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第3話
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私がアリード家を捨ててから、数日が経っていた。
ザライン国にいたくなかった私は、他国に向かっている。
隣国の街に到着した私は、宿に泊まることにしていた。
私が今いるエトラス国は、今までいたザライン国より危険らしい。
魔物の種類が多くて、貴重で高価な物が入手しやすいようだ。
危険だけど繁栄しているようで、他国からやってくる人も多い。
平民となった私は今までいたザライン国よりも、エトラス国の方が暮らしやすそうと考えていた。
宿の部屋で1人になって、私は呟く。
「ポーション作りの日々から解放されたのはよかったけど、これからどうしましょう」
所持金も生活に必要なものの購入、移動と宿代でかなり使っていた。
私は鞄に手を伸ばして、幾つものポーションを手に取って眺める。
前に作っていたポーションは、準備していたから所持することができていた。
何かあった時の備えだったけど、今まで飲むような出来事は起きていない。
所持金が尽きればポーション売るしかないと考えて、これからのことを考える。
生きるためには、ポーションを作るのが一番よさそうだ。
疲弊しない程度で調合魔法を使い、ポーションを作って生活しよう。
そこまで考えた私は、明日の予定を決めて呟く。
「冒険者ギルドでポーションを取引してもらえるはずだから、明日は価値を聞きに行きましょう」
手持ちのポーションの価値を知ってから、これからの行動を決めよう。
今後の方針を決めた私は、明日に備えて眠りについていた。
■◇■◇■◇■◇■
翌日――私は冒険者ギルドに到着して、辺りを見渡して呟く。
「ここが、冒険者ギルド……ですか」
外からでも賑わっている声が聞こえてきて、私は緊張してしまう。
詳しくは知らないけど、誰でも依頼を受けて報酬がもらえる場所のはず。
覚悟を決めて、私は大きな建物の扉を開けて中に入る。
周囲を眺めていると、飲食店も併設しているようで幾つものテーブル席が見えた。
そして――カウンターでは制服を着ている女性が、大声で叫んでいた。
「ここにいる方で回復魔法を使える方はいませんか! 緊急です! すぐに受付まで来てください!!」
席に座っている人達も、飲食店から少し離れたカウンターで叫ぶ人に注目している。
恐らく叫んだ女性は冒険者ギルドの受付をしている職員の人と推測できて、かなり焦っているようだ。
受付の人の元には、1人しかやって来ていない。
回復魔法を使える人はこの場に1人しかいないようで、私は考える。
私は回復ポーションがあるけど、限りがあるから治せるのは数人程度だ。
そう考えてから――閃いた私は、受付の人がいるカウンターへ向かう。
テーブル席でざわめいているけど、回復魔法を使えると思われたのかもしれない。
受付の人が明るい表情になったから、私は先に鞄からポーションを先に出して話す。
「魔力回復のポーションなら持っています。回復魔法を使う人の魔力が尽きそうな時は、飲んでください」
明らかに緊急事態なのに放置して、魔力回復ポーションをこの場で売ることが私にはできなかった。
材料さえあれば問題なく作れるし、渡しても構わない。
そう考えていると、美青年が驚いた様子で叫ぶ。
「魔力回復ポーションだって!? 確かに……本物のようだ」
「マルクス様が仰るのでしたら、間違いありませんけど……」
短い黒髪の美青年の名前は、マルクスというらしい。
鑑定魔法を使って、見ただけでポーションの効果を一瞬で把握した。
回復魔法を求めていた時にすぐ受付まで来ていたし、回復魔法も使えそう。
凄そうな人だと考えていると、受付の人が私に話す。
「魔力回復ポーションは貴重ですけど、よろしいのですか?」
「えっと……? はい。大丈夫です」
貴重という発言が気になったけど、今は一大事だから頷いておこう。
私とマルクスは受付の人から、何が起きたのか詳しく話を聞いていた。
魔物ゴブリンの群れを退治する依頼を、複数の冒険者パーティが受けていたらしい。
戦力的に問題なかったはずだけど、ゴブリンは他の魔物を味方につけていたようだ。
それによって大勢の負傷者が出て、ギルドマスターと呼ばれる偉い人が応援を呼んで対処した。
魔物の群れはもう撃退しているようだけど、負傷者が多いようだ。
大勢の負傷者が街まで戻ってくるから、回復魔法が必要と受付の人は話してくれる。
そしてマルクスが、私に申し訳なさそうに言う。
「俺は回復魔法の適性があまりなくて、治すためには膨大な魔力を使う必要がある……魔力回復ポーションは、使うことになるだろう」
「どうぞ、使ってください」
「凄いな君は……これから負傷者の元に行く、君も一緒に来て欲しい」
「わかりました。追加のポーションが必要になるかもしれませんものね」
私が理由を推測して話すと、マルクスと受付の人が唖然としていた。
「いや、使ったことを確認して欲しかったのだけど……とにかく、行こう!」
私の発言に驚いているのが気になるけど、今は負傷者を治すのが先だ。
一緒に来て欲しいと言われたから、私はマルクスと街の外に向かおうとしていた。
ザライン国にいたくなかった私は、他国に向かっている。
隣国の街に到着した私は、宿に泊まることにしていた。
私が今いるエトラス国は、今までいたザライン国より危険らしい。
魔物の種類が多くて、貴重で高価な物が入手しやすいようだ。
危険だけど繁栄しているようで、他国からやってくる人も多い。
平民となった私は今までいたザライン国よりも、エトラス国の方が暮らしやすそうと考えていた。
宿の部屋で1人になって、私は呟く。
「ポーション作りの日々から解放されたのはよかったけど、これからどうしましょう」
所持金も生活に必要なものの購入、移動と宿代でかなり使っていた。
私は鞄に手を伸ばして、幾つものポーションを手に取って眺める。
前に作っていたポーションは、準備していたから所持することができていた。
何かあった時の備えだったけど、今まで飲むような出来事は起きていない。
所持金が尽きればポーション売るしかないと考えて、これからのことを考える。
生きるためには、ポーションを作るのが一番よさそうだ。
疲弊しない程度で調合魔法を使い、ポーションを作って生活しよう。
そこまで考えた私は、明日の予定を決めて呟く。
「冒険者ギルドでポーションを取引してもらえるはずだから、明日は価値を聞きに行きましょう」
手持ちのポーションの価値を知ってから、これからの行動を決めよう。
今後の方針を決めた私は、明日に備えて眠りについていた。
■◇■◇■◇■◇■
翌日――私は冒険者ギルドに到着して、辺りを見渡して呟く。
「ここが、冒険者ギルド……ですか」
外からでも賑わっている声が聞こえてきて、私は緊張してしまう。
詳しくは知らないけど、誰でも依頼を受けて報酬がもらえる場所のはず。
覚悟を決めて、私は大きな建物の扉を開けて中に入る。
周囲を眺めていると、飲食店も併設しているようで幾つものテーブル席が見えた。
そして――カウンターでは制服を着ている女性が、大声で叫んでいた。
「ここにいる方で回復魔法を使える方はいませんか! 緊急です! すぐに受付まで来てください!!」
席に座っている人達も、飲食店から少し離れたカウンターで叫ぶ人に注目している。
恐らく叫んだ女性は冒険者ギルドの受付をしている職員の人と推測できて、かなり焦っているようだ。
受付の人の元には、1人しかやって来ていない。
回復魔法を使える人はこの場に1人しかいないようで、私は考える。
私は回復ポーションがあるけど、限りがあるから治せるのは数人程度だ。
そう考えてから――閃いた私は、受付の人がいるカウンターへ向かう。
テーブル席でざわめいているけど、回復魔法を使えると思われたのかもしれない。
受付の人が明るい表情になったから、私は先に鞄からポーションを先に出して話す。
「魔力回復のポーションなら持っています。回復魔法を使う人の魔力が尽きそうな時は、飲んでください」
明らかに緊急事態なのに放置して、魔力回復ポーションをこの場で売ることが私にはできなかった。
材料さえあれば問題なく作れるし、渡しても構わない。
そう考えていると、美青年が驚いた様子で叫ぶ。
「魔力回復ポーションだって!? 確かに……本物のようだ」
「マルクス様が仰るのでしたら、間違いありませんけど……」
短い黒髪の美青年の名前は、マルクスというらしい。
鑑定魔法を使って、見ただけでポーションの効果を一瞬で把握した。
回復魔法を求めていた時にすぐ受付まで来ていたし、回復魔法も使えそう。
凄そうな人だと考えていると、受付の人が私に話す。
「魔力回復ポーションは貴重ですけど、よろしいのですか?」
「えっと……? はい。大丈夫です」
貴重という発言が気になったけど、今は一大事だから頷いておこう。
私とマルクスは受付の人から、何が起きたのか詳しく話を聞いていた。
魔物ゴブリンの群れを退治する依頼を、複数の冒険者パーティが受けていたらしい。
戦力的に問題なかったはずだけど、ゴブリンは他の魔物を味方につけていたようだ。
それによって大勢の負傷者が出て、ギルドマスターと呼ばれる偉い人が応援を呼んで対処した。
魔物の群れはもう撃退しているようだけど、負傷者が多いようだ。
大勢の負傷者が街まで戻ってくるから、回復魔法が必要と受付の人は話してくれる。
そしてマルクスが、私に申し訳なさそうに言う。
「俺は回復魔法の適性があまりなくて、治すためには膨大な魔力を使う必要がある……魔力回復ポーションは、使うことになるだろう」
「どうぞ、使ってください」
「凄いな君は……これから負傷者の元に行く、君も一緒に来て欲しい」
「わかりました。追加のポーションが必要になるかもしれませんものね」
私が理由を推測して話すと、マルクスと受付の人が唖然としていた。
「いや、使ったことを確認して欲しかったのだけど……とにかく、行こう!」
私の発言に驚いているのが気になるけど、今は負傷者を治すのが先だ。
一緒に来て欲しいと言われたから、私はマルクスと街の外に向かおうとしていた。
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