所詮俺は、彼女たちの性の踏み台だった。

並河コネル

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第一章 星野恭子

第五話 この愛情は錯覚 *

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「大輔君、早く来て。一緒になろう」

 仰向けになった恭子が、避妊具を装着した大輔に手を差し伸べる。
 大輔は性器に手を添え、妖しく艶めく蜜口に押し付けた。

「んんっ……!」
 眉間に皺を寄せ、体をよじらせる恭子。大輔は困惑した。

「恭子さん、キツイよ……こんなの無理だよ。入らないよ」
「大輔君……キスして」

 彼女のリクエストに応え、大輔はその唇をくわえるように舐めた。恭子が彼の掌を取り、指を絡めてくる。
「……お願い。『好き』って言って」
「好きだよ」
「いっぱい言って。私があなたを受け入れられるように、安心させて」

 大輔は彼女の頬や顎にもくちづけし、舌先でなぞった。
「好きだよ、恭子さん。君が好きだ」
「大輔君……」
 蒸気を含んだような息を吐きながら、恭子は男根を軽く握った。潤った襞の間に、鈴口をそっと当てる。

 改めて仕切り直す大輔。今度は先端が少し入った。
「あ……んんっ!!」
 彼女の悲鳴のような喘ぎ声に、大輔のそれは更に屹立した。

「……ゆっくり、入ってきて」
「凄い力で押し返してくる……本当に大丈夫?」
「大丈夫……平気だから……」

 不安に駆られながらも、彼女の腰に手を添えて奥に押し込んでいく。唇を噛んで背中を反らす恭子。

「大輔君……どのぐらい入った?」
「半分以上は入った……と思う」
「……来て」

 彼女が再び手を伸ばしてくる。
 大輔は彼女の上に覆いかぶさり、髪を撫でながらキスをした。キスを重ねる度に、少しずつ恭子の中に入っていく。

 眉を八の字にして、苦しそうに息を吐く恭子。
 今までに感じたことのない、温かい粘膜に圧迫される感覚が伝わってくる。
 大輔は彼女を手に入れたことを実感した。

 不思議だ。
 つい数時間前まで、ただの先輩・後輩だったのが、こうやって体を繋げている。

 彼女に求められるまま抱き締め、求められるまま「好き」と言ったが、果たして自分は本当に、彼女のことが好きなのだろうか。正直なところ、分からないというのが本音だ。
 こうやって冷静に自分を見られるのも、「好きで好きでたまらない女性を、ようやく手に入れた」わけではないからだろう。
 
 ただ、確実に言えることは、目の前の彼女に対して「愛しい」という気持ちを抱いていることだ。

 今自分は、性器を通して彼女の体温を感じている。その事実が、例えようのないぐらいの幸福感で自分を満たしてくれている。
 これを愛情と呼んでいいのだろうか。それとも男としてつがいを得た達成感を、愛情だと錯覚しているだけなのか。

「好き。好き。大輔君が好き」
 彼の臀部に手を添え、もっと入ってくるように誘う。

「俺のことが好き? どこが好き?」
 こんな時に確認することではないような気もするが、どうしても訊かずにはいられない。

「全部好き」

 全部? 俺のこと、まだ何も知らないのに?
 そうかと言って、「顔」とか「体」とか言われてもピンと来ないが。

 三年の女性が言っていた、「すぐに寝て、エッチが気に入らないと捨てる」というのは、単なる噂というわけではないのかもしれない。
 自分を満たすセックスをしない男は斬り捨て、満足させる男だけを「好き」になる。これまでの言動から推察するに、そうであってもおかしくない。

「『何も知らないくせに、適当なこと言って』って思ってるでしょ」
 恭子が彼の顔を両手で挟んで、親指を頬に食い込ませる。

「そんなことないよ」
「大輔君は、ウソが下手」
「……」
「良いの。どう思われようと。私は好きなんだもの。理由なんてどうでも良い」

 彼女らしい見解だ。
 自分の欲求に忠実、それが彼女なのだ。

「もっと欲しいの。来て」
 彼の背中に足を絡め、しがみついてくる。

 大輔が腰を落とすと、彼女は顎を上げて呻いた。
「あんっ! あぁ、大輔君を感じる……」
「恭子さん、ちょっと、動かしづらいかも……」
「ちょっと待ってて」

 恭子はベッドの上のクッションを掴むと、自分の腰の下に押し込んだ。
「これでいけるでしょ」
「あ、いけるかも……」

 言下に性器を出し入れしようとする大輔。恭子が金切り声をあげる。
「イヤっ! そんなに早く動かないでっ!!」
「ご、ごめん……」
 途端にしょんぼりとする彼の頬を、恭子がなだめるように撫でる。

