審判を覆し怪異を絶つ

ゆめめの枕

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第一章 七不思議の欠片

表裏の計画

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 俺は月島へと驚愕の眼差しを向けたが、当の本人は小賢しくも「どうかしたのか」と、首を傾げている。

「お前、もう一度言え」
「は? 鏡の怪異自体をなんとかしないとって話だけど」
「いや、その前だ」
「使者が来たからつい殴っちまったのが、悪かったとか?」
「……殴った?」
「ああ。そしたら水銀のように溶けて、その内消えちまってさ。そんで沢村に電話したら、ピンチだったみたいで駆け付けたって訳」

「お分かり?」と口の端を上げる月島をぶん殴りたい衝動を抑え、俺は乱れる思考を収束させようとした。
 あっけらかんと言っているが、月島のやったことはあまりにも人間の域を超えている。
 不可能だ、普通はそんなこと……だが有り得るのか? いや、どう考えても無理だ。あくまで鏡の怪異本体から離れているとはいえ、使者を殴って倒すことが人間に出来る訳がない。それなら何故、月島には出来たのか。これが沢村でも俺でも素手で倒すことは出来ない。
 何かしらの力がないと、対抗することだって難しい。それこそ陰陽師やら超能力やら何でも良いが、月島にはそんな兆候も見られなかった。
 ……月島は俺達とは違うと考えるべきなのか。
 俺は憎々し気に月島を見る。時々見せるサイコパスな気質故か、それとも才能か。

「月島のことは忘れよう」
「おい」

 こればっかりは考えても仕方ないと投げ出せば、月島が眉根を顰める。

「俺も調査してみたが、参考になる情報は特に無かったな。鏡の世界はどうなっているのかって話は、まあ興味深かったが、わざわざ怪異のテリトリーである鏡の中に侵入して怪異を討つのはリスキーだからな」
「うへえ。戻ってくるのが大変そうだね」

 沢村がそう言うと、月島も深く頷いた。

「オレたちも図書館で調べたけど、何にも出なかったしな」
「こうなったら俺達の取る手段は一つだけだ。このまま仮説を組み立てるだけでは、何も出来ないからな」

 すると沢村の肩が震える。俺の言いたいことを察したようだ。不安そうに揺れる瞳をこちらに向けてくるが、生憎慰める言葉は何一つない。隣にいる月島に慰めて貰うことだな。

「一種の博打だが、鏡を割って相手がどう出るか見るしかないだろ」
「オッケー! こりゃ楽しみだな」

 月島は快諾したが、沢村は下を向いて黙り込んだままだ。

「……このままだと、いつ襲われるのか分からないのよね」
「そうだな。今日みたいな不意打ちは増えるだろう」
「……今の話だと鏡を壊せば解決するのよね」
「今の段階ではそのように判断した。確証は何一つない」

 もし俺が頷けば、沢村は安心して受諾しただろうが、俺は事実を言うだけだ。沢村だって分かっているだろうに、沢村の心が恐怖に震えているのだ。
 怪異は強力な武器になる。怪異について情報を有していた俺でも、鏡の怪異を調べても無力だった。仮に一般人が怪異に遭遇したとしても、沢村のような反応を見せる者がほとんどだろう。月島のように対抗できる人間は稀だ。怪異は発展途上でも大いに活用できる。それだけ分かれば充分だ。

「……いつやるの?」
「今日はもう明け方だ。明日の夜八時に決行するべきだな」

 そう言うと、沢村は大きく息を吸った。一度目を閉じて、ゆっくりと瞳を開ける。どうやら覚悟は決まったらしい。

「――やるわ」
「沢村と黒川がそう言うなら、オレも大賛成だ。予定空けとくわ」
「ああ、頼んだ」

 調子付いた月島が「円陣を組もうぜ、組もうぜ」と騒がしいので、電気スタンドで頭を強めに殴って沈黙させた。沢村も最初は「ナイス」だと喜んでいたが、月島が気絶してしまったことで問題が浮上した。
 俺が帰宅できなくなったのだ。沢村の家に月島を置いていくのは沢村が困るし、俺が月島みたいな図体の大きな男を背負うなど無理だ。
 そうして沢村の厚意と言えば良いのか、全員がリビングで雑魚寝をすることになった。沢村も微睡み始め、すぐに眠りの途についた。それを確認してから俺は携帯を取り出した。
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