上 下
11 / 20

準備 3

しおりを挟む
下手に引き留められないよう、そのまま直ぐにパーティーハウスを出た。
もう夕方だ。

このままダンジョンへ向かおうか、そう思った瞬間、
会っておかなければならないであろう、その人の姿が。

僕は馴染みのない古着屋でフード付きのローブを買って、知り合いに会わないよう予知しながら、さっき視えた場所へ向かうと、パーティーハウスを静かに見つめる男が立っていた。

「あの、突然すみません・・・」

声をかけると、男は臨戦態勢に入る。
物凄い殺気だけれど、僕が殺される未来はない。

「ご存じの通り、僕は現在「漆黒の闇」のパーティーメンバーの一人です。もうすぐ追い出されますけど。今は追い出される前に殺されないよう、必死です。」

男の青い瞳が揺れて、一瞬金色に光る。

「リーダーのボルトは今夜僕の婚約者と関係を持って、その後、他の仲間と一緒に僕を自殺に見せかけて殺すつもりだったので、逃げてきたところです。」

また男の瞳が金色に光る。

「僕が生き残るために、あなたには僕の秘密をお教えします。僕のスキルは【予知】。確実な未来を視ることができます。」

「ほう・・?」

地を這うような低音だった。
けれど意外にも、心地の良い、柔らかい響きだった。

「僕が無事に追い出されるように、あなたの復讐が成功するように、少しだけ情報交換しませんか?」

「・・・」

「例えば、ダンジョンの中であれば、何が起きても、誰にも知られることはありません。あなたが望まれるのであれば、最適な場所への行き方を僕が予知できます。例えば、パーティーメンバーであれば、一緒に行動することは当たり前ですし、相手をよく知れば、チャンスも増える・・・そんな怖い顔しないでください。もちろんこんな物騒な方法でなくても、望まれるのであれば、社会的に抹殺する未来も視てお教えすることができますよ。」

こんなバカげた話をする怪しい少年ぼくを信じてもらうことができたのは、話しかけた相手、キースさんのスキルが【看破】だったからだ。

「詳細を詰めようか。」

2人の接触は誰にも知られてはいけない。

僕はキースさんを、森の拠点に誘った。
まだただの洞窟だけどね。

別々に食べ物や必要なものを買い、森の中で待ち合わせをした。
僕がキースさんと会う未来を視て、キースさんを見つけただけだけれど。

魔物に会うことなく、すいすい森の深部に入っていく僕に、キースさんは感心していた。

キースさんの【看破】でも似たようなことはできるようだけれど、スピード感が違うらしい。
しおりを挟む
1 / 5

この作品を読んでいる人はこんな作品も読んでいます!

1人の私と1人の悪魔

ファンタジー / 連載中 24h.ポイント:0pt お気に入り:0

私の元婚約者は、新しく婚約した妹の酷さを知らなかった

恋愛 / 完結 24h.ポイント:28pt お気に入り:1,208

イサード

ファンタジー / 連載中 24h.ポイント:0pt お気に入り:4

香蕉の生き方

歴史・時代 / 完結 24h.ポイント:0pt お気に入り:3

ホロボロイド

SF / 連載中 24h.ポイント:191pt お気に入り:0

恋人は冷たい土の下に。

恋愛 / 連載中 24h.ポイント:0pt お気に入り:0

二番煎じな俺を殴りたいんだが、手を貸してくれ

恋愛 / 連載中 24h.ポイント:482pt お気に入り:0

飯がうまそうなミステリ

エッセイ・ノンフィクション / 完結 24h.ポイント:532pt お気に入り:0

1人の男と魔女3人

恋愛 / 連載中 24h.ポイント:369pt お気に入り:1

処理中です...