35 / 42
第二章
番外「サイン」
しおりを挟む
第3~5話までの二人。 甘くてほろ苦いテイストです。
******************************
髪を乱暴に撫でられて、はっと目を覚ました。
闇の中、手を伸ばすと、広い背中に触れた。
(……クライヴ)
心の中で名前を呼んで、背中に指を絡める。
汗でするりと滑り、シーツをつかむ。
言葉もなく、熱のこもった腕に抱かれる中、
瞳の奥に滲む涙を振り切っていた。
『yes,my master』
何度、心で呟いたかわからない。
(捧げたのは、きっと……すべてだわ)
彼がどんな思いでいるかはしらない。
私は、単純に契約者としての義務を果たしているのだとしても、
それでも構わなかった。
彼の下に召喚されたあの日絡め取られたものは、二度と返らない。
彼しかいない世界で、支配されていることが、淡い喜びをもたらしていた。
そして新たな思いが生まれた。
言葉もなく見つめられると身震いがした。
綺麗で、恐ろしい。
吐息が、弾ける。
軋む中、彼を受け止める。
躊躇いがちに伸びた腕が、髪に触れようとして離れた。
もどかしくてそっと指を絡めた。
むき出しの背中を合わせる。
手の冷たさとは反対に、とても熱く燃え盛っているようだ。
わななく体をだまらせたくて、近づいたはずが、逆に
自分を追い込んでしまっては、救いようがない。
(もっと貴方を知りたい)
「……俺が欲しいのか? 」
口元をつり上げた彼の目は笑ってはいなかったけれど、
心のままに、頷いていた。
顎を掴まれ、間近で見つめられる。
覗きこんでくる深遠の眼差しに鼓動がはねた。
息が乱れるくらいの口づけを残して、彼は寝台を離れた。
温もりが残る唇を指で辿り確かめる。
感情を表に出さない彼の精一杯の想いを感じて、
声もなく泣いた。
シーツごとかき抱いた自分の体は、クライヴへの想いが、宿った体へと変化していた。
グラスを傾け、口元を拭う彼がこちらを見つめている。
滴したたる滴を無造作に拭う艶めかしい仕草。
「来いよ」
くいと、指先が招く。
シーツを纏ったまま動こうとして苦戦していると、
強引に引き寄せられた。
横抱きにされ、ぶらりと腕を投げだす。
髪をひと房掴まれて、傲慢な声で命じる。
「お前を俺に渡せ」
耳元に言葉を吹きこまれたのが合図だった。
******************************
髪を乱暴に撫でられて、はっと目を覚ました。
闇の中、手を伸ばすと、広い背中に触れた。
(……クライヴ)
心の中で名前を呼んで、背中に指を絡める。
汗でするりと滑り、シーツをつかむ。
言葉もなく、熱のこもった腕に抱かれる中、
瞳の奥に滲む涙を振り切っていた。
『yes,my master』
何度、心で呟いたかわからない。
(捧げたのは、きっと……すべてだわ)
彼がどんな思いでいるかはしらない。
私は、単純に契約者としての義務を果たしているのだとしても、
それでも構わなかった。
彼の下に召喚されたあの日絡め取られたものは、二度と返らない。
彼しかいない世界で、支配されていることが、淡い喜びをもたらしていた。
そして新たな思いが生まれた。
言葉もなく見つめられると身震いがした。
綺麗で、恐ろしい。
吐息が、弾ける。
軋む中、彼を受け止める。
躊躇いがちに伸びた腕が、髪に触れようとして離れた。
もどかしくてそっと指を絡めた。
むき出しの背中を合わせる。
手の冷たさとは反対に、とても熱く燃え盛っているようだ。
わななく体をだまらせたくて、近づいたはずが、逆に
自分を追い込んでしまっては、救いようがない。
(もっと貴方を知りたい)
「……俺が欲しいのか? 」
口元をつり上げた彼の目は笑ってはいなかったけれど、
心のままに、頷いていた。
顎を掴まれ、間近で見つめられる。
覗きこんでくる深遠の眼差しに鼓動がはねた。
息が乱れるくらいの口づけを残して、彼は寝台を離れた。
温もりが残る唇を指で辿り確かめる。
感情を表に出さない彼の精一杯の想いを感じて、
声もなく泣いた。
シーツごとかき抱いた自分の体は、クライヴへの想いが、宿った体へと変化していた。
グラスを傾け、口元を拭う彼がこちらを見つめている。
滴したたる滴を無造作に拭う艶めかしい仕草。
「来いよ」
くいと、指先が招く。
シーツを纏ったまま動こうとして苦戦していると、
強引に引き寄せられた。
横抱きにされ、ぶらりと腕を投げだす。
髪をひと房掴まれて、傲慢な声で命じる。
「お前を俺に渡せ」
耳元に言葉を吹きこまれたのが合図だった。
0
あなたにおすすめの小説
敗戦国の姫は、敵国将軍に掠奪される
clayclay
恋愛
架空の国アルバ国は、ブリタニア国に侵略され、国は壊滅状態となる。
状況を打破するため、アルバ国王は娘のソフィアに、ブリタニア国使者への「接待」を命じたが……。
小さくなった夫が可愛すぎて困ります
piyo
恋愛
夫が、ある日突然、幼児の姿になってしまった。
部下の開発中の魔法薬を浴びてしまい、そのとばっちりで若返ってしまったらしい。
いつも仏頂面な夫が、なんだかとっても可愛い――。
