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初めての家族(?)対面
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気がつけば、私は三歳になっていた。
「……長かったような、短かったような」
赤ん坊の期間って、マジで何もできない。
喋れない、動けない、何もかも自力でできない。もうそれだけでストレスだった。普通、転生したらなんかこう、チート能力とか貰えるもんじゃないの? 私、ただの赤ん坊スタートなんだけど??
でもまあ、文句を言っても仕方ない。赤ん坊時代の私は、ほぼずっと暇との戦いだった。
◆
で、そんな暇な日々の中で、私はひとつだけ楽しみを見つけた。
──魔法。
最初に発見したのは、あの伝説的な失敗のとき。
「そう……お腹に力を入れて、見事にやらかしたあのとき……!」
あの屈辱の瞬間を無駄にしないためにも、私はこっそりとお腹に力を入れる練習を続けた。
最初は、ただの腹筋トレーニングみたいな感じだったけど、続けているうちに気づいた。
──お腹の奥の方から、じんわりと何かが湧き上がってくる感覚。
「……あっ、これ魔力だわ」
一回目の失敗は単なる生理現象だったけど、何度か試すうちに、本当に魔力っぽい何かを感じるようになった。
「ほらね? 失敗は成功のもとって言うじゃん?」
まさか前世のことわざがここで活きるとは。
◆
で、三歳になった今、私はすでに三つの魔法を習得している。
まずひとつ目。
──身体強化!
……いや、名前は自分で勝手に付けたんだけど。
効果としては、自分の身体能力が大体二倍くらいになる。今のところ、ジャンプしたら普段の倍くらい跳べるし、走ると少しだけ速くなる。でも、スタミナ消費が激しいのが難点。
「まあ、まだ子供だから仕方ないよね」
──ということにしておく。
◆
次に覚えたのが、水を出す魔法。
「いや、これは普通に便利じゃね?」
手を前に出して「出ろー!」って念じると、バシャッ! と水が出る。
「これで洗顔も飲み水も確保できる! ついでに水浴びもできる!」
……まあ、まだ1リットルくらいしか出せないんだけど。
風呂を沸かすには足りないけど、のどが渇いたときには役立つ。あと、顔にかければ不意打ちの攻撃になる(重要)。
「でも、水を出せるなら、氷とかにもできるんじゃね?」
と思って試したけど、いまだに氷にはならず。
「まあ、いずれできるでしょ! たぶん!!」
……そう思っておくことにする。
◆
そして最後の魔法が、光を出す魔法。
これがまた……
「ただ光るだけ」
いや、ほんとにただ光るだけなのよ。
手のひらの上にぽわっと光を出せるだけ。攻撃力もなし、便利さも微妙。ただ、部屋を明るくできるから、まあ暗闇の中では役に立つかも?
「目眩ましにはなるかな~って感じ?」
とりあえず、私の魔法の中では一番地味なやつだった。
◆
ちなみに、この魔法の修行は全部こっそりやっている。
召使いたちの監視を避けながら、誰もいないときにこっそり練習。
いや、ほら、なんかさ?
「自分の能力は隠しておいたほうがいいって本能が言ってるんだよね!」
だってさ、あの召使いたち、赤ん坊の私を完全に観察対象みたいな扱いしてたじゃん?
なんか……いやな予感しかしないんだけど!?
「絶対、なんか裏あるでしょこの家!!」
──まあ、その「裏」が何なのかは、まだよくわからないんだけど。
◆
そんなわけで、私は三歳になった。
「さて、これからどうなることやら……」
相変わらず、この家の空気はどこか不穏で、まだまだ気が抜けない。
でも、魔法を使えるようになった私は、以前よりも確実に「生存率」が上がったはずだ!
そう信じながら、私は今日もこっそり魔法の修行を続けるのだった。
「……なあ、私の人生って、今のところ地味に不穏すぎない?」
いやいや、三歳の子供ってもっとこう、天真爛漫にキャッキャしてるもんでしょ!?
私は今まで、誰にも甘やかされることなく、ただひたすら召使いたちの無言監視を受けながら生きてきた。魔法の練習をしてなかったら、たぶん暇すぎて精神が崩壊していたと思う。
「ほんと、この家、なんなの……?」
そう、いつものように自分語りをしながら天井を見上げていたら──
「エリシア様」
突然、部屋の端から声がした。
「!?!?!?」
ビクゥッと体が跳ねる。
なに!? 何事!? 私、今まで誰かに話しかけられたことなんてなかったんだけど!?
