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EMC
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現れた2機のドローンは、しばらく滞空すると二手に分かれて飛んで行った。
ここには俺とアカネちゃん、ホンマとサトシさん、それと物陰で見ているアンジさんの5人。
サトシさんが助けた後にその場で待機しているトキネさん、それにずっと姿が見えないオオバさんとツカサさんの3人が居ない。
素早いドローンを止めるには1人じゃ絶対に無理だろう。
だとすると3人とも危険だ。
「トキネさん、こっちに来てください。オオバさんとツカサさんも散り散りになっていては危険です。みんなで集まれば安全です。俺の声の方へ来てください」
俺は大声で叫んだ。
「すぐに向かいますっ」
姿は見えないけど、トキネさんはすぐに返事を返した。
オオバさんとツカサさんの応答はない。
ドローンに見つからない様に返事をしないのか? それとも俺の声が届かない所?
どっちにしてもマズイ状況だ。
「あのドローン、僕の記憶が正しければ軍事用ですよ。だとすると全方向衝突回避センサーだけじゃなく、人感センサー、音感知センサー、赤外線サーモグラフィーまで備わっている可能性がある。しかも完全無人機。つまりAIで動いています」
安全を確認したのか、物陰から出てきたアンジさんが得意げに語りだした。
「軍事用だって? なんでそんな物が俺達を襲ってきてんだよ」
ホンマは威圧的にサトシさんを睨んだ。
「わ、分かりません。けど、あのドローンが本気を出せば僕らに逃げ場はない。確実に殺されます」
「本気を出せば?」
サトシさんが怪訝な表情をみせた。
けど、この鬼ごっこのルールが伝えられた時から俺にも少し違和感があった。
なぜ俺達を捕縛してからカウントダウンを開始し10秒もの猶予があるのか。
なぜ背中だけを狙うのか。
ただ殺すだけならカウントダウンなんていらない。
ぶつかったらすぐに爆破すればいいし、銃火器を装備させれば尚更早く事が済む。
これじゃあまるで、誰かが捕まったら他の誰かが助けることを演出しているような……。
アカネちゃんが危機一髪だったのは確実だけど、なにか引っ掛かる。
でも、とりあえず今はオオバさんとツカサさんに合流しないと。
「とりあえず二手に分かれませんか?」
俺はそう言って皆の顔を見た。
本当なら全員で行動したいけど、二人が離れている可能性を考えたらこの選択肢しかない。
「賛成だ。年配のオオバさんと女性のツカサさんが個別に行動しているのなら二人ともドローンから逃げきれない」
サトシさんが俺に向かって頷いた。
「いいけどよ、俺は女のお守は御免だぜ、それとデブのオタクもダメだ」
ホンマは、アカネちゃんとトキネさん、それにアンジさんを睨んだ。
「トーゴと殺人犯が俺に付けよ」
それからサトシさんと俺を指名した。
「その呼び方、いいかげん止めてもらえますか?」
震えるアカネちゃんとトキネさん、俯くアンジさんの代わりに俺は言った。
「うっせぇな、じゃあ殺人犯とトキネって女が付いてこい」
ホンマは妥協した感じを見せたが、まだ許せない。
「サトシさんを殺人犯って言うのも止めてくださいっ」
