48 / 51
元凶
しおりを挟む
どちらを生かしますか……どちらを生かしますか?
何を言っているんだ……いや、ある程度は予想できていた、ホンマのゲームを見ていたから。でも、これは、この状況は……。
「これって、私か妹さんのどっちか、先輩に選ばれなかった方が死ぬってことですか?」
アカネちゃんは核心だけを言葉にした。
「そんなはずない……」
自信が持てない、けれどそう言うしかない。
トキネさんもサトシさんもオオバさんもホンマも無慈悲に殺された。
助け合いだ、生かし合いだとのたまっておいて殺す時は躊躇しない。だから、ここで選択を間違えれば確実にどっちかが死んでしまう可能性が高い。
「アンジさん、あれもフェイク動画なんじゃないの?」
ツカサさんは抱きついているアンジさんを引き離し、その肩を揺らした。
「すみません、涙を流し過ぎて目が……」
汚れた腕で涙を拭ったせいだろうか、アンジさんの目は充血して真っ赤だ。あれがフェイクだとしたらどんなに良かったことか。
「すみませんトーゴさん」
俺は首を横に振るだけでアンジさんに応えた。
今、あれをフェイクだと仮定するのは危険過ぎる。だとしたらアイちゃんが危険にさらされていることを考えて行動しなければならない。
どうすればいい、どうすれば皆が助かるんだ。あるはずだ、探せ、考えろ、考えろ。
アバターは“どちらを生かしますか”と言った。いや、それしか言っていない。あまりに曖昧な表現だ……もしも俺が“どちらも生かす”そう答えたとしたら? やってみる価値はある……いや、でも、ルールを無視したと判断されたらどっちも殺されてしまう可能性が……。
制限時間はどうだ。もしも、俺が制限時間内に答えを出さなかったらどうなる……今までのゲームから考えて、俺が死ぬ、もしくはペアであるアカネちゃんも脱落扱いで死ぬかもしれない。それだけは絶対に避けねばならない。
ということはやっぱりアカネちゃんかアイちゃん、どちらかを選ばなければならないということなのか……そんなの出来るわけない。
「ダメだ。俺には選べない」
これが俺の意思、選択しないで解決する方法を選ぶ。
「キモっ、バカでしょ、普通彼女の方選ぶべきでしょ」
何も知らないアイちゃんは軽蔑の眼差しを向けた。
「彼女じゃないし、アカネちゃんを選んだらアイちゃんが死んでしまうかもしれない」
俺は今までの事を思い浮かべ言葉に託した。
「はぁ? いつまでもそんな幼稚だから嫌いなのよ、しっかりしてよ、男でしょうが」
ダメだ。アイちゃんとまったく話が噛み合わない。いや、むしろそれでいいのかも、変に勘付かれて不安にさせたくない。
しっかりしろ、男だろ、兄だろ、俺がちゃんと導いてあげないと。
「いいですよ先輩……」
アカネちゃんは笑っていた。
俺は強い口調で「何が?」と返した。これだけ悩んでいるのに、なにがいいっていうんだよ。
「妹さんを選んでください」
アカネちゃんはそう言って、俺のことを真っ直ぐな瞳で見ている。
分かっていた。予想は出来た。アカネちゃんならそう言うと思っていた。
きっとこれがアカネちゃんの答えなのだろう。ツカサさんとアンジさんのゲームは互いの事を想い、助け合った結果クリア出来た。
アカネちゃんもそれに気付いているんだろう、自分の命を天秤にかけ、相手を思いやり、自己犠牲のもとにしか答えがないと判断したんだ。
でもこれは違う、このゲームは違うんだ。
アカネちゃんが自分を犠牲にしたって何の解決にもならない、だってそうだろう、アイちゃんはただの恋愛問題だとしか考えていない。軽い、アイちゃんの想いは軽すぎる。天秤に掛けられない。
それに、仮にアカネちゃんとアイちゃんが互いに命を差し出したとしてツカサさんとアンジさんのような展開になるなんて考えられない、もしかしたら本当に二人とも死んでしまうだけかも。
