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第58話

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 夜になって――遂にこの時がやってきた。

 私は昨日言われた通り屋敷の外に出て、龍人ラウザーを待っている。

「……これで、よかったのです」

 私は思わず呟くけど、それは本心ではない。

 それでも――ゼロアを危険な目に合わせてしまうぐらいなら、私は龍人の元へ行く。

 これで全てが解決するのなら、仕方ないと割り切るしかなかった。

 そして――屋敷から出て数分後、私の目の前にラウザーが現れる。

 翼を生やし上空から降下してきたラウザーは、私を眺めて――いいえ、なぜか私の後ろを眺めている。

 そしてラウザーは、真剣な表情で呟く。

「戦うことを選ぶのか……それなら、それでいいだろう」

「……えっ?」

 ラウザーの目線の先が気になって、私は思わず振り向く。

 そこにはゼロアの姿があって――ゼロアは、ラウザーに尋ねる。

「話は今日、シーラから聞いている……お前が、龍人のラウザーだな」

「そうだ。随分余裕があるようだが、お前ではオレに勝つことはできない」

 ラウザーの言うとおり、龍人を眺めてもゼロアは冷静に話せている。

 どうやらこうなることを、ゼロアは予測していたようだ。
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