契約結婚で、一生愛とは無縁の生活を送ると思っていたノエルだったが、姿が変わってしまった夫を、つい猫可愛がりしてしまう。
「おい、撫でまわすな!」
「良いじゃありませんか。減るもんじゃないし」
これまで放置されていた妻と、不器用に愛を示す夫。
そんな二人が、じれじれ、じわじわとお互いの距離を詰めていく、甘くて切ない夫婦再生の物語
※完結まで毎日更新
※全26話+おまけ1話
※一章ほのぼの、二章シリアスの二部構成です。
※他サイトにも投稿
香りの魔女と王宮の冷徹参謀
佐倉穂波
恋愛
森で倒れていた少女ミアは、記憶を失っていた。
彼女を保護したレオンは、微かに漂う“禁呪の残滓”に気づき、王宮へと連れて行く。
そこで判明したのは──《香術》という希少な才能。
王宮で次々と起こる事件。
不完全な魔法香水、甘い幻香、枯れた花、消えた文書……。
ミアは香りに宿った痕跡を読み取り、真相に近づいていく。
王子を身籠りました
青の雀
恋愛
婚約者である王太子から、毒を盛って殺そうとした冤罪をかけられ収監されるが、その時すでに王太子の子供を身籠っていたセレンティー。
王太子に黙って、出産するも子供の容姿が王家特有の金髪金眼だった。
再び、王太子が毒を盛られ、死にかけた時、我が子と対面するが…というお話。
たとえ夜が姿を変えても ―過保護な兄の親友は、私を逃がさない―
佐竹りふれ
恋愛
重なる吐息、耳元を掠める熱、そして——兄の親友の、隠しきれない独占欲。
19歳のジャスミンにとって、過保護な兄の親友・セバスチャンは、自分を子供扱いする「第二の兄」のような存在だった。
しかし、初めてのパーティーの夜、その関係は一変する。
突然降ってきた、深く、すべてを奪うような口づけ。
「焦らず、お前のペースで進もう」
そう余裕たっぷりに微笑んだセバスチャン。
けれど、彼の言う「ゆっくり」は、翌朝には早くも崩れ始めていた。
学内の視線、兄の沈黙、そして二人きりのアパート――。
外堀が埋まっていくスピードに戸惑いながらも、ジャスミンは彼が隠し持つ「男」の顔に、抗えない好奇心を抱き始める。
「……どうする? 俺と一緒に、いけないことするか?」
余裕の仮面を被るセバスチャンに、あどけない顔で、けれど大胆に踏み込んでいくジャスミン。
理性を繋ぎ止めようとする彼を、翻弄し、追い詰めていくのは彼女の方で……。
「ゆっくり」なんて、ただの建前。
一度火がついた熱は、誰にも止められない。
兄の親友という境界線を軽々と飛び越え、加速しすぎる二人の溺愛ラブストーリー。
忘れ去られた婚約者
かべうち右近
恋愛
『僕はレベッカしか選ばない』
甘い声音でそう話したはずの王太子サイラスは、レベッカを忘れてしまった。
レベッカは、王太子サイラスと付き合っていることを、ある事情により隠していた。舞踏会で関係を公表し、婚約者に指名される予定だったのに、舞踊会の夜にサイラスは薬を盛られて倒れ、記憶喪失になってしまう。
恋人が誰なのかわからないのをいいことに、偽の恋人が次々と名乗りをあげ王太子の婚約者の座を狙ってくる。おかげで不信に陥ったサイラスに、レベッカは自分が恋人だと名乗り出せなくなってしまった。
サイラスの記憶喪失を解消するため、薬師兼魔女であるレベッカは恋人であることを隠しながら、事件調査を協力することになった。そうして記憶が戻らないまま二人の距離は再び近づいていく。だが、そんなおりにサイラスの偽の恋人を名乗りでた令嬢たちが、次々と襲われる事件も起き始めて……!?
※他のサイトにも掲載しています。
毎日更新です。
拾った年上侯爵が甘え上手すぎて、よしよししてたら婚約することになりました
星乃和花
恋愛
⭐︎火木土21:00更新ー本編8話・後日談8話⭐︎
王都の市場で花屋をしているリナは、ある朝――
路地裏で倒れている“美形の年上男性”を拾ってしまう。
熱で弱っているだけ……のはずが、彼はなぜか距離が近い。
「行かないで」「撫でて」「君がいると回復する」
甘えが上手すぎるうえに、褒め方までずるい。
よしよし看病してあげていたら、いつの間にか毎日市場に現れるようになり、
気づけば花屋は貴族の面会所(?)になっていて――
しかも彼の正体は、王都を支える侯爵家の当主だった!?
「君は国のために必要だ(※僕が倒れるから)」
年上当主の“甘え策略”に、花屋の心臓は今日ももたない。
ほのぼの王都日常コメディ×甘やかし捕獲ラブ、開幕です。
あなたの片想いを聞いてしまった夜
柴田はつみ
恋愛
「『好きな人がいる』——その一言で、私の世界は音を失った。」
公爵令嬢リリアーヌの初恋は、隣家の若き公爵アレクシスだった。
政務や領地行事で顔を合わせるたび、言葉少なな彼の沈黙さえ、彼女には優しさに聞こえた。——毎日会える。それだけで十分幸せだと信じていた。
しかしある日、回廊の陰で聞いてしまう。
「好きな人がいる。……片想いなんだ」
名前は出ない。だから、リリアーヌの胸は残酷に結論を作る。自分ではないのだ、と。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる