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百か日 その3
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(ね、ねぇ、昭司君。陽子、なんて言ってるの? 何かするつもりなの?
美香が不安に耐えかねて質問してきた。
目の前で、しかも視線をこっちに向けながら何かを言われてるが、それが何なのか分からないってのは、高校卒業前の三者面談の時間直前くらい不安なんだろう。
(お前がこのままこっちの世界に留まるってんなら、成仏させるってさ)
(え? えぇ?!)
(いや、なんで驚く?)
前々から言ってただろうが。
火葬して葬儀が終わったんだから、普通は極楽浄土に行くもんだ、と。
だが、そういうことにしよう、と、本当は死んだ後どうなるか分かってないこっちの世界の人間がそんな設定を勝手に作り上げた、と言えなくはない。
が、こっちの世界は、肉体を持っていなけりゃ普通の日常生活は送れない。
故に、死後の世界ってのはあるはずだ。
その世界のことを、この仕事をしてるから極楽浄土と呼んでるだけだ。
だが呼称がどうのって言うのは重要な問題じゃない。
行くべきところに行くべきだ、いるべきところにいるべきだ、ってのが本来、今の美香に課せられた問題とは思う。
つまり、俺らの仕事への信頼云々は置いといて、俺の思うところと池田の思惑は一致はしている。
(それに、美香さんが悪霊になってしまうかもしれないっていう心配もしてくれてるんだぞ?)
(そ、そんなわけないじゃないっ。悪霊っていったら、呪いとか祟りとか、そんなの周りにまき散らすような危ない奴の事でしょ? そんなつもりまったくないしっ)
まぁそういう定義で間違っちゃいないとは思うが、何を焦ってんだか。
(死んだ人がこの世界に留まる理由は、この世に心残りがあるからっつってるぞ? 俺も何となくそう思う。けど美香さんにはないんだよな?)
(思い当たる節はないけど……)
(いっそのこと、池田に身を委ねるのも悪くないんじゃないか、とも思うんだが)
(え? えっと……そしたら、もうお別れってことになるのよね?)
っていうか、そのお別れのタイミングは、本来はもっと早い時点で訪れるもんだったんだが。
つか、生きてる者には誰だって、そんな時はやってくるもんなんだが?
(当たり前だろ。つか、俺とこうして会話してること自体超常現象なんだからな?)
(それは分かってるけど……)
(俺らにできることは、読経だけだから。あとのことは亡くなった本人次第で、本人すらどうしたらいいか分かんないなら、そっちの専門家に任せるしかないだろ。美香さん自身、なぜここに留まってるか分からないってんなら)
(分かってるわよ! 何度も言わないで!)
「ひっ!」
テーブルの上で正座しながら、両手でそのテーブルを叩いた。
もちろん音が出るわけはないが、その激しい動きでつい反応してしまった。
やらかしてしまった。
「……磯田君」
「な、何?」
「周りに絶対言わないから、正直に言って。……あなた、見えてるのよね?」
「な、何をかな?」
「誤魔化さなくていいわよ。あまりにタイミング良すぎるし、目線が合いすぎる。それに今の、見えてないとできない反応だよ?」
終った。
(俺にお前が見えるってこと、バレちまった)
(ちょっと……)
(突然激しいリアクションしたら、目に入ったらそりゃ思わず体が反応しちまうだろ。姿を隠すとかできなかったんかよ)
(そんなこと、普段話題に出なかったのに、都合のいいときだけ出さないでよっ)
都合のいいいときだけって言われても、こんな体験自体初めてだから、思い付きで言い出すことの方が自然だろうに。
「……実は……」
※※※※※ ※※※※※
「ってことは……何? あたしだけじゃなくて磯田君も美香ちゃんを見ることができて、そればかりじゃなく声に出さなくても会話ができて、美香ちゃんは磯田君の言うことしか理解できなくて、磯田君が見える幽霊は美香ちゃんだけってこと? あたし、美香ちゃんが何言ってるのか分からないのに……」
「そゆこと。でもお前、声でかすぎ。それに俺と長話ししすぎ。周りから怪しまれるぞ?」
「そ……それもそうね……。あとで時間取れない? ちょっと詳しく話聞きたい」
「ちょっと待ってて」(美香さん。あー……池田さんに正直に話ししてみた)
(で……どうなったのよ!)