「アカネちゃんは自分の命を懸ければクリア出来ると思い込んでいるかもしれないけれど、たぶん無理だ。これはそういうゲームじゃない」
「でもトーゴ先輩、もう時間が……」
アカネちゃんが指差したドローンのセグメントは既に“5”を表示している。
そんなバカな、もう5分も経過していたっていうのか。
「全然わたしらの意見にも耳を貸さずに一人でぶつぶつと上の空で、しっかりしなよ」
「すみませんツカサさん、何も良い方法が見つからなくて。ツカサさんの意見って、なにか打開策が見つかったのなら教えてください」
そうだ、これは皆で力を合わせて乗り切るゲーム。今までもそうだった、だから今回もきっと……。
「ごめんトーゴくん、わたしとアンジさんはアカネちゃんを選べとしか言えない」
ツカサさんは真剣な顔でそう言った。
「それって……」
俺の妹を見捨てろってことだよな。
「なにも無いんです。結局僕らも憶測でしか考えがまとまらない。あれがフェイク動画だってことに賭けるしかない。それに、ゲームの目的は僕らの助け合いが目的だったハズ。僕とツカサさんもそれで生き残れました。だからここは部外者であるトーゴくんの妹さんを除外すべきなのではないでしょうか」
「アンジさん……本気で言ってるんですか?」
俺はアンジさんを睨んでしまった。
きっと俺が逆の立場だったら同じことを言ったかもしれない、本物の妹かどうかもわからない画面の人物よりも、一緒に危機を乗り越えた仲間を選ぶかもしれない。
だとしても俺には出来ない。妹を、アイちゃんを死に追いやるなんて出来るわけない。
「大丈夫ですよ先輩、私を信じて下さい。妹さんを選べば全て上手く行きます」
「出来ないよアカネちゃん、なんでそんなに自信満々で言い切れるんだよ」
「だって、私が全ての元凶なんですから」
全ての……元凶?
何を言っているんだ……いや、ある程度は予想できていた、ホンマのゲームを見ていたから。でも、これは、この状況は……。
「これって、私か妹さんのどっちか、先輩に選ばれなかった方が死ぬってことですか?」
アカネちゃんは核心だけを言葉にした。
「そんなはずない……」
自信が持てない、けれどそう言うしかない。
トキネさんもサトシさんもオオバさんもホンマも無慈悲に殺された。
助け合いだ、生かし合いだとのたまっておいて殺す時は躊躇しない。だから、ここで選択を間違えれば確実にどっちかが死んでしまう可能性が高い。
「アンジさん、あれもフェイク動画なんじゃないの?」
ツカサさんは抱きついているアンジさんを引き離し、その肩を揺らした。
「すみません、涙を流し過ぎて目が……」
汚れた腕で涙を拭ったせいだろうか、アンジさんの目は充血して真っ赤だ。あれがフェイクだとしたらどんなに良かったことか。
「すみませんトーゴさん」
俺は首を横に振るだけでアンジさんに応えた。
今、あれをフェイクだと仮定するのは危険過ぎる。だとしたらアイちゃんが危険にさらされていることを考えて行動しなければならない。
どうすればいい、どうすれば皆が助かるんだ。あるはずだ、探せ、考えろ、考えろ。
アバターは“どちらを生かしますか”と言った。いや、それしか言っていない。あまりに曖昧な表現だ……もしも俺が“どちらも生かす”そう答えたとしたら? やってみる価値はある……いや、でも、ルールを無視したと判断されたらどっちも殺されてしまう可能性が……。
制限時間はどうだ。もしも、俺が制限時間内に答えを出さなかったらどうなる……今までのゲームから考えて、俺が死ぬ、もしくはペアであるアカネちゃんも脱落扱いで死ぬかもしれない。それだけは絶対に避けねばならない。
ということはやっぱりアカネちゃんかアイちゃん、どちらかを選ばなければならないということなのか……そんなの出来るわけない。
「ダメだ。俺には選べない」
