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第11話

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ヴァン視点

 サフィラを追い出してから四ケ月が経過して、不安になりながらも楽な生活を送っていた時だった。

 侯爵家の令息ソラドが、ウォルク伯爵家の屋敷にやって来て――俺とエイダは歓迎する。
 応接室で領主が変わったこと話すとすぐに納得してくれたが、それには理由があった。

「私としてはやることをやってくれるのなら、領主が変わっても構わない」

「やること……ですか?」

「ああ。私の領地に設置した聖水化の魔法道具を直して欲しい……サフィラ様の時はできたことだ」

 そう言われても、やり方が解らない。
 俺が困惑していると、隣でエイダが焦りながら話す。

「かしこまりました。それでは、直せる職人を呼んできます」

「いや、直すのは水魔法の素質がある者でしかできないようだ……サフィラ様はこれから弟子を見つけると言っていたが、まだ見つかっていないと聞いている」

「なっっ――」

 ソラドの発言を聞いてエイダが何も言えなくなり、俺は全身を震わせる。

 そんなことは初耳で――職人の説明がなかったのは、勝手にしろとエイダが命令したからだろう。

 俺達の反応を見て、怪訝そうにソラドが尋ねる。

「どうしたヴァン様? 貴方はウォルク伯爵家の領主なのだろう?」

「うっっ……今、サフィラは旅行に出ている最中なので、戻り次第対処させます!」

「そ、そうですわね! 妹のサフィラは忙し過ぎたので休みを与えたのです……タイミングが悪くて申し訳ありません!」

 俺は咄嗟にサフィラがこの場にいないからできないと話すも、どこにいるのか解らない。

 とにかくこの場は納得させて、俺達はサフィラを探そうと考えていた。
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