驚きすぎて心臓バクバクしてると、そこにはいつも部屋に来ていた召使いのひとり──私は勝手に召使いAと名付けていたけど──が立っていた。
「……食事の時間です。ついてきてください」
「…………」
「…………」
「しゃべったあああああ!!?」
いやいやいや、お前ら喋れるんかい!!!
今まで散々メモを取るだけで、赤ん坊の私に向かって話しかけたことなんて一度もなかったくせに!?
なんなの!? 何があったの!? えっ、逆に今まで喋らなかった理由が気になるんだけど!?
……と、色々ツッコみたいところだったが、もちろん私はまだ流暢に喋れる年齢ではないので、「あ……う……?」みたいな間抜けな声しか出せない。
だが、召使いAはそんな私の動揺をまったく気にすることなく、くるりと踵を返し、歩き始めた。
「えっ、待って、置いていくな!!!」
慌てて立ち上がる。自分の足で歩くの、これが初めての外出なんだけど!?
◆
──そして、歩かされること数分。
「……長くね?」
どんだけ広いんだよこの屋敷!?
私、三歳児だよ!? こんなに歩かされるものなの!? もうちょっとこう、優しくしようとか思わない!?
「……いや、今までの扱いを思い返せば、優しくされるわけなかったわ」
これまでずっと「観察対象」みたいな扱いを受けてきたんだから、そりゃそうか。
途中で息が上がりそうになりながらも、どうにか召使いAについていくと、ついに大きな扉の前にたどり着いた。
召使いAは扉の前で立ち止まり、スッと姿勢を正す。
「エリシア様が参られました」
「……誰?」
エリシアって誰???
いやいや、初耳なんですけど!? 誰かと勘違いしてない!? 私、今まで「おい」とか「そこの」とかですら呼ばれたことないんだけど!?
──と思っていたら、気づいた。
「あっ、これ、私の名前か……」
そういや、知らない間に名付けされてたんだった。てか、普通名前って親から直接伝えられるものじゃないの!?
今ここで初めて知るって、私の人生どれだけ放置プレイされてたんだよ!?
混乱しているうちに、召使いAはいつものごとく無言で消えていた。
「えっ、ちょっ、また消えた!? ほんとお前ら神出鬼没すぎん!?」
──とかやってる場合じゃなかった。
扉が静かに開かれる。
◆
──中にいたのは、見ただけでおしっこちびりそうな人たちだった。
「……えっ、無理、怖い」
そこには、五人の人間が座っていた。
まず、ど真ん中にいるのが、問答無用でこの家の主って感じの男。
「あっ、お父さんっぽい人ですね、これは……!」
めちゃくちゃ威圧感がある。というか、オーラが完全に「強キャラ」。もう見た目からして「戦場を生き抜いてきました」って感じの筋肉と風格。
で、その横に座っているのが、これまた気品漂う美しい女性。
「……お母さん?」
でも、目つきがめちゃくちゃ冷たいんだけど!? 娘を見る目じゃない!!
そして、さらにその隣には──
「……うわ、いるよ、あのガキンチョ!!」
私をナイフで殺しかけた張本人が、優雅に椅子に座ってこっちを見ていた。
「いや、お前何食事会に普通に参加してんの!? 私に謝罪のひとつもないの!?」
……と、心の中で叫びつつも、こっちを見てくる視線があまりにも楽しそうなのが超怖い。
「いや、お前絶対またなんかやる気じゃん!?」
──そして、問題の残る二人。
まず、ひとりは、まるでお人形のように完璧な容姿の少女。
黒のゴスロリ風のドレスを纏い、真っ白な肌に、宝石のように光る瞳。その整いすぎた顔が不気味さすら感じさせる。
「……なんか、喋ったらめちゃくちゃ怖いこと言いそう」
そして、最後のひとりが、一番ヤバそうだった。
ボロボロの服。
白く、どこか透けるような肌。
そして、顔がよく見えない。
「幽霊……!?」
いやいやいやいや、何!? なんで一人だけ雰囲気違いすぎない!? ホラー枠!?
えっ、てかこの人(?)だけ椅子の座り方が違うんだけど!? なんか、ほとんど浮いてるみたいな!?
──もう無理、帰りたい。
家族(?)に対面したはずなのに、私の心はただただ絶望で埋め尽くされていた。
扉が開かれた瞬間、私は心の底から後悔した。
「……あ、これ絶対来ちゃダメなやつだったな?」
目の前には、五人の異様な人物たち。おそらく家族というカテゴリに分類されるのだろうが、どう見ても「ほのぼの家族団らん♡」みたいな雰囲気じゃない。
いや、むしろ、ここに立ってるだけで胃がキリキリしてくる。
私の前世の人生において、これまでの経験則がすべて警鐘を鳴らしていた。
──この場、やばい。
「……いやいや、でもここで逃げる選択肢はないよな」
今さらUターンなんて許されるはずがない。
私は意を決して、部屋の中へと足を踏み入れた。
◆
「座れ」
──重く、低く、響く声だった。
ビクッと身体が強張る。
声の主は、部屋の中央に座る男。
……誰なのかはわからない。けれど、この部屋の雰囲気を見れば、偉い立場にいることだけは確かだった。
私は一瞬だけ迷ったが、逆らうという選択肢はなかった。
大人しく、指示通りに椅子へと座る。
すると、その男──たぶん父親らしき人が、再び口を開いた。
「お前が生き残ったことには驚いたが……まあ、今ここにいる以上、それは事実だ」
「…………」
「エリシア、お前は我が娘として、このヴァルムント家の名を背負うことになる」
「……えっ、今さら?」
なんか、「お前は我が家の一員である」みたいな雰囲気を出されてるけど、こっちは生まれてからずっと放置されてきたんですが!?
いやいや、普通、もっとこう、親が愛情持って育てるもんじゃないの!? なんで「生き残ったから仕方なく認める」みたいな流れになってるんですか!?
「……これ、絶対まともな家庭じゃないな?」
一応、今の話の流れ的には、「私がこの家の一員として正式に認められた」ということになるんだろう。
でも、そこに父親の愛情的な何かは一切ない。
この家、なんかもう……そういうものなんだろうなって、薄々察してしまった。
「……長かったような、短かったような」
赤ん坊の期間って、マジで何もできない。
喋れない、動けない、何もかも自力でできない。もうそれだけでストレスだった。普通、転生したらなんかこう、チート能力とか貰えるもんじゃないの? 私、ただの赤ん坊スタートなんだけど??
でもまあ、文句を言っても仕方ない。赤ん坊時代の私は、ほぼずっと暇との戦いだった。
◆
で、そんな暇な日々の中で、私はひとつだけ楽しみを見つけた。
──魔法。
最初に発見したのは、あの伝説的な失敗のとき。
「そう……お腹に力を入れて、見事にやらかしたあのとき……!」
あの屈辱の瞬間を無駄にしないためにも、私はこっそりとお腹に力を入れる練習を続けた。
最初は、ただの腹筋トレーニングみたいな感じだったけど、続けているうちに気づいた。
──お腹の奥の方から、じんわりと何かが湧き上がってくる感覚。
「……あっ、これ魔力だわ」
一回目の失敗は単なる生理現象だったけど、何度か試すうちに、本当に魔力っぽい何かを感じるようになった。
「ほらね? 失敗は成功のもとって言うじゃん?」
まさか前世のことわざがここで活きるとは。
◆
で、三歳になった今、私はすでに三つの魔法を習得している。
まずひとつ目。
──身体強化!
……いや、名前は自分で勝手に付けたんだけど。
効果としては、自分の身体能力が大体二倍くらいになる。今のところ、ジャンプしたら普段の倍くらい跳べるし、走ると少しだけ速くなる。でも、スタミナ消費が激しいのが難点。
「まあ、まだ子供だから仕方ないよね」
──ということにしておく。
◆
次に覚えたのが、水を出す魔法。
「いや、これは普通に便利じゃね?」
手を前に出して「出ろー!」って念じると、バシャッ! と水が出る。
「これで洗顔も飲み水も確保できる! ついでに水浴びもできる!」
……まあ、まだ1リットルくらいしか出せないんだけど。
風呂を沸かすには足りないけど、のどが渇いたときには役立つ。あと、顔にかければ不意打ちの攻撃になる(重要)。
「でも、水を出せるなら、氷とかにもできるんじゃね?」
と思って試したけど、いまだに氷にはならず。
「まあ、いずれできるでしょ! たぶん!!」
……そう思っておくことにする。
◆
そして最後の魔法が、光を出す魔法。
これがまた……
「ただ光るだけ」
いや、ほんとにただ光るだけなのよ。
手のひらの上にぽわっと光を出せるだけ。攻撃力もなし、便利さも微妙。ただ、部屋を明るくできるから、まあ暗闇の中では役に立つかも?
