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調教8 淫魔による最後の調教
4 双子との情事
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カミールは、森が生い茂る中真新しい木造のコテージに到着し、一希を抱えたまま地上へ降りた。
平屋建てで木材に囲まれたガラス張りの窓からはシックな調度品が設られているのが見え、ベランダには丸いテーブルと椅子がある。まるで北欧住宅のようだ。日本の住宅と違って周囲が木々で覆われて、自然の静けさを感じられて穏やかな雰囲気なのが分かる。
一希を降ろしたカミールは、そのままコテージの中に入るよう促した。
「入りなさい」
促された一希に緊張が走る。
取引とはいえ、同意してしまった以上これから彼に弄ばれる事を想像すると、身体が震えてしまう。ヴィンセントの指示を受けて自分を守ってくれたゼルギウスに申し訳ない気持ちになってしまった。
一希は、カミールについていく形でコテージの入り口へ進んでいく。ガウン姿の一希は靴を履いておらず、裸足で草木や出っ張った岩肌を踏んで歩くから歩きづらい。
一希の歩行の遅さに呆れたカミールは、無遠慮に一希を抱き上げた。
「うわっ!」
突然抱き上げられて一希は驚いた。しかしカミールは気にする事なく、真っ直ぐコテージに進む。
カミールは扉を開け部屋へ入ると一希を降ろした。
部屋の中ですぐに目に飛び込んだのは一人がけ用のソファと大人数で座れるソファ、シックなローテーブルが設られている。床には暖かいワイン色の絨毯が敷かれ、奥には石垣で囲まれた暖炉があり、火が焼べられている。
あの中世ヨーロッパ調の石造りで造られている淫魔城と違い、このコテージは完全なプライベート空間だ。
「ここは?」
一希はカミールに尋ねた。
「ここはね、人間界で最北に位置する森だ。言ってみれば私達魔族の避難場所だよ。この森は私達魔族の所有地だから、人間が無闇に入って来る事もないし、リーアムとの戦いでも大きな被害を出す事もない。私達魔族同士の取り決めでね、人間の社会には干渉しない事になっているんだ」
そういえばゼルギウスも同じ事を言っていたのを一希は思い出した。
昔は人間も魔族との交流があったものの、宗教の台頭で魔族は人間界からほとんどが撤退し、今では人間に混じって暮らしている者しかいないと。
だが一希は、ふと疑問に思った。
「人間社会には干渉しない?でもリーアムはどうして」
「彼が異端なんだ。魔族の取り決めを知っている者は、わざわざ人間に干渉する事はしない。私達が人間社会に干渉するという事は人間の歴史に影響を与えるからさ。事実彼は戦争を長引かせたり、疫病を広めたりと裏で人間の歴史を操っていた」
もともとペストは、地域に限定された風土病だった。陸続きの大陸では突発的に流行はあったとしても、ヨーロッパ地域の人口の三分の一が亡くなる事はなかった。その結果、現代でもペストの恐ろしさが伝わっている。
間接的には戦争がパンデミックの引き金を引いたとはいえ、その裏で人間達を操っていたのはリーアム本人だった。
カミールはさらに続ける。
「リーアムは長い間魔力を高めるために人間を食い続けてきた。だから私達魔族は、リーアム打倒後、他の魔族達の蛮行を監視し、取り締まる事にした。だが人間社会で暮らしていくと、魔族としての本能にも抗えない時もある。ここは、その保護も兼ねているんだ」
部屋の奥へ、カミールは進んでいく。
一希も彼について行くと、木材の扉がある一つの部屋にたどり着いた。
「ここに君を待っている男がいる。入りなさい」
カミールは一希に伝えると、ゆっくりと扉を開けた。
部屋の中には、コテージの壁に背中を保たれながら、片手で分厚い本を持っているヴィンセントがカミールと一希を見つめていた。
※※※
「ヴィンセント?」
部屋に佇む彼を一希は呆然と見つめていた。
「連れて来たよ。そちらは、例の物は手に入れたかい?」
カミールに促されたヴィンセントは、ベッド脇にあるサイドテーブルに置かれている、一つの赤い石を指差した。
「日記に従って探したが、なかなか見つからなくてね。探すのに苦労したが、ようやく手に入った」
「日記?」
一希は、ヴィンセントに尋ねた。
