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第3話

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 家族から勘当を言い渡されたけど、魔力を奪われた時から最悪の事態に備えていた。

 平民の服に着替えて……とにかく私は、屋敷の近くから離れたかった。

 魔法が使えない人の方が多くて、この姿の私を狙う強盗はいないと思う。

 とにかく後4日の辛抱だと考えて――馬車で仮眠をとっていたから寝るのは明日にして、とにかく屋敷から離れることとしていた。

■◇■◇■◇■◇■

 翌日――私はマジックバッグに入れていたお金を使い、馬車に乗っていた。

 後3日後には、私の魔力が元に戻るはず。
 戻らなかったら最悪だけど……禁止されている魔法をジェイクが使ったのは間違いないから、最悪の事態になっても打つ手はあった。

 とにかく今は、これから3日間をどうするかだ。

「とりあえず冒険者ギルドのある街に向かって……アインがいれば、事情を話しましょう」

 この世界には危険な魔力を持った生物――魔物がいて、それを倒して生活する冒険者と呼ばれる人がいた。

 魔物を倒す以外にも様々な依頼を引き受ける人達で、その人達の拠点が冒険者ギルドだ。

 私は昔、回復魔法で冒険者を助けたことがある。
 聖女の力がないから、ローナと違い複数人を一気に回復できないけど……聖女の妹だからか、1人を治す普通の回復魔法を使うことはできた。

 助けた冒険者はアインと名前を教えてくれて――私が困った時は、必ず助けると約束してくれた。

 数年以上会っていないし、アインはそんな約束を覚えていないかもしれない。

「それでも私は……ジェイクに魔力を奪われてしまったから、アインの元に行きたい」

 3日間の間に再会できるかわからないけど、私は魔力が戻ってからが不安になっている。

 真相を知った時には、ジェイク達は必死になって私を戻そうと行動するはずだ。

 魔力を奪ってくる元婚約者ジェイク。
 魔力を奪うことに協力して、奪った後は用済みと家から追い出した元家族。

 戻る気が一切ない私は味方が欲しくて――夕方になる頃には、冒険者ギルドのある街に到着していた。
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