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月城湊音
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月城湊音は20歳にしてピアニストとして活躍していた。
彼の軽快で優美な演奏がモーツァルトを彷彿させ、現代のモーツァルトとも呼ばれていた。
そんな勢いに乗り順調にピアニストとして経歴を残していたにも関わらず23歳の時、突然予告もなしにプロの舞台をおりてしまった。
それから7年が経ち彼はすっかり世間から忘れ去られてしまった。
そんな彼が今、目の前で私を褒めてくれている。
「ピアノの音色が聴こえてきまして、ちょっとだけ聴くつもりで立ち止まったんですよ。
そしたらどこか懐かしさを感じる演奏でして、つい最後まで聴き入ってしまいました」
憧れていた人がいきなり目の前に現れた衝撃があまりにもでかかった為、凛音は喜びを感じる暇もなかった。
「あ、ありがとうございます」
「今の演奏を聴いた感じだと、もしかしてプロとして活躍されてるんですか?」
まだ驚きが収まらない中、凛音は必死に答えを返す。
「いえ、ピアノの教室で講師をしています」
湊音は感心した表情で頷いていた。
「そうですか、でもあなた程の人ならプロでも通用しそうですが、プロの道は目指さないんですか?」
プロにならないのは勿体ないと言外ににおわされている気がして凛音は少し気が重くなった。
「私はプロとしてよりも、こうして気ままに演奏するのが好きなんです」
湊音は気持ちはわかるといった表情で頷いていた。
「そうですか、フリーピアノはよく弾きに来られるんですか?もし、弾かれているのであればまた聴きに来たいと思いまして」
「たまに演奏しに来てますよ。
良かったらまた聴いてください、月城さんのようなすごい人に気に入ってもらえるのはとても嬉しいです」
月城さんに気に入ってもらえるのは本当に嬉しかった、けれど何故私の演奏をそんなに気に入ってくれるのか凛音はわからなかった。
いい演奏を聴きたいなら月城さん自身の演奏では駄目なのか。
それに何故、突然プロの舞台から消えてしまったのか気になることは沢山あったけど初対面で聞くのも失礼かと思い、聞くことができなかった。
「今日は素晴らし演奏ありがとうございました。
また、聴ける日を楽しみにしています」
そう言って湊音は去っていった。
突然現れた憧れのピアニストに、褒められた凛音は夢心地になっていた。
彼の軽快で優美な演奏がモーツァルトを彷彿させ、現代のモーツァルトとも呼ばれていた。
そんな勢いに乗り順調にピアニストとして経歴を残していたにも関わらず23歳の時、突然予告もなしにプロの舞台をおりてしまった。
それから7年が経ち彼はすっかり世間から忘れ去られてしまった。
そんな彼が今、目の前で私を褒めてくれている。
「ピアノの音色が聴こえてきまして、ちょっとだけ聴くつもりで立ち止まったんですよ。
そしたらどこか懐かしさを感じる演奏でして、つい最後まで聴き入ってしまいました」
憧れていた人がいきなり目の前に現れた衝撃があまりにもでかかった為、凛音は喜びを感じる暇もなかった。
「あ、ありがとうございます」
「今の演奏を聴いた感じだと、もしかしてプロとして活躍されてるんですか?」
まだ驚きが収まらない中、凛音は必死に答えを返す。
「いえ、ピアノの教室で講師をしています」
湊音は感心した表情で頷いていた。
「そうですか、でもあなた程の人ならプロでも通用しそうですが、プロの道は目指さないんですか?」
プロにならないのは勿体ないと言外ににおわされている気がして凛音は少し気が重くなった。
「私はプロとしてよりも、こうして気ままに演奏するのが好きなんです」
湊音は気持ちはわかるといった表情で頷いていた。
「そうですか、フリーピアノはよく弾きに来られるんですか?もし、弾かれているのであればまた聴きに来たいと思いまして」
「たまに演奏しに来てますよ。
良かったらまた聴いてください、月城さんのようなすごい人に気に入ってもらえるのはとても嬉しいです」
月城さんに気に入ってもらえるのは本当に嬉しかった、けれど何故私の演奏をそんなに気に入ってくれるのか凛音はわからなかった。
いい演奏を聴きたいなら月城さん自身の演奏では駄目なのか。
それに何故、突然プロの舞台から消えてしまったのか気になることは沢山あったけど初対面で聞くのも失礼かと思い、聞くことができなかった。
「今日は素晴らし演奏ありがとうございました。
また、聴ける日を楽しみにしています」
そう言って湊音は去っていった。
突然現れた憧れのピアニストに、褒められた凛音は夢心地になっていた。
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