ヴィンセントが持っているのは、分厚い黒の表紙のアンティークノートだ。聖書を連想するような重厚感があり、表紙からは細い紐が伸びている。だいぶ年代物のようだが、表紙が綺麗で保存状態が良いのが分かる。
ヴィンセントは手に持った日記を一希に見せた。
「これはユーリィが書き記した日記だ。ここに、彼が調べたリーアムの弱点が書いてある」
「っ!?」
一希はヴィンセントの言葉に目を見開いた。ユーリィの日記の存在はボビーから聞いていた。
「リーアムは私達と別れる時、この日記を託してくれた。私達兄弟はこれに従い今までリーアムを撃つべく調査していた」
「待ってくれ。その日記って」
一希は、動画連絡でボビーが言っていた事を思い出した。
彼は、リーアムの日記はかなり劣化が進んでおり解読に苦労するほどだと言っていた。しかしヴィンセントが持っている物はまだ新しい。どうして彼が持っているのか。
「人間界で調査してくれた人は、ユーリィの日記は劣化が酷くて、解読が難しいって聞いた。でも、その日記はまだ綺麗だ。どうしてお前が持ってたんだ?」
「人間界にあるものは複製品だよ。ユーリィはエクソシストとして活動していた頃から命を狙われていたんだ。だから、私とカミールに日記を託す時、人間界に一つだけ複製品を作っていたんだ。用心深かったからね、彼は」
ヴィンセントにそう言われて、一希はそういえばとそうだと納得した。
ユーリィとヴィンセント、カミールは幼い頃から知り合いだった。確かに、日記を託す理由は分かる気がする。
ヴィンセントによると、ユーリィはエクソシストとして活動していた頃から、誰かに命を狙われる事があったという。リーアム絡みのエクソシスト組織内でこの日記の存在を誰かに知らせるのは彼を倒す手掛かりを消されてしまう可能性があった。
そのため彼は、日記の存在を誰にも明かさず、婚約者だったソフィアの息子であるヴィンセントとカミールのみに日記の存在を明かしていたという。
ヴィンセントは、日記のページを開いて一希に見せた。一希には日記に記載されている文字が分からないが、文章に途切れが無く紙そのものも保存状態が良かった。しかし、記載されている文字が分からず一希は苦い顔をする。
「何て書いてあるんだ?これ」
「ラテン語文字だよ。英語の原型文字だ。ユーリィは西と北の遠征が多くてね、私が知っているだけでも彼は五カ国語を流暢に話していた」
「ご、五ヵ国・・・!?」
何そのスーパーバイリンガル。
驚いた一希は呆然として口をあんぐりと開けた。ヴィンセントは何も言わずゆっくりと口を戻してあげるとさらに続けた。
「彼は、母亡き後世界中を旅してリーアムの事を調査していたんだ」
当初の目的は、リーアムに殺されその遺体を連れ去られた母ソフィアの行方を探す事だった。しかしユーリィは発見に至らず、同時に調査していたリーアムに関してのみ焦点を絞ったという。
「父は、もう助からないとユーリィも分かっていた。だがら私達兄弟に、この日記を託してくれた」
全て終えたユーリィは別れ際、この日記をヴィンセントとカミールに託し人間界へ帰還した。それ以来、三人は再会する事なくユーリィは戦火の激しい日本で生涯を終えたという。
「そうだったのか」
「だが今はあれも手に入り、君も私の保護下に置いた。これ以上奴を人間界に野放しにする事はできない」
「じゃあ、これでリーアムを撃つのか。ヴィンセント」
「その前に」
一希がヴィンセントに言いかけた時、カミールが背後から一希を抱きしめよう拘束する。
「先に、君の最終調教だ。一希。ヴィンセントを受け入れたんだろ?身体をこちらに見せてくれないか?」
カミールはそう言うと一希のガウンをサラッと脱がせ、ガウンは床にハラリと落ちた。突然裸にされた一希は驚き、豊満な胸と下半身を反射的に隠した。
「なっ、何だよ!」
「これは最終調教だよ。最終調教は、淫魔王と同等の魔力を持つ者とセックスする事で魔力を完全に番の身体に定着させる事。一希、今回は私とセックスだ。ゼルギウスを消滅させない事と引き換えに君も承諾しただろ?ヴィンセントに会ってすっかり忘れてたかい?」
確かに、それを取引として一希は承諾した。一希にとっては同じ容貌でもヴィンセント以上に傲慢さが鼻につくカミールに抱かれる事だけは嫌悪感があった。
