逆デスゲーム

長月 鳥

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悔い

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 気が付くと俺の体は宙に浮いていた。
 ドローンに抱えられるのは二度目だ。
 前回はサトシさんだけ犠牲になって、なぜか俺だけ降ろされた。だからだろうか、俺はなんとなく落ち着いていた。
 どうせまた降ろされる。そう考えていた。

 「トーゴ先輩っ」
 「トーゴさんっ」
 「トーゴくんっ」
 俺の名を呼ぶ皆は酷く慌てている。
 アカネちゃんなんか悲鳴なのか、嗚咽なのか、よく聞き取れないことを叫んで泣いている。
 そんなに心配しなくても大丈夫なのに……。

 大丈夫……なのだろうか……。

 たぶん無理だ。
 直感というか、覚悟というか、きっと俺は死ぬ。
 だって、これって走馬灯って現象の一部だよな、なんだか皆の動きがスローに感じる。
 体が宙に浮いているからなのか、凄く気分が良い。
 
 俺の体はゆっくりと棺桶の上に運ばれて行く。
 きっとトキネさん、サトシさん、オオバさん、ホンマがそうだったように、俺もあの棺桶の上で殺されるんだろうな……。
 二兎を追う者は一兎も得ずか……いや、あの状態ではこの選択肢しか考えられないよ。

 アイちゃんを見捨てるなんて絶対できないし。
 アカネちゃんは……もしかしたら、もしかして真犯人かもしれないけれど……まぁあんな素直でおバカな子じゃあ無理だろうな。やっぱり見捨てられない。

 だったら二人を選ぶしかないじゃないか。
 それで成功なら御の字、失敗しても俺が死ぬだけ。
 ツカサさんが言ったっけ「私が誰かのために死ぬのはいいんだけどさ、誰かが私のために死ぬのは耐えられない気がしてさ……」
 凄く分かるな、逃げだと言われればそうなるかもだけれど、例え間接的にでも俺のせいで死んでしまったら……きっと俺はサトシさんみたいに強くないから人生やり直そうなんて考えられない。
 だからこれでいいんだ。
 悔いは沢山残っているけれど、これでいいんだ。
 これが俺の人生だったんだ。
 アイちゃんとアカネちゃんを生かすことが、俺の人生の、俺の命の意味だったんだ……。

 そう考えれば、いくらかましに死ねる……。

 「助けて……助けてくれ、誰か、お願いします。なんとかして、死にたくない。まだ生きていたい、俺が居なくなったらどうすんだよ、母さんも妹も、どうやって生きていく、無理だろ、どうすんだよ、どうしてくれんだよ、頼むよ、誰か助けてくれっ」
 俺の口は、心は、なんの覚悟も出来ていない。
 嫌だ。死にたくない。
 まだ生きていたい。

 ああ、アカネちゃん、ツカサさん、アンジさん、そんな目で見ないでくれ。憐れまないでくれ。
 どうか、俺を、助けて下さい。

 ドンッ。

 ……。
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