「トーゴ、さっきからピーピーピーピーうるせぇんだよ、てめぇ何様だ?」
俺の言葉にホンマは顔を近づけてまくし立てる。
「言い争っている場合じゃない、俺はホンマくんに付いていくからトーゴくんはアンジくんとアカネちゃんを頼む」
サトシさんがホンマをなだめ、トキネさんの背中を押してドローンを追いかけた。
その後を追って、ホンマがしぶしぶと走り出す。
「すみません、足手まといで……」
アンジさんが自分のTシャツを握りしめ、悔しそうに言った。
「わたしも……」
アカネちゃんも口をとがらせている。
「落ち着いて対応すれば、きっと大丈夫です」
俺は根拠のない言葉を漏らすことしかできない。
でも、オオバさんかツカサさんを見つけて4人になれば、助かる確率はもっとあがるだろう。俺達ももう一機のドローンを追いかけて走り出した。
「アンジさん、あのドローンに弱点とかないのですか?」
俺はアンジさんの得意げな説明を思い出し走りながら聞いた。
「弱点か、完全防水、防弾、耐雷、バッテリーも3時間は余裕で持つ」
3時間か、制限時間内に動かなくなることはないってことだな。
「あるとすれば、EMCぐらいですね」
何かに気付いた様にアンジさんは言った。
「EMC?」
「ジャミング、つまり妨害電波です」
「妨害電波?」
電子機器を狂わす電磁波とかかな? 飛行機に乗るときに機内モードにしないといけないやつだったと思うけれど、確信は無い。
「ここにあるものでは、そうですね電子レンジから出るマイクロウェーブですかね」
アンジさんは得意げに続けるけど
「電子レンジ?」俺にはさっぱりだ。
「えーと、コンビニでお弁当を温めてもらうときに、よく安物のブルートゥースイヤホンが途切れる現象ですね」
なるほど、確かそんな状況があったかもしれない。あれが妨害電波ってやつなのか?
「アンジさん、そういうの詳しいんですね」
「いや、まぁ」
アカネちゃんが笑顔で褒めると、アンジさんは耳のあたりを真っ赤にして走る速度を上げた。
「でも、そもそもここって電源あるんですかね?」
アカネちゃんが不安がって問いかけた。
「蛍光灯も点いているし、ドローンだって充電が必要ですからね、探せばあるか……も」
得意げに話し続けたけれど、アンジさんは息切れを起こしそうになっている。
「あるとしたら壁側でしょう。でも今はオオバさんかツカサさんを探さないと」
俺はアンジさんの代わりにアカネちゃんへ言った。これ以上の詮索はアンジさんの戦闘力が低下する可能性がある。
それに今はオオバさんとツカサさんの安否確認が先だ。ドローンの対処はその後考えよう。
ここには俺とアカネちゃん、ホンマとサトシさん、それと物陰で見ているアンジさんの5人。
サトシさんが助けた後にその場で待機しているトキネさん、それにずっと姿が見えないオオバさんとツカサさんの3人が居ない。
素早いドローンを止めるには1人じゃ絶対に無理だろう。
だとすると3人とも危険だ。
「トキネさん、こっちに来てください。オオバさんとツカサさんも散り散りになっていては危険です。みんなで集まれば安全です。俺の声の方へ来てください」
俺は大声で叫んだ。
「すぐに向かいますっ」
姿は見えないけど、トキネさんはすぐに返事を返した。
オオバさんとツカサさんの応答はない。
ドローンに見つからない様に返事をしないのか? それとも俺の声が届かない所?
