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第3話
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婚約破棄を言い渡されて数日後、ジトア王子が私の屋敷にやって来た。
ジトアは金色の短い髪が美しい、小柄な美少年だ。
魔法の実力は高く、1学年上の私をよく助けてくれている。
ジトアと知り合ったのは、3ヶ月ほど前のことだ。
15歳になって魔法学園に入学したジトアが、苦しんでいた私を助けてくれた。
そこまで考えて――私は家族から聞いた、呪いのことを思い出す。
「ジトア様は、私が呪いの身代わりになったと知っていたから助けてくれたのですね」
応接室で、テーブル越しに座るジトアに私は言う。
呪いについて数ヶ月前に知ったから、助けてくれたのかもしれない。
私には婚約者がいたから、ジトアはあまり関われなかったのだと推測できる。
「それもありますけど、私はルーミエ様に惹かれていました」
「病弱で魔法もあまり扱えず、学園内の評判が悪い私に惹かれる要素などないでしょう」
私は今までのことを思い返し、ジトアに断言する。
呪いについて知ってから、私は言いたいことがあった。
「呪いの原因はわからないと聞きました。それならジトア様が気にすることは何もありません」
私に惹かれるなんて、ありえないことだ。
ジトアの優しさは嬉しかったけど、これ以上は迷惑をかけたくはない。
呪いが解けたとしても、私の力は大したことがないはずだ。
本心を伝えると、ジトアは私を眺めて話す。
「ルーミエ様は、私に呪いを移すことも可能でした」
「……そうなんですか?」
「本来は私がかかる呪いですから、今でも強く意識すれば移せます」
そう言われるけど、私は誰かに呪いをかけるなんて行為をしたくはない。
話を聞いて困惑してしまうと、ジトアが微笑みを浮かべて話す。
「ルーミエ様は、今まで呪いで苦しくても誰かに代わって欲しいとは一切考えていません。私はそんな部分にも惹かれています」
「そ、そうでしたか……」
私がもしそんなことを考えていたら、弱体化の呪いがジトアに移っていたらしい。
考えなくてよかったと安堵していると、笑顔を浮かべたジトアが頭を下げて話す。
「今まで私を守ってくれて、ありがとうございます――今度は私が、ルーミエ様を守りたいと想っています」
気にすることは何もないと私は言ったけど、それでもジトアは想いを伝えた。
本心からの発言なのは間違いなくて、私は動揺するしかない。
「あの、私でよろしいのでしょうか?」
「はい。今までは婚約者のバハムス様がいましたので諦めていましたけど、今なら問題ありません」
どうやら家族と王家で、もう話し合いは済んでいるようだ。
メリタが婚約者を奪ったことを家族が黙認していたのは、婚約について話し合っていたからなのかもしれない。
「あの、来月には私の呪いが解けるんですよね?」
「はい。間違いありません」
私が気になることを尋ねると、ジトアが断言してくれる。
どれほど弱体化していたのはわからないけど、ジトアに相応しい婚約者になれるのかが不安だ。
「どれだけ力が戻るのかわからないのなら、婚約者になるジトア殿下に迷惑をかけてしまう可能性があります」
「私は気にしません。これからはルーミエ様の傍にいたいと想っています」
顔を少し赤くして、ジトアが話してくれる。
今まで私を助けるために動き、話も合っていた。
婚約破棄を言い渡されたばかりだけど、私は決意をジトアに伝える。
「わかりました――私も、ジトア様の傍にいたいと想っています」
私もジトアの婚約者になりたくて――ジトア王子と、婚約することが決まった。
ジトアは金色の短い髪が美しい、小柄な美少年だ。
魔法の実力は高く、1学年上の私をよく助けてくれている。
ジトアと知り合ったのは、3ヶ月ほど前のことだ。
15歳になって魔法学園に入学したジトアが、苦しんでいた私を助けてくれた。
そこまで考えて――私は家族から聞いた、呪いのことを思い出す。
「ジトア様は、私が呪いの身代わりになったと知っていたから助けてくれたのですね」
応接室で、テーブル越しに座るジトアに私は言う。
呪いについて数ヶ月前に知ったから、助けてくれたのかもしれない。
私には婚約者がいたから、ジトアはあまり関われなかったのだと推測できる。
「それもありますけど、私はルーミエ様に惹かれていました」
「病弱で魔法もあまり扱えず、学園内の評判が悪い私に惹かれる要素などないでしょう」
私は今までのことを思い返し、ジトアに断言する。
呪いについて知ってから、私は言いたいことがあった。
「呪いの原因はわからないと聞きました。それならジトア様が気にすることは何もありません」
私に惹かれるなんて、ありえないことだ。
ジトアの優しさは嬉しかったけど、これ以上は迷惑をかけたくはない。
呪いが解けたとしても、私の力は大したことがないはずだ。
本心を伝えると、ジトアは私を眺めて話す。
「ルーミエ様は、私に呪いを移すことも可能でした」
「……そうなんですか?」
「本来は私がかかる呪いですから、今でも強く意識すれば移せます」
そう言われるけど、私は誰かに呪いをかけるなんて行為をしたくはない。
話を聞いて困惑してしまうと、ジトアが微笑みを浮かべて話す。
「ルーミエ様は、今まで呪いで苦しくても誰かに代わって欲しいとは一切考えていません。私はそんな部分にも惹かれています」
「そ、そうでしたか……」
私がもしそんなことを考えていたら、弱体化の呪いがジトアに移っていたらしい。
考えなくてよかったと安堵していると、笑顔を浮かべたジトアが頭を下げて話す。
「今まで私を守ってくれて、ありがとうございます――今度は私が、ルーミエ様を守りたいと想っています」
気にすることは何もないと私は言ったけど、それでもジトアは想いを伝えた。
本心からの発言なのは間違いなくて、私は動揺するしかない。
「あの、私でよろしいのでしょうか?」
「はい。今までは婚約者のバハムス様がいましたので諦めていましたけど、今なら問題ありません」
どうやら家族と王家で、もう話し合いは済んでいるようだ。
メリタが婚約者を奪ったことを家族が黙認していたのは、婚約について話し合っていたからなのかもしれない。
「あの、来月には私の呪いが解けるんですよね?」
「はい。間違いありません」
私が気になることを尋ねると、ジトアが断言してくれる。
どれほど弱体化していたのはわからないけど、ジトアに相応しい婚約者になれるのかが不安だ。
「どれだけ力が戻るのかわからないのなら、婚約者になるジトア殿下に迷惑をかけてしまう可能性があります」
「私は気にしません。これからはルーミエ様の傍にいたいと想っています」
顔を少し赤くして、ジトアが話してくれる。
今まで私を助けるために動き、話も合っていた。
婚約破棄を言い渡されたばかりだけど、私は決意をジトアに伝える。
「わかりました――私も、ジトア様の傍にいたいと想っています」
私もジトアの婚約者になりたくて――ジトア王子と、婚約することが決まった。
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