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最果ての森・成長編
93. 中級魔法③
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ジルのナデナデは気持ちいいなあ。思わず目を瞑りたくなる。
そうすると、遠くにあるはずなのに大き過ぎて遠近感が狂って見える白いモクモクも、ライとティアからのジトッとした視線も、見えなくなるんだ。
僕は白いモクモクとは別の遠くを見つめて、現実逃避をする。
そんな僕を見たライが、深く息を吸って吐き、それからニッコリと笑顔を作る。···口の形は笑っているはずなのに、目が笑っていないと感じるのは気のせいだろうか。
「ふふふ、ウィル君、次は風の中級魔法をやろうか」
おや、あの水蒸気は放置でいいのかな?
もしかして、ライも現実逃避してる?
「ブラストっていう、強い風を広域に吹かせる魔法だよ。···『突風』」
ライが魔法を放つと、ビュウッと音がした。地面の砂や小石が巻き上げられ、ものすごいスピードで飛んで行っている。
「こうやって魔法の範囲内にある物をあえて巻き込むのもアリだよ。風のスピードを纏うと、それだけで攻撃力がグンと上がるからね。ただし、重い物を飛ばすのは難しいし、飛ばす物が多いほど早く減速するから気をつけてね」
風圧だけでも凄そうなのに、そのスピードで小石が飛んで来たら恐ろしい攻撃力になりそうだ。それに、砂だと避けるのが難しい。なかなかエグい魔法だと思う。
「それじゃあウィル君もやってみようか。風だから、本来は何かを巻き込まない限り視覚的に分かりづらいんだけどね。···でも今日はね、幸いなことに、すっごくいい的があるんだ」
ライの笑みが深まる。相変わらず目は笑っていないが。
いい的って、なんだろうか。狭い範囲の魔法ならアースウォールなどを作ればいいのだが、広域におよぶ魔法だとそういう訳にはいかない。
「ふふふ、あれに向かって撃ってみようか。目標は、そうだなあ···。あれが無くなるまで、なんてどうかな?」
そう言いながらライがビシッと指差したのは、巨大な存在感を放つ白いモクモクだった。
どうやらライは現実逃避などしていなかったようだ。そして僕も、どうにかして視界から外したいあれを直視せざるを得ないらしい。
···仕方ない。僕がしでかしたことなんだ。僕が後始末をするべきだろう。
「ふふ、ここからだと遠いから、少し近づいても大丈夫だよ」
ライの言葉に甘えて、僕は白いモクモクとの距離を詰める。···うーん、巨大さが増した。
近づいたところで、早速魔力を込め始める。そして大量の水蒸気を散らす、猛烈に速い突風をイメージする。
ティアは僕とライを交互に見て、ハラハラした表情を浮かべている。
よし、魔力を集めた。あとは魔法名を唱えるだけだ。
僕は大きな標的をしっかりと見据える。
「『突風』!」
次の瞬間、ゴウッという音がした。台風がきたのかと思うほどの風の音だ。
届け、届け···!
僕は祈るように巨大な白い的を見つめる。
ティアはソワソワしながら僕とライ、それから水蒸気の塊を見ている。
すると、僕の祈りが届いたのか、的の一部が消し飛んだ。
「おお!少し消えたぜ!」
「あはは!ウィルくん、すごいねー!」
テムとファムが成功を喜んでくれている。
「これは現実なのか···?いや、夢か?···驚きすぎて、よく分からなくなってきたのだ」
ティアが混乱している。
「ふふふ、上出来だよ、ウィル君。おそらく一般的なブラストよりかなり速いね。本当にすごいよ。···さあ、的はまだまだあるから、頑張ろうね」
ライはそこまで言うと、ティアをサッと抱えてナデナデし始めた。···あっ、今度は頬をスリスリし始めたぞ。
「この感触···現実か?」という声がティアから聞こえた。
「あはは!ライ、だいじょうぶー?」
「大丈夫。大丈夫だよ。···ちょっと癒やしが欲しかっただけなんだ」
ライはティアから癒やし成分を補給していたようだ。
その間も、僕はブラストで水蒸気を散らす。白いモクモクが突風でパァンと消えるのが面白い。標的が巨大だからチマチマした作業に見えるけど、こういうの、嫌いじゃない。
「なあ、オレもやっていいか?」
「あ、ぼくもー!」
僕の作業を見ていたテムとファムも、やってみたくなったようだ。
僕は大歓迎だけど、ライはいいのかな?
「ふふ、もちろんだよ」
ライが笑ってオーケーを出す。···やっといつもの笑顔を見られた気がする。ティアにたっぷり癒やしてもらったのかな?
「やったぜ!」
「わーい!」
二人は大喜びで魔力を込め始める。
「よっしゃ、やってやるぜ!『突風』!」
「えーい!『突風』!」
テムとファムが魔法名を唱えると、ボフッ、ボフッと音がした。白いモクモクに目を凝らすと、大きな穴が二つ、ぽっかりと空いていた。
···え?