「目眩ましにはなるかな~って感じ?」
とりあえず、私の魔法の中では一番地味なやつだった。
◆
ちなみに、この魔法の修行は全部こっそりやっている。
召使いたちの監視を避けながら、誰もいないときにこっそり練習。
いや、ほら、なんかさ?
「自分の能力は隠しておいたほうがいいって本能が言ってるんだよね!」
だってさ、あの召使いたち、赤ん坊の私を完全に観察対象みたいな扱いしてたじゃん?
なんか……いやな予感しかしないんだけど!?
「絶対、なんか裏あるでしょこの家!!」
──まあ、その「裏」が何なのかは、まだよくわからないんだけど。
◆
そんなわけで、私は三歳になった。
「さて、これからどうなることやら……」
相変わらず、この家の空気はどこか不穏で、まだまだ気が抜けない。
でも、魔法を使えるようになった私は、以前よりも確実に「生存率」が上がったはずだ!
そう信じながら、私は今日もこっそり魔法の修行を続けるのだった。
「……なあ、私の人生って、今のところ地味に不穏すぎない?」
いやいや、三歳の子供ってもっとこう、天真爛漫にキャッキャしてるもんでしょ!?
私は今まで、誰にも甘やかされることなく、ただひたすら召使いたちの無言監視を受けながら生きてきた。魔法の練習をしてなかったら、たぶん暇すぎて精神が崩壊していたと思う。
「ほんと、この家、なんなの……?」
そう、いつものように自分語りをしながら天井を見上げていたら──
「エリシア様」
突然、部屋の端から声がした。
「!?!?!?」
ビクゥッと体が跳ねる。
なに!? 何事!? 私、今まで誰かに話しかけられたことなんてなかったんだけど!?
驚きすぎて心臓バクバクしてると、そこにはいつも部屋に来ていた召使いのひとり──私は勝手に召使いAと名付けていたけど──が立っていた。
「……食事の時間です。ついてきてください」
「…………」
「…………」
「しゃべったあああああ!!?」
いやいやいや、お前ら喋れるんかい!!!
今まで散々メモを取るだけで、赤ん坊の私に向かって話しかけたことなんて一度もなかったくせに!?
なんなの!? 何があったの!? えっ、逆に今まで喋らなかった理由が気になるんだけど!?
……と、色々ツッコみたいところだったが、もちろん私はまだ流暢に喋れる年齢ではないので、「あ……う……?」みたいな間抜けな声しか出せない。
だが、召使いAはそんな私の動揺をまったく気にすることなく、くるりと踵を返し、歩き始めた。
「えっ、待って、置いていくな!!!」
慌てて立ち上がる。自分の足で歩くの、これが初めての外出なんだけど!?
◆
──そして、歩かされること数分。
「……長くね?」
どんだけ広いんだよこの屋敷!?
私、三歳児だよ!? こんなに歩かされるものなの!? もうちょっとこう、優しくしようとか思わない!?
「……いや、今までの扱いを思い返せば、優しくされるわけなかったわ」
これまでずっと「観察対象」みたいな扱いを受けてきたんだから、そりゃそうか。
途中で息が上がりそうになりながらも、どうにか召使いAについていくと、ついに大きな扉の前にたどり着いた。
召使いAは扉の前で立ち止まり、スッと姿勢を正す。
「エリシア様が参られました」
「……誰?」
エリシアって誰???
いやいや、初耳なんですけど!? 誰かと勘違いしてない!? 私、今まで「おい」とか「そこの」とかですら呼ばれたことないんだけど!?
──と思っていたら、気づいた。
「あっ、これ、私の名前か……」
そういや、知らない間に名付けされてたんだった。てか、普通名前って親から直接伝えられるものじゃないの!?