どっちにしてもマズイ状況だ。
「あのドローン、僕の記憶が正しければ軍事用ですよ。だとすると全方向衝突回避センサーだけじゃなく、人感センサー、音感知センサー、赤外線サーモグラフィーまで備わっている可能性がある。しかも完全無人機。つまりAIで動いています」
安全を確認したのか、物陰から出てきたアンジさんが得意げに語りだした。
「軍事用だって? なんでそんな物が俺達を襲ってきてんだよ」
ホンマは威圧的にサトシさんを睨んだ。
「わ、分かりません。けど、あのドローンが本気を出せば僕らに逃げ場はない。確実に殺されます」
「本気を出せば?」
サトシさんが怪訝な表情をみせた。
けど、この鬼ごっこのルールが伝えられた時から俺にも少し違和感があった。
なぜ俺達を捕縛してからカウントダウンを開始し10秒もの猶予があるのか。
なぜ背中だけを狙うのか。
ただ殺すだけならカウントダウンなんていらない。
ぶつかったらすぐに爆破すればいいし、銃火器を装備させれば尚更早く事が済む。
これじゃあまるで、誰かが捕まったら他の誰かが助けることを演出しているような……。
アカネちゃんが危機一髪だったのは確実だけど、なにか引っ掛かる。
でも、とりあえず今はオオバさんとツカサさんに合流しないと。
「とりあえず二手に分かれませんか?」
俺はそう言って皆の顔を見た。
本当なら全員で行動したいけど、二人が離れている可能性を考えたらこの選択肢しかない。
「賛成だ。年配のオオバさんと女性のツカサさんが個別に行動しているのなら二人ともドローンから逃げきれない」
サトシさんが俺に向かって頷いた。
「いいけどよ、俺は女のお守は御免だぜ、それとデブのオタクもダメだ」
ホンマは、アカネちゃんとトキネさん、それにアンジさんを睨んだ。
「トーゴと殺人犯が俺に付けよ」
それからサトシさんと俺を指名した。
「その呼び方、いいかげん止めてもらえますか?」
震えるアカネちゃんとトキネさん、俯くアンジさんの代わりに俺は言った。
「うっせぇな、じゃあ殺人犯とトキネって女が付いてこい」
ホンマは妥協した感じを見せたが、まだ許せない。
「サトシさんを殺人犯って言うのも止めてくださいっ」
「トーゴ、さっきからピーピーピーピーうるせぇんだよ、てめぇ何様だ?」
俺の言葉にホンマは顔を近づけてまくし立てる。
「言い争っている場合じゃない、俺はホンマくんに付いていくからトーゴくんはアンジくんとアカネちゃんを頼む」
サトシさんがホンマをなだめ、トキネさんの背中を押してドローンを追いかけた。
その後を追って、ホンマがしぶしぶと走り出す。
「すみません、足手まといで……」
アンジさんが自分のTシャツを握りしめ、悔しそうに言った。
「わたしも……」
アカネちゃんも口をとがらせている。
「落ち着いて対応すれば、きっと大丈夫です」
俺は根拠のない言葉を漏らすことしかできない。
でも、オオバさんかツカサさんを見つけて4人になれば、助かる確率はもっとあがるだろう。俺達ももう一機のドローンを追いかけて走り出した。
「アンジさん、あのドローンに弱点とかないのですか?」
俺はアンジさんの得意げな説明を思い出し走りながら聞いた。
「弱点か、完全防水、防弾、耐雷、バッテリーも3時間は余裕で持つ」
3時間か、制限時間内に動かなくなることはないってことだな。
「あるとすれば、EMCぐらいですね」
何かに気付いた様にアンジさんは言った。
「EMC?」
「ジャミング、つまり妨害電波です」
「妨害電波?」
電子機器を狂わす電磁波とかかな? 飛行機に乗るときに機内モードにしないといけないやつだったと思うけれど、確信は無い。
「ここにあるものでは、そうですね電子レンジから出るマイクロウェーブですかね」
アンジさんは得意げに続けるけど
「電子レンジ?」俺にはさっぱりだ。
「えーと、コンビニでお弁当を温めてもらうときに、よく安物のブルートゥースイヤホンが途切れる現象ですね」
なるほど、確かそんな状況があったかもしれない。あれが妨害電波ってやつなのか?
「アンジさん、そういうの詳しいんですね」
「いや、まぁ」
アカネちゃんが笑顔で褒めると、アンジさんは耳のあたりを真っ赤にして走る速度を上げた。
「でも、そもそもここって電源あるんですかね?」
アカネちゃんが不安がって問いかけた。
「蛍光灯も点いているし、ドローンだって充電が必要ですからね、探せばあるか……も」
得意げに話し続けたけれど、アンジさんは息切れを起こしそうになっている。
「あるとしたら壁側でしょう。でも今はオオバさんかツカサさんを探さないと」
俺はアンジさんの代わりにアカネちゃんへ言った。これ以上の詮索はアンジさんの戦闘力が低下する可能性がある。
それに今はオオバさんとツカサさんの安否確認が先だ。ドローンの対処はその後考えよう。
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