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最果ての森・成長編
112. ステータスの基本
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ぱちくり。
朝だ!
窓から差し込む太陽の光が、今日もいい天気だよと伝えてくれている。
僕は隣でまだ爆睡しているティアを、思う存分モフりまくる。それでもティアはぐっすりだ。
「てぃあ、おきてー。あさだよー」
「ううん···?ご主人、おはよう···なのだ···」
半分開いたティアの目がまた閉じる。
めちゃくちゃ可愛い。
多分ティアは、成長期の始まりにいるのだと思う。だから食べる量が日に日に増えているし、寝ているときはいつもぐっすりだ。
可愛いからまだ寝かせてあげたいけど、ご飯もしっかり食べてほしい。だから、僕は心を鬼にしてティアを起こす。
「てぃあ、あさごはん、たべよー」
「うん?朝···ごはん···?······腹が減ったのだ!」
朝ごはんというワードでバッチリ起きたティア。
うん、めちゃくちゃ可愛い。
ちなみに、朝ごはんと言えばすぐに起きることは、数日前に判明していた。なのになぜ最初から言わなかったのかというと···それはもちろん、おはようと言いながら寝ちゃうティアを見たかったからだ!
ああ、今日も朝から可愛いティアを堪能できて幸せだ。
ルンルン気分で魔力操作に魔力感知、それからティアとクリーンのかけあいっこをする。日課をこなしていると、ジルが来てくれた。
「おはよう」
「おはよー!」
「おはようなのだ!」
元気に挨拶を交わすと、ジルが僕とティアを腕に抱え、リビングへ移動する。
なにか手伝うことはないかと見てみたが、もうテーブルには朝食が完璧に準備されていた。
まず、シンプルなのに圧倒的な存在感を放っている白米に目を奪われる。一粒一粒のお米にツヤがあり、キラキラしている。見ていると、まるで宝物を発見したような、ワクワクした気分になれる。
白米の隣には、色んな野菜が入ったスープ。ほんのり出汁の香りがするから、和風の野菜スープなのだろう。
そしてふっくら焼き上げた魚。多分これは、僕がライの島で仕留めた魚だ。まだ見える湯気とともに、香ばしい香りが立ち昇り、食欲を刺激する。
この魚を食べたことがあるから知っているが、白身であっさりしているように見えて、旨味がぎゅっと詰まってるんだよなあ。
それからもう一品。玉子焼きだ。やわらかい黄色で、見るからにふわふわしている。
ジルの玉子焼きは、噛むと中から出汁がじわっと広がるんだ。それが卵の風味と相まって、ほっとするような、温かい気持ちになれるような、そんな優しい味になる。
見ているだけでも幸せなメニューに、これを食べたらどれだけ幸せな気分になれるだろうかと期待が高まる。
「すごいのだ、ジル!今日も美味そうなのだ!」
ティアが嬉しそうに尻尾をフリフリしている。
「そうか。たくさん食べろ」
ジルが僕とティアを降ろし、3人で朝食を食べる。
期待通り、いや、それ以上に美味しい朝食だ。
幸せ過ぎて、胸がいっぱいになる。そしてもちろん、お腹にも幸せをたくさん詰め込んだ。
「美味かったのだ~」
ティアのぽこんと膨れたお腹が可愛い。僕のとお揃いだ。
ティアと一緒に食べ終わったお皿にクリーンをかけると、ジルが僕たちの頭を撫でてくれた。
朝ごはん後のまったりタイムを満喫したいところだが、今日はテムとファムが来る前にやっておきたいことがある。
「ご主人、なにをやっておるのだ?」
マジックバッグから次々と本を取り出し始めた僕に、ティアが訊ねる。
「おべんきょー!」
「ほう、さすがご主人なのだ。ワレも勉強するのだ!」
ティアがそう言って僕の隣に座る。
僕はそんなティアを一撫でして、再び本を取り出す。
出してみて改めて思うが、ライはかなりの数の本を持ってきてくれていたんだな。どんな本があるか、まだ全部は把握できていない。よし、時間があるときに確認しておくとしよう。
でも今は、調べたいことがある。
とりあえずタイトルだけ読んで、目的のことが書かれた本を探していく。
「あ、これかな?」