カミールは、裸になった一希を抱き上げると広いキングサイズのベッドへ横たえた。不安げな表情を浮かべてこちらを見つめる一希にヴィンセントはベッドに近づくと安心するよう頭を撫でた。
「心配するな。私も一緒にいる。君の身体に魔力が定着したのか、見届ける必要があるんだ」
「でも城では反対したじゃないか」
それを言われるとヴィンセントは苦笑する。隣のカミールはスーツを脱ぎながら、やっぱりと言わんばかりに嘆息した。
「だから城で済ませば良かったんだ。君が嫌だと駄々こねるから、一希だって勘違いするだろ?ヴィンセント、君から説明してくれるね?」
「ごめんね、一希。カミールの言う通り、淫魔王の番は魔力を定着させるため王と同等の魔力を持つ淫魔と一度だけセックスする必要があるんだ。さすがにカミールはと思って最初は反対したが、他の王達からはやはりやるべきだと説教されてね、大丈夫。私も近くにいる」
「全く淫魔王が他部族の王達に説教されるとは情け無い。一希、やはり私と番になろう。これとは違って私の方が上手い」
しかしヴィンセントはカミールの発言を無視して不安げな表情を浮かべる一希の頭を撫でた。
「心配するな、たった一度だけだ。辛いだろうから、後で記憶を消してあげる」
「嫌な言い方をするね、ヴィンセント」
脱ぎ終えたカミールは、ガウンを脱がされベッドに横たわる裸の一希のそばへ座った。長身で体格の良いカミールが横になっても、ベッドの広さはもう一人寝ても大丈夫な広さだ。
カミールの香りと魅惑的な肢体に密着されては、一希の身体が芯から燻られる感覚に一希は戦慄を覚えた。
やばい、ヴィンセントと同じ香りがする。
兄と似た精悍で男の色気を感じさせる魅惑的な肉体にかかる銀色の長い髪が、さらにカミールを妖艶に引き立てヴィンセントとは違う意味でドキドキしてしまう。髪にかかる隙間から見えるうなじがとても妖艶だ。ずっと見入ってしまいたいくらい。
一希の表情を見て自分に欲情している事を察したカミールは、フッと笑うと一希の耳元で囁いた。
「どう?したくなった?」
一希の耳元で囁くと、外耳孔から耳垂にかけて舌を使ってゆっくり舐めながら粘液を絡ませていく。
「んぅ、うぅ・・・」
カミールに耳を舐められ、一希は身体に痺れるような電流を感じ取り、軽く仰け反った。
耳がくすぐったい。背中がゾクゾクする。
ヴィンセントと容貌が似ているせいで、彼としている錯覚に陥ってしまう。
耳の快感とカミールの低くて甘ったるい声が鼓膜を刺激し、直接脳へ快楽を伝達していく。一希が耳で悶えている間、カミールは自身の長い指を一希の豊満な胸へ移動すると、張りのあるそれをゆっくりと揉みしだく。
「大きいおっぱいだね。ガウンの隙間からもはみ出しそうになっていたよ」
「み、見るな・・・!うっ」
一希の耳元で囁く声はそのままに、カミールは指をゆっくりと、そそり立つ一希の乳首へ移動する。指の腹で乳首を摘まれると、ビクッと一希の腰に電流が走った。
「あぁああ、だっ、ダメっ・・・!」
驚いた一希は、思わず喘ぎ声を出し、両手で口を塞いだ。
ヴィンセントの時より、カミールの方が快感を感じてしまう。こんなに気持ちいい事に驚いた一希は、背後のカミールへ振り返った。
一希の喘ぎ声を聞いたカミールは、心底嬉しそうな表情をしている。
「良い声だ。久しぶりに私も滾ってきたよ。私を本気にさせたんだ。ヴィンセント以上の快感を教えてあげる」
カミールは一希の顎を掴むと、自分と目を合わせた。彼のサファイアブルーの瞳は朱色に変わり、その瞳に一希が写る。カミールの強引な動きに、一希は戸惑うしかなかった。
「なっ、何を」
「私をしっかり見ていなさい」
「待て、カミール」
二人の情事を見ていたヴィンセントがカミールの行動の理由を察し、彼に制止をかけた。しかし、一希はカミールの朱色の瞳に見入ったまま動かなくなった。
動かなくなった一希の瞳を見て、彼が暗示の術をかけたのだと察したのだ。
「それは使うな。一希に負担がかかるだけだ」
制止をかけられたカミールは、不貞腐れたようにヴィンセントに言った。
「いいじゃないか。こちらの方が楽しいんだ。君も入って三人でしてみるかい?もちろん、一希は今回私が頂くが」
ヴィンセントは朱色の瞳に見入ったまま動かない一希を見た。自分と同じサファイアブルーの瞳は完全に濁っており、表情もなくなってしまった。これで弟は行為に及ぼうとするから、腹立たしい事この上ない。魔力の定着のためと他の王達に説き伏せられても、このようなやり方は蛮行そのものだ。今すぐにでもその朱色の瞳に拳をぶつけてやりたいくらいだ。
