二人の為のピアノソナタ

book bear

文字の大きさ
15 / 21

コンサート1

しおりを挟む
コンサート当日

ホールの入口にはドレスコードの人達が集まっていた。

そんな中、凛音は緊張していた。

「みなさん品がありそうな人達ですね、私場違いじゃないですか?」

凛音はリサイタルコンサートは行くことがあっても、こうした大きなコンサートには来たことがなかった。

慣れていない凛音はまわりの雰囲気に飲まれそうになっていた。

「そんな固くならなくても大丈夫ですよ、皆さんピアノが好きな人達です。

僕達と何も変わりませんよ」

こういう雰囲気には慣れているのだろう、緊張している凛音を優しくエスコートしてくれる湊音が舞踏会で手を引いてくれる王子様に見えた。

凛音は自分の想像で恥ずかしくなってしまい湊音から視線をそらした。

「どうかしましたか?」

不思議そうに湊音が顔を覗き込む。
また顔をそらして凛音は
 「別になんでもないです」

としか言えなかった。

ホールに入ると想像を越える広さに凛音は感動した。

「うわー広いですね」

周りに気を使いながら小さい声で感嘆の言葉を漏らした。

湊音からしたら見慣れた景色だ、そんな中新しい景色を観て感嘆している凛音の様子はどこか微笑ましく思えた。

席に着くと意外と狭い。
収客人数を確保するためなのだろう。
湊音と肩が僅かに触れて凛音はちょっと照れくさかった。

暫くしてホールの照明が落とされた。
そして舞台だけが照らされて、そこに観客の視線が注がれる。

舞台脇から進行役が出てきて挨拶を始めた。
終えた後、ピアニストか二人出てきた。

今日のテーマは連弾で奏でる名曲クラシックだ。

舞台には2台のグランドピアノが向かい合うように置かれている。

ピアニストの挨拶もそこそこに二人はピアノの椅子に着席した。

この着席してから演奏が始まるまでの間はとてもワクワクする。
早く演奏を聴きたい、ピアノの音色を浴びせてほしいという気持ちが高まる瞬間でもある。

そして二人のピアニストはアイコンタクトを取り、演奏をはじめた。

出だしはかなり重たい音から始まり強い負の感情みたいな物を感じることができる。

大きな闇が世界を包むようなそんな雰囲気の中、僅かな希望を感じさせる音色が弱々しく流れる。

もう世界は救いようがな位程に追い詰められている。
そして、人々は嘆き悲しむ。

しかし、一人の男が立ち上がる、まだ負けたわけではないと、そして闇に立ち向かっていくような曲調へと変わっていく。

そして、闇との激しい戦いが始まる。
その姿に他の人々も立ち上がり、戦いは激しさを増していく。

そして、激闘はやがて終盤へと進んでいく。

人々は倒れ、最初に立ち向かった男一人となってしまう。

そして、闇の根源である者と、男の戦いが始まってそのまま終わってしまう。

凛音はこの曲にはそんなストーリーを感じた。

一曲目ショスタコーヴィチ「コンチェルティーノ」

が終わった。


しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

夫婦交換

山田森湖
恋愛
好奇心から始まった一週間の“夫婦交換”。そこで出会った新鮮なときめき

ちょっと大人な体験談はこちらです

神崎未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない ちょっと大人な体験談です。 日常に突然訪れる刺激的な体験。 少し非日常を覗いてみませんか? あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ? ※本作品ではGemini PRO、Pixai.artで作成した生成AI画像ならびに  Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。 ※不定期更新です。 ※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。

あるフィギュアスケーターの性事情

蔵屋
恋愛
この小説はフィクションです。 しかし、そのようなことが現実にあったかもしれません。 何故ならどんな人間も、悪魔や邪神や悪神に憑依された偽善者なのですから。 この物語は浅岡結衣(16才)とそのコーチ(25才)の恋の物語。 そのコーチの名前は高木文哉(25才)という。 この物語はフィクションです。 実在の人物、団体等とは、一切関係がありません。

罪悪と愛情

暦海
恋愛
 地元の家電メーカー・天の香具山に勤務する20代後半の男性・古城真織は幼い頃に両親を亡くし、それ以降は父方の祖父母に預けられ日々を過ごしてきた。  だけど、祖父母は両親の残した遺産を目当てに真織を引き取ったに過ぎず、真織のことは最低限の衣食を与えるだけでそれ以外は基本的に放置。祖父母が自身を疎ましく思っていることを知っていた真織は、高校卒業と共に就職し祖父母の元を離れる。業務上などの必要なやり取り以外では基本的に人と関わらないので友人のような存在もいない真織だったが、どうしてかそんな彼に積極的に接する後輩が一人。その後輩とは、頗る優秀かつ息を呑むほどの美少女である降宮蒔乃で――

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

靴屋の娘と三人のお兄様

こじまき
恋愛
靴屋の看板娘だったデイジーは、母親の再婚によってホークボロー伯爵令嬢になった。ホークボロー伯爵家の三兄弟、長男でいかにも堅物な軍人のアレン、次男でほとんど喋らない魔法使いのイーライ、三男でチャラい画家のカラバスはいずれ劣らぬキラッキラのイケメン揃い。平民出身のにわか伯爵令嬢とお兄様たちとのひとつ屋根の下生活。何も起こらないはずがない!? ※小説家になろうにも投稿しています。

押しつけられた身代わり婚のはずが、最上級の溺愛生活が待っていました

cheeery
恋愛
名家・御堂家の次女・澪は、一卵性双生の双子の姉・零と常に比較され、冷遇されて育った。社交界で華やかに振る舞う姉とは対照的に、澪は人前に出されることもなく、ひっそりと生きてきた。 そんなある日、姉の零のもとに日本有数の財閥・凰条一真との縁談が舞い込む。しかし凰条一真の悪いウワサを聞きつけた零は、「ブサイクとの結婚なんて嫌」と当日に逃亡。 双子の妹、澪に縁談を押し付ける。 両親はこんな機会を逃すわけにはいかないと、顔が同じ澪に姉の代わりになるよう言って送り出す。 「はじめまして」 そうして出会った凰条一真は、冷徹で金に汚いという噂とは異なり、端正な顔立ちで品位のある落ち着いた物腰の男性だった。 なんてカッコイイ人なの……。 戸惑いながらも、澪は姉の零として振る舞うが……澪は一真を好きになってしまって──。 「澪、キミを探していたんだ」 「キミ以外はいらない」

処理中です...