【完結(続編)ほかに相手がいるのに】

もえこ

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~誘い~

沈黙

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「… … …」

沈黙に耐えられず…私は思わず、声を発した。

「… …あの… 杉崎さん… ?」

「… … …」

私の回答を受けて、杉崎さんが下を見たまま、押し黙ってしまった…。

拓海に別れを告げておいて…それでもなお、拓海を家に上げてしまったことに、引かれているのかもしれない…。

いつも冷静沈着な杉崎さんが、いつになく感情を表に出しているようにも見え、私は戸惑いを隠せない…。

でも…後になって、考えれば考えるほど…
あの日… あの夜は…
どうしたって、あの時の不機嫌な拓海に、今から帰ってなどと伝えることはできなかった…。

    「もう、家には上げられない」

もしも、そんなたぐいのことを口走っていれば、更にいっそう、拓海を怒らせたに違いない…。
絶対に、断るのは無理だった…

でも…今となっては…

あんな結果となってしまった、今となっては…
やはり、あの時…内心で拓海のことをどんなに怖いと感じていたとしても、もう、家には上げられないとしっかり伝えるべきだったのかもしれないと思っている自分も、いる…。

「…杉崎さん…」

私がもう一度声を掛けると、私の存在にハッと気づいたかのように杉崎さんが顔を上げ、
「ごめん…そろそろ…店、出ようか…?注文したものは、確かもう、全部きたよね…?」
そう、静かに言葉を発した。

「あ… はい、そうですね、全部、きたと思います。」
テーブルを見渡すと、もう料理は出尽くしていて、私はこくんと頷く。

「了解…じゃあ、行こうか…お手洗いとか、いい?」
杉崎さんが私の方を見るその表情に、いつもの笑顔が浮かんでいることに、心底、ほっとしてしまう自分がいた。 

「はい… … 」

良かった… 
ただ、その時の私は単純に、そう思っていた。

「また、お越しくださいませ~」
明るい笑顔に見送られながら、店のドアに手を掛ける。

「ご馳走様でした。」
「ご馳走様でした。」

二人、ほぼ同時に店員の女性にそう返事をして、ゆっくりとした足取りで店を出た直後、

「… ふう … 」
少し前を行く杉崎さんから、小さな…ため息が聞こえた…。


この後、もしかしたら、帰宅するまでの間に… 
また、あの日の…さらなる詳細を、聞かれてしまうのだろうか…  

仮に聞かれたとしても…
何を話せばいいのか、上手く話せるのかすら、わからない…

私はいつになく緊張しながらも、杉崎さんの後に続いた…。













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