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百か日後の月命日 俺とこいつとあいつの三人で、こいつの家の玄関先で
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百か日の法要の日から次の月命日は約二十日後。
この日は池田は来れなかった。
何の仕事をしてるか分からないが、休んで出かけて、戻ってきたらまたすぐ休むって訳にはいかないんだろう。
(あの次の日、陽子ちゃんが来て、なんかヘンなの)
(変?)
(睨んだと思ったら、急にニコニコして、ニコニコしたかと思ったら悲しそうな顔して、なんか泣いてるみたいで、泣いてると思ったら怒った顔こっちに向いたりして)
何となく分かる。
親しい人が若い年齢なのにいきなり亡くなったって報せを聞いた。
葬儀の日取りとか聞いてたのに、急なことだから動きが取れない。
ようやく来たと思ったら、幽霊になってた。
さっさと成仏してこの世から去るのが世の理。
それが、しっかりと自分の視界に入ってくるんだから、悲しいやら心配やら怒るやらで、感情が慌ただしいってとこだろう。
そう考えると、自分の気持ちを落ち着かせたことなんかなさそうだな。
ようやく自分の感情を、全てむき出しにできたってことか。
けど、その相手をまともにさせられた美香の心中たるや。
何言ってるのか分からないから尚更だろう。
(結局どうなったの?)
(美香さんと池田さんと俺で、三者面談できればいいと思ってんだが)
(家から出たら、多分迷子になっちゃう)
問答無用で、幽霊が浮遊霊。
家の中から出るのは、短時間で戻ってくる人と同行する時に限って、ってことらしい。
(やっぱ、ここ限定だよな)
(そう……だね)
(来月は来ると思う。そんなことを言ってた)
(うん……)
この日、来訪した同期の人数は五人くらい。
ずいぶん少なくなったもんだ、とは思うが、百か日過ぎても何度も弔問に来る同期など、ほとんど聞いたことがない。
が、その人数の少なさが来月も続くと、三者面談はそれほど周りに気を遣うことがないかもしれない。
美香も納得して成仏してくれると、こっちも余計な苦労をしなくて済むんだが、全ては来月以降にならないと分からない、よな。
※※※※※ ※※※※※
『明日、美香ちゃんの月命日の前日だよね? 明後日の磯田君の迎え、タクシーであたしが途中でそっちに行くことを美香ちゃんちに連絡しといたから』
という連絡が池田から来た。
いつもは三島家がこっちにタクシーでの迎えをよこしてくれてそれに乗っていくんだが、三島家にも連絡を入れたんなら問題はないだろう。
それにしても。
迎えに来てくれるくらいには、ある種の敬意を持ってくれてるんだろう。
もちろん菩提寺の僧侶として、だが。
当たり前だ。
個人的にそんなことをしてくれるほどには人徳がある性格じゃないくらいの自覚はある。
そして当日。
「お待たせ。時間は間に合うわよね」
玄関に姿を見せた池田は、相変わらず派手なアクセサリーを身につけている。
が、服装も相変わらずの大人しめ。
「ちょうどいい時間帯だ。で、三者面談はどうする?」
「うん、それは、タクシーの中で、ね」
「打ち合わせの話できる時間ないんじゃないのか?」
「まとめてあるから大丈夫。さ、乘って乗って」
池田と美香は、直接会話はできない。
だから、池田が聞きたい事、伝えたい事は俺を通さないと、美香には伝わらない。
だがそのためには、俺がその内容を知らなきゃならないわけだが。
「美香ちゃんに伝えたい事、言いたい事はこのメモにまとめてるから。彼女の返事、あとで磯田君の寺に聞きに来れば問題ないでしょ?」
「そりゃ、まぁ……」
しかし、会話にはならんだろ。
一方的な意思の伝達で終わってしまう。
会話を重ねて判明することの方が多いと思うんだが……。
「で、メモは……」
「これ。ざっくばらんに言うと、心残りは何か。極楽浄土に行きたいのかどうか。住む世界が違ったけど、ずっと友達だってこと。この三点。どうして入院することになったのかとか、いろいろ聞きたいことはあるけど、今回の件とは無関係なお話しだから、それは我慢する」
「……あー……それは……」
「よろしくねっ」
よろしくはいいけどさ……。
「心残りは、分からないっつってたし、成仏については成り行き任せなところはあるな。友達だってことは伝えといてやるが……」
「え?」
聞きたい事、言いたい事をあれこれ考えてまとめてきたんだろうが、三分の二が無駄になってるという……。
「……聞いたなら、聞いたって言ってよ!」
そういうことを言われても。
いろんな修羅場を体験してきたんだろうが、我が身に降りかかったことには、流石に冷静でいられなかったか。
同期で冷静でいられたのは、俺ぐらいか?