「ごめん、大きな声出して。ちょっと痛かったの。もっと優しくして。ね? 私、大輔君と一緒に、気持ち良くなりたいの。良いでしょ?」
「……うん」

 こういう展開になると予想はしていたが、完全に彼女のペースだ。
 まぁ初心者の自分としては、このぐらいのほうが助かるわけだが、男としてのプライドは容赦なく傷つけられている。
 
 彼女は自ら秘部を見せようとした時、顔を隠して恥ずかしがった。
 あの時は、「ここから俺のペースかな」と思ったが、甘かった。

 あれから延々彼女から、クンニリングスをレクチャーされた。
 愛撫というより、ほぼ作業。舌が痙攣するかと思った。
 彼女は絶頂には達さなかったようだが、すこぶる満足そうだった。
 一方の自分は、疲労困憊だった。

 そのあと「お待たせ。大輔君の番ね」とフェラチオをしてくれたが、未知の快楽に速攻でイってしまった。
 そして彼女の提案でシックスナインに移行し、今に至っている。

「大輔君、突かないでって。私の中、大輔君ので、こすって欲しいの」
「こする……」

 彼女の要望を受け、大輔は神経を集中させて下半身を動かす。
 恭子が気持ちよさそうに仰け反り、頭を左右に振って喘ぎだす。ぬちゃぬちゃとしたサウンドが聞こえ始め、彼女の中から愛液が湧き出しているのが確認できる。

 どうやら動きは間違っていないようだ。
 乱れた彼女を見ると、男としての充足感に満たされる。

 俺で、感じてくれている。
 気持ち良くなってくれている。
 もっともっと、気持ち良くさせてあげたい。
 自分だけじゃなく、彼女も絶頂に達して欲しい。
 
「上に、乗りたい」

 恭子が体を起こし、要領を得ない大輔を仰向けになるように誘導する。
 自ら挿入し、脚を開いて身体を逸らし、結合部を彼に見せつけた。

「エ……エロい……」
 大輔は意図せず言葉を発した。

「繋がってるところ見えると、興奮するでしょ」
 腰を上下に動かして、男性器を出し入れする恭子。震えるような声を出す大輔。

 乳房がたゆたゆと揺れ、恭子は気持ちよさそうに目を瞑る。
 大輔は息を吐きながらその様子を眺めていたが、次第に大きな波が襲ってくる。

「恭子さん……ヤバい。もう無理」
「イキそう?」
「うん……」

 恭子は動きを止め、身体を前に倒してきた。彼に何度も接吻し、耳元で囁く。
「良いよ、イッて。大輔君、上になる?」
「うん」
 少し慌てたように彼女を寝かせ、再び正常位で挿入する。

「ああーっ!」
 彼女はシーツを掴んで咆えたが、大輔は構わず腰を振った。
「ごめん、恭子さん……もう限界っ!」
「良いよ、いっぱい出して! 私の中に、いっぱい出して!!」
 
 彼女を抱え込んで、狂ったように杭を打ち付ける。
 大輔の胸の中で、彼女は悲鳴のような喘ぎ声を上げて爪先を伸ばした。
 
「出るっ……!」
 汗だくの大輔が、途切れるような息を何度も吐く。

 平成十一年、六月二十二日。
 菅原大輔、十九歳。めでたく童貞喪失。

 大輔は彼女の中から性器を抜き、白濁の液体が溜まった避妊具をまじまじと見つめた。
 恭子が起き上がり、彼からコンドームを外す。慣れた手つきで口を縛り、ティシュで包んでダストボックスに放り込む。

 すっかり大人しくなった性器を掌に載せる恭子。
「お掃除してあげる」

 彼女はフェラチオを始めた。
 力なくこうべを垂らしている彼自身を、彼女は愛おしそうに舐めた。まるで猫がミルクでも舐めるかのように、チロチロと舌先で。
 額に手をあて、仰向けになる大輔。

 マジか。
 これが現実のセックスの流れなのか。
 こんなことを言ったら、それこそ彼女に怒鳴られそうだが、AVの中だけかと思った。
 射精したばかりで、気持ちいいとかエロいとかいう感覚はあまりないが、衝撃的な行為であることは確かだ。

 股の間で揺れる彼女の頭。
 大輔はほぼ無感情でそれを見ている。
 すると、徐に彼女が顔を上げ、満面の笑みを見せた。

「おっきくなってきた。ねぇ、もう一回しよう」
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