今ここで初めて知るって、私の人生どれだけ放置プレイされてたんだよ!?
混乱しているうちに、召使いAはいつものごとく無言で消えていた。
「えっ、ちょっ、また消えた!? ほんとお前ら神出鬼没すぎん!?」
──とかやってる場合じゃなかった。
扉が静かに開かれる。
◆
──中にいたのは、見ただけでおしっこちびりそうな人たちだった。
「……えっ、無理、怖い」
そこには、五人の人間が座っていた。
まず、ど真ん中にいるのが、問答無用でこの家の主って感じの男。
「あっ、お父さんっぽい人ですね、これは……!」
めちゃくちゃ威圧感がある。というか、オーラが完全に「強キャラ」。もう見た目からして「戦場を生き抜いてきました」って感じの筋肉と風格。
で、その横に座っているのが、これまた気品漂う美しい女性。
「……お母さん?」
でも、目つきがめちゃくちゃ冷たいんだけど!? 娘を見る目じゃない!!
そして、さらにその隣には──
「……うわ、いるよ、あのガキンチョ!!」
私をナイフで殺しかけた張本人が、優雅に椅子に座ってこっちを見ていた。
「いや、お前何食事会に普通に参加してんの!? 私に謝罪のひとつもないの!?」
……と、心の中で叫びつつも、こっちを見てくる視線があまりにも楽しそうなのが超怖い。
「いや、お前絶対またなんかやる気じゃん!?」
──そして、問題の残る二人。
まず、ひとりは、まるでお人形のように完璧な容姿の少女。
黒のゴスロリ風のドレスを纏い、真っ白な肌に、宝石のように光る瞳。その整いすぎた顔が不気味さすら感じさせる。
「……なんか、喋ったらめちゃくちゃ怖いこと言いそう」
そして、最後のひとりが、一番ヤバそうだった。
ボロボロの服。
白く、どこか透けるような肌。
そして、顔がよく見えない。
「幽霊……!?」
いやいやいやいや、何!? なんで一人だけ雰囲気違いすぎない!? ホラー枠!?
えっ、てかこの人(?)だけ椅子の座り方が違うんだけど!? なんか、ほとんど浮いてるみたいな!?
──もう無理、帰りたい。
家族(?)に対面したはずなのに、私の心はただただ絶望で埋め尽くされていた。
扉が開かれた瞬間、私は心の底から後悔した。
「……あ、これ絶対来ちゃダメなやつだったな?」
目の前には、五人の異様な人物たち。おそらく家族というカテゴリに分類されるのだろうが、どう見ても「ほのぼの家族団らん♡」みたいな雰囲気じゃない。
いや、むしろ、ここに立ってるだけで胃がキリキリしてくる。
私の前世の人生において、これまでの経験則がすべて警鐘を鳴らしていた。
──この場、やばい。
「……いやいや、でもここで逃げる選択肢はないよな」
今さらUターンなんて許されるはずがない。
私は意を決して、部屋の中へと足を踏み入れた。
◆
「座れ」
──重く、低く、響く声だった。
ビクッと身体が強張る。
声の主は、部屋の中央に座る男。
……誰なのかはわからない。けれど、この部屋の雰囲気を見れば、偉い立場にいることだけは確かだった。
私は一瞬だけ迷ったが、逆らうという選択肢はなかった。
大人しく、指示通りに椅子へと座る。
すると、その男──たぶん父親らしき人が、再び口を開いた。
「お前が生き残ったことには驚いたが……まあ、今ここにいる以上、それは事実だ」
「…………」
「エリシア、お前は我が娘として、このヴァルムント家の名を背負うことになる」
「……えっ、今さら?」
なんか、「お前は我が家の一員である」みたいな雰囲気を出されてるけど、こっちは生まれてからずっと放置されてきたんですが!?
いやいや、普通、もっとこう、親が愛情持って育てるもんじゃないの!? なんで「生き残ったから仕方なく認める」みたいな流れになってるんですか!?
「……これ、絶対まともな家庭じゃないな?」
一応、今の話の流れ的には、「私がこの家の一員として正式に認められた」ということになるんだろう。
でも、そこに父親の愛情的な何かは一切ない。
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