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ピアニスト再び
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湊音の過去を聞き何故ピアニストを辞めたのか、理由はわかった。
でも、凛音は納得できない所があった。
社会人としてふさわしくない立ち去り方もそうだがそれ以前に母親の為に弾いていたのにやめてしまったこだ。
それに湊音はビアノを弾くことが好きではないのだろうか。
「月城さんの気持はわかりました。
とても辛い過去があったんですね。
それに母のために演奏していたから、居なくなってしまって誰に演奏すればいいか分からなくなってしまったんですよね」
「はい、それに難聴になってしまってピアニスト時代のような演奏はもうできないんです。
もし、ピアニストとして舞台を続けていたとしても先が長くないのは見えていました」
「月城さんはそれでいいんですか?
ピアノ弾くことが好きなんじゃないですか?
それに難聴なんて言い訳じゃないですか?ベートーヴェンも難聴の中ピアニストとして活躍してたじゃないですか」
湊音は俯いたまま言った。
「僕はベートーヴェンじゃない、できないんだ。
それにもう、だれの為に弾けばいいのかもわからない、こんな状態でどうやってピアニストを続ければいいんですか」
凛音は悲観的になってしまった湊音を立て直そうとした。
「できますよ、ベートーヴェンだって同じ人間です。
それに同じピアニストですよ、やってみないで出来ないなんて言い訳です、ほら行きますよ!」
凛音は湊音の腕を引っ張りピアノの元へ連れていく。
「さぁ、弾いてみましょうよ」
湊音椅子に座ったまま何も言わない。
そんな湊音に凛音も少しの怒りを覚えた。
「いい加減にしてください!
お母さんがいないから弾けない?
居なくてもお母さんに想いを込めて弾けばいいじゃないですか!
天国に居るお母さんに届けたらいいじゃないですか!
あなたの事を愛してたんでしょう?だったら天国からあなたを見守ってるんじゃないんですか?」
俯きながら湊音は泣いていた。
そうか、僕はなんて馬鹿なんだろう。
天国に居る母に向けて演奏すればよかったんだ。
難聴なのは言い訳だった。
図星だ。
僕は逃げていたんだ。
母が居なくなり、一人であの舞台に立つのが不安だった。
もう逃げるのは辞めよう。
あの時のような演奏はできないかもしれない。
けれど、自分の気持ちを込めて演奏するだけなら下手でも構わない。
弾こう。
湊音はピアノに手を載せた。
母への想いを乗せて弾き始めた。
曲は母の好きだった「渚のアデリーヌ」
曲を引き始めると夜明けの海が浮かび上がってきた。
暗い夜道から抜け出し、やっとの思い出たどり着いたのは、朝日の登る海。
辛い闇から抜け出せた喜びを噛み締めながら海の音を聴き、朝日を眺める。
すると後ろから母親がやってきた。
元気そうねと母が笑顔で言う。
湊音は音色に乗せてまたピアノを弾くよと伝えた。
母は笑顔で楽しみが増えたわ、上で聴いてるからね、そう言うとすぅっと消えていった。
湊音は砂浜で一人、涙を流しながら楽しみにしててねと呟いた。
湊音の演奏が終わった。
凛音の拍手が駅に響いた。
終電が過ぎ、観客は凛音だけだった。
難聴をものともしない演奏に凛音は感涙した。
「月城さん、すごいです!」
湊音は久しぶりの演奏の余韻に浸っていた。
そして、凛音に感謝を述べた。
「藤宮さん、ありがとう
君のおかげで僕はまたピアノが弾ける」
「いいえ、これからもお母さんのために演奏し続けてください」
湊音はまたありがとうと言ったあと、終電が行ってしまったことに気がついた。
「そうだ、終電行っちゃいましたし、車で送りますよ」
凛音は湊音の言葉に甘えることにした。
男の人あまり付き合いがなかった凛音は車で二人きりになるのがなんとなく恥ずかしい気持ちになるとどうじに湊音と一緒に居れる喜びもあった。
でも、凛音は納得できない所があった。
社会人としてふさわしくない立ち去り方もそうだがそれ以前に母親の為に弾いていたのにやめてしまったこだ。
それに湊音はビアノを弾くことが好きではないのだろうか。
「月城さんの気持はわかりました。
とても辛い過去があったんですね。
それに母のために演奏していたから、居なくなってしまって誰に演奏すればいいか分からなくなってしまったんですよね」
「はい、それに難聴になってしまってピアニスト時代のような演奏はもうできないんです。
もし、ピアニストとして舞台を続けていたとしても先が長くないのは見えていました」
「月城さんはそれでいいんですか?