カミールは暗示と幻覚を得意とする上級淫魔だ。一希にかけた術は彼の意のままに操る暗示術。
彼は食事時に好んでこの術を使う。
自分達淫魔が人間から精気を得るには彼等の性衝動が必要だが、彼は人間の意思を支配して精気を得ていた。
カミールは自分のやり方に反対しながらも押し黙るヴィンセントを一瞥すると、動かなくなった一希へ目を向けた。
「さぁ、一希。今から本番だ。お互い楽しもうね」
「はい。カミール様」
脱力した一希がカミールに倒れ込む。カミールは一希の色素の薄い黒髪を弄りながら、胸の谷間を指一つでスーッと滑らせる。
これに一希は敏感に腰をくねらせて快感を示しよう喘いだ。
「あぁ・・・」
「気持ちいい?一希」
「気持ち、いいです・・・カミール様」
「それは良かった。ヴィンセントからどんな調教を受けたの?一希はどこが気持ちよかった?」
カミールに聞かれた一希は、恥ずかしそうに腰をくねらせた。
その様子を見てヴィンセントはさらに腹立たしくなる。
人間の意思を支配してやりたいようにやっているカミールだが、恥じらいを声で聞きたいと支配する人間の感情はそのまま残している。
こんな奴に一希を抱かせないといけないのかと、彼は心の中で憤慨した。
カミールに聞かれると一希は恥ずかしそうに答えた。
「ヴィ・・・ヴィンセント様からは、セックスが気持ち良くなる方法を、教えて頂きました・・・。一希の気持ちいい所は、おっぱいを、揉まれながら、乳首をいじってもらうと、とても気持ち良いです」
一希の言葉にカミールはおや?と首を傾げた。
兄の事だ。もっとハードなセックスでも教わっていたかと思っていたが、以外に地道な基本のきだけを教わっていただけとはある意味面食らう。
しかし基本を徹底して仕込まれたのだろう。少し愛撫しただけで、一希が術中に易々とかかっている。
良い塩梅に仕込まれた一希に、カミールは内心でヴィンセントをせせ笑った。
「へぇ、ヴィンセントは初歩の初歩しか教えていないのか。では私が応用編といこうか。一希、おっぱいを私に向けなさい」
「は、はい・・・カミール様」
カミールの指示通り、一希は豊満な胸を恥ずかしそうにカミールに向けた。先程の愛撫で勃起した乳首は、ピクピクとけいれんし次の刺激を待ち侘びているかのようだ。
恥じらいながら反応している身体を見せられ、彼はクスクスと上機嫌に笑った。
「フフフ。刺激したらこんなに私を欲して。一希は可愛い欲張りさんだね。私にはどうして欲しい?」
カミールが人差し指で勃起した一希の乳首をツンと刺激する。これに一希は腰を震わせた。
「ああぁ・・・カミール様にも・・・一希の乳首・・・いっぱい弄って欲しいです」
「乳首だけでいいのかい?おや?」
カミールはベッドのシーツが湿っていることに気づき、顔を下に向けた。
白いベッドシーツに、透明のシミができている。一希にも視線を映すと、恥じらいながらも暗示で支配し閉じる事もできない下肢からたらたらと透明の粘液が流れていたのだ。
それを見たカミールは、一希に羞恥を煽るよう具体的にに言った。
「シーツが湿っているじゃないか。一希、私に乳首を弄られて、君の可愛いアソコからお漏らししただろ?」
具体的に言われ一希は泣きそうになり、目頭から涙が溜まっていく。下肢は、羞恥を煽られても閉じる事が出来ず、カミールに指摘されるとさらに量を増やしていく。
「あぁ・・・ごめんなさいっ、カミール様・・・とても、気持ち良くて」
「全く躾がなっていないね。そんな子はお仕置きだ。脚を開いて君がお漏らししたところを私に見せなさい」
「は、はい・・・」
一希は言われた通り脚を開いてカミールに見せるよう腰を上げた。胸の刺激で、一希のペニスは半勃ち状態になってピクピクと上下に動いている。その下には小さな割れ目ができていて、そこはトロトロと透明な粘液が溢れ出ている。
カミールはそれを見つめるが、それ以上の物を一希の腹部に刻み込まれているのを発見し、すごい物を発見したと喜びながら腹部に手を這わせた。
「フフフ、ヴィンセント。やってくれるじゃないか。もう淫紋が出ているなんて。これは私の術にかかり易い筈だ。妬けるね」
カミールはヴィンセントを見据える。
朱色に染まった瞳には、彼への対抗心を感じさせた。
「ヴィンセント、君も脱いでこちらに来なよ。三人で楽しもうじゃないか」
平屋建てで木材に囲まれたガラス張りの窓からはシックな調度品が設られているのが見え、ベランダには丸いテーブルと椅子がある。まるで北欧住宅のようだ。日本の住宅と違って周囲が木々で覆われて、自然の静けさを感じられて穏やかな雰囲気なのが分かる。
一希を降ろしたカミールは、そのままコテージの中に入るよう促した。
「入りなさい」
促された一希に緊張が走る。
取引とはいえ、同意してしまった以上これから彼に弄ばれる事を想像すると、身体が震えてしまう。ヴィンセントの指示を受けて自分を守ってくれたゼルギウスに申し訳ない気持ちになってしまった。
一希は、カミールについていく形でコテージの入り口へ進んでいく。ガウン姿の一希は靴を履いておらず、裸足で草木や出っ張った岩肌を踏んで歩くから歩きづらい。
一希の歩行の遅さに呆れたカミールは、無遠慮に一希を抱き上げた。
「うわっ!」
突然抱き上げられて一希は驚いた。しかしカミールは気にする事なく、真っ直ぐコテージに進む。
カミールは扉を開け部屋へ入ると一希を降ろした。
部屋の中ですぐに目に飛び込んだのは一人がけ用のソファと大人数で座れるソファ、シックなローテーブルが設られている。床には暖かいワイン色の絨毯が敷かれ、奥には石垣で囲まれた暖炉があり、火が焼べられている。
あの中世ヨーロッパ調の石造りで造られている淫魔城と違い、このコテージは完全なプライベート空間だ。
「ここは?」
一希はカミールに尋ねた。
「ここはね、人間界で最北に位置する森だ。言ってみれば私達魔族の避難場所だよ。この森は私達魔族の所有地だから、人間が無闇に入って来る事もないし、リーアムとの戦いでも大きな被害を出す事もない。私達魔族同士の取り決めでね、人間の社会には干渉しない事になっているんだ」
そういえばゼルギウスも同じ事を言っていたのを一希は思い出した。
昔は人間も魔族との交流があったものの、宗教の台頭で魔族は人間界からほとんどが撤退し、今では人間に混じって暮らしている者しかいないと。
だが一希は、ふと疑問に思った。
「人間社会には干渉しない?でもリーアムはどうして」
「彼が異端なんだ。魔族の取り決めを知っている者は、わざわざ人間に干渉する事はしない。私達が人間社会に干渉するという事は人間の歴史に影響を与えるからさ。事実彼は戦争を長引かせたり、疫病を広めたりと裏で人間の歴史を操っていた」
もともとペストは、地域に限定された風土病だった。陸続きの大陸では突発的に流行はあったとしても、ヨーロッパ地域の人口の三分の一が亡くなる事はなかった。その結果、現代でもペストの恐ろしさが伝わっている。
間接的には戦争がパンデミックの引き金を引いたとはいえ、その裏で人間達を操っていたのはリーアム本人だった。
カミールはさらに続ける。
「リーアムは長い間魔力を高めるために人間を食い続けてきた。だから私達魔族は、リーアム打倒後、他の魔族達の蛮行を監視し、取り締まる事にした。だが人間社会で暮らしていくと、魔族としての本能にも抗えない時もある。ここは、その保護も兼ねているんだ」
部屋の奥へ、カミールは進んでいく。
一希も彼について行くと、木材の扉がある一つの部屋にたどり着いた。
「ここに君を待っている男がいる。入りなさい」
カミールは一希に伝えると、ゆっくりと扉を開けた。
部屋の中には、コテージの壁に背中を保たれながら、片手で分厚い本を持っているヴィンセントがカミールと一希を見つめていた。
※※※
「ヴィンセント?」
部屋に佇む彼を一希は呆然と見つめていた。
「連れて来たよ。そちらは、例の物は手に入れたかい?」
カミールに促されたヴィンセントは、ベッド脇にあるサイドテーブルに置かれている、一つの赤い石を指差した。
「日記に従って探したが、なかなか見つからなくてね。探すのに苦労したが、ようやく手に入った」
「日記?」
一希は、ヴィンセントに尋ねた。
ヴィンセントが持っているのは、分厚い黒の表紙のアンティークノートだ。聖書を連想するような重厚感があり、表紙からは細い紐が伸びている。だいぶ年代物のようだが、表紙が綺麗で保存状態が良いのが分かる。
ヴィンセントは手に持った日記を一希に見せた。
「これはユーリィが書き記した日記だ。ここに、彼が調べたリーアムの弱点が書いてある」
「っ!?」
一希はヴィンセントの言葉に目を見開いた。ユーリィの日記の存在はボビーから聞いていた。
「リーアムは私達と別れる時、この日記を託してくれた。私達兄弟はこれに従い今までリーアムを撃つべく調査していた」
「待ってくれ。その日記って」
一希は、動画連絡でボビーが言っていた事を思い出した。
彼は、リーアムの日記はかなり劣化が進んでおり解読に苦労するほどだと言っていた。しかしヴィンセントが持っている物はまだ新しい。どうして彼が持っているのか。
「人間界で調査してくれた人は、ユーリィの日記は劣化が酷くて、解読が難しいって聞いた。でも、その日記はまだ綺麗だ。どうしてお前が持ってたんだ?」
「人間界にあるものは複製品だよ。ユーリィはエクソシストとして活動していた頃から命を狙われていたんだ。だから、私とカミールに日記を託す時、人間界に一つだけ複製品を作っていたんだ。用心深かったからね、彼は」
ヴィンセントにそう言われて、一希はそういえばとそうだと納得した。
ユーリィとヴィンセント、カミールは幼い頃から知り合いだった。確かに、日記を託す理由は分かる気がする。
ヴィンセントによると、ユーリィはエクソシストとして活動していた頃から、誰かに命を狙われる事があったという。リーアム絡みのエクソシスト組織内でこの日記の存在を誰かに知らせるのは彼を倒す手掛かりを消されてしまう可能性があった。
そのため彼は、日記の存在を誰にも明かさず、婚約者だったソフィアの息子であるヴィンセントとカミールのみに日記の存在を明かしていたという。
ヴィンセントは、日記のページを開いて一希に見せた。一希には日記に記載されている文字が分からないが、文章に途切れが無く紙そのものも保存状態が良かった。しかし、記載されている文字が分からず一希は苦い顔をする。
「何て書いてあるんだ?これ」
「ラテン語文字だよ。英語の原型文字だ。ユーリィは西と北の遠征が多くてね、私が知っているだけでも彼は五カ国語を流暢に話していた」
「ご、五ヵ国・・・!?」
何そのスーパーバイリンガル。
驚いた一希は呆然として口をあんぐりと開けた。ヴィンセントは何も言わずゆっくりと口を戻してあげるとさらに続けた。
「彼は、母亡き後世界中を旅してリーアムの事を調査していたんだ」
当初の目的は、リーアムに殺されその遺体を連れ去られた母ソフィアの行方を探す事だった。しかしユーリィは発見に至らず、同時に調査していたリーアムに関してのみ焦点を絞ったという。
「父は、もう助からないとユーリィも分かっていた。だがら私達兄弟に、この日記を託してくれた」
全て終えたユーリィは別れ際、この日記をヴィンセントとカミールに託し人間界へ帰還した。それ以来、三人は再会する事なくユーリィは戦火の激しい日本で生涯を終えたという。
「そうだったのか」
「だが今はあれも手に入り、君も私の保護下に置いた。これ以上奴を人間界に野放しにする事はできない」
「じゃあ、これでリーアムを撃つのか。ヴィンセント」
「その前に」
一希がヴィンセントに言いかけた時、カミールが背後から一希を抱きしめよう拘束する。
「先に、君の最終調教だ。一希。ヴィンセントを受け入れたんだろ?身体をこちらに見せてくれないか?」
カミールはそう言うと一希のガウンをサラッと脱がせ、ガウンは床にハラリと落ちた。突然裸にされた一希は驚き、豊満な胸と下半身を反射的に隠した。
「なっ、何だよ!」
「これは最終調教だよ。最終調教は、淫魔王と同等の魔力を持つ者とセックスする事で魔力を完全に番の身体に定着させる事。一希、今回は私とセックスだ。ゼルギウスを消滅させない事と引き換えに君も承諾しただろ?ヴィンセントに会ってすっかり忘れてたかい?」
確かに、それを取引として一希は承諾した。一希にとっては同じ容貌でもヴィンセント以上に傲慢さが鼻につくカミールに抱かれる事だけは嫌悪感があった。
カミールは、裸になった一希を抱き上げると広いキングサイズのベッドへ横たえた。不安げな表情を浮かべてこちらを見つめる一希にヴィンセントはベッドに近づくと安心するよう頭を撫でた。
「心配するな。私も一緒にいる。君の身体に魔力が定着したのか、見届ける必要があるんだ」
「でも城では反対したじゃないか」
それを言われるとヴィンセントは苦笑する。隣のカミールはスーツを脱ぎながら、やっぱりと言わんばかりに嘆息した。
「だから城で済ませば良かったんだ。君が嫌だと駄々こねるから、一希だって勘違いするだろ?ヴィンセント、君から説明してくれるね?」
「ごめんね、一希。カミールの言う通り、淫魔王の番は魔力を定着させるため王と同等の魔力を持つ淫魔と一度だけセックスする必要があるんだ。さすがにカミールはと思って最初は反対したが、他の王達からはやはりやるべきだと説教されてね、大丈夫。私も近くにいる」
「全く淫魔王が他部族の王達に説教されるとは情け無い。一希、やはり私と番になろう。これとは違って私の方が上手い」
しかしヴィンセントはカミールの発言を無視して不安げな表情を浮かべる一希の頭を撫でた。
「心配するな、たった一度だけだ。辛いだろうから、後で記憶を消してあげる」
「嫌な言い方をするね、ヴィンセント」
脱ぎ終えたカミールは、ガウンを脱がされベッドに横たわる裸の一希のそばへ座った。長身で体格の良いカミールが横になっても、ベッドの広さはもう一人寝ても大丈夫な広さだ。
カミールの香りと魅惑的な肢体に密着されては、一希の身体が芯から燻られる感覚に一希は戦慄を覚えた。
やばい、ヴィンセントと同じ香りがする。
兄と似た精悍で男の色気を感じさせる魅惑的な肉体にかかる銀色の長い髪が、さらにカミールを妖艶に引き立てヴィンセントとは違う意味でドキドキしてしまう。髪にかかる隙間から見えるうなじがとても妖艶だ。ずっと見入ってしまいたいくらい。
一希の表情を見て自分に欲情している事を察したカミールは、フッと笑うと一希の耳元で囁いた。
「どう?したくなった?」
一希の耳元で囁くと、外耳孔から耳垂にかけて舌を使ってゆっくり舐めながら粘液を絡ませていく。
「んぅ、うぅ・・・」
カミールに耳を舐められ、一希は身体に痺れるような電流を感じ取り、軽く仰け反った。
耳がくすぐったい。背中がゾクゾクする。
ヴィンセントと容貌が似ているせいで、彼としている錯覚に陥ってしまう。
耳の快感とカミールの低くて甘ったるい声が鼓膜を刺激し、直接脳へ快楽を伝達していく。一希が耳で悶えている間、カミールは自身の長い指を一希の豊満な胸へ移動すると、張りのあるそれをゆっくりと揉みしだく。
「大きいおっぱいだね。ガウンの隙間からもはみ出しそうになっていたよ」
「み、見るな・・・!うっ」
一希の耳元で囁く声はそのままに、カミールは指をゆっくりと、そそり立つ一希の乳首へ移動する。指の腹で乳首を摘まれると、ビクッと一希の腰に電流が走った。
「あぁああ、だっ、ダメっ・・・!」
驚いた一希は、思わず喘ぎ声を出し、両手で口を塞いだ。
ヴィンセントの時より、カミールの方が快感を感じてしまう。こんなに気持ちいい事に驚いた一希は、背後のカミールへ振り返った。
一希の喘ぎ声を聞いたカミールは、心底嬉しそうな表情をしている。
「良い声だ。久しぶりに私も滾ってきたよ。私を本気にさせたんだ。ヴィンセント以上の快感を教えてあげる」
カミールは一希の顎を掴むと、自分と目を合わせた。彼のサファイアブルーの瞳は朱色に変わり、その瞳に一希が写る。カミールの強引な動きに、一希は戸惑うしかなかった。
「なっ、何を」
「私をしっかり見ていなさい」
「待て、カミール」
二人の情事を見ていたヴィンセントがカミールの行動の理由を察し、彼に制止をかけた。しかし、一希はカミールの朱色の瞳に見入ったまま動かなくなった。
動かなくなった一希の瞳を見て、彼が暗示の術をかけたのだと察したのだ。
「それは使うな。一希に負担がかかるだけだ」
制止をかけられたカミールは、不貞腐れたようにヴィンセントに言った。
「いいじゃないか。こちらの方が楽しいんだ。君も入って三人でしてみるかい?もちろん、一希は今回私が頂くが」
ヴィンセントは朱色の瞳に見入ったまま動かない一希を見た。自分と同じサファイアブルーの瞳は完全に濁っており、表情もなくなってしまった。これで弟は行為に及ぼうとするから、腹立たしい事この上ない。魔力の定着のためと他の王達に説き伏せられても、このようなやり方は蛮行そのものだ。今すぐにでもその朱色の瞳に拳をぶつけてやりたいくらいだ。
カミールは暗示と幻覚を得意とする上級淫魔だ。一希にかけた術は彼の意のままに操る暗示術。