(俺と二人で、あとで話ししたいんだと)
(あたしをほっといて?)
(しょうがねぇだろ。何度も言うが、俺とお前んちは、菩提寺と檀家の関係でしかないんだから。いくら同級生っつっても、弔問に来る同期とお前との関係よりは、法事以外に訪問するには繋がりは薄すぎらぁ)
(それはそうだけど……)
(ま、いずれこうして話をしたがるってことは、美香さんをいきなりこの世からいなくするようなつもりはないってことだろ)
(だと思うけど……)
(……元気な頃は友達だったんだろ? 俺よりも信頼できるだろうが)
(それは、そうなんだけど……)
なんかグダグダな感じだな。
埒が明かない。
「……池田さん。俺の明日の予定は特にない。うちに来るなら時間は取れる」
「うん……じゃあ携帯番号交換しよっか。……うん。じゃ、あとで電話するね。今日はとりあえず、みんなの様子を見るだけにする」
「様子を見る?」
「友達とは言え、幽霊になっちゃったなら、周りに悪影響が出ないとも限らないから。何かまずいことになったら、まず磯田君に連絡するね」
池田が俺の傍から離れる。
自分の席に着いたら、なんか周りから冷やかされてるっぽい。
そりゃそうだ。
同期とは言え、菩提寺の僧に長話なんて、どこにそんな話題がある? と不思議がられれば、他に別の話題があるに違いない、と。
それを酒の肴にするくらいには、みんなの気持ちに余裕が生まれてるってことだろう。
(で……その後どうするの?)
(さあ? とりあえず、俺はそろそろお暇の時間かな?)
(……陽子と二人きりってこと?)
どう答えればいいのやら。
突っ込みどころが多すぎる。
(落ち着けよ。明日までは何もしやしないってよ)
(むー……)
何で膨れっ面になってんだ。
美香が不安に耐えかねて質問してきた。
目の前で、しかも視線をこっちに向けながら何かを言われてるが、それが何なのか分からないってのは、高校卒業前の三者面談の時間直前くらい不安なんだろう。
(お前がこのままこっちの世界に留まるってんなら、成仏させるってさ)
(え? えぇ?!)
(いや、なんで驚く?)
前々から言ってただろうが。
火葬して葬儀が終わったんだから、普通は極楽浄土に行くもんだ、と。
だが、そういうことにしよう、と、本当は死んだ後どうなるか分かってないこっちの世界の人間がそんな設定を勝手に作り上げた、と言えなくはない。
が、こっちの世界は、肉体を持っていなけりゃ普通の日常生活は送れない。
故に、死後の世界ってのはあるはずだ。
その世界のことを、この仕事をしてるから極楽浄土と呼んでるだけだ。
だが呼称がどうのって言うのは重要な問題じゃない。
行くべきところに行くべきだ、いるべきところにいるべきだ、ってのが本来、今の美香に課せられた問題とは思う。
つまり、俺らの仕事への信頼云々は置いといて、俺の思うところと池田の思惑は一致はしている。
(それに、美香さんが悪霊になってしまうかもしれないっていう心配もしてくれてるんだぞ?)
(そ、そんなわけないじゃないっ。悪霊っていったら、呪いとか祟りとか、そんなの周りにまき散らすような危ない奴の事でしょ? そんなつもりまったくないしっ)
まぁそういう定義で間違っちゃいないとは思うが、何を焦ってんだか。
(死んだ人がこの世界に留まる理由は、この世に心残りがあるからっつってるぞ? 俺も何となくそう思う。けど美香さんにはないんだよな?)
(思い当たる節はないけど……)
(いっそのこと、池田に身を委ねるのも悪くないんじゃないか、とも思うんだが)
(え? えっと……そしたら、もうお別れってことになるのよね?)
