライが立ち上がる。
「私は本当にいい仲間を持ったよ。ウィル君も、これからもよろしくね」
「あう!」
もちろんだよ!
「ふふ、ありがとう。ウィル君に魔法を教えるのはすごく楽しいよ。毎回面白いものを見せてくれるからね」
僕は、魔法そのものが面白い。前世にはなかったものだからね。
「魔法の練習ってね、最初は魔力が足りなくて不発に終わることも多いんだけどね。ウィル君はもともと魔力が多いし、魔力操作も出来るから、こんなに習得がスムーズなのかもしれないね」
最初に魔力操作を教えてくれたライに感謝だ。
「こんなに改良できるのは、豊富な魔力と前世の知識のおかげかな?ウィル君は、この世界の常識では思いつかないような発想をするからね。ふふ、ライトに色をつけたりとか」
そうなのか。まあ、そういうものなのかもしれない。僕は自分自身がクリエイティブだとは思わない。前世の記憶がなければ、投げライトなんて作らなかった可能性が高い。
「ふふ、それじゃあもう一つ、新しい魔法の練習をしようか」
おお!嬉しい!新しい魔法には、いつだってわくわくする。
···ところで、この世界にはドラマとか映画とかってないのだろうか。ジルとライがダブル主演する友情物語のDVDなんかあれば、何がなんでも絶対に手に入れるのに。
84
あなたにおすすめの小説
妻からの手紙~18年の後悔を添えて~
Mio
ファンタジー
妻から手紙が来た。
妻が死んで18年目の今日。
息子の誕生日。
「お誕生日おめでとう、ルカ!愛してるわ。エミリア・シェラード」
息子は…17年前に死んだ。
手紙はもう一通あった。
俺はその手紙を読んで、一生分の後悔をした。
------------------------------
(完結)醜くなった花嫁の末路「どうぞ、お笑いください。元旦那様」
音爽(ネソウ)
ファンタジー
容姿が気に入らないと白い結婚を強いられた妻。
本邸から追い出されはしなかったが、夫は離れに愛人を囲い顔さえ見せない。
しかし、3年と待たず離縁が決定する事態に。そして元夫の家は……。
*6月18日HOTランキング入りしました、ありがとうございます。
つまらなかった乙女ゲームに転生しちゃったので、サクッと終わらすことにしました
蒼羽咲
ファンタジー
つまらなかった乙女ゲームに転生⁈
絵に惚れ込み、一目惚れキャラのためにハードまで買ったが内容が超つまらなかった残念な乙女ゲームに転生してしまった。
絵は超好みだ。内容はご都合主義の聖女なお花畑主人公。攻略イケメンも顔は良いがちょろい対象ばかり。てこたぁ逆にめちゃくちゃ住み心地のいい場所になるのでは⁈と気づき、テンションが一気に上がる!!
聖女など面倒な事はする気はない!サクッと攻略終わらせてぐーたら生活をGETするぞ!
ご都合主義ならチョロい!と、野望を胸に動き出す!!
+++++
・重複投稿・土曜配信 (たま~に水曜…不定期更新)
三歳で婚約破棄された貧乏伯爵家の三男坊そのショックで現世の記憶が蘇る
マメシバ
ファンタジー
貧乏伯爵家の三男坊のアラン令息
三歳で婚約破棄され
そのショックで前世の記憶が蘇る
前世でも貧乏だったのなんの問題なし
なによりも魔法の世界
ワクワクが止まらない三歳児の
波瀾万丈
どうして私が我慢しなきゃいけないの?!~悪役令嬢のとりまきの母でした~
涼暮 月
恋愛
目を覚ますと別人になっていたわたし。なんだか冴えない異国の女の子ね。あれ、これってもしかして異世界転生?と思ったら、乙女ゲームの悪役令嬢のとりまきのうちの一人の母…かもしれないです。とりあえず婚約者が最悪なので、婚約回避のために頑張ります!
転生幼女のチートな悠々自適生活〜伝統魔法を使い続けていたら気づけば賢者になっていた〜
犬社護
ファンタジー
ユミル(4歳)は気がついたら、崖下にある森の中に呆然と佇んでいた。
馬車が崖下に落下した影響で、前世の記憶を思い出したのだ。前世、日本伝統が子供の頃から大好きで、小中高大共に伝統に関わるクラブや学部に入り、卒業後はお世話になった大学教授の秘書となり、伝統のために毎日走り回っていたが、旅先の講演の合間、教授と2人で歩道を歩いていると、暴走車が突っ込んできたので、彼女は教授を助けるも、そのまま跳ね飛ばされてしまい、死を迎えてしまう。
享年は25歳。
周囲には散乱した荷物だけでなく、さっきまで会話していた家族が横たわっている。
25歳の精神だからこそ、これが何を意味しているのかに気づき、ショックを受ける。
大雨の中を泣き叫んでいる時、1体の小さな精霊カーバンクルが現れる。前世もふもふ好きだったユミルは、もふもふ精霊と会話することで悲しみも和らぎ、互いに打ち解けることに成功する。
精霊カーバンクルと仲良くなったことで、彼女は日本古来の伝統に関わる魔法を習得するのだが、チート魔法のせいで色々やらかしていく。まわりの精霊や街に住む平民や貴族達もそれに振り回されるものの、愛くるしく天真爛漫な彼女を見ることで、皆がほっこり心を癒されていく。
人々や精霊に愛されていくユミルは、伝統魔法で仲間たちと悠々自適な生活を目指します。
転生ヒロインは不倫が嫌いなので地道な道を選らぶ
karon
ファンタジー
デビュタントドレスを見た瞬間アメリアはかつて好きだった乙女ゲーム「薔薇の言の葉」の世界に転生したことを悟った。
しかし、攻略対象に張り付いた自分より身分の高い悪役令嬢と戦う危険性を考え、攻略対象完全無視でモブとくっつくことを決心、しかし、アメリアの思惑は思わぬ方向に横滑りし。
貴族に生まれたのに誘拐され1歳で死にかけた
佐藤醤油
ファンタジー
貴族に生まれ、のんびりと赤ちゃん生活を満喫していたのに、気がついたら世界が変わっていた。
僕は、盗賊に誘拐され魔力を吸われながら生きる日々を過ごす。
魔力枯渇に陥ると死ぬ確率が高いにも関わらず年に1回は魔力枯渇になり死にかけている。
言葉が通じる様になって気がついたが、僕は他の人が持っていないステータスを見る力を持ち、さらに異世界と思われる世界の知識を覗ける力を持っている。
この力を使って、いつか脱出し母親の元へと戻ることを夢見て過ごす。
小さい体でチートな力は使えない中、どうにか生きる知恵を出し生活する。
------------------------------------------------------------------
お知らせ
「転生者はめぐりあう」 始めました。
------------------------------------------------------------------
注意
作者の暇つぶし、気分転換中の自己満足で公開する作品です。
感想は受け付けていません。
誤字脱字、文面等気になる方はお気に入りを削除で対応してください。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる