漆黒の魔術師と金の聖女ー時空転移は永遠の出会いー

雛瀬智美

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第二章

番外SS「額への祝福のキス」(☆)

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子供が出来てからの話なので、命の花以降です。

温いR18となっております(笑)
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子供ができたことがわかってから、クライヴは

ルシアに対し過保護すぎるくらい、過保護になっていた。

心配で仕方がないので、

常に使い魔であるホークスを

ルシアの側に置いている。

ただし、それはクライヴが不在の折に限る。

彼がルシアの側にいるときは極力邪魔者は排除し

愛しい新妻を守るのである。



クライヴの変化をルシアは最初は

戸惑ったが、案外すぐに慣れてしまった。

魔法で作り出された庭園で、ルシアは、うとうとまどろんでいた。

膝には編みかけの靴下。

子供が生まれてくるその日を楽しみに日々過ごしていた。

クライヴは身重のルシアの代わりに

食材の買出しに出かけている。

一緒に行きたかったが、待つようにきつく釘を刺された。

彼には珍しく冷静さを欠いた態度に違和感を覚えたが、

気にするほどでもないかと大らかに微笑んだ。

もう、あと2ヵ月ほどで待望のわが子が生まれる。

診察を受けた診療所で出産する予定で、

出産の少し前に入院しなければならない。



もちろん、クライヴは付き添う気満々である。



「……はっ! 」

 急に違和感を感じたルシアは顔をあげた。

なぜか動けない。

どうやら寝てしまっていたことに

ようやく気づく。

肩にはたくましい腕が巻きついており、

愛しい人の顔がすぐ側にあった。

きつく抱かれて、きゅんと胸が鳴った。

「もう、ただいまって言ってください」

「ただいま、ルシア」

 くすっと笑う。クライヴの表情は出逢った当初と比べ

 随分と柔らかくなった。

 大きな声を上げて笑うことは珍しいが、

  厳しい表情ばかりでもない。

 きっと、優しくなったのだ。

 大きな手のひらに手を添える。

  斜めに首を傾けて見上げると藍色の瞳とぶつかった。

 肩にわずかにかかる銀髪も眩しくて、

  月の化身みたいだ。

「綺麗になったな。まるで太陽の女神だ」

 自分が夫を内心で褒め称え、

   彼もそんな風に言う。

 微笑み合って、どちらともなく唇を近づけた。

 触れては離れることを繰り返し、最後に熱が絡んでくる。

  吐息が混ざり、滴が顎を伝う。

  鼻から抜ける息を漏らし、たまらず力が抜ける。

 ルシアは、クライヴの背中のマントを掴んだ。

 

  ルシアが懐妊しているのにも、相変わらず

  甘い雰囲気をかもし出す二人に呆れたのか、 

  ご飯を啄ばんでいたホークスが飛び去っても無理はなかった。



 子供を授かる以前よりも

 二人はむつまじくなったのかもしれない。

 衣服に入りこむクライヴの手が肌を愛でて、

 敏感な場所にたどり着く。 

 さすがに恥らったルシアは押し止めようと

 するが、耳元でささやかれて腰から力が抜けた。

「お前が欲しい」

 もう、とっくにあげているわ。

 心の中で呟くけれど、ルシアのことを愛しすぎ

  ている彼は思うがままに彼女を食べたいようだ。

 首に腕を絡めたら、瞬間転移する。



 暗い部屋の中、黒いシーツの上で

   絡み合う2人は夢中で、酔いしれていた。

「クライヴ……っ」

 「ルシア」 

  膝を割り、腰を絡ませる。

  突き上げれば、甘い悲鳴があがる。

 ナカで、留まりクライヴは、ルシアを抱きしめた。

 奥にとどまった彼を感じて、吐息をつく。

 ルシアは、ゆっくりと愛する夫の背中に腕を絡めた。

 涙がこぼれる。

  身ごもっているルシアの身体を気遣いながら、

  クライヴは、慎重に腰を揺らす。 

  じんわりと、熱が、胎内に伝わってきて、心ごと震えた。

  もっと、してほしいなんて、口が裂けても言えない。

  愛情たっぷりに抱いてくれるクライヴに、みだらな欲望は

  伝えられなかった。

  この優しすぎる交歓は、溢れ出んばかりの

  愛情が伝わってくる。

  泣きながら、夫の背に指を立てる。寂しくはなかった。

   クライヴは、ただ欲のために、

 身重のルシアを抱いているわけではない。

  もう、元の世界に帰れない孤独を埋め合わせてくれている。

  さすがに、繋がる回数は控え、時には彼を

  口と手を使い愛撫することもあった。

 その時も、決して、ルシアの肌や手を汚すことはない。

  ぎりぎりのところで、自身を制御コントロールする。

  自制心は強いひとなのだ。

  口の中に、吐き出されても、ルシアは構わなかったし、

  彼のすべてを受け入れるつもりなのに、

  決してそうしないクライヴ。

  今まで大切にしたいと感じた女は、お前だけだよと、

  頭を撫でて、ルシアに微笑むのだ。

「クライヴ……私は幸せよ……っ」 



  クライヴは、ルシアの頬に口づけたあと、

  自らを抜き放った。白い迸りが、シーツに散る。

  荒い息をつむぎながら、倒れ込んできた

  クライヴをルシアは受け止めて包み込んだ。

  

 抱き合って眠り、目覚めたあとクライヴは、

  ルシアの髪を撫でながら、ひどく甘い声でつぶやいた。

  瞳には愛おしいものを見る輝き。

「ありがとう……俺の子を身ごもってくれて」

「な、何か恥ずかしい……」

「間違いがあるのか? 」

「いえ。その通りです……」

 悪戯に笑いながら、額を熱い唇が辿る。

 何度も啄ついばまれてくすぐったくなった。



 祝福が甘酸っぱくて、

   ルシアは、小さく笑った。

 抱きしめて眠るクライヴの額にも口づけを返す。

(ありがとうの気持ちを込めて。

 私にこの子を授けてくれたのはあなただもの)
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