いや、俺と同級だったってことを知った時は気が動転したっけな。
※※※※※ ※※※※※
この日は同期は六人くらい集まっていた。
もちろん全員、池田とも面識はある。
昔話に花が咲いてしまったら、面談どころじゃなくなる。
そこで……。
「すいません、今日は早々と失礼します」
「え? あら、そうなの? 無理に引き留めちゃ悪いわね」
「帰りも来た時と同じように、池田さんが送ってくれるそうですから、お見送りはいいですよ」
打ち合わせもなしにこんなことを言ってみた。
「え? ちょっ」
「いいから」
小声で制して一緒に玄関先へ。
(美香さん、玄関の外くらいなら出られるだろ? ちょっと来てくれないか?)
(え? まぁそれくらいなら大丈夫だけど……)
ということで、玄関の外でタクシー待ち。
その間に面談を、というわけだ。
「なるほど。どのみち長時間のお話しは難しいもんね。なら周りを気にせずにいられるってわけか」
「そういうこと。で……」
池田と美香の意思疎通を図ってみる。
池田の言いたいことをそのまま伝え、美香の反応をそのまま伝える。
美香は、池田のこれまでの表情について聞いてきて、池田の説明を美香に伝える。
「まぁ……一人ぼっちで寂しがってるって訳じゃなさそうだから、悪霊にはならなそうだけど……。その点は安心だけど、油断はできないからね?」
(……だそうだ)
(でも、誰かを恨んでるわけでもないし……。まぁ気をつけるよ。陽子、ありがとね)
「だそうだ」
「うん。じゃ元気でね」
「……美香に、元気でねって伝えるのか?」
「いや、普通に挨拶でしょ?」
「元気だったら死んでないから」
(そりゃそーだ)
屈託のない笑顔の幽霊ってのもなぁ。
だが、笑顔にもなるか。
これまで美香に向けられた池田の顔が、美香の誤解を生んでたんだからな。
言葉が相通じないのが元凶なんだろうが、そもそも顔を合わせること自体超常現象だからなぁ。
(でも、このあと陽子は昭司君と二人きりになるの?)
(間違っても何の交流もないよ。すぐ東京に戻らなきゃならないみたいだし)
「な? 池田さん」
「な? って何よ、いきなり」
「あー……」
自分が分かってること全て、関係者も説明なしで分かってくれる、と思い込むことはたまにある。
やらかした、とつい苦笑いしてしまう。
「あー、ないない。……ってことは、美香ちゃんは磯田君の事気になるわけ?」
そういうことは本人を前にして、しかも声を大にして言うなっての。
だが、一言一句間違えずに伝えることで、互いの信頼を維持させられるわけだからな。
(ちょっ! そ……そんなわけ……ないよ……)
そこら辺はまぁ、お察しだ。
いわゆるつり橋効果ってやつだ。
だって、行為はなかったけど、まともに会話の相手できるのが俺しかいなけりゃ、自ずと同期の中では特別な感情は持つようになるだろ。
「……ってことだよ。彼氏は今までいなかったけど、今まで弔問に来た同期の奴と比べりゃ、自ずと接点は多くなる。会話ができるの、俺だけだもんよ。いくら友人同士でも、ちょいとデリカシーなさすぎやしませんかね?」
「あ……そうね……。ごめん、美香ちゃん」
(……だそうだ)
(あ、いいよいいよ。気にしてないよ)
「だとよ」
「うん、これから気を付ける」
「が、これで分かったろ?」
「何が?」
「美香さんは俺よりもこの家に固執してる。つか、我が家と比べて、重要なキーパーソンかもしれないが、この世に留まってる原因は俺にはないってことだよ」
「あ、それもそうか」
