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旅行編
58. 郷土料理
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ライが選んでくれた料理は、一言で言うなら、どれも美味しかった。
野菜と果物の栽培が盛んな国だけあって、種類が豊富で新鮮で、味も文句なしに美味しい。特に果物は、初めて目にするものもたくさんあって、目でも楽しめた。いわゆる南国フルーツというやつだろうか。
それに、さまざまな料理に果物が使われていて、郷土料理という感じがした。
果物をスパイスと煮詰めたものは、甘くてフルーティーなカレーのようで、パンにつけて食べると美味しい。フルーツの甘さはあるがさっぱりとした後味で、何よりスパイスの香りが食欲をそそるから、もう一口、もう一口と食がすすむ。
お肉を柑橘系の果物で煮た料理は、びっくりするくらい柔らかくて、お肉が口の中でほろほろとほどけた。そして爽やかな味と香りで飽きが来ない。
果物を練り込んだパウンドケーキもあった。果物自体が甘いから、生地は甘さ控えめだ。だから甘いのに軽くて、これもどんどん食べられそうなケーキだ。
「果物、美味しいねー!」
「だな!カラフルで楽しいしよ!」
「ふふ、そうだね。あ、今ウィル君が食べているのは、この国でしか食べられないと言われている果物だよ」
そうなのか!白い果肉がとても柔らかくて食べやすく、気に入ってたんだ。それにすっごく甘くて、でも爽やかな酸味もある。ずっと食べていたいと思うくらい美味しい。
「美味しいんだけどね、繊細で劣化が早いんだ。だから遠くへ運ぶのが難しくて、採れた場所で消費する感じだね」
なるほど。あ、マジックバッグなら、運べるのでは···?テム特製のものは時間経過がほとんどないから、劣化する前に届けられそうだ。僕がマジックバッグをちらりと見たのに気づいたライがくすっと笑う。
「ふふ、時間停止のマジックバッグなら、大丈夫だね。だからジルがたくさん買っていたよ。その果物、リーナさんの大好物なんだ」
なんと!ジル、やりおるな。リーナさんの喜ぶ顔が目に浮かぶ。
「ふふ、リーナさん、ものすごーく喜ぶだろうね」
ライが笑顔で言う。本人はニヤッとした顔をしているつもりなのかもしれないが、もともとの造形のせいか、随分と爽やかな笑顔だ。
「あうあう」
だから僕がニヤッとしてみた。
「ブハハ!半目だな!」
···ちょっと失敗したようだ。
「お腹いっぱーい。美味しかったー!」
「だな!あんなに果物を食べたの、久しぶりだぜ!」
「ふふ、ダレン君のお店でたくさん買ったからね。まだしばらくはたくさん食べられるよ」
「わーい!ライ、ありがとー!」
「ライ、お前最強だな!」
最強はテムお気に入りの褒め言葉だ。よほど嬉しかったのだろう。僕も、食べられるかな?
「たくさん買ったから心配するな。それに、無くなったらまた買いに来ればいい」
どんだけ甘やかしてくれるんですか。もうね、激甘だね。でもその愛情が、すごく嬉しい。
「あいあと!」
僕の頭を撫でる大きな手のぬくもりが、僕に幸せと安心を与えてくれる。いつか僕も、与える側になれたらいいなと、そう思った。
「さて、お腹も満たしたことだし、移動を始めようか」
ライの言葉に、本来の目的を思い出す。リーナさんのいる国、ソルツァンテに行くんだ!
この後は、どんなルートで行くのだろうか。
「いったん街の外に出て、転移しようか。テム、転移先の場所はこの辺で頼めるかい?」
ライが地図を広げて指した場所は、ファーティスの街からまっすぐ西に行った場所で、ファージュルム王国が国境とする大河を越えて少し進んだ辺りだ。
「おう!行けるぜ!でも、そこからの転移は翌日になりそうだぜ」
「十分だよ。今日は、転移先にある宿で一泊しよう」
「わーい!お泊りだー!」
「うおー!楽しそうだな!」
お泊りと聞くと、妙にテンションが上がるのはなぜだろうか。修学旅行での枕投げを思い出す。なぜだか、あれが異常に楽しいんだよな。ただ、テムとファムに枕投げを教えたらいけない気がして、胸の内に秘めておくことにした。
まずは街の外に出て、しばらく歩く。僕はジルに抱えられているが。人が周りにいなくなったら、転移をするらしい。
このとき、僕は不覚にも寝てしまった。歩くときの心地よい揺れが眠気を誘い、抗えなかったのだ。
目が覚めると、知らない天井があった。
「起きたか?」
あ、ジルだ。ぐるっと周りを見ると、どこかの部屋にいるようだ。もしかして、もう宿に着いたのだろうか。
「ライ達は隣の部屋にいる。あちこち連れ回したからな。疲れただろう」
そう言ってジルが僕を労ってくれる。だが、思い返すと今日はほとんどジルに抱えられていた。
申し訳ないとは思うが、一歳のわがままボディは、ときおり襲ってくる睡魔に抵抗できないのだ。
「夕食のときに呼びに来るとライが言っていた。それまではゆっくりしてくれ」
「あう」
ジルもライも、優しいね。こういう優しさを何気なく発揮できる大人に、僕はなりたい。そして願わくば、将来イケメンになれますように。そして、「待たせたな」とか、「おいで」とかいうセリフを格好良く言えるようになれますように。そして、そして、あ、ちょっと願望が多過ぎたかもしれない。
大事なのは、人に優しくできることだよね。願いはいっぱいあるけど、僕はやっぱり、そういうことを大切にしていきたい。
