俺は辺境伯の息子です!〜国王(父親)が苦手なので基本、王都以外のところで生活します。〜

さくや

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ルナティール王国

#7

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アトシュはレインとともにレイヴン辺境伯 ウィリアムの執務室を後にし、ルナリア達がお茶をしているサロンへ向かっていた。


その訳はというと↓


~執務室でのこと~

「はぁ……。
そこまではっきり断言してしまうほど苦手なのかい?」

「だって、父さまが俺の本当の父さまだと思っていたのにあんなハイテンションで自分が『父親』だと詰め寄られたら誰だってとまどいます。
苦手意識だって持ちますよ。」

「まぁ、そうだね………。
まだ、あの時はアシュは3歳だったしね。」

「確かに。あれは突然過ぎましたよ、父上。
僕もリアもアシュと本当の兄弟だと思ってましたから驚きましたし、リアなんて叔父上からアシュを隠す手伝いまでしてましたよ。
アシュがすごく嫌がるから………。」

「うん……、あれは本当に申し訳ないと私も思っているよ。
まさか、あそこまで我慢の限界がきてるとは思わなくてね……。」

当時のことを思い出し、それぞれが戸惑いや苦悶の表情を浮かべる。

「私もアトシュ様があのようにお泣きになる姿をあの日初めて見ましたので正直驚きました。」

『アレには私も驚いた。
アシュとは契りを交わして日は浅かったがいつもニコニコしていたからな。』

『うむ。我も驚いたぞ。
アシュを泣きやますための要員に突然 駆り出されたのだから。』

セバスがお茶の準備を整え戻って来て会話に加わる。
レインとクロスの従魔2人も当時のことをしみじみと思い出していた。

「まぁ、この際、学園のことは私からアルトに手紙を送っておく。
でも、アシュ。
苦手意識があってもいつかはきちんと向き合わないといけないよ。」

「はい……。」

話が終わり、セバスにお茶を淹れてもらう。
全員でまったりとお茶をしていると開けられていた窓から黒い鷹が入ってきた。

「おや、ヨルではないですか。
確か、リコたちの方に行っていたはずでは?」

ウィリアムのそばに黒い鷹がとまる。
そして、いきなり叫ぶ。

『アトシュはいるかー!』

「ヨル、少し落ち着いてください。
いきなりなんです?」


★ナイトホーク
別名:夜鷹
鋭い爪や嘴をもつ。
敵を切り裂く風を起こすことができる。
また、闇魔法を使うこともできる。



『ウィル! 落ち着いている場合ではないのだ!!』

「いや、それでも落ち着いてください。
どうしたんです?」

ヨルはウィリアムの従魔だ。
アトシュの名前を慌てたように叫ぶがなかなか要件に辿り着かない。

「ヨル、俺ならここにいるけど。どうしたの?」

あまりの慌てように何かあったことが分かり、アトシュが自分がココにいると声をかける。

『アトシュ! 見つけた、早くオレと来い!!』

「はぁ……、だから落ち着いてください!」

ウィリアムはため息を一つつくとペシッとヨルを叩く。

『痛い。なぜ、叩く?』

「なぜもなにもあなたが具体的なことを何も言わなからでしょう。
いったい何があってアシュをどこに連れて行こうとしてるのですか?
騒がず、まずは落ち着いて話しなさい。』

『すまん。分かったからそうガミガミ言うな。』

「ガミガミ言ったつもりはないのですが。」

「父上、ヨル。話が進みません。」

「ヨル、何があったの?」

父 ウィリアムと従魔 ヨルの会話にラチがあかないと思った息子2人が会話に割り込むように話しかける。

『そうだった!アシュ、一緒に来てくれ!!
ノアが起きてアシュがいないと騒いで大変なんだ!!!』

「あちゃー、もう起きちゃったのか。
もう少し大丈夫だと思ってリア姉様に預けたんだけど。」

『ノアは寝つきは良いが寝起きは悪いからな。
アシュがいないとなるとさらにぐずってるだろうな、きっと。』

「仕方ないね。話し合いは大方 終わったし、アシュとレインはとりあえずサロンへ向かったらどうだい?
いいですよね? 父上。」

「あぁ、構わないよ。」

『よっしゃあー、じゃあ、行くぞ、アトシュ、レイン。』

なぜかヨルが仕切り、率先してサロンへ向かおうとする。

しかし、

「ヨルはココに残ろうか。」

『えっ、なんでだ?ウィル?』

出鼻を挫かれ戸惑うヨル。
ヨルに待ったをかけたウィリアムは穏やかな笑みを浮かべ。

「ヨルは私と少しお話しようか。」

『ウィ、ウィリアム? 怒ってるのか?』

「いえいえ、怒ってなどいませんよ?」

ウィリアムとヨルのやりとりを見て周りの者は思った。


(((((絶対、怒ってる………)))))


『いや、絶対 怒ってるだろ!』

「だから、怒ってませんって。ただ………」

『ただ?』

「ただ、私はいつもあなたに言ってますよね?
慌てず、騒がず、要件は的確に伝えるよう。」

『えーと、まぁ、その、なんだ。
細かいところは気にすんな!!』

「細かいことではありませよね?
だいたい、あなたはそそっかしいところがありますからいつも落ち着くよう私は伝えてますよね?
それなのにあなたときたら………」

ウィリアムの勢いに翼をたたみ、身体を縮こませただ『はい……、はい………』としか言えなくなっているヨル。



「うん。これはまた長くなりそうな感じだからアシュとレインはサロンへ行っていいよ。」

様子を見て、これはすぐに終わりそうにないと判断したアサルトがアトシュとレインに行っていいよと言う。

「うん。ノアもだけどルージュも心配だから。
そうさせてもらう。」

『あぁ、さっさと行こう、アシュ。
面倒ごとに巻き込まれない内に。』

「うん。それじゃあ、行くよ。
ルト兄様、クロス、セバス、また後で。
あと、聞こえてないと思うけど父さま、失礼します。
ヨルはがんばれ!!」

アトシュはそれぞれに挨拶をするとレインを連れ、執務室を後にした。








執務室から出る寸前、ヨルの『助けて』というような声が聞こえたような気がした………





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