そもそも生前から、俺とはほとんど交流がなかったから、俺がこの現状の原因にはなり得ない。
じゃあ何に固執してるんだろう? と池田は首をかしげる。
美香本人も気付かない、気がかりな事がある。
と池田は考えてるようだが。
「悪霊化の心配がないなら、このまま成り行きでもいいと思うんだがなぁ」
「じゃあ磯田君が急病で長期入院したらどうなる? 家から出られないなら、美香ちゃんは磯田君の情報は全く入らないんだよ?」
あ、それもそうか。
(と、言ってる。確かにそれは、諸行無常の世の中だから、俺の身にもそんなことが起きないとは限らない。それどころか、俺が突然死することもある。そうなると、お前がヤバくなる、だそうだ)
(あ……うん……。それは、嫌だな)
「かといって、無理やり成仏させるってのも本意じゃないし。いろいろ気持ちを整理してもらった上で除霊すると、スムーズに成仏してもらえるんだけど、美香ちゃんはそれなりに気持ちは落ち着いてるっぽいけど、今はそんなふうにはできないな」
まるで会話してるタイミング。
だが、俺が美香に話をするときは美香の方を向いてるし、何か話すと美香の表情が変わるから、そのタイミングを見計らって池田が話を続けるので、まるで会話が成立してる錯覚を感じる。
「じゃあさ、磯田君は、体に変調起こしたら、どんなことでもあたしにも連絡してきて。そうなれば当然月命日には来れないってことだろうから、その時はあたしも来ないことにする」
来ないことにするってお前。
自己主張が変に強いな。
「そうすれば、月命日に来る人は磯田君のお父さんでしょ? それにあたしも来てないってことになれば、磯田君の体具合が変ってのは分かるでしょ」
「単に俺の都合が悪いだけだったら?」
「その時は来るわよ。その様子だけでも、磯田君は来月は来てくれるって分かるんじゃない? そしたら美香ちゃんは、寂しいだろうけど安心はできるわよね?」
交流ができない人間の、精一杯の配慮ってとこか。
(……だとよ)
(まぁ、うん。それだけでも安心できるかな。ただの風邪とかでも来てくれるのかな?)
「っつってる」
「深刻じゃない状態なら来ることにしよっか」
「……大体話、まとまったな。タクシーが来る前に話が落ち着いて何よりだった」
(でもまぁ、こうして陽子と話ができてよかったよ。昭司君、これからもよろしくね)
これからもって、ずっとここに滞在する前提かよ。
死後の世界はもう少し自分から仕事すべきだ、と思うようになってきた。
この日は池田は来れなかった。
何の仕事をしてるか分からないが、休んで出かけて、戻ってきたらまたすぐ休むって訳にはいかないんだろう。
(あの次の日、陽子ちゃんが来て、なんかヘンなの)
(変?)
(睨んだと思ったら、急にニコニコして、ニコニコしたかと思ったら悲しそうな顔して、なんか泣いてるみたいで、泣いてると思ったら怒った顔こっちに向いたりして)
何となく分かる。
親しい人が若い年齢なのにいきなり亡くなったって報せを聞いた。
葬儀の日取りとか聞いてたのに、急なことだから動きが取れない。
ようやく来たと思ったら、幽霊になってた。
さっさと成仏してこの世から去るのが世の理。
それが、しっかりと自分の視界に入ってくるんだから、悲しいやら心配やら怒るやらで、感情が慌ただしいってとこだろう。
そう考えると、自分の気持ちを落ち着かせたことなんかなさそうだな。
ようやく自分の感情を、全てむき出しにできたってことか。
けど、その相手をまともにさせられた美香の心中たるや。
何言ってるのか分からないから尚更だろう。
(結局どうなったの?)
