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聖女が降臨した日が、運命の分かれ目でした①
しおりを挟む殿下と共に在れるのであればと思えば、厳しい妃教育にも耐えられました。
けれどもわたくしの決意は、当の殿下によって打ち砕かれたのです。
「レイア・カスケード。お前との婚約を破棄する!」
わたくし達の関係が変化したのは、一年ほど前のことです。
その日は王国の豊作を願う、祭事の中でも重要な儀式が王宮で行われておりました。彼の方は、その最中に突然現れたのです。
その光景は忘れようにも忘れられません。満月の登ったテラスで、国王陛下が女神様に供物を捧げ祝詞を唱えた、次の瞬間。眩い輝きが辺り一面を覆い尽くしたのです。驚き咄嗟に目を瞑ったわたくしは、その中で、何か重たいものが床に落ちた音を聞きました。
瞼の向こうで光が収まった気配を感じ、そろりと目を開く。そんなわたくし達の目の前には、床に倒れた少女の姿がありました。
真っ黒で長い髪。白い肌と、それを覆う衣類は見た事のない意匠をしています。今彼女の瞳は閉じられておりますが、その色は髪と同じく黒である事を、わたくし達は知っておりました。
わたくし達からしてみれば異邦人である少女は、女神様より遣わされた聖なる乙女。
歴史書で「聖女」と呼ばれる存在に違いなかったのです。
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