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最果ての森編
54. 風属性魔法
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ファムがウィンドカッターで木を切り倒しているのを見て、あることに気づいた。無秩序に切り開いているのではなくて、敷地がきれいに一回り広がるように、木を選んで切っている。僕が勢い余って切り倒した三本の木から広がるように。ファムの行動は気まぐれのようで、実はちゃんと考えてくれているのかなと思った。
もしかして、前にここの木を切り倒したのにも、何か理由があったのだろうか。
「ブハハ!今日はオレ、隠れてないから怖くないぜ!」
テムがそんなことを言って笑っている。どういうことだろうと思っていると、ライが説明してくれた。
「ふふ、前にテムとファムがここでかくれんぼを始めてね、隠れたテムをファムがなかなか見つけられなくて、木を切っちゃったんだよ。『木がなかったら、隠れる場所は少なくなるよねー!』って。ふふふ、ものすごい力技だよね」
···理由は、かくれんぼに勝利するためだった。
「あれはスリル満点のかくれんぼだったな!オレもスパッとやられるんじゃないかとヒヤヒヤしたぜ!」
怖かったと言うわりにはニカッと笑顔を見せるテム。さぞかしスリルを楽しんだのだろう。
かくれんぼにしても鬼ごっこにしても、この世界の遊びのなんとデンジャラスなことか。い、いや、きっと、これほど危険なのはこの二人だからだろう。二人の遊びは、普通の人にとっては命の覚悟をしなくてはならないほどのものなのだ。そうでなきゃ、困る。誘われたら、僕は腹を括る必要がありそうだ。
ファムがあまりにも楽しそうにウィンドカッターを放っているので、僕も何度かやってみた。これは魔法の練習だからね。結果として木が倒れちゃうかもしれないけど、魔法の練習だから、仕方がないんだ。
この後、ファム(と僕)が切り倒した木を一か所に積み上げた。
結構いい感じにスパッと出来るようになったな、と手応えを感じていると、「ふふ、木ってね、結構重いんだよ。テムが重力魔法でサポートしてくれて本当に助かったよ」とライがにこやかな笑顔で言っていた。ジルは僕に葉っぱが降り注ぐのを防いでくれていたので、ライを手伝ってはいなかったようだ。
それから、風属性の魔法を数種類教えてもらった。
直径一メートルはある大きな空気の塊を放つ魔法を習ったときは、「ふふ、これを砂が多い場所でやると、いい嫌がらせになるんだよ」とライがいい笑顔で言っていた。砂ではなくて、別の物を巻き込んだら、より凶悪な魔法になるかもしれないと思った。そうだ、いつか試したい魔法のリストを作っておこう。
自分の前で風をグルグルと巻き起こす魔法もあった。これは防御力はあまりないが、目くらましになるらしい。この魔法を巨大にしたのが、トルネードだ。これに巻き込まれたらよほど防御力が高くない限りボロボロになるのだと、ライが目を輝かせて言っていた。
自分の得意属性であるからか、いつもより饒舌に説明をしてくれるライ。その知識はやはり豊富で、これまでの経験に裏打ちされた確かな解説は、非常に勉強になる。
「中級魔法や上級魔法になると、さらに威力やバリエーションが増すからね。特に雷の魔法は強力だよ。ふふ、早くウィル君に教えたいなあ」
教えることをこんなに楽しみにしてくれる師匠は他にいるだろうか。そんなライに、僕も応えたい。これからも頑張って練習していこうと思う。
あ、僕の前世の知識は、ライへのお礼になるだろうか。今までも魔法の改良に使ってきたから、今後もこの世界の魔法と前世の知識を融合することは可能なはずだ。知識さえあれば、それこそ僕が考えもしないような使い方を思い付くかもしれない。
よし、知識を思い出せる限り思い出して、伝えよう。書き留めたいから、紙とペンが必要だ。それから、絵では伝えるのに限界があるので字も覚えなくては。
ライに、紙を持ってペンで書くジェスチャーをすると、「ああ、紙とペンかな?」とすぐに分かってくれた。···字、覚えなくてもいいのかな?と一瞬思ったが、きっといつか必要になるからね。怠けず頑張ることにしよう。
今日は、粉塵爆発の知識を伝えることにした。空気の塊に小麦粉などを含ませて火を着けると大爆発、という知識に最初はみんな首を傾げていた。
そういえば粉の密度が重要なんだっけと思い出す。密度が低いと爆発しないよと説明したら、ライとファムが「なるほどー!」と言っていた。···これだけの説明で、原理が分かったの?君達、凄すぎない?とどこか納得のいかない気分になったが、「んん?うんん?」と唸っているテムを見て、小さい点々をたくさん描いた疲れさえも癒やされた。
「そういえば、工場や工房で大きな爆発が起きる事故がたまにあるんだ。今まで原因が分かっていなかったけど、もしかしたらこれかもしれないね」
そんなことをライが言っていた。この世界でも、似たようなことは起こっているのか。僕の知識が、これから起こりうる事故の防止につながると嬉しいな。
この日伝えられた知識はこれ一つだが、今後も思い出したらすぐにメモするようにしようと思っている。
名前:ウィル
種族:人族
年齢:1
レベル:34