(美香さんと池田さんと俺で、三者面談できればいいと思ってんだが)
(家から出たら、多分迷子になっちゃう)
問答無用で、幽霊が浮遊霊。
家の中から出るのは、短時間で戻ってくる人と同行する時に限って、ってことらしい。
(やっぱ、ここ限定だよな)
(そう……だね)
(来月は来ると思う。そんなことを言ってた)
(うん……)
この日、来訪した同期の人数は五人くらい。
ずいぶん少なくなったもんだ、とは思うが、百か日過ぎても何度も弔問に来る同期など、ほとんど聞いたことがない。
が、その人数の少なさが来月も続くと、三者面談はそれほど周りに気を遣うことがないかもしれない。
美香も納得して成仏してくれると、こっちも余計な苦労をしなくて済むんだが、全ては来月以降にならないと分からない、よな。
※※※※※ ※※※※※
『明日、美香ちゃんの月命日の前日だよね? 明後日の磯田君の迎え、タクシーであたしが途中でそっちに行くことを美香ちゃんちに連絡しといたから』
という連絡が池田から来た。
いつもは三島家がこっちにタクシーでの迎えをよこしてくれてそれに乗っていくんだが、三島家にも連絡を入れたんなら問題はないだろう。
それにしても。
迎えに来てくれるくらいには、ある種の敬意を持ってくれてるんだろう。
もちろん菩提寺の僧侶として、だが。
当たり前だ。
個人的にそんなことをしてくれるほどには人徳がある性格じゃないくらいの自覚はある。
そして当日。
「お待たせ。時間は間に合うわよね」
玄関に姿を見せた池田は、相変わらず派手なアクセサリーを身につけている。
が、服装も相変わらずの大人しめ。
「ちょうどいい時間帯だ。で、三者面談はどうする?」
「うん、それは、タクシーの中で、ね」
「打ち合わせの話できる時間ないんじゃないのか?」
「まとめてあるから大丈夫。さ、乘って乗って」
池田と美香は、直接会話はできない。
だから、池田が聞きたい事、伝えたい事は俺を通さないと、美香には伝わらない。
だがそのためには、俺がその内容を知らなきゃならないわけだが。
「美香ちゃんに伝えたい事、言いたい事はこのメモにまとめてるから。彼女の返事、あとで磯田君の寺に聞きに来れば問題ないでしょ?」
「そりゃ、まぁ……」
しかし、会話にはならんだろ。
一方的な意思の伝達で終わってしまう。
会話を重ねて判明することの方が多いと思うんだが……。
「で、メモは……」
「これ。ざっくばらんに言うと、心残りは何か。極楽浄土に行きたいのかどうか。住む世界が違ったけど、ずっと友達だってこと。この三点。どうして入院することになったのかとか、いろいろ聞きたいことはあるけど、今回の件とは無関係なお話しだから、それは我慢する」
「……あー……それは……」
「よろしくねっ」
よろしくはいいけどさ……。
「心残りは、分からないっつってたし、成仏については成り行き任せなところはあるな。友達だってことは伝えといてやるが……」
「え?」
聞きたい事、言いたい事をあれこれ考えてまとめてきたんだろうが、三分の二が無駄になってるという……。
「……聞いたなら、聞いたって言ってよ!」
そういうことを言われても。
いろんな修羅場を体験してきたんだろうが、我が身に降りかかったことには、流石に冷静でいられなかったか。
同期で冷静でいられたのは、俺ぐらいか?
いや、俺と同級だったってことを知った時は気が動転したっけな。
※※※※※ ※※※※※
この日は同期は六人くらい集まっていた。
もちろん全員、池田とも面識はある。
昔話に花が咲いてしまったら、面談どころじゃなくなる。
そこで……。
「すいません、今日は早々と失礼します」
「え? あら、そうなの? 無理に引き留めちゃ悪いわね」
「帰りも来た時と同じように、池田さんが送ってくれるそうですから、お見送りはいいですよ」
打ち合わせもなしにこんなことを言ってみた。
「え? ちょっ」
「いいから」
小声で制して一緒に玄関先へ。
(美香さん、玄関の外くらいなら出られるだろ? ちょっと来てくれないか?)
(え? まぁそれくらいなら大丈夫だけど……)
ということで、玄関の外でタクシー待ち。
その間に面談を、というわけだ。
「なるほど。どのみち長時間のお話しは難しいもんね。なら周りを気にせずにいられるってわけか」
「そういうこと。で……」
池田と美香の意思疎通を図ってみる。
池田の言いたいことをそのまま伝え、美香の反応をそのまま伝える。
美香は、池田のこれまでの表情について聞いてきて、池田の説明を美香に伝える。
「まぁ……一人ぼっちで寂しがってるって訳じゃなさそうだから、悪霊にはならなそうだけど……。その点は安心だけど、油断はできないからね?」
(……だそうだ)
(でも、誰かを恨んでるわけでもないし……。まぁ気をつけるよ。陽子、ありがとね)
「だそうだ」
「うん。じゃ元気でね」
「……美香に、元気でねって伝えるのか?」
「いや、普通に挨拶でしょ?」
「元気だったら死んでないから」
(そりゃそーだ)
屈託のない笑顔の幽霊ってのもなぁ。
だが、笑顔にもなるか。
これまで美香に向けられた池田の顔が、美香の誤解を生んでたんだからな。
言葉が相通じないのが元凶なんだろうが、そもそも顔を合わせること自体超常現象だからなぁ。
(でも、このあと陽子は昭司君と二人きりになるの?)
(間違っても何の交流もないよ。すぐ東京に戻らなきゃならないみたいだし)
「な? 池田さん」
「な? って何よ、いきなり」
「あー……」
自分が分かってること全て、関係者も説明なしで分かってくれる、と思い込むことはたまにある。
やらかした、とつい苦笑いしてしまう。
「あー、ないない。……ってことは、美香ちゃんは磯田君の事気になるわけ?」
そういうことは本人を前にして、しかも声を大にして言うなっての。
だが、一言一句間違えずに伝えることで、互いの信頼を維持させられるわけだからな。
(ちょっ! そ……そんなわけ……ないよ……)
そこら辺はまぁ、お察しだ。
いわゆるつり橋効果ってやつだ。
だって、行為はなかったけど、まともに会話の相手できるのが俺しかいなけりゃ、自ずと同期の中では特別な感情は持つようになるだろ。
「……ってことだよ。彼氏は今までいなかったけど、今まで弔問に来た同期の奴と比べりゃ、自ずと接点は多くなる。会話ができるの、俺だけだもんよ。いくら友人同士でも、ちょいとデリカシーなさすぎやしませんかね?」
「あ……そうね……。ごめん、美香ちゃん」
(……だそうだ)
(あ、いいよいいよ。気にしてないよ)
「だとよ」
「うん、これから気を付ける」
「が、これで分かったろ?」
「何が?」
「美香さんは俺よりもこの家に固執してる。つか、我が家と比べて、重要なキーパーソンかもしれないが、この世に留まってる原因は俺にはないってことだよ」
「あ、それもそうか」
そもそも生前から、俺とはほとんど交流がなかったから、俺がこの現状の原因にはなり得ない。
じゃあ何に固執してるんだろう? と池田は首をかしげる。
美香本人も気付かない、気がかりな事がある。
と池田は考えてるようだが。
「悪霊化の心配がないなら、このまま成り行きでもいいと思うんだがなぁ」
「じゃあ磯田君が急病で長期入院したらどうなる? 家から出られないなら、美香ちゃんは磯田君の情報は全く入らないんだよ?」
あ、それもそうか。
(と、言ってる。確かにそれは、諸行無常の世の中だから、俺の身にもそんなことが起きないとは限らない。それどころか、俺が突然死することもある。そうなると、お前がヤバくなる、だそうだ)
(あ……うん……。それは、嫌だな)
「かといって、無理やり成仏させるってのも本意じゃないし。いろいろ気持ちを整理してもらった上で除霊すると、スムーズに成仏してもらえるんだけど、美香ちゃんはそれなりに気持ちは落ち着いてるっぽいけど、今はそんなふうにはできないな」
まるで会話してるタイミング。
だが、俺が美香に話をするときは美香の方を向いてるし、何か話すと美香の表情が変わるから、そのタイミングを見計らって池田が話を続けるので、まるで会話が成立してる錯覚を感じる。
「じゃあさ、磯田君は、体に変調起こしたら、どんなことでもあたしにも連絡してきて。そうなれば当然月命日には来れないってことだろうから、その時はあたしも来ないことにする」
来ないことにするってお前。
自己主張が変に強いな。
「そうすれば、月命日に来る人は磯田君のお父さんでしょ? それにあたしも来てないってことになれば、磯田君の体具合が変ってのは分かるでしょ」
「単に俺の都合が悪いだけだったら?」
「その時は来るわよ。その様子だけでも、磯田君は来月は来てくれるって分かるんじゃない? そしたら美香ちゃんは、寂しいだろうけど安心はできるわよね?」
交流ができない人間の、精一杯の配慮ってとこか。
(……だとよ)
(まぁ、うん。それだけでも安心できるかな。ただの風邪とかでも来てくれるのかな?)
「っつってる」
「深刻じゃない状態なら来ることにしよっか」
「……大体話、まとまったな。タクシーが来る前に話が落ち着いて何よりだった」
(でもまぁ、こうして陽子と話ができてよかったよ。昭司君、これからもよろしくね)
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