転生したらドラゴンに拾われた

hiro

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旅行編

71. 新しい家族

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 あまりの可愛さに勢い余ってこの子を飼うことにしちゃったけど、ふと大事なことに気づいた。
 この子は、なんでここにいたのだろうか。もしかして、迷子···?お母さんとか、心配していないだろうか?
 
「かじょく···」

 僕の呟きを聞いたライが説明してくれる。

「ダイアウルフは基本的に群れを形成するんだ。特に幼いうちは、縄張りから出ることは親が許さないはずなんだけど···。この子は一匹で森の外まで来ていたし、周囲に他のダイアウルフがいる気配はないんだよね···」

 つまり、群れから離れたのに、誰もこの子を探していない?

「これはただの推測だし、気分がいい話じゃないけど···。もしかしたら、この子の毛色が原因なのかもしれないね」

 それはどういうことだろうか。
 首を傾げてライを見ると、言いづらそうにしながらも説明を続けてくれた。

「普通のダイアウルフはもっと灰色っぽい毛色なんだ。でも、この子は真っ白でしょ?···ダイアウルフは排他的な魔物だから、毛色が違うことで群れを追われたのかもしれない」

 ···そんなことがあるのか。
 ダイアウルフの赤ちゃんを見ると、心なしかうなだれているような気がする。

 もしライの話が本当なら、この子は毛色が違うというだけで家族から見放されたことになる。

 色などという表面的な特徴で拒絶されるのは、とてもつらいことだと思う。自分が望んでこの色になったわけではないし、簡単に変えられるものでもない。

 自分達とは違うもの、未知のものを排除したくなるのも分からなくはない。
 でも、理解する努力というか、知ろうとする姿勢は大事だと、僕は思う。

「···ぼくと、かじょく」

 家族から受け入れられなかったのなら、僕が受け入れたい。僕の家族になってほしい。
 そんな思いを込めて、手を差し出した。

「···キャウッ」

 ダイアウルフの赤ちゃんが、僕の手のひらに頭をぐりぐりと押し付ける。尻尾がフリフリと揺れていて可愛い。

「ふふ、この子もウィル君と家族になりたいみたいだね」

 良かったあ!
 この子の同意も得られたし、これで僕達は誰が何と言おうと家族だ。

 あ、そうだ。家族になるなら、名前を付けないとね。うーん、どうしよう。

 よしよし。よしよし。
 ああ、可愛い。

 何か特徴はないかなと思って見ていると、喉のあたりの毛が一部灰色であることに気づいた。灰色部分は上が細く下の方が広がっていて、雫のような形に見えなくもない。···よし、決めた。この名前にしよう。

「てぃあ」

 僕がそう言うと、ダイアウルフの赤ちゃんはぱちりと瞬きをして「キャウッ」と鳴き、また僕の手のひらに頭をぐりぐりする。
 これは、ティアって名前を気に入ってくれたってことでいいのかな?

「ティア?この子の名前かい?」

「あう」

「ふふ、可愛いね」

 僕がよしよしとティアを撫でていると、テムも近づきそっと手を伸ばして白い体を撫でる。

「ティアか、いい名前だぜ」

 なんとなく優しげな表情に見える。いつもはニカッと笑うテムの、こんな顔は初めてだ。

 ちょっと気になったが、ティアが後ろを振り返ったのでそちらに気を取られる。
 ジルがお皿にミルクを入れて地面に置いたのだ。ティアはちょっと警戒しているが、ミルクは気になるようだ。

「ただのミルクだ」

 ジルがそう言うと、ティアはお皿に近づいてクンクンと匂いを嗅ぐ。恐る恐るペロッと一口舐め、二口目からはガツガツと飲み始めた。
 
 ティアが夢中になってミルクを飲んでいる間に、ジルがクリーンの魔法をかける。体に付いていた汚れが無くなってふんわりした毛並みになる。新雪が降り積もった大地を連想させるような眩しい白が美しい。

「ふふ、なんだかんだ、ジルも可愛がっているよね」

「···家で飼うなら、俺も面倒を見るべきだろう」

 ライから微笑ましいものを見る目を向けられたジルが、視線をそらしながら言う。

「あはは、ジルって面倒見いいよねー。ティアも、ウィルくんとジルと一緒ならもう安心だねー!」

「だな!良かったな、ティア!」

 あ、もういつものテムだ。ニカッと笑い、ふわりと宙に浮く。

 よほどお腹が空いていたのか、あっという間にお皿が空になる。
 ジルの方を見て「ケフッ」と言ったあと、ティアは僕の足元で丸まって寝始めた。

「ふふ、すっかり懐いちゃったね」

 今までたった一匹で寂しかっただろう。家族から追われ、ゴブリンから逃げるのはこの幼い体には厳しかっただろう。

 もう、大丈夫。僕達がついてるよ。

 僕がティアにとって安心できる存在になれたらいいな。
 そう思いながら、眠っているティアをそっと撫でた。




 名前:ウィル

 種族:人族ヒューマン
 年齢:1
 レベル:56

 スキル:成長力促進、言語理解、魔力操作、魔力感知、テイム
 魔法:土属性魔法(初級)
    風属性魔法(初級)
    光属性魔法(初級)
    水弾ウォーターショット火弾ファイアショット闇弾ダークショット火壁ファイアウォール水壁ウォーターウォール闇盾ダークシールド
 耐性:熱耐性

 加護:リインの加護
 称号:異世界からの転生者、黒龍帝の愛息子、雷帝の愛弟子
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