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第6話:絶望の招待状
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その日の晩餐会は、カイル殿下とミナにとって文字通りの公開処刑となった。
帝国の貴族たちが、贅を尽くした料理を楽しみながら、彼らを見る目は完全に「憐れな物乞い」に対するそれだった。
「エルゼ……せめて、結界の張り方だけでも教えていけ。君の義務だろう!」
晩餐会の席上で、カイル殿下が堪り兼ねたように立ち上がった。その目は血走っており、もはや王族としての品位は微塵もない。
私の横で静かにワインを口にしていたリュードヴィヒ陛下が、カチリ、とグラスをテーブルに置いた。その音一つで、広間が静まり返る。
「義務、だと? 追放し、戸籍から抹消し、国外へ放り出した相手に対して使う言葉か、それが」
「それは……っ、教育の一環で、少し厳しくしただけで……」
「教育? 彼女が一人で支えていた結界の魔力を、その隣にいる女に吸い取らせていたことがか?」
陛下の言葉に、ミナの肩がびくりと跳ねた。
彼女が隠し持っていた魔道具の存在は、すでに帝国の魔導師たちによって解析済みだ。
「ミナ様、その首元のブローチ。……もう、私の魔力は一滴も残っていないようですね。だからそんなに、顔が老け込んでしまっているのでしょう?」
私の指摘に、ミナが悲鳴を上げて自分の顔を覆った。
他人の魔力で美しさを保っていた彼女は、今やその供給を断たれ、実年齢以上にやつれ、肌は荒れ果てていた。
「嫌ぁぁ! 見ないで! 私は聖女よ、選ばれた聖女なのよ!」
「聖女? 自分の国の民も救えず、他国の晩餐会で叫び声を上げるだけの女がか。笑わせるな」
陛下が合図を送ると、側近が一通の報告書をカイル殿下の前に叩きつけた。
そこには、昨日の午後に彼らの祖国の北側にある街が、魔物の襲撃によって壊滅したという最悪の報せが記されていた。
「これ……っ、嘘だろ……」
「君たちがエルゼを追い出したその瞬間に、あの国の命運は尽きたのだ。……さあ、食事を続けろ。それが君たちが祖国の金で食べられる、最後のまともな食事になるだろうからな」
絶望に打ちひしがれ、ガタガタと震えるカイル殿下。
かつて私を「欠陥品」と呼び、冷たい床に膝をつかせた男の成れ果てだ。
私は、陛下の大きな手が私の手をテーブルの下で優しく握りしめるのを感じた。
震えていたのは、私ではなかった。私を侮辱した者たちへの怒りで、陛下の手が微かに震えていたのだ。
「エルゼ。……明日、あの国から最後の手紙が届く。君に、見届ける権利がある」
陛下の深い瞳の奥に、昏い悦びが灯っていた。
本当の「断罪劇」は、まだ始まったばかりだった。
帝国の貴族たちが、贅を尽くした料理を楽しみながら、彼らを見る目は完全に「憐れな物乞い」に対するそれだった。
「エルゼ……せめて、結界の張り方だけでも教えていけ。君の義務だろう!」
晩餐会の席上で、カイル殿下が堪り兼ねたように立ち上がった。その目は血走っており、もはや王族としての品位は微塵もない。
私の横で静かにワインを口にしていたリュードヴィヒ陛下が、カチリ、とグラスをテーブルに置いた。その音一つで、広間が静まり返る。
「義務、だと? 追放し、戸籍から抹消し、国外へ放り出した相手に対して使う言葉か、それが」
「それは……っ、教育の一環で、少し厳しくしただけで……」
「教育? 彼女が一人で支えていた結界の魔力を、その隣にいる女に吸い取らせていたことがか?」
陛下の言葉に、ミナの肩がびくりと跳ねた。
彼女が隠し持っていた魔道具の存在は、すでに帝国の魔導師たちによって解析済みだ。
「ミナ様、その首元のブローチ。……もう、私の魔力は一滴も残っていないようですね。だからそんなに、顔が老け込んでしまっているのでしょう?」
私の指摘に、ミナが悲鳴を上げて自分の顔を覆った。
他人の魔力で美しさを保っていた彼女は、今やその供給を断たれ、実年齢以上にやつれ、肌は荒れ果てていた。
「嫌ぁぁ! 見ないで! 私は聖女よ、選ばれた聖女なのよ!」
「聖女? 自分の国の民も救えず、他国の晩餐会で叫び声を上げるだけの女がか。笑わせるな」
陛下が合図を送ると、側近が一通の報告書をカイル殿下の前に叩きつけた。
そこには、昨日の午後に彼らの祖国の北側にある街が、魔物の襲撃によって壊滅したという最悪の報せが記されていた。
「これ……っ、嘘だろ……」
「君たちがエルゼを追い出したその瞬間に、あの国の命運は尽きたのだ。……さあ、食事を続けろ。それが君たちが祖国の金で食べられる、最後のまともな食事になるだろうからな」
絶望に打ちひしがれ、ガタガタと震えるカイル殿下。
かつて私を「欠陥品」と呼び、冷たい床に膝をつかせた男の成れ果てだ。
私は、陛下の大きな手が私の手をテーブルの下で優しく握りしめるのを感じた。
震えていたのは、私ではなかった。私を侮辱した者たちへの怒りで、陛下の手が微かに震えていたのだ。
「エルゼ。……明日、あの国から最後の手紙が届く。君に、見届ける権利がある」
陛下の深い瞳の奥に、昏い悦びが灯っていた。
本当の「断罪劇」は、まだ始まったばかりだった。
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