これが俺の意思、選択しないで解決する方法を選ぶ。
「キモっ、バカでしょ、普通彼女の方選ぶべきでしょ」
何も知らないアイちゃんは軽蔑の眼差しを向けた。
「彼女じゃないし、アカネちゃんを選んだらアイちゃんが死んでしまうかもしれない」
俺は今までの事を思い浮かべ言葉に託した。
「はぁ? いつまでもそんな幼稚だから嫌いなのよ、しっかりしてよ、男でしょうが」
ダメだ。アイちゃんとまったく話が噛み合わない。いや、むしろそれでいいのかも、変に勘付かれて不安にさせたくない。
しっかりしろ、男だろ、兄だろ、俺がちゃんと導いてあげないと。
「いいですよ先輩……」
アカネちゃんは笑っていた。
俺は強い口調で「何が?」と返した。これだけ悩んでいるのに、なにがいいっていうんだよ。
「妹さんを選んでください」
アカネちゃんはそう言って、俺のことを真っ直ぐな瞳で見ている。
分かっていた。予想は出来た。アカネちゃんならそう言うと思っていた。
きっとこれがアカネちゃんの答えなのだろう。ツカサさんとアンジさんのゲームは互いの事を想い、助け合った結果クリア出来た。
アカネちゃんもそれに気付いているんだろう、自分の命を天秤にかけ、相手を思いやり、自己犠牲のもとにしか答えがないと判断したんだ。
でもこれは違う、このゲームは違うんだ。
アカネちゃんが自分を犠牲にしたって何の解決にもならない、だってそうだろう、アイちゃんはただの恋愛問題だとしか考えていない。軽い、アイちゃんの想いは軽すぎる。天秤に掛けられない。
それに、仮にアカネちゃんとアイちゃんが互いに命を差し出したとしてツカサさんとアンジさんのような展開になるなんて考えられない、もしかしたら本当に二人とも死んでしまうだけかも。
「アカネちゃんは自分の命を懸ければクリア出来ると思い込んでいるかもしれないけれど、たぶん無理だ。これはそういうゲームじゃない」
「でもトーゴ先輩、もう時間が……」
アカネちゃんが指差したドローンのセグメントは既に“5”を表示している。
そんなバカな、もう5分も経過していたっていうのか。
「全然わたしらの意見にも耳を貸さずに一人でぶつぶつと上の空で、しっかりしなよ」
「すみませんツカサさん、何も良い方法が見つからなくて。ツカサさんの意見って、なにか打開策が見つかったのなら教えてください」
そうだ、これは皆で力を合わせて乗り切るゲーム。今までもそうだった、だから今回もきっと……。
「ごめんトーゴくん、わたしとアンジさんはアカネちゃんを選べとしか言えない」
ツカサさんは真剣な顔でそう言った。
「それって……」
俺の妹を見捨てろってことだよな。
「なにも無いんです。結局僕らも憶測でしか考えがまとまらない。あれがフェイク動画だってことに賭けるしかない。それに、ゲームの目的は僕らの助け合いが目的だったハズ。僕とツカサさんもそれで生き残れました。だからここは部外者であるトーゴくんの妹さんを除外すべきなのではないでしょうか」
「アンジさん……本気で言ってるんですか?」
俺はアンジさんを睨んでしまった。
きっと俺が逆の立場だったら同じことを言ったかもしれない、本物の妹かどうかもわからない画面の人物よりも、一緒に危機を乗り越えた仲間を選ぶかもしれない。
だとしても俺には出来ない。妹を、アイちゃんを死に追いやるなんて出来るわけない。
「大丈夫ですよ先輩、私を信じて下さい。妹さんを選べば全て上手く行きます」
「出来ないよアカネちゃん、なんでそんなに自信満々で言い切れるんだよ」
「だって、私が全ての元凶なんですから」
全ての……元凶?
応援ありがとうございます!
0
お気に入りに追加
5
1 / 5
この作品を読んでいる人はこんな作品も読んでいます!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる