俺は辺境伯の息子です!〜国王(父親)が苦手なので基本、王都以外のところで生活します。〜

さくや

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ルナティール王国

#9

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「それでアシュくん、お義兄様から生誕祭のことはお聞きした?」

「はい。聞きました。」

お茶の用意が整い、皆で座り、お茶を飲んでいる。
ただ、アトシュの伯母 リコだけはココと交代し、立っているが。

リコ曰く、ただ座っているのは落ち着かないそうだ。
一度、どうして立ったままなのかアトシュは聞いてみたが『いつ何が襲ってきても対処できるように』という返事をもらった。

それからは特に何も言おうと思わなかった。
だが、『何が』襲ってくるんだろう?とは今でも思っているアトシュであった。

「そう、それでね、アシュくん。
アシュくんの6歳の生誕祭パーティーなんだけどアルト様も来られると手紙をいただいたの。」

母親 ココが言った言葉にアトシュは露骨に顔を歪めた。

「またそんなお顔をする。
どうしてダメなのかしら?」

「母さまにはわるいけど苦手なものは苦手なんだ!」

そんなアトシュの意見になぜか伯母 リコは頷いている。

「まったく、その通りだ。
私もあの男だけはどうにも気にくわない。」

「さすが、リコ伯母さま!よく分かってる!!」

なぜか意気投合する2人。

「お母様はおじ様が嫌いなだけでしょ。」

1人優雅に紅茶を飲んでいたルナリアがそんなことを呟く。

「その通りだ。私はあの男だけは好きになれん。
というか、私の愛するウィリアムと愛らしい妹であるココにちょっかいを出すのが許せん!」

「お母様。そんな力説されてもおじ様はお父様の弟で伯母さまの夫なんだからちょっかいをかけるも何も普通のことですわ。」

「むむ、相変わらず生意気なことを言うな、私の娘は。」

「私は思ったことを言っているだけですわ。
ねぇ、メア。」

『うん? 何か言った、リア?』

突然、会話を振られたメアはよく分からないがとりあえず頷いてみる。

先程から従魔達がまったく会話に入ってこない。
理由はただ黙々とお菓子を食べているからだ。

レインだけは特に用もないため会話に参加しないだけだが。

「いいえ、なんでもないわ。
食べるの邪魔してごめんなさい。」

それを見たルナリアはなんでもないと言い、続きを食べても良いと促す。

メアはルージュやノアとともにお菓子を食べるのを再開した。

「ふむ、いい食べっぷりだ!」

「えぇ、でも、食べ過ぎには気をつけておかないと。」

なんだか、話が逸れてきている。

「あらあら、お姉様、リアちゃん、話が違うところにいってしまっているわよ。」

「あら、本当ですね、伯母さま。」

「ふむ。何の話をしていたのだったか。」

「なんかみんな自由過ぎない?」

『それはおまえもだと思うぞ、アシュ。』


自由・マイペースな者が多かった。


「それで母さま、『あの人』は何しに来られるのですか?」

「もう、冷たい言い方ね。
アシュくんのお祝いにくるに決まってるじゃない。
それと、いいかげん『お父様』と呼んだあげたらどう?」

「嫌です。」

「あっ、そういえば『パパ』でもいいっておしゃってたわよ。」

「絶対、嫌です!!」

母 ココが楽しそうに言ってくるがアトシュとしては認めず、断固拒否の姿勢を貫く。

「本当にアシュくんはいじっぱりね。
なんて言ったかしらアシュくんみたいな子。
あっ、そうだわ!ツンデレよ!!
アシュくんはツンデレさんなのよね?
アルト様のことを『お父様』と呼びたいけど恥ずかしくて言えないのよね?」

「母さま……。
ぜっったい、それは違うからな!
俺はツンデレでもないし、『あの人』のことを『お父様』と呼びたいわけでもないから!!」

コロコロと笑いながらとんでもないことを言いだす母にとうとうアトシュは我慢できず、叫んだ。

「ふふふ、本当に恥ずかしがり屋さんね♪
あんまりツンツンし過ぎちゃダメよ♪」

「ほんとに……、違うから………」

『アシュ、諦めろ。』

「レイ………、慰めろ………。」

アトシュはいくら言っても無駄だと分かり、話しかけてきたレインに慰めろと言う。

レインはアトシュの『慰めろ』の意味を理解し、大きさを変化させた。

大きくなったレインのもふもふにアトシュは席を立ち、身体を埋める。

「もふもふ。相変わらず、レイのもふもふは癒される。」

『そうか。
私にはよく分からんがアシュが満足しているならいい。』

「あぁ、大満足だ。」

『あーー、ずるい!
僕も、レインのもふもふをもふもふしたい!!』

『ぼくも、アシュといっしょがいい!!』

『メアも!!』

アトシュがレインのもふもふを堪能しているとお菓子を食べていたルージュとノア。
そしてメアが気づき、自分もと言いながらレインのもふもふにダイブする。


「ふふふ、私の息子は今日もかわいいわぁ。」

「本当にそうですね、伯母さま。」

「ふむ。あの男の息子とは到底、思えんな。
まぁ、私のかわいいココの息子とは認めるが。」

「確かにあの光景は可愛らしく、癒されますね。」


アトシュが従魔たちと戯れる姿を周りは和やかに眺めている。

「それにしても、アシュくんはなんでアルト様のことが苦手なのかしら?
嫌いでないのはいいのだけれど。」

「伯母さま……、それは、やっぱり出会い方がいけなかったのでは?」

「ココ様、私もルナリア様と同意見です。
さすがに『あれ』では苦手にもなるでしょう。」

「私だったら叩っ斬るな。」

そんな会話をしながらそれぞれが『あの日』のことを思い出していた。







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