桜の下でさよならを

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初詣

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神社の入口付近まで来ると人がごった返していた。

ここの神社は国宝に認定されているだけあって、夜中なのに人の数が半端じゃなかった。

屋台もでていて目的地である本堂までは簡単には行けそうになかった。

何とか人混みを抜け、本堂に着くがそこも人がかり多く、途中3人ともばらばらになってしまった。

二人はどこに行ったんだろうか、愛弓は辺りを見回しても人が多すぎて全然二人の姿が見えなかった。

仕方なく一人でお賽銭を投げ鈴を鳴らし、祈った。

神様、最近二人の様子がぎこちないです、どうか無事に3人揃って春を迎えれますように。

祈ったあと、また人混みの中、神社の外まで苦労して出てきた。

ラインで二人にメッセージを送る。

しばらくして二人りからメッセージが帰ってきた。
弦希はもうすぐ出口、一矢は今の出たところだと返事が来た。

「愛弓一矢は?」

弦希が愛弓の肩をぽんと叩き背後からやってきた。

「もう来ると思うよ」

「そうか、なぁ愛弓話があるんだけどちょっといいか?」

「いいけど、何?」

「あの、実はな一矢には内緒なんだけどさ」

弦希が話をしようととした時一矢が帰ってきた。

「おまたせ!・・・あれ?タイミング悪かったかな?」

間が悪いと感じた一矢は気まずそうな表情で二人の顔を交互に見た。

「いや、なんでもない帰ろうか」

と弦希は言いながら先に歩き出した。
その後を二人で追いかけた。

一矢は思った。
今、弦希は何を言おうとしたのだろうか、明らかに一矢に隠すような素振りだった。

もしかして、告白しようとしていたのだろか?

まさか弦希に限って裏切るような事はしないよな?

一矢は親友を疑いたくは無かったが心の奥に小さな疑いの色が染まり始めていた。

しばらく歩き、人が減ってきた辺りで弦希が聞いた。

「なぁ、二人は何を祈ったんだ?」

「僕は来年もみんな無事でありますようにって」

「なんだよ、ありきたりだな。
でも、俺らの事思ってくれたんだなありがとな!」

弦希は嬉しそうだった。

「愛弓は何を祈ったの?」

一矢が聞く。

「え、私?私は3人で卒業できますようにって」

すると前を歩く弦希が笑いながら言った。

「なんだよ、そんな事は心配しなくても春がきたらできるじゃん」

愛弓はその言葉を聞いた途端に立ち止まった。
俯いてて表情が見えなかった。
ただ、いい空気ではないことは察することができた。

「何がおかしいの!本当に春を待っていたら3人揃って卒業できるの?

今の二人を見ていたらとてもできるとは思えない!
秋頃から3人揃って帰ることも無くなったし、このまま3人の気持ちがバラバラになって卒業迎えてしまうのが怖いの!

ねぇ、二人とも何を隠しているの?私だけ、のけものにされて、どんな気持ちかわからないでしょ!」

後半は涙声になっていた。

静寂の街に愛弓の思いが響き渡った。

二人はそれぞれに思った。
自分たちのせいで大切な人が寂しい思いをしていた事。
傷つけてしまった事。

この時二人はもう愛弓を悲しませてはいけないとそれぞれに思い、もう二度と傷つけないと自分に誓った。

弦希と一矢お互いの気持ちをアイコンタクトで感じ取った。

「愛弓、ごめん。
俺たちが悪かった。
ただ、今は話せないんだ・・・・卒業するときすべて話すからそれまで待っててほしい・・・・・」


愛弓は無言でうなずいた。

こうして3人の重たい年の締めくくり、そして年明けとなってしまった。
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