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第二章 わたし、めりーさん
空間を切り裂く電子音
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千堂と立川は怪異の存在も知らない。だが月島は彼らとは違って、実際に体験した。怪異の恐ろしさは身をもって知っている、とは言い難いが、怪異の存在は死と隣り合わせだ。月島は口が回るし、こいつが説得すれば、事態は好転する。
……だが、こいつはそうしないだろう。俺はそう確信している。
携帯電話を破壊すれば何も起こらない。それは月島にとって、面白くない結果だからな。
沢村は懇願するように月島へ視線を向けているが、月島はそんな沢村を見やって親指を立てた。
「オレも千堂に賛成だぜ。一緒に巻き込まれてやるよ★」
「月島ァ~~~~!!!!」
「いや違うだろっ!!!!」
感動する千堂と絶望する沢村が、同時に叫ぶ。その姿を見た立川が、「仲が良いですね」と感心している。
沢村が勢いよく立ち上がり、千堂の机に両手を叩きつける。バンッと激しい音が鳴ったが、痛みも気にならないようで、
「いやいやいや! 確かに持ち主のいない場で人様の物を壊したら悪いけど! でもその持ち主って誰なのか分かっているの!?」
「いや、それは」
千堂が口籠る。
「身元不明の携帯を持っている意味ってあるの!?」
「落とし物は拾わないと駄目だろ」
「交番に行くまでは良かったけど、結局それを持ってるのは千堂くんじゃん。それってさ、良いことなの? そのまま千堂くんが持ち運んでいたら、それは善意じゃなくてエゴなんじゃない? だってこのままじゃ、千堂くんの物になっちゃうでしょ」
「はあっ? 俺が拾った物を私物化するとでも思ってんのかっ」
「勿論違うでしょうね。でも、それは私たちの視点だよ。ここにいるメンバーは皆、千堂くんの人となりを知っている。善意で拾って、悪意に踊らされようとしている。だけどさ、他人から見た千堂くんは、人の物を自分の物にしちゃった人に見えるよ」
莫迦には莫迦に通じる理論を持っていると言うべきか。
「ううん、本当は持ち主を探そうとしている千堂くんは凄いと思う。でも、私には感じるの! 絶対にそれを持っていちゃいけないよ! 千堂くんが大変なことに巻き込まれる。根拠なんてないけど、お願い。それを捨てて欲しい」
沢村が零れ落ちそうな両の瞳で千堂を見下ろす。お願いだから信じて、と目で訴えかけている。
「……千堂、分かんねえけど、実はオレも嫌な予感がしてんだ。沢村の言いたいことも、お前のやりたいことも分かる。だからよ、」
月島が相好を崩した。
「オレが持つわ」
「へ?」
「あ?」
「ほう?」
「……」
四方八方、いや四方四方から月島へと視線が集中した。
確かに一理あるかもしれない。月島は使者を素手で倒したことがある。その実績を鑑みても、たとえ別の怪異が展開されようが、こいつが倒す可能性は高い。こちらとしては痛手な存在ではあるが、もし怪異を俺たちのコントロール下に置けなかった場合、必要な人材とも成り得る。全く面倒な立ち位置にいやがるな。
「……でも、」
沢村が心配そうに月島を見る。いや、心配と言うよりは危惧している素振りだ。
「ああ、沢村の言う通りだ。月島に預けて、お前の身に何かあったら」
沢村の懸念を勘違いしている千堂も、焦るように月島の肩に触れかけた。
「良いよ、任せとけって。何とかなるからさ」
すれ違う両の懸念を跳ね除け、月島は爽やかに笑った。
「何とかなる、か。お前の言い方だと、何かしら起こるという確信があるんじゃないのか」
「何だあ? 黒川もオレの心配をしてるワケ?」
「する訳ないだろ。仮に心配するなら、お前のせいで降りかかる火の粉をどう振り払うか。そこが懸念点だな」
「まあ、月島くん本人が何とかなるって言ってますし、彼に任せるのが一番では?」