ピアノ弾くことが好きなんじゃないですか?
それに難聴なんて言い訳じゃないですか?ベートーヴェンも難聴の中ピアニストとして活躍してたじゃないですか」
湊音は俯いたまま言った。
「僕はベートーヴェンじゃない、できないんだ。
それにもう、だれの為に弾けばいいのかもわからない、こんな状態でどうやってピアニストを続ければいいんですか」
凛音は悲観的になってしまった湊音を立て直そうとした。
「できますよ、ベートーヴェンだって同じ人間です。
それに同じピアニストですよ、やってみないで出来ないなんて言い訳です、ほら行きますよ!」
凛音は湊音の腕を引っ張りピアノの元へ連れていく。
「さぁ、弾いてみましょうよ」
湊音椅子に座ったまま何も言わない。
そんな湊音に凛音も少しの怒りを覚えた。
「いい加減にしてください!
お母さんがいないから弾けない?
居なくてもお母さんに想いを込めて弾けばいいじゃないですか!
天国に居るお母さんに届けたらいいじゃないですか!
あなたの事を愛してたんでしょう?だったら天国からあなたを見守ってるんじゃないんですか?」
俯きながら湊音は泣いていた。
そうか、僕はなんて馬鹿なんだろう。
天国に居る母に向けて演奏すればよかったんだ。
難聴なのは言い訳だった。
図星だ。
僕は逃げていたんだ。
母が居なくなり、一人であの舞台に立つのが不安だった。
もう逃げるのは辞めよう。
あの時のような演奏はできないかもしれない。
けれど、自分の気持ちを込めて演奏するだけなら下手でも構わない。
弾こう。
湊音はピアノに手を載せた。
母への想いを乗せて弾き始めた。
曲は母の好きだった「渚のアデリーヌ」
曲を引き始めると夜明けの海が浮かび上がってきた。
暗い夜道から抜け出し、やっとの思い出たどり着いたのは、朝日の登る海。
辛い闇から抜け出せた喜びを噛み締めながら海の音を聴き、朝日を眺める。
すると後ろから母親がやってきた。
元気そうねと母が笑顔で言う。
湊音は音色に乗せてまたピアノを弾くよと伝えた。
母は笑顔で楽しみが増えたわ、上で聴いてるからね、そう言うとすぅっと消えていった。
湊音は砂浜で一人、涙を流しながら楽しみにしててねと呟いた。
湊音の演奏が終わった。
凛音の拍手が駅に響いた。
終電が過ぎ、観客は凛音だけだった。
難聴をものともしない演奏に凛音は感涙した。
「月城さん、すごいです!」
湊音は久しぶりの演奏の余韻に浸っていた。
そして、凛音に感謝を述べた。
「藤宮さん、ありがとう
君のおかげで僕はまたピアノが弾ける」
「いいえ、これからもお母さんのために演奏し続けてください」
湊音はまたありがとうと言ったあと、終電が行ってしまったことに気がついた。
「そうだ、終電行っちゃいましたし、車で送りますよ」
凛音は湊音の言葉に甘えることにした。
男の人あまり付き合いがなかった凛音は車で二人きりになるのがなんとなく恥ずかしい気持ちになるとどうじに湊音と一緒に居れる喜びもあった。
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