冷徹公爵は、契約妻に亡き妻の愛を重ねる

白桃

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第六話「束の間の休日」

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 翌日、レオンハルトとアリアは、二人で町へと出かけた。レオンハルトがアリアを町に誘うのは、これが初めてのことだった。

「わあ、すごい賑わいですね」

 町に着くと、アリアは目を輝かせ、辺りを見回した。普段は屋敷に籠っているアリアにとって、町の賑わいは新鮮だった。

「たまには、こういうのも悪くないだろ?」

 レオンハルトが言うと、アリアは嬉しそうに頷いた。

「はい!とても楽しいです」

 二人は、町をぶらぶらと歩きながら、様々な店を見て回った。アリアは、珍しい雑貨や綺麗な装飾品に目を奪われ、レオンハルトに話しかける。

「レオンハルト様、この簪、とても綺麗だと思いませんか?」

 アリアが手に取ったのは、小さな花を模した可愛らしい簪だった。レオンハルトは、アリアに似合うと思い、それを買い与えた。

「似合っている」

 レオンハルトが呟くと、アリアは照れたように微笑んだ。

「ありがとうございます、レオンハルト様」

 その後、二人は露店で軽食をとり、公園で休憩した。普段は会話の少ない二人だったが、この日は様々な話をした。アリアは、レオンハルトの過去や領地に対する想いを熱心に聞き、レオンハルトは、アリアの聡明さや優しさに惹かれていった。

「アリア、今日は楽しかったか?」

 夕暮れ時、屋敷に戻る馬車の中で、レオンハルトはアリアに尋ねた。

「はい!とても楽しかったです。レオンハルト様と、こんな風に町を歩けるなんて、夢みたいでした」

 アリアが嬉しそうに答えると、レオンハルトは安堵の息を吐いた。

「そうか。なら良かった」

 その夜、レオンハルトは、アリアを夕食に誘った。二人きりの夕食は、いつものように穏やかで、心地よいものだった。

「アリア、今日は本当にありがとう」

 夕食後、レオンハルトはアリアに礼を言った。

「いえ、こちらこそ、ありがとうございます。レオンハルト様と、もっと色々な場所へ行ってみたいです」

 アリアが微笑みながら言うと、レオンハルトは少し考え、言った。

「ああ、また、一緒に行こう」

 レオンハルトの言葉に、アリアは嬉しそうに目を輝かせた。

 その時、レオンハルトは、ふと思った。アリアといると、心が温かくなる。この感情は、一体何なのだろうか。

「アリア、お前は……」

 レオンハルトは、アリアに何かを伝えようとしたが、言葉に詰まってしまった。

「はい、何でしょう?」

 アリアが不思議そうにこちらを見つめる。レオンハルトは、首を横に振った。

「いや、何でもない」

 その夜、レオンハルトは、自分の部屋で一人、考え込んでいた。アリアといると、心が安らぐ。まるで、ずっと昔から一緒にいたような。そんな錯覚を覚える。

(俺は、アリアのことを……)

 レオンハルトは、自分の気持ちに気づき始めていた。しかし、それは、レオンハルトにとって、未知の感情だった。レオンハルトは、自分の気持ちを認めることができずにいた。

 その時、レオンハルトの部屋の扉がノックされた。

「レオンハルト様、少し、お話がしたくて」

 アリアの声だった。レオンハルトは、戸惑いながらも、アリアを部屋に通した。

「何の用だ」

 レオンハルトが尋ねると、アリアは少し躊躇いがちに、言った。

「あの、今日は、本当にありがとうございました。レオンハルト様と、町へ行くことができて、とても嬉しかったです」

「ああ、俺も楽しかった」

 レオンハルトが答えると、アリアは安堵したように微笑んだ。

「レオンハルト様、あの、一つ、お願いがあるのですが……」

 アリアが、何かを言いかけた時、レオンハルトの部屋に、セバスチャンが慌てた様子で入ってきた。

「旦那様、大変です!」
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