「···え?」
僕の心の声がライから聞こえた。ライを見ると、ティアを取り落としそうになって慌てて抱え直していた。
···そうだ、そういえばこの二人、天才だった。
名前:ウィル
種族:人族
年齢:1
レベル:56
スキル:成長力促進、言語理解、魔力操作、魔力感知、テイム
魔法:火属性魔法(初級)
水属性魔法(初級)、氷属性魔法(初級)
土属性魔法(初級)
風属性魔法(初級)
光属性魔法(初級)
火柱、火波、洪水、突風
耐性:熱冷耐性
加護:リインの加護
称号:異世界からの転生者、黒龍帝の愛息子、雷帝の愛弟子
そうすると、遠くにあるはずなのに大き過ぎて遠近感が狂って見える白いモクモクも、ライとティアからのジトッとした視線も、見えなくなるんだ。
僕は白いモクモクとは別の遠くを見つめて、現実逃避をする。
そんな僕を見たライが、深く息を吸って吐き、それからニッコリと笑顔を作る。···口の形は笑っているはずなのに、目が笑っていないと感じるのは気のせいだろうか。
「ふふふ、ウィル君、次は風の中級魔法をやろうか」
おや、あの水蒸気は放置でいいのかな?
もしかして、ライも現実逃避してる?
「ブラストっていう、強い風を広域に吹かせる魔法だよ。···『突風』」
ライが魔法を放つと、ビュウッと音がした。地面の砂や小石が巻き上げられ、ものすごいスピードで飛んで行っている。
「こうやって魔法の範囲内にある物をあえて巻き込むのもアリだよ。風のスピードを纏うと、それだけで攻撃力がグンと上がるからね。ただし、重い物を飛ばすのは難しいし、飛ばす物が多いほど早く減速するから気をつけてね」
風圧だけでも凄そうなのに、そのスピードで小石が飛んで来たら恐ろしい攻撃力になりそうだ。それに、砂だと避けるのが難しい。なかなかエグい魔法だと思う。
「それじゃあウィル君もやってみようか。風だから、本来は何かを巻き込まない限り視覚的に分かりづらいんだけどね。···でも今日はね、幸いなことに、すっごくいい的があるんだ」
ライの笑みが深まる。相変わらず目は笑っていないが。
いい的って、なんだろうか。狭い範囲の魔法ならアースウォールなどを作ればいいのだが、広域におよぶ魔法だとそういう訳にはいかない。
「ふふふ、あれに向かって撃ってみようか。目標は、そうだなあ···。あれが無くなるまで、なんてどうかな?」
そう言いながらライがビシッと指差したのは、巨大な存在感を放つ白いモクモクだった。
どうやらライは現実逃避などしていなかったようだ。そして僕も、どうにかして視界から外したいあれを直視せざるを得ないらしい。
···仕方ない。僕がしでかしたことなんだ。僕が後始末をするべきだろう。
「ふふ、ここからだと遠いから、少し近づいても大丈夫だよ」
ライの言葉に甘えて、僕は白いモクモクとの距離を詰める。···うーん、巨大さが増した。
近づいたところで、早速魔力を込め始める。そして大量の水蒸気を散らす、猛烈に速い突風をイメージする。
ティアは僕とライを交互に見て、ハラハラした表情を浮かべている。
よし、魔力を集めた。あとは魔法名を唱えるだけだ。
僕は大きな標的をしっかりと見据える。
「『突風』!」
次の瞬間、ゴウッという音がした。台風がきたのかと思うほどの風の音だ。
届け、届け···!
僕は祈るように巨大な白い的を見つめる。
ティアはソワソワしながら僕とライ、それから水蒸気の塊を見ている。
すると、僕の祈りが届いたのか、的の一部が消し飛んだ。
「おお!少し消えたぜ!」
「あはは!ウィルくん、すごいねー!」
テムとファムが成功を喜んでくれている。
「これは現実なのか···?いや、夢か?···驚きすぎて、よく分からなくなってきたのだ」
ティアが混乱している。
「ふふふ、上出来だよ、ウィル君。おそらく一般的なブラストよりかなり速いね。本当にすごいよ。···さあ、的はまだまだあるから、頑張ろうね」
ライはそこまで言うと、ティアをサッと抱えてナデナデし始めた。···あっ、今度は頬をスリスリし始めたぞ。
「この感触···現実か?」という声がティアから聞こえた。
「あはは!ライ、だいじょうぶー?」
「大丈夫。大丈夫だよ。···ちょっと癒やしが欲しかっただけなんだ」
ライはティアから癒やし成分を補給していたようだ。
その間も、僕はブラストで水蒸気を散らす。白いモクモクが突風でパァンと消えるのが面白い。標的が巨大だからチマチマした作業に見えるけど、こういうの、嫌いじゃない。
「なあ、オレもやっていいか?」
「あ、ぼくもー!」
僕の作業を見ていたテムとファムも、やってみたくなったようだ。
僕は大歓迎だけど、ライはいいのかな?
「ふふ、もちろんだよ」
ライが笑ってオーケーを出す。···やっといつもの笑顔を見られた気がする。ティアにたっぷり癒やしてもらったのかな?
「やったぜ!」
「わーい!」
二人は大喜びで魔力を込め始める。
「よっしゃ、やってやるぜ!『突風』!」
「えーい!『突風』!」
テムとファムが魔法名を唱えると、ボフッ、ボフッと音がした。白いモクモクに目を凝らすと、大きな穴が二つ、ぽっかりと空いていた。
···え?
「···え?」
僕の心の声がライから聞こえた。ライを見ると、ティアを取り落としそうになって慌てて抱え直していた。
···そうだ、そういえばこの二人、天才だった。
名前:ウィル
種族:人族
年齢:1
レベル:56
スキル:成長力促進、言語理解、魔力操作、魔力感知、テイム
魔法:火属性魔法(初級)
水属性魔法(初級)、氷属性魔法(初級)
土属性魔法(初級)
風属性魔法(初級)
光属性魔法(初級)
火柱、火波、洪水、突風
耐性:熱冷耐性
加護:リインの加護
称号:異世界からの転生者、黒龍帝の愛息子、雷帝の愛弟子
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