彼は食事時に好んでこの術を使う。
自分達淫魔が人間から精気を得るには彼等の性衝動が必要だが、彼は人間の意思を支配して精気を得ていた。
カミールは自分のやり方に反対しながらも押し黙るヴィンセントを一瞥すると、動かなくなった一希へ目を向けた。
「さぁ、一希。今から本番だ。お互い楽しもうね」
「はい。カミール様」
脱力した一希がカミールに倒れ込む。カミールは一希の色素の薄い黒髪を弄りながら、胸の谷間を指一つでスーッと滑らせる。
これに一希は敏感に腰をくねらせて快感を示しよう喘いだ。
「あぁ・・・」
「気持ちいい?一希」
「気持ち、いいです・・・カミール様」
「それは良かった。ヴィンセントからどんな調教を受けたの?一希はどこが気持ちよかった?」
カミールに聞かれた一希は、恥ずかしそうに腰をくねらせた。
その様子を見てヴィンセントはさらに腹立たしくなる。
人間の意思を支配してやりたいようにやっているカミールだが、恥じらいを声で聞きたいと支配する人間の感情はそのまま残している。
こんな奴に一希を抱かせないといけないのかと、彼は心の中で憤慨した。
カミールに聞かれると一希は恥ずかしそうに答えた。
「ヴィ・・・ヴィンセント様からは、セックスが気持ち良くなる方法を、教えて頂きました・・・。一希の気持ちいい所は、おっぱいを、揉まれながら、乳首をいじってもらうと、とても気持ち良いです」
一希の言葉にカミールはおや?と首を傾げた。
兄の事だ。もっとハードなセックスでも教わっていたかと思っていたが、以外に地道な基本のきだけを教わっていただけとはある意味面食らう。
しかし基本を徹底して仕込まれたのだろう。少し愛撫しただけで、一希が術中に易々とかかっている。
良い塩梅に仕込まれた一希に、カミールは内心でヴィンセントをせせ笑った。
「へぇ、ヴィンセントは初歩の初歩しか教えていないのか。では私が応用編といこうか。一希、おっぱいを私に向けなさい」
「は、はい・・・カミール様」
カミールの指示通り、一希は豊満な胸を恥ずかしそうにカミールに向けた。先程の愛撫で勃起した乳首は、ピクピクとけいれんし次の刺激を待ち侘びているかのようだ。
恥じらいながら反応している身体を見せられ、彼はクスクスと上機嫌に笑った。
「フフフ。刺激したらこんなに私を欲して。一希は可愛い欲張りさんだね。私にはどうして欲しい?」
カミールが人差し指で勃起した一希の乳首をツンと刺激する。これに一希は腰を震わせた。
「ああぁ・・・カミール様にも・・・一希の乳首・・・いっぱい弄って欲しいです」
「乳首だけでいいのかい?おや?」
カミールはベッドのシーツが湿っていることに気づき、顔を下に向けた。
白いベッドシーツに、透明のシミができている。一希にも視線を映すと、恥じらいながらも暗示で支配し閉じる事もできない下肢からたらたらと透明の粘液が流れていたのだ。
それを見たカミールは、一希に羞恥を煽るよう具体的にに言った。
「シーツが湿っているじゃないか。一希、私に乳首を弄られて、君の可愛いアソコからお漏らししただろ?」
具体的に言われ一希は泣きそうになり、目頭から涙が溜まっていく。下肢は、羞恥を煽られても閉じる事が出来ず、カミールに指摘されるとさらに量を増やしていく。
「あぁ・・・ごめんなさいっ、カミール様・・・とても、気持ち良くて」
「全く躾がなっていないね。そんな子はお仕置きだ。脚を開いて君がお漏らししたところを私に見せなさい」
「は、はい・・・」
一希は言われた通り脚を開いてカミールに見せるよう腰を上げた。胸の刺激で、一希のペニスは半勃ち状態になってピクピクと上下に動いている。その下には小さな割れ目ができていて、そこはトロトロと透明な粘液が溢れ出ている。
カミールはそれを見つめるが、それ以上の物を一希の腹部に刻み込まれているのを発見し、すごい物を発見したと喜びながら腹部に手を這わせた。
「フフフ、ヴィンセント。やってくれるじゃないか。もう淫紋が出ているなんて。これは私の術にかかり易い筈だ。妬けるね」
カミールはヴィンセントを見据える。
朱色に染まった瞳には、彼への対抗心を感じさせた。
「ヴィンセント、君も脱いでこちらに来なよ。三人で楽しもうじゃないか」
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