代わりはいると言われた私は出て行くと、代わりはいなかったようです

天宮有

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第4話

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 私とマルクスは、街の外に向かっていた。

 マルクスは私を担いで走り――走りながら、マルクスが私に話す。

「ギルドマスターが動いているから、もう魔物の対処は終えている。そこまで緊張しなくていい」

「そ、そうですか」

 緊張しているのは、担がれているからだ。
 そう考えてしまうと、マルクスの話が続く。

「俺はマルクスだ。君は冒険者ギルドで見たことがないな」

「私はエミリーです。昨日この街に来ました」

「そうか――どうやら、冒険者達も戻って来たようだ」

 そう言って、マルクスが担いでいた私をゆっくりと降ろす。

 私とマルクスが街の外に出ると、そこには大勢の人がいた。

 大量の負傷者を運ぶ人達がいて、駆けつけたマルクスが回復魔法を使っていく。
 聖女キアラよりも回復魔法の光は弱いけど、膨大な魔力を使っていそう。

 大半の負傷者を治して、疲弊しているマルクスが私を見る。
 魔力が尽きそうなのだと、似た体験をしたことがある私にはわかった。

 私は鞄から魔力回復ポーションを取り出して、マルクスに渡そうとする。

「マルクス様、どうぞ使ってください」

「いや……重傷者は治せたし、使わなくても問題はなさそうだ」

 そう言うけど、まだ数人が苦しそうにしている。

 マルクスは魔力回復ポーションを使うことを躊躇っているから、私が本心を伝えた。

「私は回復魔法を使えません。マルクス様に治して欲しいと思っています」

「そ、そうか……ありがとう」

 お礼を言って、マルクスが魔力回復ポーションを飲む。

 そこから回復魔法を使うことで、負傷者を全て治すことができていた。

■◇■◇■◇■◇■

 負傷者を治してから冒険者ギルドに戻り、私はマルクスと一緒に別室へ案内されている。

 これからギルドマスターが来るみたいだけど、私は隣に座るマルクスに尋ねた。

「あの、これから何があるのでしょうか?」

「今回の報酬を渡すと行っていた。魔力回復ポーションも買取にするようだ」

 私が持っている魔力回復ポーションは残り3つだけど、価値を聞いてから決めよう。

 そう考えていると――私達の元に、ギルドマスターがやって来る。
 椅子に座り、テーブル越しに対面してマルクスと私に話す。

「マルクスがいてくれて助かった……君にも感謝している。見ない顔だな」

 ギルドマスターは長い金髪の強そうな青年で、私は緊張してしまう。

「見た目は怖いが、ギルドマスターはいい奴だ。彼女はエミリー、昨日この街にきたらしい」

「エミリーか、今回は助かった。ありがとう」

「いえ……回復魔法を使ったのはマルクス様です」

「様付けは止めて欲しいな。魔力回復ポーションをすぐ渡せるなんて、凄いことだ」

 マルクスが私を褒めて、ギルドマスターも頷く。

「魔力回復ポーションは、冒険者ギルドの買取とする……相場と同じ金額を支払おう」

 そう言ってテーブルに数枚の金貨が置かれるけど、価値が高すぎる気がする。
 ここに来るまでにギルドマスターとマルクスは2人で話し合っていたから、私は理解した。

 追加の魔力回復ポーションがあるとマルクスに話していたから、それも買い取りたいのでしょう。

 個数は言ってなかった気がするけど、4つの代金でもまだ高い気がする。

 とにかく私は、残りの3つある魔力回復ポーションを鞄から取り出した。
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