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準備 8

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拠点の洞窟の中は迷路のように広くなり、外には美味しい実のなる木がたくさんの実を付けている。

害獣や人から拠点を守るために、アースと精霊たちが惑わしの結界を張ってくれている。

「ほんとにアースも精霊さんたちも凄いね。」

みんなが揃ってどや顔をする。
可愛い。

あれからアースには「加減というものを覚えろ!」と言われ続け、しぶしぶ、開けた宝箱からは必要と思われるものだけを取り出すようにした。

・・・あのかっこいい片手剣、欲しかったな・・・使えないけど。

冒険者ギルドが管理している低ランクダンジョンと、未発見の野良ダンジョンから、更に3つのマジックバックを手に入れた。
容量は僕2人分くらいから荷馬車4~6台分くらいまで。

そして、どうしても手に入れたかった最後の一つ。

アースと精霊たちが協力してくれて、僕が足を踏み入れたことのない上級ダンジョンで、容量無制限で時間停止機能のあるマジックバックを手に入れることができた。

マジックバックというのは、収納魔法が付与されている魔道具の総称で、必ずしも鞄の形をしているわけではない。

このマジックバックは白に近い銀色で、複雑な模様が刻まれている太めの腕輪?のような形だったが、左腕に付けてみたら、前腕部分を覆うプロテクターのような形に変化した。
見た目は安物の皮のようだが、触り心地は金属だ。
違う形を意識してみると、また形が変化した。

凄い!

僕が高価なものを持っているとボルトたちに巻き上げられるから、そうならないものをと、普段から持ち物には気をつけているため、マジックバックが僕の意識を読み取って、粗末な素材の防具に偽装したようだ。

アースはそれを見てニヤニヤしている。
神獣であるアースの主になった僕への、神様からの贈り物なのかもしれない。

「この食いしん坊たちの面倒を見るのは大変だと思うけど、お願いね。」的な。

上級ダンジョンの入り口は冒険者ギルドで厳しく管理されているが、アースは違う場所にダンジョンへの入り口を造ってくれた。
精霊ではできない、神獣である彼ならではの術だと、どや顔をしていた。
可愛いだけだけど。

比較的出回っている一番小さいサイズのマジックバックだけ持ち歩こう。

これでもボルトたちに取り上げられる可能性があるが、腕輪のいい偽装になる。
今回の採取のために薬師から預かり、そのまま次の依頼のために預かり続けていることにしよう。

預かりものであれば、手は出さないかもしれない。
希望的観測ではあるけれど。

3週間、アースと土の精霊たちとダンジョン巡りをしたり、拠点を充実させたり、精霊たちに旅に持って行くための食料を栽培してもらって無限収納に収納したりと、忙しく過ごした。
楽しかった。
パーティーを追放されたら、これが日常になるのか。
嬉しいなぁ。

もうこのまま旅に出てもいいんじゃないか、とちらりと思う。

「漆黒の闇」について考える。

孤独だった僕に声をかけてくれたのは嬉しかった。
利用されているだけだと認識してからも、爺以外の人が怖くて、今よりひどい目にあったらどうしようと考えると、パーティーを抜けることができなかった。

「漆黒の闇」では肉体的な暴力を受けることがなかったことが、一番大きな理由だったかもしれない。

いままで利用され、搾取され続けてきた。
それだけでは足りず、僕の婚約者を奪って、僕を殺して、僕の全てを奪おうとしている。

許せないという気持ちが生まれてしまった。

それにキースさんから聞いたボルトたちの悪行も許せない。

ボルトたちがよく依頼を受けている貴族がいる。
その貴族と組んで行ってきた、行っている悪行の数々。
今この時も、あいつらの被害を受けている人々がいる。
僕が意識的に視た未来でも、キースさんから聞いたようなことが、繰り返し行われていた。

依頼が終わると長めの休みが度々あった裏にはこんな事情があったのかと、キースさんから話を聞いて納得できた。

僕もボルトたちは許せないけれど、殺したいほどではない。
僕は弱いから、自分が殺されないように逃げるだけで精いっぱいだ。

でもキースさんは違う。彼の闇は僕以上に深い。
最後はキースさんに僕の場所をしっかり譲ってから、旅に出なければならない。

3週間が経ち、僕はパーティーハウスに戻った。
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