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嘘
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トキネさんの最後の問題を不正解にしたのも、みんなの賞金を少しずつ盗んだのも、示談金にサトシさんの賞金を使わせたのも、全部自分が計画して実行した。
アカネちゃんはそう言って頭を下げた。
「ごめんなさい、本当にごめんなさい」と。
初めにアンジさんが「人殺し」と、小さく呟いた。
ツカサさんは「なんでそんなことしたの?」と、悲しげな顔で聞いた。
「デスゲームの配信なんです。人がたくさん死ねば、たくさんお金が入るんです」
アカネちゃんは慎重に言葉を選びながらそう答えた。
「悪魔め」「酷いっ」ツカサさんとアンジさんはアカネちゃんを睨んでそう吐き捨てた。
「なんで今さら?」
「もう疲れちゃって……これで許してもらえるなんて思っていないけど、ちょっとくらいは懺悔になるかなって……」
俺の問いにアカネちゃんはそう答えた。
……この子はバカなのだろうか。
隣に座っていた俺がアカネちゃんの右腕の動きを確認できなかったとでも?
賞金が盗まれた夜、ずっと俺の背中に感じていた体温をどうやって偽造できる?
オオバさんが示談金の話をしたときの怪訝な顔が演技だったとしたら、どれだけ人生経験を積んできた役者だろうと太刀打ち出来ない女優だ。それとも年齢詐称か?
しかも、このタイミング。
最後のゲーム、最後の瞬間。ここで全てが終わる。このデスゲームが配信されているのなら一番盛り上がる可能性がある場面。
ここで、自分が全ての元凶です……今までのことを凄く反省しています。だからもう死にたいです。だから俺の妹を選んで下さい?
なんでそんな幼稚な発言を?
なんでそんなに俺の妹を助けようと?
なんで? なにが? どんな考えがあって死を選ぼうと?
分からない、俺にはアカネちゃんの考えが理解できない。
「だからトーゴ先輩、もう終わりにしましょう」
俺が貸してあげたシャツをギュッと握りながら、アカネちゃんは震えていた。
「分かったよアカネちゃん、俺は君を選ぶ」
「え? なんでっ、なんでですか、止めてください。私は人殺しです。私を見捨てて下さい」
「アカネちゃん、バカだから、ほっとけないよ」
「バカじゃないです。ほんとにダメです。妹さんを選ばないと一生後悔しますよ、絶対に悲しくなります」
「なんで人殺しがそんな心配するんだよ」
「だって、そんなの無理ですよ、私を選んで妹さんが死んで、そんな状態で先輩が私と笑顔で会話するなんて想像できません。あり得ないです」
「ありがとね、アカネちゃん」
俺は涙ながらに必死で訴えるアカネちゃんの頭に手を乗せた。
「なんか知らないけどさ、良かったよ」
画面越しのアイちゃんが照れくさそうに言った。
「やっと私以外に目を向けてくれたみたいでさ……迷惑じゃないけれど、心配だったんだよね。お母さんが大変な時、いっつも私のことばかり気にかけてくれて、自分のこと全然だったじゃん……」
アイちゃん……。
「だから、それが正解、彼女さんを大事にしなよ、バカ兄貴」
これは、きっとフェイクなんかじゃない、あの画面の向こうの優しい女の子は、間違いなく俺の妹だ。
それでも、俺は……。
「だから彼女じゃないですっ、妹さんは黙っててください」
「黙ってられるわけないじゃない、バカだけど兄なんだから口出しするわよ」
「そういう問題じゃないんです。命に関わるんですよ? バカなんですか?」
「はぁ? バカってなによ」
アカネちゃんとアイちゃんが喧嘩を始めた……意味が分からないけど、なんだか微笑ましい。
「とにかく、頑張ってね。じゃあ私、行くから……って、ちょっと何すんのよ。離して、痛いっ」
画面の向こうでアイちゃんが黒服の男に腕を掴まれた。
ドローンのセグメントも“1”を表示している。
「止めろっ、アイちゃんに手を出すな。まだ俺は全部宣言していない」
画面を見上げて叫んだ俺は、次の言葉を準備し声に出した。
「俺は、アカネちゃんとアイちゃん、両方を選ぶ」
『では判定です』
俺の声に反応したアバターがそう言った後、ドローンがゆっくりと降下してきた。
アカネちゃんはそう言って頭を下げた。
「ごめんなさい、本当にごめんなさい」と。
初めにアンジさんが「人殺し」と、小さく呟いた。
ツカサさんは「なんでそんなことしたの?」と、悲しげな顔で聞いた。
「デスゲームの配信なんです。人がたくさん死ねば、たくさんお金が入るんです」
アカネちゃんは慎重に言葉を選びながらそう答えた。
「悪魔め」「酷いっ」ツカサさんとアンジさんはアカネちゃんを睨んでそう吐き捨てた。
「なんで今さら?」
「もう疲れちゃって……これで許してもらえるなんて思っていないけど、ちょっとくらいは懺悔になるかなって……」
俺の問いにアカネちゃんはそう答えた。
……この子はバカなのだろうか。
隣に座っていた俺がアカネちゃんの右腕の動きを確認できなかったとでも?
賞金が盗まれた夜、ずっと俺の背中に感じていた体温をどうやって偽造できる?
オオバさんが示談金の話をしたときの怪訝な顔が演技だったとしたら、どれだけ人生経験を積んできた役者だろうと太刀打ち出来ない女優だ。それとも年齢詐称か?
しかも、このタイミング。
最後のゲーム、最後の瞬間。ここで全てが終わる。このデスゲームが配信されているのなら一番盛り上がる可能性がある場面。
ここで、自分が全ての元凶です……今までのことを凄く反省しています。だからもう死にたいです。だから俺の妹を選んで下さい?
なんでそんな幼稚な発言を?
なんでそんなに俺の妹を助けようと?
なんで? なにが? どんな考えがあって死を選ぼうと?
分からない、俺にはアカネちゃんの考えが理解できない。
「だからトーゴ先輩、もう終わりにしましょう」
俺が貸してあげたシャツをギュッと握りながら、アカネちゃんは震えていた。
「分かったよアカネちゃん、俺は君を選ぶ」
「え? なんでっ、なんでですか、止めてください。私は人殺しです。私を見捨てて下さい」
「アカネちゃん、バカだから、ほっとけないよ」
「バカじゃないです。ほんとにダメです。妹さんを選ばないと一生後悔しますよ、絶対に悲しくなります」
「なんで人殺しがそんな心配するんだよ」
「だって、そんなの無理ですよ、私を選んで妹さんが死んで、そんな状態で先輩が私と笑顔で会話するなんて想像できません。あり得ないです」
「ありがとね、アカネちゃん」
俺は涙ながらに必死で訴えるアカネちゃんの頭に手を乗せた。
「なんか知らないけどさ、良かったよ」
画面越しのアイちゃんが照れくさそうに言った。
「やっと私以外に目を向けてくれたみたいでさ……迷惑じゃないけれど、心配だったんだよね。お母さんが大変な時、いっつも私のことばかり気にかけてくれて、自分のこと全然だったじゃん……」
アイちゃん……。
「だから、それが正解、彼女さんを大事にしなよ、バカ兄貴」
これは、きっとフェイクなんかじゃない、あの画面の向こうの優しい女の子は、間違いなく俺の妹だ。
それでも、俺は……。
「だから彼女じゃないですっ、妹さんは黙っててください」
「黙ってられるわけないじゃない、バカだけど兄なんだから口出しするわよ」
「そういう問題じゃないんです。命に関わるんですよ? バカなんですか?」
「はぁ? バカってなによ」
アカネちゃんとアイちゃんが喧嘩を始めた……意味が分からないけど、なんだか微笑ましい。
「とにかく、頑張ってね。じゃあ私、行くから……って、ちょっと何すんのよ。離して、痛いっ」
画面の向こうでアイちゃんが黒服の男に腕を掴まれた。
ドローンのセグメントも“1”を表示している。
「止めろっ、アイちゃんに手を出すな。まだ俺は全部宣言していない」
画面を見上げて叫んだ俺は、次の言葉を準備し声に出した。
「俺は、アカネちゃんとアイちゃん、両方を選ぶ」
『では判定です』
俺の声に反応したアバターがそう言った後、ドローンがゆっくりと降下してきた。
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