11 / 21
湊音の過去4
しおりを挟む
母の為に演奏をすると誓ってから演奏に感情を乗せることができるようになり、コンクールでも成績をどんどん積み上げていた。
そして20歳の時に念願のピアニストデビューを果たし順調に思えたが、22歳の時辛い出来事が起きる。
梅雨に入り雨の日が続いていた。
最悪だ今日の天気晴れだったから傘を持ってきていない。
湊音の家は駅から徒歩10分の所にある。
傘を刺さずに帰ってもなんとかなる時間だ。
コンビニで傘を買うか迷った末、結局買わずに走って家に帰る事にした。
「ただいまー、最悪だよ今日天気予報晴れだったよね?」
「おかえりなさい、突然降ってきたわね、ついてないわね」
いつものように温かく出迎えてくれた。
この時まではいつもと変わらない様に見えた。
しかし、夕飯を食べ終わるなり、母は改まった様子で湊音に話しかけた。
「湊音、実はこの前の健康診断の事なんだけどね。
私癌になってるみたいなの、それでしばらく入院する事になったの。
だから、家の事しばらく頼んだわね」
「癌?それってステージは?」
「食道のステージ3よ」
湊音はどん底に落とされた気分だった。
ステージ3の食道となると5年の生存率は20%以下、
かなり厳しい状況だった。
なんて声をかけたらいいのかわからず沈黙が続く。
「心配かけてごめんね」
「いや、謝らなくていいよ。
それより治療はどうなるの?」
「手術と抗がん剤よ」
「そうか、いつから入院なの?」
「来週から入院する事になってる、大丈夫よ」
辛いのは母の方なのになんで僕が励まされているんだろう。
しっかりしないと。
「当たり前だろ、ちゃんと退院してくれよ」
「もちろんよ」
そう言った母の笑顔は心配させないように心がけてぎこちない笑顔になっていた。
本当は泣きたいくらい怖いだろう。
なのにこんな時にでも息子に心配をかけまいと強がっている。
湊音は部屋に行くと泣いた。
「こんな時にまで、俺の心配して・・・・
自分の心配してくれよ・・・・・」
それからも湊音はコンサートをこなしていた。
早く母が退院できるように思いを込めて一つ一つ丁寧に演奏をした。
母さん、聞こえてる?
早く元気になってくれ。
そしてまた、僕の演奏を目の前で聴いてほしい。
それが僕がピアニストしてやっていける活力になる。
頼むから、帰ってきて。
そして20歳の時に念願のピアニストデビューを果たし順調に思えたが、22歳の時辛い出来事が起きる。
梅雨に入り雨の日が続いていた。
最悪だ今日の天気晴れだったから傘を持ってきていない。
湊音の家は駅から徒歩10分の所にある。
傘を刺さずに帰ってもなんとかなる時間だ。
コンビニで傘を買うか迷った末、結局買わずに走って家に帰る事にした。
「ただいまー、最悪だよ今日天気予報晴れだったよね?」
「おかえりなさい、突然降ってきたわね、ついてないわね」
いつものように温かく出迎えてくれた。
この時まではいつもと変わらない様に見えた。
しかし、夕飯を食べ終わるなり、母は改まった様子で湊音に話しかけた。
「湊音、実はこの前の健康診断の事なんだけどね。
私癌になってるみたいなの、それでしばらく入院する事になったの。
だから、家の事しばらく頼んだわね」
「癌?それってステージは?」
「食道のステージ3よ」
湊音はどん底に落とされた気分だった。
ステージ3の食道となると5年の生存率は20%以下、
かなり厳しい状況だった。
なんて声をかけたらいいのかわからず沈黙が続く。
「心配かけてごめんね」
「いや、謝らなくていいよ。
それより治療はどうなるの?」
「手術と抗がん剤よ」
「そうか、いつから入院なの?」
「来週から入院する事になってる、大丈夫よ」
辛いのは母の方なのになんで僕が励まされているんだろう。
しっかりしないと。
「当たり前だろ、ちゃんと退院してくれよ」
「もちろんよ」
そう言った母の笑顔は心配させないように心がけてぎこちない笑顔になっていた。
本当は泣きたいくらい怖いだろう。
なのにこんな時にでも息子に心配をかけまいと強がっている。
湊音は部屋に行くと泣いた。
「こんな時にまで、俺の心配して・・・・
自分の心配してくれよ・・・・・」
それからも湊音はコンサートをこなしていた。
早く母が退院できるように思いを込めて一つ一つ丁寧に演奏をした。
母さん、聞こえてる?