僕はライ達が呼びに来てくれるまで、ジルの言葉に甘えて、ベッドでごろごろしたり、本を読んだりして過ごした。
野菜と果物の栽培が盛んな国だけあって、種類が豊富で新鮮で、味も文句なしに美味しい。特に果物は、初めて目にするものもたくさんあって、目でも楽しめた。いわゆる南国フルーツというやつだろうか。
それに、さまざまな料理に果物が使われていて、郷土料理という感じがした。
果物をスパイスと煮詰めたものは、甘くてフルーティーなカレーのようで、パンにつけて食べると美味しい。フルーツの甘さはあるがさっぱりとした後味で、何よりスパイスの香りが食欲をそそるから、もう一口、もう一口と食がすすむ。
お肉を柑橘系の果物で煮た料理は、びっくりするくらい柔らかくて、お肉が口の中でほろほろとほどけた。そして爽やかな味と香りで飽きが来ない。
果物を練り込んだパウンドケーキもあった。果物自体が甘いから、生地は甘さ控えめだ。だから甘いのに軽くて、これもどんどん食べられそうなケーキだ。
「果物、美味しいねー!」
「だな!カラフルで楽しいしよ!」
「ふふ、そうだね。あ、今ウィル君が食べているのは、この国でしか食べられないと言われている果物だよ」
そうなのか!白い果肉がとても柔らかくて食べやすく、気に入ってたんだ。それにすっごく甘くて、でも爽やかな酸味もある。ずっと食べていたいと思うくらい美味しい。
「美味しいんだけどね、繊細で劣化が早いんだ。だから遠くへ運ぶのが難しくて、採れた場所で消費する感じだね」
なるほど。あ、マジックバッグなら、運べるのでは···?テム特製のものは時間経過がほとんどないから、劣化する前に届けられそうだ。僕がマジックバッグをちらりと見たのに気づいたライがくすっと笑う。
「ふふ、時間停止のマジックバッグなら、大丈夫だね。だからジルがたくさん買っていたよ。その果物、リーナさんの大好物なんだ」
なんと!ジル、やりおるな。リーナさんの喜ぶ顔が目に浮かぶ。
「ふふ、リーナさん、ものすごーく喜ぶだろうね」
ライが笑顔で言う。本人はニヤッとした顔をしているつもりなのかもしれないが、もともとの造形のせいか、随分と爽やかな笑顔だ。
「あうあう」
だから僕がニヤッとしてみた。
「ブハハ!半目だな!」
···ちょっと失敗したようだ。
「お腹いっぱーい。美味しかったー!」
「だな!あんなに果物を食べたの、久しぶりだぜ!」
「ふふ、ダレン君のお店でたくさん買ったからね。まだしばらくはたくさん食べられるよ」
「わーい!ライ、ありがとー!」
「ライ、お前最強だな!」
最強はテムお気に入りの褒め言葉だ。よほど嬉しかったのだろう。僕も、食べられるかな?
「たくさん買ったから心配するな。それに、無くなったらまた買いに来ればいい」
どんだけ甘やかしてくれるんですか。もうね、激甘だね。でもその愛情が、すごく嬉しい。
「あいあと!」
僕の頭を撫でる大きな手のぬくもりが、僕に幸せと安心を与えてくれる。いつか僕も、与える側になれたらいいなと、そう思った。
「さて、お腹も満たしたことだし、移動を始めようか」
ライの言葉に、本来の目的を思い出す。リーナさんのいる国、ソルツァンテに行くんだ!
この後は、どんなルートで行くのだろうか。
「いったん街の外に出て、転移しようか。テム、転移先の場所はこの辺で頼めるかい?」
ライが地図を広げて指した場所は、ファーティスの街からまっすぐ西に行った場所で、ファージュルム王国が国境とする大河を越えて少し進んだ辺りだ。
「おう!行けるぜ!でも、そこからの転移は翌日になりそうだぜ」
「十分だよ。今日は、転移先にある宿で一泊しよう」
「わーい!お泊りだー!」
「うおー!楽しそうだな!」
お泊りと聞くと、妙にテンションが上がるのはなぜだろうか。修学旅行での枕投げを思い出す。なぜだか、あれが異常に楽しいんだよな。ただ、テムとファムに枕投げを教えたらいけない気がして、胸の内に秘めておくことにした。
まずは街の外に出て、しばらく歩く。僕はジルに抱えられているが。人が周りにいなくなったら、転移をするらしい。
このとき、僕は不覚にも寝てしまった。歩くときの心地よい揺れが眠気を誘い、抗えなかったのだ。
目が覚めると、知らない天井があった。
「起きたか?」
あ、ジルだ。ぐるっと周りを見ると、どこかの部屋にいるようだ。もしかして、もう宿に着いたのだろうか。
「ライ達は隣の部屋にいる。あちこち連れ回したからな。疲れただろう」
そう言ってジルが僕を労ってくれる。だが、思い返すと今日はほとんどジルに抱えられていた。
申し訳ないとは思うが、一歳のわがままボディは、ときおり襲ってくる睡魔に抵抗できないのだ。
「夕食のときに呼びに来るとライが言っていた。それまではゆっくりしてくれ」
「あう」
ジルもライも、優しいね。こういう優しさを何気なく発揮できる大人に、僕はなりたい。そして願わくば、将来イケメンになれますように。そして、「待たせたな」とか、「おいで」とかいうセリフを格好良く言えるようになれますように。そして、そして、あ、ちょっと願望が多過ぎたかもしれない。
大事なのは、人に優しくできることだよね。願いはいっぱいあるけど、僕はやっぱり、そういうことを大切にしていきたい。
僕はライ達が呼びに来てくれるまで、ジルの言葉に甘えて、ベッドでごろごろしたり、本を読んだりして過ごした。
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