怪異など無知な立川が口を出してきた。存在すら知らない、凡人が。優等生が故に、人の間に入っては仲裁を行う。他人の経験や自信を分析し、采配する。それは――。
――PIPIPI。空気を切り裂くような電子音と共に、沢村が「ひえっ!?」と仰天する声が聞こえてきた。
……だが、こいつはそうしないだろう。俺はそう確信している。
携帯電話を破壊すれば何も起こらない。それは月島にとって、面白くない結果だからな。
沢村は懇願するように月島へ視線を向けているが、月島はそんな沢村を見やって親指を立てた。
「オレも千堂に賛成だぜ。一緒に巻き込まれてやるよ★」
「月島ァ~~~~!!!!」
「いや違うだろっ!!!!」
感動する千堂と絶望する沢村が、同時に叫ぶ。その姿を見た立川が、「仲が良いですね」と感心している。
沢村が勢いよく立ち上がり、千堂の机に両手を叩きつける。バンッと激しい音が鳴ったが、痛みも気にならないようで、
「いやいやいや! 確かに持ち主のいない場で人様の物を壊したら悪いけど! でもその持ち主って誰なのか分かっているの!?」
「いや、それは」
千堂が口籠る。
「身元不明の携帯を持っている意味ってあるの!?」
「落とし物は拾わないと駄目だろ」
「交番に行くまでは良かったけど、結局それを持ってるのは千堂くんじゃん。それってさ、良いことなの? そのまま千堂くんが持ち運んでいたら、それは善意じゃなくてエゴなんじゃない? だってこのままじゃ、千堂くんの物になっちゃうでしょ」
「はあっ? 俺が拾った物を私物化するとでも思ってんのかっ」
「勿論違うでしょうね。でも、それは私たちの視点だよ。ここにいるメンバーは皆、千堂くんの人となりを知っている。善意で拾って、悪意に踊らされようとしている。だけどさ、他人から見た千堂くんは、人の物を自分の物にしちゃった人に見えるよ」
莫迦には莫迦に通じる理論を持っていると言うべきか。
「ううん、本当は持ち主を探そうとしている千堂くんは凄いと思う。でも、私には感じるの! 絶対にそれを持っていちゃいけないよ! 千堂くんが大変なことに巻き込まれる。根拠なんてないけど、お願い。それを捨てて欲しい」
沢村が零れ落ちそうな両の瞳で千堂を見下ろす。お願いだから信じて、と目で訴えかけている。
「……千堂、分かんねえけど、実はオレも嫌な予感がしてんだ。沢村の言いたいことも、お前のやりたいことも分かる。だからよ、」
月島が相好を崩した。
「オレが持つわ」
「へ?」
「あ?」
「ほう?」
「……」
四方八方、いや四方四方から月島へと視線が集中した。
確かに一理あるかもしれない。月島は使者を素手で倒したことがある。その実績を鑑みても、たとえ別の怪異が展開されようが、こいつが倒す可能性は高い。こちらとしては痛手な存在ではあるが、もし怪異を俺たちのコントロール下に置けなかった場合、必要な人材とも成り得る。全く面倒な立ち位置にいやがるな。
「……でも、」
沢村が心配そうに月島を見る。いや、心配と言うよりは危惧している素振りだ。
「ああ、沢村の言う通りだ。月島に預けて、お前の身に何かあったら」
沢村の懸念を勘違いしている千堂も、焦るように月島の肩に触れかけた。
「良いよ、任せとけって。何とかなるからさ」
すれ違う両の懸念を跳ね除け、月島は爽やかに笑った。
「何とかなる、か。お前の言い方だと、何かしら起こるという確信があるんじゃないのか」
「何だあ? 黒川もオレの心配をしてるワケ?」
「する訳ないだろ。仮に心配するなら、お前のせいで降りかかる火の粉をどう振り払うか。そこが懸念点だな」
「まあ、月島くん本人が何とかなるって言ってますし、彼に任せるのが一番では?」
怪異など無知な立川が口を出してきた。存在すら知らない、凡人が。優等生が故に、人の間に入っては仲裁を行う。他人の経験や自信を分析し、采配する。それは――。
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