桜の下でさよならを

突然の別れ

重たい年開けを迎えた3人だが、冬休み開けは3人とも表面上いつものように振る舞っていた。

一矢は弦希に対する疑心を抱き。

弦希は自分のやるべき事に突っ走り。

愛弓はそんな二人がどうか心の底から寄りを戻せるようにと思い。

春を迎えることとなった。


そして卒業式当日


体育館に卒業生、在校生が向かい合うように座っていた。

ただ、卒業生の椅子には空席が一つあった。

弦希の席だ。

理由はわからない。
ラインを送っても返事は来なかった。
そのまま卒業式は終わってしまった。


そして、一矢と弦希の約束を果たす時間になっても弦希は現れなかった。

それから道場で愛弓と一矢は弦希が来るのをひたすら待った。

どれくらいの時間が過ぎたのだろう、愛弓も一矢も一言も話さない。

そんな沈黙を破ったのは一矢のスマホだった。

ポケットからスマホを取り出し電話に出る。

愛弓はぼんやりと話をしている一矢を見ていた。

最初はいつもの調子で話していた一矢の様子が少しずつ顔色が変化していた。

声のトーンが低くなっていく。
母親から悪い知らせでもあったのだろうか。
そんなふうにぼんやりと考えていた。

電話を終えた一矢が放心した様子で愛弓の方へ歩いてくる。

「何かあったの？」

愛弓は感情の籠もっていない声で聞いた。
こんな最悪の卒業式よりも悪いことなんてないだろうと思っていた、もう全てがどうでも良かった。

「落ち着いて聞いてくれ、弦希が亡くなったって・・・・・・」