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第三章 アイテム争奪戦

修羅場①

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 離島から帰宅した翌日の日曜日も我が家に小夜が遊びにきている。それもまだ朝の七時。魔王とレイラはまだ布団の中だ。

「ねぇねぇ、今日も行くんでしょ?」

「まぁ、シャーロットがアイテムの存在を知る前にちゃちゃっと回収してしまいたいけど……小夜ちゃん元気だね」

 小夜は海に潜ったりして私以上に体力を消耗しているはずなのに元気はつらつとしている。私は歩きすぎなのか足が筋肉痛だ。そしてできることなら昼まで寝たい。

「そういえば、小夜ちゃんのそれ格好良いよね。早く試したいね」

「試したいけど矢がないんだよねー」

 小夜は無事にアイテムを手に入れていた。潜った先は危険は無かったようで、魔王との快適なダイビングデートを楽しんだ模様。

 森の中もコリンによって危険を創り出されていただけだ。故にコリンがいなければ至極平和な島だと言える。

 ちなみに、私がお菓子か何かで見た名前だと思っていたコリンだが、攻略対象の一人だったらしい。アイテムを取って戻ってきた小夜が教えてくれた。

『え、それってあのコリンじゃない!? ショタキャラの。めっちゃ可愛いんだよ。弟にしたいナンバーワンだよ。悠馬よりコリンが弟になってくんないかなぁ』

『悠馬も可愛いよ』

『美羽も見たんでしょ? しかも実物。本音は? どっちが可愛い?』

『……コリンかな』

『ほらね』

 小夜に謎の問い詰めにあったが、それはさて置き、私はショタキャラのコリンには興味がなかった。なので、無印でも一度もプレイしていなかった。攻略対象に会う機会があるならば、全員分やっておけばよかったと少し後悔した。

 攻略するつもりはゆめゆめ無いが、あくまで参考までにだ。万が一にも実物を攻略するなら最推しのアレックスが良い。王太子の側近で、黒髪黒眼のメガネをかけたシュッとした男の子。いわゆるインテリメガネ系男子。

 私のタイプはリクを始め、このインテリメガネ系男子なのだ。田中は……成り上がりなので除外だ。初めから黒髪メガネなら惚れていたかもしれない。

 話が逸れてしまったが、小夜のアイテムは弓だった。飛び道具で格好良いのだが、矢がないのだ。

「本来はさぁ、これ攻略対象の物じゃん? 矢は魔法で作り出すんだよ。どうしたもんかな」

 小夜の嘆きに兄が口を開いた。

「普通に日本にある矢を使ったらどうなるんだろうね」

「うーん。魔法の威力を上げるアイテムなので、アイテムとしての効果は見込めませんけど、ただの弓矢としては使えそうですよね。美羽のお兄さんのは良いなぁ。魔法関係なしで威力あるから」

「どうしてお兄ちゃんのは魔法関係ないんだろうね」

「美羽のお兄さんの剣は脳筋キャラのブラッドが使うものなんだよ。脳筋なだけあって、魔法よりただただ威力重視なんじゃない?」

「はは、なんかこのアイテム持つと僕も脳筋って言われてるみたいで嫌だな」

 私たちが話をしていると、レイラが起きてきた。

「あら、小夜様おはようございます」

「おはよー。レイラの髪は寝癖つかないんだね。サラッサラだもんね。私なんて朝ボーンだよ」

「確かに、レイラの寝癖みたことないかも」

「俺は見たことあるぞ」

「うわっ!」

 魔王が突然私と小夜の後ろに現れた。

「もう、ちゃんと扉から出て来てよ。一枚扉開けるだけでしょ」

「キャ。寝起きの魔王様も素敵!」

 小夜は魔王の寝起き写真をすかさずカメラに収めた。そんな様子を微笑ましそうに見ている兄が言った。

「みんな揃ったことだし、朝ごはん食べて作戦会議かな?」

◇◇◇◇

「じゃあ、今日はダンジョンに行ってお金を稼ぎつつアイテム探して、小夜ちゃんの矢を買いに行くってことで決まりだね」

 乙女ゲームの世界の武器屋には普通の矢と違って魔法が付与できる矢が売られているらしい。故に魔王が魔法を付与して小夜が使うという結論に至った。

 しかし、武器を買うにもお金がかかる。そこでダンジョンだ。RPGでよくある魔物を倒せば報酬が貰える。それはこの世界のダンジョンでも共通しているらしい。

 そして、残る四つのアイテムだが……二つがダンジョン。残りの二つは地下の迷宮と、まさかの王城にあるらしい。

 今はとにかく量だ。敵に少しでもアイテムがいかないように。それに、二つ手に入るならその方がお得だ。なので行く先はダンジョンに決まった。

「よし、行こ……」

 ピロンッ。

 意気込んでいると、スマートフォンからメッセージの通知音が鳴った。開いてみると……。

「げ、田中だ」

「田中、なんて?」

「えっとね……今から会えないか、だって。会えません、っと」

 送信ボタンを押した。

「良いの?」

 小夜が困った顔で聞いてきた。

「うん。実際忙しいし。今はそれどころじゃないよ」

 ピンポーン、ピンポンピンポンピンポン。

「誰だろ。インターフォンが激しいんだけど。朝からうるさかったかな。苦情かも……」

「美羽、僕が出るよ」

「ありがとう」

 来客を兄に任せていると、再びスマートフォンから通知音が鳴った。

「今度は拓海だ」

「モテモテですわね」

「拓海はなんだって?」

「えっとね……沢山りんごをもらったからお裾分けに今から来るって」

 ということは、兄が対応しているのは拓海かもしれない。

「私、玄関見てくるね」

 私は玄関に向かった。そして、兄の向こう側にいる人物に驚いた。

「田中?」

 でも先程会うのを断ったばかりだ。それに何故田中はうちの場所を知っている。謎だ。怖すぎる。

「美羽! この間はごめん。少しで良いから話がしたい」

「えっと……」

 私が戸惑っていると、兄も困った顔で私を見ている。そんな時、もう一人の来客があった。

「拓海……タイミング最悪だよ」


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