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準備 2

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翌日。
「漆黒の闇」は、事前に申請していたオークの巣の討伐隊に加わっていた。

町から半日歩いたところに、オークの巣が見つかったのだ。
オークの数は100を超え、上位種が複数体確認されている。

参加しているのは6パーティー25人だ。
これに非戦闘員の馬車の御者が10人付く。
馬車の御者が多いのは、討伐したオークを運ぶための荷馬車があるからだ。

巣から離れた場所で、馬車と御者は待機。
馬車の護衛に1パーティーが付くため、討伐に参加するのは5パーティー20人となる。
今回の依頼では、攻撃魔法が使える魔法使いがいることが絶対条件となっていた。


討伐隊のリーダーの指示を無視して突っ込んでいったボルトが大怪我をした。

カリアがすぐに回復魔法をかけたが、足が千切れかけていたため止血が精一杯でほとんど治癒できなかった。
カリアは憧れの人の力になれずおろおろして使い物にならず、喚き散らすボルトは戦闘の邪魔にしかならなかった。

僕はオークを倒すことはできなかったけれど、オークに捕らわれていた人々の救出に成功し、みんなから賞賛された。

ここが分岐点だったのか。

無意識の予知が発動しない代わりに、現実にならない予知が視えた。

確実に現実となる未来がカラーで鮮明に視えるのに比べ、現実にならない、けれど起きたであろう未来は、モノトーンではあるが鮮明に視える。


ボルトは討伐隊のみんなから白い目で見られていた。
ゲオルグとルウナはそんな視線には気付かず、怪我をしたボルトに軽口を叩いて大笑いしていた。

町に着いてすぐボルトは教会に運ばれ、高位の回復魔法を受けた。
しかし流れた血は戻らないため、暫くの休養が必要になった。

僕にとってはチャンスだった。

今夜、ボルトは討伐時自分の怪我を治せなかったことで後ろめたさを感じているカリアにつけこんで、カリアを自分の物にする。
そこまでのことはカラーで視えた。

その後のことはモノトーンで視えた。

今日はパーティーハウスに居たくなかった。
もう気持ちは冷めきっているが、一度は好意を持った相手であり、対外的には僕の婚約者だ。
そして、今夜僕がパーティーハウスに残れば、モノトーンの未来が現実になる。

パーティーハウスにみんなが揃うと、カリアがボルトの身の回りの世話をすると宣言した。
パーティーハウスの家事はずっと僕がやってきたが、カリアが手伝ってくれることもあったので、僕が居なくても問題ないだろう。

ゲオルグとルウナは、今夜起こることを事前に知らされているのに、2人で知り合いの貴族の護衛依頼を受けるから、これからすぐに出発して3週間は留守にすると、にやにやしながら言い出した。

「じゃあ僕も一人で採取の依頼を受けるよ。少し遠出するから、3週間くらい留守にする。」

みんな驚いた顔をしたけれど、僕を心配してのことではない。

ボルトたちが今夜ことに及んで、「自暴自棄になったライトが自殺した」ように見せて殺す。
それがモノトーンの未来だった。

「ちっ。弱えぇんだから、魔物に食われんなよ。」

気持ちのこもっていない声がかけられた。
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