スキル:成長力促進、言語理解、魔力操作、魔力感知
魔法:土属性魔法(初級)
風属性魔法(初級)
光属性魔法(初級)
水弾、火弾、闇弾、火壁、水壁、闇盾
耐性:熱耐性
加護:リインの加護
称号:異世界からの転生者、黒龍帝の愛息子、雷帝の愛弟子
もしかして、前にここの木を切り倒したのにも、何か理由があったのだろうか。
「ブハハ!今日はオレ、隠れてないから怖くないぜ!」
テムがそんなことを言って笑っている。どういうことだろうと思っていると、ライが説明してくれた。
「ふふ、前にテムとファムがここでかくれんぼを始めてね、隠れたテムをファムがなかなか見つけられなくて、木を切っちゃったんだよ。『木がなかったら、隠れる場所は少なくなるよねー!』って。ふふふ、ものすごい力技だよね」
···理由は、かくれんぼに勝利するためだった。
「あれはスリル満点のかくれんぼだったな!オレもスパッとやられるんじゃないかとヒヤヒヤしたぜ!」
怖かったと言うわりにはニカッと笑顔を見せるテム。さぞかしスリルを楽しんだのだろう。
かくれんぼにしても鬼ごっこにしても、この世界の遊びのなんとデンジャラスなことか。い、いや、きっと、これほど危険なのはこの二人だからだろう。二人の遊びは、普通の人にとっては命の覚悟をしなくてはならないほどのものなのだ。そうでなきゃ、困る。誘われたら、僕は腹を括る必要がありそうだ。
ファムがあまりにも楽しそうにウィンドカッターを放っているので、僕も何度かやってみた。これは魔法の練習だからね。結果として木が倒れちゃうかもしれないけど、魔法の練習だから、仕方がないんだ。
この後、ファム(と僕)が切り倒した木を一か所に積み上げた。
結構いい感じにスパッと出来るようになったな、と手応えを感じていると、「ふふ、木ってね、結構重いんだよ。テムが重力魔法でサポートしてくれて本当に助かったよ」とライがにこやかな笑顔で言っていた。ジルは僕に葉っぱが降り注ぐのを防いでくれていたので、ライを手伝ってはいなかったようだ。
それから、風属性の魔法を数種類教えてもらった。
直径一メートルはある大きな空気の塊を放つ魔法を習ったときは、「ふふ、これを砂が多い場所でやると、いい嫌がらせになるんだよ」とライがいい笑顔で言っていた。砂ではなくて、別の物を巻き込んだら、より凶悪な魔法になるかもしれないと思った。そうだ、いつか試したい魔法のリストを作っておこう。
自分の前で風をグルグルと巻き起こす魔法もあった。これは防御力はあまりないが、目くらましになるらしい。この魔法を巨大にしたのが、トルネードだ。これに巻き込まれたらよほど防御力が高くない限りボロボロになるのだと、ライが目を輝かせて言っていた。
自分の得意属性であるからか、いつもより饒舌に説明をしてくれるライ。その知識はやはり豊富で、これまでの経験に裏打ちされた確かな解説は、非常に勉強になる。
「中級魔法や上級魔法になると、さらに威力やバリエーションが増すからね。特に雷の魔法は強力だよ。ふふ、早くウィル君に教えたいなあ」
教えることをこんなに楽しみにしてくれる師匠は他にいるだろうか。そんなライに、僕も応えたい。これからも頑張って練習していこうと思う。
あ、僕の前世の知識は、ライへのお礼になるだろうか。今までも魔法の改良に使ってきたから、今後もこの世界の魔法と前世の知識を融合することは可能なはずだ。知識さえあれば、それこそ僕が考えもしないような使い方を思い付くかもしれない。
よし、知識を思い出せる限り思い出して、伝えよう。書き留めたいから、紙とペンが必要だ。それから、絵では伝えるのに限界があるので字も覚えなくては。
ライに、紙を持ってペンで書くジェスチャーをすると、「ああ、紙とペンかな?」とすぐに分かってくれた。···字、覚えなくてもいいのかな?と一瞬思ったが、きっといつか必要になるからね。怠けず頑張ることにしよう。
今日は、粉塵爆発の知識を伝えることにした。空気の塊に小麦粉などを含ませて火を着けると大爆発、という知識に最初はみんな首を傾げていた。
そういえば粉の密度が重要なんだっけと思い出す。密度が低いと爆発しないよと説明したら、ライとファムが「なるほどー!」と言っていた。···これだけの説明で、原理が分かったの?君達、凄すぎない?とどこか納得のいかない気分になったが、「んん?うんん?」と唸っているテムを見て、小さい点々をたくさん描いた疲れさえも癒やされた。
「そういえば、工場や工房で大きな爆発が起きる事故がたまにあるんだ。今まで原因が分かっていなかったけど、もしかしたらこれかもしれないね」
そんなことをライが言っていた。この世界でも、似たようなことは起こっているのか。僕の知識が、これから起こりうる事故の防止につながると嬉しいな。
この日伝えられた知識はこれ一つだが、今後も思い出したらすぐにメモするようにしようと思っている。
名前:ウィル
種族:人族
年齢:1
レベル:34
スキル:成長力促進、言語理解、魔力操作、魔力感知
魔法:土属性魔法(初級)
風属性魔法(初級)
光属性魔法(初級)
水弾、火弾、闇弾、火壁、水壁、闇盾
耐性:熱耐性
加護:リインの加護
称号:異世界からの転生者、黒龍帝の愛息子、雷帝の愛弟子
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