タイトルには、『ゴブリンでもわかる!ステータスの基本』と書いてある。
昨日の夜から、称号の追加条件について気になっていたんだ。
パラパラとページをめくってみると、ステータスのそれぞれの項目について説明してある。タイトルのセンスは置いといて、知りたい情報は得られそうだ。
「ふむふむ。···何と書いてあるのだ?」
本を覗き込むが、文字を読めずに首を傾げているティアが可愛い。
「すてーたすのこと。しょーごーは···あ、ここだ」
見つけた称号の項目には、このように書かれていた。
称号とは、その者を表す名以外の呼び名である。
称号がステータスに追加されるには、その称号がその者にふさわしいと認識される必要がある。パターンとして現在分かっているのは、以下の通り。
①神に認識される。
神は1柱であっても認識されれば必ず称号がステータスに刻まれ、称号の剥奪はその称号を与えた神にしかできない。
②影響力のある複数人に認識される。
必要な人数は影響力の大きさに反比例すると考えられる。
③多くの人々に認識される。
10万人以上の一般人に認識される必要があると考えられる。
①~③のどれか一つに当てはまる場合もあるが、実際には、これらが複合的に絡む場合が多い。
なお、まだ不特定のパターンがある可能性もあるため、新たな条件を見つけた場合には筆者に連絡されたし。
「···ひっしゃにれんらくされたし」
この後の文章にさっと目を通すと、この結論に至った根拠や考察、称号の取得例などが書かれていた。
読み終わって、本をパタリと置く。
「ふむふむ。要するに、そう簡単に追加されるものではないのだな」
どうやらそのようだ。
『絶世の美幼女』がどの程度広まったのかは分からないが、称号になるほどではなかったのだろう。その事実に、ほっと胸をなでおろす。
あ、そうだ。せっかくだから、テムとファムが来るまで他の項目も読んでおこう。今度は、スキルだ。
スキルとは、魂に刻まれた技能である。
よってこれを他者に譲渡したり、他者から奪ったりすることはできない。
才能として先天的にスキルを持って生まれることもあれば、努力により後天的に獲得する場合もある。
ただし、同じスキルであっても獲得にかかる時間は個々で大きく異なるため、獲得のしやすさには適性や資質などが関わっていると考えられる。
···なるほど。スキルは一定の経験を積めば獲得できるというものではないのか。色々経験してみて、自分の適性を見つける必要がありそうだ。
タイトルのセンスは置いといて、簡潔にまとめられていて結構分かりやすい本だ。
さっき本を取り出したときに『ゴブリンでもわかる!』シリーズが他にもあったから、時間を見つけて読んでいくことにしよう。
外から近づいて来る2つの魔力に気づき、僕は本を閉じて片付ける。
ドアが開き、元気な声が響いた。
「よう!来たぜ!」
「みんな、おはよー!」
テムとファムだ!
「ちょっと遅くなっちまったぜ!」
「そうそう、テムが昨日ね、『うおー!全然眠れねー!』って夜遅くまではしゃいでて、寝坊しちゃったんだー」
「あっ、ファム!そ、それはそうなんだけどよ、秘密だったんだぜ!」
「あはは!ごめんねー?」
二人の掛け合いで、家が一気に賑やかになる。
みんな一通り挨拶を終えたところで、テムが僕とティアの前にふわりと浮かんだ。
「何の魔法を練習しようか昨日考えてたんだけどよ、オレ、いいことを思い付いたんだぜ!」
テムがくるりと回っていたずらっぽい笑みを浮かべる。
「ウィル、ティア。今日はオレたちの家に来ねーか?」
なんと!
突然のお誘いに驚く。
テムとファムがどこに住んでいるか気にはなっていたが、家に行きたいと言っていいものか分からず、聞いていなかったのだ。
ジルを見ると、頷いてくれた。
僕とティアは、ジルの許可を得て勢いよく返事をする。
「いきたい!」
「ワレも行きたいのだ!」
せっかく誘ってくれたんだから、ぜひとも行きたい。
僕とティアの元気な返事を聞いて、テムがニカッと笑う。
「よっしゃ、そんじゃ行くか!」
「行こー!」
家を出たテムとファムに続き、僕たち3人も外に出る。
これから向かうテムたちの家は、どんな家なのだろうか。僕はワクワクしながら二人の後を追った。
朝だ!