早く元気になってくれ。
そしてまた、僕の演奏を目の前で聴いてほしい。
それが僕がピアニストしてやっていける活力になる。
頼むから、帰ってきて。
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
ちょっと大人な体験談はこちらです
神崎未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない
ちょっと大人な体験談です。
日常に突然訪れる刺激的な体験。
少し非日常を覗いてみませんか?
あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ?
※本作品ではGemini PRO、Pixai.artで作成した生成AI画像ならびに
Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。
※不定期更新です。
※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。
あるフィギュアスケーターの性事情
蔵屋
恋愛
この小説はフィクションです。
しかし、そのようなことが現実にあったかもしれません。
何故ならどんな人間も、悪魔や邪神や悪神に憑依された偽善者なのですから。
この物語は浅岡結衣(16才)とそのコーチ(25才)の恋の物語。
そのコーチの名前は高木文哉(25才)という。
この物語はフィクションです。
実在の人物、団体等とは、一切関係がありません。
罪悪と愛情
暦海
恋愛
地元の家電メーカー・天の香具山に勤務する20代後半の男性・古城真織は幼い頃に両親を亡くし、それ以降は父方の祖父母に預けられ日々を過ごしてきた。
だけど、祖父母は両親の残した遺産を目当てに真織を引き取ったに過ぎず、真織のことは最低限の衣食を与えるだけでそれ以外は基本的に放置。祖父母が自身を疎ましく思っていることを知っていた真織は、高校卒業と共に就職し祖父母の元を離れる。業務上などの必要なやり取り以外では基本的に人と関わらないので友人のような存在もいない真織だったが、どうしてかそんな彼に積極的に接する後輩が一人。その後輩とは、頗る優秀かつ息を呑むほどの美少女である降宮蒔乃で――
靴屋の娘と三人のお兄様
こじまき
恋愛
靴屋の看板娘だったデイジーは、母親の再婚によってホークボロー伯爵令嬢になった。ホークボロー伯爵家の三兄弟、長男でいかにも堅物な軍人のアレン、次男でほとんど喋らない魔法使いのイーライ、三男でチャラい画家のカラバスはいずれ劣らぬキラッキラのイケメン揃い。平民出身のにわか伯爵令嬢とお兄様たちとのひとつ屋根の下生活。何も起こらないはずがない!?
※小説家になろうにも投稿しています。
押しつけられた身代わり婚のはずが、最上級の溺愛生活が待っていました
cheeery
恋愛
名家・御堂家の次女・澪は、一卵性双生の双子の姉・零と常に比較され、冷遇されて育った。社交界で華やかに振る舞う姉とは対照的に、澪は人前に出されることもなく、ひっそりと生きてきた。
そんなある日、姉の零のもとに日本有数の財閥・凰条一真との縁談が舞い込む。しかし凰条一真の悪いウワサを聞きつけた零は、「ブサイクとの結婚なんて嫌」と当日に逃亡。
双子の妹、澪に縁談を押し付ける。
両親はこんな機会を逃すわけにはいかないと、顔が同じ澪に姉の代わりになるよう言って送り出す。
「はじめまして」
そうして出会った凰条一真は、冷徹で金に汚いという噂とは異なり、端正な顔立ちで品位のある落ち着いた物腰の男性だった。
なんてカッコイイ人なの……。
戸惑いながらも、澪は姉の零として振る舞うが……澪は一真を好きになってしまって──。
「澪、キミを探していたんだ」
「キミ以外はいらない」
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる