上 下
26 / 43
エピソード

テディ 2

しおりを挟む
山の頂に近いところに、大きな洞穴があった。
日当たりが良く、ドラゴンの巣は洞穴の入り口近くに作られていた。
目に身体強化をかけてみると、どうやら結界が張られているらしい。

(まるでサンルームみたい。)

巣と言うよりも、部屋と言っていい作りだった。

「気持ちの良さそうな寝床ね。子育てには良い環境だわ。」

丁度ドラゴンたちは部屋の奥にある寝床から離れていて、卵が3つ見えた。

母ドラゴンは橙がかった赤。
父ドラゴンは緑がかった茶。
どうやら、火属性と風属性の番のようだ。

単細胞の次兄クリストファーが、ドラゴンを目にした途端、領兵に指示を出した。

「卵を奪うぞ!親ドラゴンは弱らせてテイム、できなければ素材にしてしまおうぞ!!」

「あ、ちょっ、クリス兄様、だめです!まずは話が通じるかどうかを・・・」

わぁぁっと、血気盛んな12人の領兵と次兄クリストファーは、洞窟に向かって走って行ってしまった。

「あ~あ、行っちゃった。なんすかあれ。いくらなんでもいい歳した大人たちがなんの戦略も立てず・・・命を無駄にしちゃだめじゃないっすか。」

(アレクス、フラグ立てないで!)

「お嬢様は私たちとここでじっとしていてくださいね。」
「そうっす。お嬢がぶっ飛んだことすると、俺らの首が飛ぶっす。」

「・・はい。動かないです。」


目の前では領兵と次兄クリストファーが、自慢の魔法と剣で2頭のドラゴンに挑んでいる。
その状況は・・・よくない。

みんな、洞窟に結界が張られていることにさえ気付いていない。
結界の張られた洞穴の中で、卵たちは守られている。
親ドラゴンも、その中にいれば人間など相手にする必要などないはずなのに、彼らは洞穴から態々出てきて、人間の相手をしてくれていた。

自分たちの卵を狙う人族との戦いを、ドラゴンたちは舐めていた。
所詮、ただの人族。
これほどの魔法が使える人族に会ったのは初めてであったが、長い時を生きる彼らにとって、卵さえ無事であれば、これくらいの人族からの攻撃はいい暇つぶし、娯楽であった。

故に、自分たちに防御の結界を張ることすらせず、戦いを楽しんでいた。
多少鱗にかすり傷はつけられているが、再生能力が強い彼等ドラゴンには、痛くも痒くもなかった。









その様子を、遠くから見ている者たちがいた。

「うわぁ!なにしてくれてるんだ、あのバカ野郎ども!!」
「卵が孵ったら、黙っていなくなってくれるかもしれなかったのに!」
「あれ、ひょっとして、隣国の辺境の兵士たちじゃないのか!?」
「あー!!あいつ見たことある!ベイなんとかいう辺境の脳筋馬鹿だ!」
「不法入国して、ドラゴンを攻撃するって・・」

「「「「「あいつら、ドラゴンを怒らせて、この国を亡ぼすつもりか!!!!!」」」」」

レアメタル鉱山に住み着いてしまったドラゴンの番を監視していた、隣国の兵士たちだった。
しおりを挟む
1 / 5

この作品を読んでいる人はこんな作品も読んでいます!

余りモノ異世界人の自由生活~勇者じゃないので勝手にやらせてもらいます~

ファンタジー / 連載中 24h.ポイント:35,997pt お気に入り:29,943

ホロボロイド

SF / 連載中 24h.ポイント:42pt お気に入り:0

男女比崩壊世界で逆ハーレムを

ファンタジー / 連載中 24h.ポイント:78pt お気に入り:348

【完結】人生2回目の少女は、年上騎士団長から逃げられない

恋愛 / 完結 24h.ポイント:797pt お気に入り:1,129

祭囃子と森の動物たち

ライト文芸 / 完結 24h.ポイント:56pt お気に入り:1

不撓不屈

現代文学 / 連載中 24h.ポイント:198pt お気に入り:1

愛及屋烏

BL / 連載中 24h.ポイント:49pt お気に入り:5

メロカリで買ってみた

キャラ文芸 / 連載中 24h.ポイント:42pt お気に入り:10

アンバー・カレッジ奇譚

ファンタジー / 連載中 24h.ポイント:35pt お気に入り:0

処理中です...