漆黒の魔術師と金の聖女ー時空転移は永遠の出会いー

雛瀬智美

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第二章

番外「サイン」

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第3~5話までの二人。  甘くてほろ苦いテイストです。

******************************



 髪を乱暴に撫でられて、はっと目を覚ました。

 闇の中、手を伸ばすと、広い背中に触れた。

(……クライヴ)

 心の中で名前を呼んで、背中に指を絡める。

 汗でするりと滑り、シーツをつかむ。



 言葉もなく、熱のこもった腕に抱かれる中、

 瞳の奥に滲む涙を振り切っていた。

『yes,my master』

 何度、心で呟いたかわからない。

(捧げたのは、きっと……すべてだわ)

 彼がどんな思いでいるかはしらない。

 私は、単純に契約者としての義務を果たしているのだとしても、

 それでも構わなかった。

 彼の下に召喚されたあの日絡め取られたものは、二度と返らない。

 彼しかいない世界で、支配されていることが、淡い喜びをもたらしていた。

 そして新たな思いが生まれた。



 言葉もなく見つめられると身震いがした。

 綺麗で、恐ろしい。



 吐息が、弾ける。

  軋む中、彼を受け止める。

  躊躇いがちに伸びた腕が、髪に触れようとして離れた。

 もどかしくてそっと指を絡めた。

 むき出しの背中を合わせる。

 手の冷たさとは反対に、とても熱く燃え盛っているようだ。

 わななく体をだまらせたくて、近づいたはずが、逆に

 自分を追い込んでしまっては、救いようがない。



(もっと貴方を知りたい)





「……俺が欲しいのか? 」

 口元をつり上げた彼の目は笑ってはいなかったけれど、

 心のままに、頷いていた。

 顎を掴まれ、間近で見つめられる。

 覗きこんでくる深遠の眼差しに鼓動がはねた。





 息が乱れるくらいの口づけを残して、彼は寝台を離れた。

 温もりが残る唇を指で辿り確かめる。



 感情を表に出さない彼の精一杯の想いを感じて、

 声もなく泣いた。





 シーツごとかき抱いた自分の体は、クライヴへの想いが、宿った体へと変化していた。



 グラスを傾け、口元を拭う彼がこちらを見つめている。

 滴したたる滴を無造作に拭う艶めかしい仕草。



「来いよ」



 くいと、指先が招く。

 シーツを纏ったまま動こうとして苦戦していると、

 強引に引き寄せられた。



 横抱きにされ、ぶらりと腕を投げだす。

 髪をひと房掴まれて、傲慢な声で命じる。

「お前を俺に渡せ」



 耳元に言葉を吹きこまれたのが合図だった。










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