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再会
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月城と会ってからもう一ヶ月がたっていた。
あれからフリーピアノで週に3回は演奏しているが月城が聴きに来た様子はない。
凛音は演奏を褒めてくれていたことを思い出していた。
あれ以来、聴きに来ていなかったのでもしかしてお世辞だったのだろうかと思い始めていた。
それはそれで仕方ない、相手はプロなのだから本気で褒めてくれるという方が可能性としては低いだろう。
それでも、もう一度憧れのピアニストに会いたいと思う気持ちもあったが成すすべがない以上考えたって無駄だ。
そう思って気分転換をしようと楽譜を買いに来ていた。
音楽専門の書店ということもあり、種類が豊富だった。
あまりにも種類が多いのでどこから手をつけようかとざっと流しながら見ていると目に止まった楽譜があった。
手に持ってみるとモーツァルトの楽譜だった。
モーツァルトと言えば月城湊音だ。
忘れるために来たのにまた思い出してしまう。
凛音はため息をつき、本棚へ戻そうとした。
「モーツァルトお好きなんですか?」
背後から聞こえるその声は振り返るまでもなく誰の声なのかわかった。
振り向くと案の定、月城が立っていた。
またもや突然現れた事に驚いてしう凛音。
「え、あ、はい、好きです」
彼は微笑みながら
「また会えましたね」
と言った。
「ちなみに僕はベートーヴェンが好きなんです、ベートーヴェンって過酷な人生を送ってたんですけど、そんな中作り上げた曲ってのはやっぱりどこか一味違って聴こえるんですよ。
これはどの曲にも言えることかもしれませんが、作家の背景を知るだけで曲に深みが出るんですよ。
背景を知っているか知らないかだけで同じ曲でも違った曲に聴こえてしまう。
不思議と思いませんか?」
湊音は音楽の話になると止まらないタイプなのかもしれない。
ベートーヴェンの話から曲の深みの違いに話が変わってしまい、凛音はどちらの話の返事をしたらいいのか分からずそうですね、と一言だけ返してしまった。
凛音の困った表情を見た湊音はまたやってしまったと、申し訳ない表情になった。
「あ、すいません音楽の話になるとつい・・・・ 」
無邪気に話す様子はまるで子供が今日の出来事を母親に話す時と同じように見えた。
プロの舞台に立っていた時の湊音は凛々しく、落ち着いているような雰囲気だったので意外な一面を見れた気がして凛音は少しだけ嬉しかった。
「あの、立ち話も何だし良かったら喫茶店でゆっくりしませんか?」
我ながら大胆な行動を取ってしまったと思ったが憧れの湊音と話す時間が取れるかもしれないと、僅かな期待を胸に誘ってみた。
するとためらう様子もなく、むしろ歓迎だ!といった様子で頭を縦に振ってくれた。
あれからフリーピアノで週に3回は演奏しているが月城が聴きに来た様子はない。
凛音は演奏を褒めてくれていたことを思い出していた。
あれ以来、聴きに来ていなかったのでもしかしてお世辞だったのだろうかと思い始めていた。
それはそれで仕方ない、相手はプロなのだから本気で褒めてくれるという方が可能性としては低いだろう。
それでも、もう一度憧れのピアニストに会いたいと思う気持ちもあったが成すすべがない以上考えたって無駄だ。
そう思って気分転換をしようと楽譜を買いに来ていた。
音楽専門の書店ということもあり、種類が豊富だった。
あまりにも種類が多いのでどこから手をつけようかとざっと流しながら見ていると目に止まった楽譜があった。
手に持ってみるとモーツァルトの楽譜だった。
モーツァルトと言えば月城湊音だ。
忘れるために来たのにまた思い出してしまう。
凛音はため息をつき、本棚へ戻そうとした。
「モーツァルトお好きなんですか?」
背後から聞こえるその声は振り返るまでもなく誰の声なのかわかった。
振り向くと案の定、月城が立っていた。
またもや突然現れた事に驚いてしう凛音。
「え、あ、はい、好きです」
彼は微笑みながら
「また会えましたね」
と言った。
「ちなみに僕はベートーヴェンが好きなんです、ベートーヴェンって過酷な人生を送ってたんですけど、そんな中作り上げた曲ってのはやっぱりどこか一味違って聴こえるんですよ。
これはどの曲にも言えることかもしれませんが、作家の背景を知るだけで曲に深みが出るんですよ。
背景を知っているか知らないかだけで同じ曲でも違った曲に聴こえてしまう。
不思議と思いませんか?」
湊音は音楽の話になると止まらないタイプなのかもしれない。
ベートーヴェンの話から曲の深みの違いに話が変わってしまい、凛音はどちらの話の返事をしたらいいのか分からずそうですね、と一言だけ返してしまった。
凛音の困った表情を見た湊音はまたやってしまったと、申し訳ない表情になった。
「あ、すいません音楽の話になるとつい・・・・ 」
無邪気に話す様子はまるで子供が今日の出来事を母親に話す時と同じように見えた。
プロの舞台に立っていた時の湊音は凛々しく、落ち着いているような雰囲気だったので意外な一面を見れた気がして凛音は少しだけ嬉しかった。
「あの、立ち話も何だし良かったら喫茶店でゆっくりしませんか?」
我ながら大胆な行動を取ってしまったと思ったが憧れの湊音と話す時間が取れるかもしれないと、僅かな期待を胸に誘ってみた。
するとためらう様子もなく、むしろ歓迎だ!といった様子で頭を縦に振ってくれた。
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