窓から差し込む太陽の光が、今日もいい天気だよと伝えてくれている。
僕は隣でまだ爆睡しているティアを、思う存分モフりまくる。それでもティアはぐっすりだ。
「てぃあ、おきてー。あさだよー」
「ううん···?ご主人、おはよう···なのだ···」
半分開いたティアの目がまた閉じる。
めちゃくちゃ可愛い。
多分ティアは、成長期の始まりにいるのだと思う。だから食べる量が日に日に増えているし、寝ているときはいつもぐっすりだ。
可愛いからまだ寝かせてあげたいけど、ご飯もしっかり食べてほしい。だから、僕は心を鬼にしてティアを起こす。
「てぃあ、あさごはん、たべよー」
「うん?朝···ごはん···?······腹が減ったのだ!」
朝ごはんというワードでバッチリ起きたティア。
うん、めちゃくちゃ可愛い。
ちなみに、朝ごはんと言えばすぐに起きることは、数日前に判明していた。なのになぜ最初から言わなかったのかというと···それはもちろん、おはようと言いながら寝ちゃうティアを見たかったからだ!
ああ、今日も朝から可愛いティアを堪能できて幸せだ。
ルンルン気分で魔力操作に魔力感知、それからティアとクリーンのかけあいっこをする。日課をこなしていると、ジルが来てくれた。
「おはよう」
「おはよー!」
「おはようなのだ!」
元気に挨拶を交わすと、ジルが僕とティアを腕に抱え、リビングへ移動する。
なにか手伝うことはないかと見てみたが、もうテーブルには朝食が完璧に準備されていた。
まず、シンプルなのに圧倒的な存在感を放っている白米に目を奪われる。一粒一粒のお米にツヤがあり、キラキラしている。見ていると、まるで宝物を発見したような、ワクワクした気分になれる。
白米の隣には、色んな野菜が入ったスープ。ほんのり出汁の香りがするから、和風の野菜スープなのだろう。
そしてふっくら焼き上げた魚。多分これは、僕がライの島で仕留めた魚だ。まだ見える湯気とともに、香ばしい香りが立ち昇り、食欲を刺激する。
この魚を食べたことがあるから知っているが、白身であっさりしているように見えて、旨味がぎゅっと詰まってるんだよなあ。
それからもう一品。玉子焼きだ。やわらかい黄色で、見るからにふわふわしている。
ジルの玉子焼きは、噛むと中から出汁がじわっと広がるんだ。それが卵の風味と相まって、ほっとするような、温かい気持ちになれるような、そんな優しい味になる。
見ているだけでも幸せなメニューに、これを食べたらどれだけ幸せな気分になれるだろうかと期待が高まる。
「すごいのだ、ジル!今日も美味そうなのだ!」
ティアが嬉しそうに尻尾をフリフリしている。
「そうか。たくさん食べろ」
ジルが僕とティアを降ろし、3人で朝食を食べる。
期待通り、いや、それ以上に美味しい朝食だ。
幸せ過ぎて、胸がいっぱいになる。そしてもちろん、お腹にも幸せをたくさん詰め込んだ。
「美味かったのだ~」
ティアのぽこんと膨れたお腹が可愛い。僕のとお揃いだ。
ティアと一緒に食べ終わったお皿にクリーンをかけると、ジルが僕たちの頭を撫でてくれた。
朝ごはん後のまったりタイムを満喫したいところだが、今日はテムとファムが来る前にやっておきたいことがある。
「ご主人、なにをやっておるのだ?」
マジックバッグから次々と本を取り出し始めた僕に、ティアが訊ねる。
「おべんきょー!」
「ほう、さすがご主人なのだ。ワレも勉強するのだ!」
ティアがそう言って僕の隣に座る。
僕はそんなティアを一撫でして、再び本を取り出す。
出してみて改めて思うが、ライはかなりの数の本を持ってきてくれていたんだな。どんな本があるか、まだ全部は把握できていない。よし、時間があるときに確認しておくとしよう。
でも今は、調べたいことがある。
とりあえずタイトルだけ読んで、目的のことが書かれた本を探していく。
「あ、これかな?」
タイトルには、『ゴブリンでもわかる!ステータスの基本』と書いてある。
昨日の夜から、称号の追加条件について気になっていたんだ。
パラパラとページをめくってみると、ステータスのそれぞれの項目について説明してある。タイトルのセンスは置いといて、知りたい情報は得られそうだ。
「ふむふむ。···何と書いてあるのだ?」
本を覗き込むが、文字を読めずに首を傾げているティアが可愛い。
「すてーたすのこと。しょーごーは···あ、ここだ」
見つけた称号の項目には、このように書かれていた。
称号とは、その者を表す名以外の呼び名である。
称号がステータスに追加されるには、その称号がその者にふさわしいと認識される必要がある。パターンとして現在分かっているのは、以下の通り。
