8 / 12
現実
しおりを挟む
愛弓と一矢は急いで弦希の居る病院へと向かった。
向かう途中何も考える事が出来なかった。
弦希が亡くなったという実感が沸かなかった。
病院に入ると薬品の匂いが鼻をついた。
昼なのに、どこか暗い雰囲気の病院を蛍光灯がぼんやりと照らしていた。
案内所で弦希の居場所を調べてもらい、地下の霊安室へと向かう。
地下へ続く階段を一段降りる度に心が重くなってくる。
永遠に続くかとおもうほど長く感じた。
そして、霊安室の前につき愛弓に声をかけた。
「大丈夫か?少し休むか?」
不安な表情をしながら愛弓は大丈夫と言った。
その声は震えていた。
霊安室の扉がとても重く感じた、開けるとお香の匂いが部屋から流れ出ててくる。
弦希の両親がこちらに気づき、微笑みながら
「来てくれてありがとう」
と言った。
二人とも目が腫れていてる。
真ん中にある台を見るとそこには白い布を被せられた弦希が横たわっていた。
一歩、また一歩と弦希の方へ恐る恐る歩み寄る。
愛弓はまだ入口で立ちすくんでいた。
弦希の横にたどり着いた一矢は、弦希の顔を見つめた。
まるで寝ているようにしか見えない、本当に死んでいるのか?
起きろよ!と言えば目を擦りながら今にも起きそうだった。
「事故にあったのよ、今朝登校する時に信号無視した車に跳ねられてね、どうやら運転手はスマホをいじってたらしいの」
弦希の母はそう言ってまた泣き始めた。
お父さんが母の肩を抱きしめて、二人で泣いていた。
そんな、理由で弦希の命は奪われたのか。
俺たちの約束は、弦希の愛弓に対する想いはもう取り返しがつかないのか。
一矢は受け入れることができなかった。
リセットボタンがあるなら今すぐ押してやり直しをしたいと思った。
だが、現実はそんなあまくない、例え理不尽であったとしても受け入れなければならない。
もう、弦希が戻ることはない。
弦希は死んだのだ。
「くそ!弦希!・・・・なんでだ・・・・」
ショックで立てなくなりそうな体を弦希の眠る台に両手を置き支えた。
「うぅ・・・うそだろ、なんとかならないのか・・・」
一矢の涙が弦希にかけられた白い布に吸い込まれていく。
一矢の様子を見ていた愛弓もゆっくりと弦希の元へ歩み寄る。
不安そうに両手を胸元で握りしめながら。
弦希を見た愛弓は静かに声を殺して泣き、そのまま床にへたりこんでしまった。
運転手のたった一瞬の油断が3人の想いと、約束、人生を奪ってしまった。
向かう途中何も考える事が出来なかった。
弦希が亡くなったという実感が沸かなかった。
病院に入ると薬品の匂いが鼻をついた。
昼なのに、どこか暗い雰囲気の病院を蛍光灯がぼんやりと照らしていた。
案内所で弦希の居場所を調べてもらい、地下の霊安室へと向かう。
地下へ続く階段を一段降りる度に心が重くなってくる。
永遠に続くかとおもうほど長く感じた。
そして、霊安室の前につき愛弓に声をかけた。
「大丈夫か?少し休むか?」
不安な表情をしながら愛弓は大丈夫と言った。
その声は震えていた。
霊安室の扉がとても重く感じた、開けるとお香の匂いが部屋から流れ出ててくる。
弦希の両親がこちらに気づき、微笑みながら
「来てくれてありがとう」
と言った。
二人とも目が腫れていてる。
真ん中にある台を見るとそこには白い布を被せられた弦希が横たわっていた。
一歩、また一歩と弦希の方へ恐る恐る歩み寄る。
愛弓はまだ入口で立ちすくんでいた。
弦希の横にたどり着いた一矢は、弦希の顔を見つめた。
まるで寝ているようにしか見えない、本当に死んでいるのか?
起きろよ!と言えば目を擦りながら今にも起きそうだった。
「事故にあったのよ、今朝登校する時に信号無視した車に跳ねられてね、どうやら運転手はスマホをいじってたらしいの」
弦希の母はそう言ってまた泣き始めた。
お父さんが母の肩を抱きしめて、二人で泣いていた。
そんな、理由で弦希の命は奪われたのか。
俺たちの約束は、弦希の愛弓に対する想いはもう取り返しがつかないのか。
一矢は受け入れることができなかった。
リセットボタンがあるなら今すぐ押してやり直しをしたいと思った。
だが、現実はそんなあまくない、例え理不尽であったとしても受け入れなければならない。
もう、弦希が戻ることはない。
弦希は死んだのだ。
「くそ!弦希!・・・・なんでだ・・・・」
ショックで立てなくなりそうな体を弦希の眠る台に両手を置き支えた。
「うぅ・・・うそだろ、なんとかならないのか・・・」
一矢の涙が弦希にかけられた白い布に吸い込まれていく。
一矢の様子を見ていた愛弓もゆっくりと弦希の元へ歩み寄る。
不安そうに両手を胸元で握りしめながら。
弦希を見た愛弓は静かに声を殺して泣き、そのまま床にへたりこんでしまった。
運転手のたった一瞬の油断が3人の想いと、約束、人生を奪ってしまった。
0
あなたにおすすめの小説
失恋中なのに隣の幼馴染が僕をかまってきてウザいんですけど?
さいとう みさき
青春
雄太(ゆうた)は勇気を振り絞ってその思いを彼女に告げる。
しかしあっさりと玉砕。
クールビューティーで知られる彼女は皆が憧れる存在だった。
しかしそんな雄太が落ち込んでいる所を、幼馴染たちが寄ってたかってからかってくる。
そんな幼馴染の三大女神と呼ばれる彼女たちに今日も翻弄される雄太だったのだが……
病み上がりなんで、こんなのです。
プロット無し、山なし、谷なし、落ちもなしです。
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
久々に幼なじみの家に遊びに行ったら、寝ている間に…
しゅうじつ
BL
俺の隣の家に住んでいる有沢は幼なじみだ。
高校に入ってからは、学校で話したり遊んだりするくらいの仲だったが、今日数人の友達と彼の家に遊びに行くことになった。
数年ぶりの幼なじみの家を懐かしんでいる中、いつの間にか友人たちは帰っており、幼なじみと2人きりに。
そこで俺は彼の部屋であるものを見つけてしまい、部屋に来た有沢に咄嗟に寝たフリをするが…
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
俺を振ったはずの腐れ縁幼馴染が、俺に告白してきました。
true177
恋愛
一年前、伊藤 健介(いとう けんすけ)は幼馴染の多田 悠奈(ただ ゆうな)に振られた。それも、心無い手紙を下駄箱に入れられて。
それ以来悠奈を避けるようになっていた健介だが、二年生に進級した春になって悠奈がいきなり告白を仕掛けてきた。
これはハニートラップか、一年前の出来事を忘れてしまっているのか……。ともかく、健介は断った。
日常が一変したのは、それからである。やたらと悠奈が絡んでくるようになったのだ。
彼女の狙いは、いったい何なのだろうか……。
※小説家になろう、ハーメルンにも同一作品を投稿しています。
※内部進行完結済みです。毎日連載です。
あるフィギュアスケーターの性事情
蔵屋
恋愛
この小説はフィクションです。
しかし、そのようなことが現実にあったかもしれません。
何故ならどんな人間も、悪魔や邪神や悪神に憑依された偽善者なのですから。
この物語は浅岡結衣(16才)とそのコーチ(25才)の恋の物語。
そのコーチの名前は高木文哉(25才)という。
この物語はフィクションです。
実在の人物、団体等とは、一切関係がありません。
隣の家の幼馴染と転校生が可愛すぎるんだが
akua034
恋愛
隣に住む幼馴染・水瀬美羽。
毎朝、元気いっぱいに晴を起こしに来るのは、もう当たり前の光景だった。
そんな彼女と同じ高校に進学した――はずだったのに。
数ヶ月後、晴のクラスに転校してきたのは、まさかの“全国で人気の高校生アイドル”黒瀬紗耶。
平凡な高校生活を過ごしたいだけの晴の願いとは裏腹に、
幼馴染とアイドル、二人の存在が彼の日常をどんどんかき回していく。
笑って、悩んで、ちょっとドキドキ。
気づけば心を奪われる――
幼馴染 vs 転校生、青春ラブコメの火蓋がいま切られる!
私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。
MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる