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28 笑うマッドサイエンティスト
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マリニアもできれば母であるデニスが生きていると信じたいけれど厳しい経験がそうは思わせない。
しかし父であるメフィストは違う。誰もが死んだと思っている母が生きていると疑わない。まさにその証拠のような彼女の足跡が今回の騒ぎで見つかり、最大限に彼女を警戒をしているのにとても楽しそうだった。子供が宝物を発見したかのように無邪気に笑っているのである。
「それよりもキアラがデニスのメダルを使って守護のギアスを発動させたときのことを詳しく教えなさい。ベルゲンクライから遠隔通信で簡単な報告を受けましたが、他聞をはばかってしっかりとは聴けていません」
「承知しました」
メフィストは思い出したかのように口調を事務的にして尋ねた。
実際今の今まで忘れていたのだ。
マリニアもルキウスにしたような馬鹿にした口調は一切なく、アルザスでの出来事を事細かく語った。
メフィストが懸念するように、末端教会から主幹教会を経由する通信はより高い権限を持つ者に傍受されるおそれがある。ルキウスもそのことを知っているのでベルゲンクライからの教会通信では詳しく述べなかった。
また残念なことにガイルへギアスが発動された場にマリニアはいなかったので、キアラが帰ってくるまで正確なことは分からない。つまるところ十分とは言えない説明であったが、メフィストにとって非常に興味深い話となった。
「キアラが、そのガイルという男がデニスの後継者だと言ったうえで隷属をしたのですね?」
「はい。隷属は解除しましたが、ルキウスの命でその者がキアラをこちらへ連れて帰ることになってもいます。しかし後継者とのことですからデニスはやはり――」
「世界は私達が見えているだけではありません。ひと一人くらい何処にでも隠れられる。そうでしょう?」
意味深な笑みをしたメフィストがマリニアを見つめる。その視線は彼女の胸のメダルへと向けられていた。
デニスが死んでいると信じるマリニアは相変わらず不承の表情を浮かべている。
こればかりはデニスの生死が白日の下に判明をしなければ意見の一致は見ないだろう。
メフィストも強いてマリニアの考えを改めさせようとはせず、話の続きを始めた。
「今の時点ではデニスの後継者がキアラを連れている。そしてルキウスはキアラをその男に奪われただけでなく、スタンピードを起こせてもアルザスを混乱させただけで大した成果はなかった。今回の結末に間違いありませんね?」
「それは――」
丸眼鏡の向こうで何か言いたげな様子のマリニアにメフィストが目を細める。
少なくともマリニア達がオリジナルダンジョンへ入って魔物達の活性化と生成には成功をしている。あの後にキアラが来さえすれば、マリニアのメダルをダンジョンのコアとされる最奥部の壁へ投げて、その向こうに棲むものをこちらの世界へ誘引できれば今回の任務は完了のはずだった。
しかし肝心のキアラがダンジョンへ来ることはなかった。途中でデニスの後継者と目される男に出会ってしまい、そのまま男の言うことを聞いて道を引き返したのである。
今回の任務で最重要の役割をマリニアが担っていたため、ダンジョン最奥部の攻略は彼女が率先せざるを得なかった。その間にキアラの側を離れたがゆえの失敗とも言える。
このことについて彼女の責任はないものの、大切な妹分をみすみす奪われ、作戦が中途半端になった悔しさは拭いようがない。
またメフィストの成果なしとの評価は彼女のプライドをさらに傷つけた。
「先にこの話を聞けていればあのような適当な者達を迎えにやらなかったのですが、やはり人伝はダメですね。自分の目や手足で相手を確認するフィールドワークは本当に大切です。今さらあの人の後継者らしき男に教えられるとは――。それでは彼女の後継者の実力を少し試させてもらいましょうか」
メフィストが、己の娘でもあり監視の目とも考えるマリニアへ再び向けた顔に彼女は背筋を寒くする。
白亜の塔のマッドサイエンティストの呼び名にふさわしい口角と眦が接するような醜悪な笑みが浮かんでいた。
しかし父であるメフィストは違う。誰もが死んだと思っている母が生きていると疑わない。まさにその証拠のような彼女の足跡が今回の騒ぎで見つかり、最大限に彼女を警戒をしているのにとても楽しそうだった。子供が宝物を発見したかのように無邪気に笑っているのである。
「それよりもキアラがデニスのメダルを使って守護のギアスを発動させたときのことを詳しく教えなさい。ベルゲンクライから遠隔通信で簡単な報告を受けましたが、他聞をはばかってしっかりとは聴けていません」
「承知しました」
メフィストは思い出したかのように口調を事務的にして尋ねた。
実際今の今まで忘れていたのだ。
マリニアもルキウスにしたような馬鹿にした口調は一切なく、アルザスでの出来事を事細かく語った。
メフィストが懸念するように、末端教会から主幹教会を経由する通信はより高い権限を持つ者に傍受されるおそれがある。ルキウスもそのことを知っているのでベルゲンクライからの教会通信では詳しく述べなかった。
また残念なことにガイルへギアスが発動された場にマリニアはいなかったので、キアラが帰ってくるまで正確なことは分からない。つまるところ十分とは言えない説明であったが、メフィストにとって非常に興味深い話となった。
「キアラが、そのガイルという男がデニスの後継者だと言ったうえで隷属をしたのですね?」
「はい。隷属は解除しましたが、ルキウスの命でその者がキアラをこちらへ連れて帰ることになってもいます。しかし後継者とのことですからデニスはやはり――」
「世界は私達が見えているだけではありません。ひと一人くらい何処にでも隠れられる。そうでしょう?」
意味深な笑みをしたメフィストがマリニアを見つめる。その視線は彼女の胸のメダルへと向けられていた。
デニスが死んでいると信じるマリニアは相変わらず不承の表情を浮かべている。
こればかりはデニスの生死が白日の下に判明をしなければ意見の一致は見ないだろう。
メフィストも強いてマリニアの考えを改めさせようとはせず、話の続きを始めた。
「今の時点ではデニスの後継者がキアラを連れている。そしてルキウスはキアラをその男に奪われただけでなく、スタンピードを起こせてもアルザスを混乱させただけで大した成果はなかった。今回の結末に間違いありませんね?」
「それは――」
丸眼鏡の向こうで何か言いたげな様子のマリニアにメフィストが目を細める。
少なくともマリニア達がオリジナルダンジョンへ入って魔物達の活性化と生成には成功をしている。あの後にキアラが来さえすれば、マリニアのメダルをダンジョンのコアとされる最奥部の壁へ投げて、その向こうに棲むものをこちらの世界へ誘引できれば今回の任務は完了のはずだった。
しかし肝心のキアラがダンジョンへ来ることはなかった。途中でデニスの後継者と目される男に出会ってしまい、そのまま男の言うことを聞いて道を引き返したのである。
今回の任務で最重要の役割をマリニアが担っていたため、ダンジョン最奥部の攻略は彼女が率先せざるを得なかった。その間にキアラの側を離れたがゆえの失敗とも言える。
このことについて彼女の責任はないものの、大切な妹分をみすみす奪われ、作戦が中途半端になった悔しさは拭いようがない。
またメフィストの成果なしとの評価は彼女のプライドをさらに傷つけた。
「先にこの話を聞けていればあのような適当な者達を迎えにやらなかったのですが、やはり人伝はダメですね。自分の目や手足で相手を確認するフィールドワークは本当に大切です。今さらあの人の後継者らしき男に教えられるとは――。それでは彼女の後継者の実力を少し試させてもらいましょうか」
メフィストが、己の娘でもあり監視の目とも考えるマリニアへ再び向けた顔に彼女は背筋を寒くする。
白亜の塔のマッドサイエンティストの呼び名にふさわしい口角と眦が接するような醜悪な笑みが浮かんでいた。
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