っていうか、そのお別れのタイミングは、本来はもっと早い時点で訪れるもんだったんだが。
つか、生きてる者には誰だって、そんな時はやってくるもんなんだが?
(当たり前だろ。つか、俺とこうして会話してること自体超常現象なんだからな?)
(それは分かってるけど……)
(俺らにできることは、読経だけだから。あとのことは亡くなった本人次第で、本人すらどうしたらいいか分かんないなら、そっちの専門家に任せるしかないだろ。美香さん自身、なぜここに留まってるか分からないってんなら)
(分かってるわよ! 何度も言わないで!)
「ひっ!」
テーブルの上で正座しながら、両手でそのテーブルを叩いた。
もちろん音が出るわけはないが、その激しい動きでつい反応してしまった。
やらかしてしまった。
「……磯田君」
「な、何?」
「周りに絶対言わないから、正直に言って。……あなた、見えてるのよね?」
「な、何をかな?」
「誤魔化さなくていいわよ。あまりにタイミング良すぎるし、目線が合いすぎる。それに今の、見えてないとできない反応だよ?」
終った。
(俺にお前が見えるってこと、バレちまった)
(ちょっと……)
(突然激しいリアクションしたら、目に入ったらそりゃ思わず体が反応しちまうだろ。姿を隠すとかできなかったんかよ)
(そんなこと、普段話題に出なかったのに、都合のいいときだけ出さないでよっ)
都合のいいいときだけって言われても、こんな体験自体初めてだから、思い付きで言い出すことの方が自然だろうに。
「……実は……」
※※※※※ ※※※※※
「ってことは……何? あたしだけじゃなくて磯田君も美香ちゃんを見ることができて、そればかりじゃなく声に出さなくても会話ができて、美香ちゃんは磯田君の言うことしか理解できなくて、磯田君が見える幽霊は美香ちゃんだけってこと? あたし、美香ちゃんが何言ってるのか分からないのに……」
「そゆこと。でもお前、声でかすぎ。それに俺と長話ししすぎ。周りから怪しまれるぞ?」
「そ……それもそうね……。あとで時間取れない? ちょっと詳しく話聞きたい」
「ちょっと待ってて」(美香さん。あー……池田さんに正直に話ししてみた)
(で……どうなったのよ!)
(俺と二人で、あとで話ししたいんだと)
(あたしをほっといて?)
(しょうがねぇだろ。何度も言うが、俺とお前んちは、菩提寺と檀家の関係でしかないんだから。いくら同級生っつっても、弔問に来る同期とお前との関係よりは、法事以外に訪問するには繋がりは薄すぎらぁ)
(それはそうだけど……)
(ま、いずれこうして話をしたがるってことは、美香さんをいきなりこの世からいなくするようなつもりはないってことだろ)
(だと思うけど……)
(……元気な頃は友達だったんだろ? 俺よりも信頼できるだろうが)
(それは、そうなんだけど……)
なんかグダグダな感じだな。
埒が明かない。
「……池田さん。俺の明日の予定は特にない。うちに来るなら時間は取れる」
「うん……じゃあ携帯番号交換しよっか。……うん。じゃ、あとで電話するね。今日はとりあえず、みんなの様子を見るだけにする」
「様子を見る?」
「友達とは言え、幽霊になっちゃったなら、周りに悪影響が出ないとも限らないから。何かまずいことになったら、まず磯田君に連絡するね」
池田が俺の傍から離れる。
自分の席に着いたら、なんか周りから冷やかされてるっぽい。
そりゃそうだ。
同期とは言え、菩提寺の僧に長話なんて、どこにそんな話題がある? と不思議がられれば、他に別の話題があるに違いない、と。
それを酒の肴にするくらいには、みんなの気持ちに余裕が生まれてるってことだろう。
(で……その後どうするの?)
(さあ? とりあえず、俺はそろそろお暇の時間かな?)
(……陽子と二人きりってこと?)
どう答えればいいのやら。
突っ込みどころが多すぎる。
(落ち着けよ。明日までは何もしやしないってよ)
(むー……)
何で膨れっ面になってんだ。
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