①神に認識される。
神は1柱であっても認識されれば必ず称号がステータスに刻まれ、称号の剥奪はその称号を与えた神にしかできない。
②影響力のある複数人に認識される。
必要な人数は影響力の大きさに反比例すると考えられる。
③多くの人々に認識される。
10万人以上の一般人に認識される必要があると考えられる。
①~③のどれか一つに当てはまる場合もあるが、実際には、これらが複合的に絡む場合が多い。
なお、まだ不特定のパターンがある可能性もあるため、新たな条件を見つけた場合には筆者に連絡されたし。
「···ひっしゃにれんらくされたし」
この後の文章にさっと目を通すと、この結論に至った根拠や考察、称号の取得例などが書かれていた。
読み終わって、本をパタリと置く。
「ふむふむ。要するに、そう簡単に追加されるものではないのだな」
どうやらそのようだ。
『絶世の美幼女』がどの程度広まったのかは分からないが、称号になるほどではなかったのだろう。その事実に、ほっと胸をなでおろす。
あ、そうだ。せっかくだから、テムとファムが来るまで他の項目も読んでおこう。今度は、スキルだ。
スキルとは、魂に刻まれた技能である。
よってこれを他者に譲渡したり、他者から奪ったりすることはできない。
才能として先天的にスキルを持って生まれることもあれば、努力により後天的に獲得する場合もある。
ただし、同じスキルであっても獲得にかかる時間は個々で大きく異なるため、獲得のしやすさには適性や資質などが関わっていると考えられる。
···なるほど。スキルは一定の経験を積めば獲得できるというものではないのか。色々経験してみて、自分の適性を見つける必要がありそうだ。
タイトルのセンスは置いといて、簡潔にまとめられていて結構分かりやすい本だ。
さっき本を取り出したときに『ゴブリンでもわかる!』シリーズが他にもあったから、時間を見つけて読んでいくことにしよう。
外から近づいて来る2つの魔力に気づき、僕は本を閉じて片付ける。
ドアが開き、元気な声が響いた。
「よう!来たぜ!」
「みんな、おはよー!」
テムとファムだ!
「ちょっと遅くなっちまったぜ!」
「そうそう、テムが昨日ね、『うおー!全然眠れねー!』って夜遅くまではしゃいでて、寝坊しちゃったんだー」
「あっ、ファム!そ、それはそうなんだけどよ、秘密だったんだぜ!」
「あはは!ごめんねー?」
二人の掛け合いで、家が一気に賑やかになる。
みんな一通り挨拶を終えたところで、テムが僕とティアの前にふわりと浮かんだ。
「何の魔法を練習しようか昨日考えてたんだけどよ、オレ、いいことを思い付いたんだぜ!」
テムがくるりと回っていたずらっぽい笑みを浮かべる。
「ウィル、ティア。今日はオレたちの家に来ねーか?」
なんと!
突然のお誘いに驚く。
テムとファムがどこに住んでいるか気にはなっていたが、家に行きたいと言っていいものか分からず、聞いていなかったのだ。
ジルを見ると、頷いてくれた。
僕とティアは、ジルの許可を得て勢いよく返事をする。
「いきたい!」
「ワレも行きたいのだ!」
せっかく誘ってくれたんだから、ぜひとも行きたい。
僕とティアの元気な返事を聞いて、テムがニカッと笑う。
「よっしゃ、そんじゃ行くか!」
「行こー!」
家を出たテムとファムに続き、僕たち3人も外に出る。
これから向かうテムたちの家は、どんな家なのだろうか。僕はワクワクしながら二人の後を追った。
応援ありがとうございます!
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私もこの作品が大好きです。
いつまでもお待ちしております。
早く続きが、読めると良いな。\(°o°)/
ありがとうございます!!!
ウィルたちのことを気にしつつも、日々の生活に追われております…( ;∀;)
でもこうしてコメントをいただけると、エネルギーが湧いてきます!単純なので(笑)
本当にありがたいです(≧▽≦)
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○
∧∞∧∧ ○○ 彡
(三 (三 ) ○○○ 丿彡
/三 /三 |[二二二]|/
~(三~(三 ノ |_∩_| 目
 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
お団子食べたくなってきました...
も、もちろん月も見るつもりですよ!Σ(´∀`;)